楽しい楽しい高校生活 作:ライネ
続いた。
「ヒロヤさんヒロヤさん」
「んぁ…どうした」
さっき食べた昼食のせいか、心地よい日差しのせいか、それとも両方かわからないが午後の授業特有の眠たさに襲われ、夢の世界へ出発している最中に隣の席の若宮から話しかけられた。
「少しだけ華道部に行くの遅れます…」
「了解」
無理もない。若宮はアイドルでありモデルだからな。さらにその二つだけでも大変だと思うのに、剣道部やバイトまで掛け持っている。何がすごいって今あげた物を全て疎かにする事なくやり切っている所だろう。一つに集中する事しか出来ない俺からしたら尊敬しかない。
若宮は侍や忍者などの日本っぽい物が好きらしく度々話題に上がるが、俺は専らお前のが忍者らしいとその度に思う。影分身でもしない限りそんな大変な毎日乗り切れないでしょ絶対。なんてどうでもいい事を考えていたら視界がぼやけてきた。まぁこの時間だし居眠りくらいはいいかと緩くなった頭で判断を下し眠ろうとする。
「ヒロヤさん」
申し訳ないがもう少しで夢の世界の住人になるんだ。許せ若宮。
「ヒロヤさん」
もう夢の世界の住人になったんだ。住民票の手続きも済みそうだし。
「ヒロヤさん!ヒロヤさん!」
「起きてるわ!何だよ!」
どうやら今日は印鑑を忘れてきてしまったらしい。なので住民票は作れなかった。何やねん本当。
「このゴルバチョフって方、先生に似てますね!」
「そだねー」
何か言ってやろうと思ったが、あんまりにも目をキラッキラさせて言うから何も言えなかった。ずるいな本当。こんな感じで寝ようとする度に起こされるので午後の授業も一応は起きて受けることが出来た。
「後で向かいますね!」
「おう。多分部室にいるわ」
「わかりました!」
そう言えば今日部活に遅れるんだったな。と言う事は誰にも邪魔されずに生けれるわけだ。最高かな。なんだか良い気分で準備を終えて、早速生け始める。久しぶりに誰にも邪魔されずにゆっくり伸び伸びやっていた。
今日は色鮮やかな花が沢山あるからそれを収まるように思案し、実行する。自分の思った感じで一本ずつ生けている時ってなんて言うか生きてるって感じがする。言い過ぎかもしれないけども剣山に差し込む時に命燃やしてるみたいな?
そこら辺は自分のフィーリングだから言語化出来ないけどもそんな気がする。
自分の中にある理想像を浮かべながら、一本ずつ生けていく。あと三本、今回はいいのが出来そうだ。
「ヒロヤさん遅れました!!」
何で今くるんかね。一気に集中が途切れたわ。しかもまた人を連れてきてるしこれ絶対相談じゃねえか。
「困ってる人連れてきました!!」
「だから華道部はそう言う部活じゃねえよ」
「でも困ってる人を見捨てられません!」
「はぁ……もうちょいで終わるからお茶出して待ってろ」
「わかりました!」
もう集中もへったくれもないし、後ろから若宮が連れてきた人の視線が突き刺さっているし半分適当にすませてしまう。なんかごめん。とりあえず生けた花を邪魔にならない所に移動させて、二人を畳に座らせる。そこで若宮が持ってきたお茶を出した。
「どうぞ!」
「ありがと」
若宮が連れてきた金髪巨乳さんは目を点にして「えっこれ私どうすればいいんだ?」みたいな顔をしている。まぁ無理もない。
「えっと……とりあえずこれどうぞ」
「あ、ありがとうございます」
めっちゃ困惑しながらお茶をすすってた。
「あ、自己紹介が遅れましたね。村西弘也って言います」
「市ヶ谷有咲です。何かごめんなさいね」
「いえいえ、有咲さんは悪くないです。次に聞きたいけども若宮なんで連れてきた」
「アリサさんが困ってたからです!」
「だからここはそう言うところじゃ無いって…」
「でもずっと落ち込んでました!」
「はぁ……」
クソデカ溜息も出ますよ。
「アリサさん!ヒロヤさんはとても頼りになる人です!きっと解決してくれます!」
「い、いや私は…」
「多分こうなったら若宮は止まんないと思います…だから何かあるならもう遠慮せずに言ってください」
「苦労してるんですね…」
「本当にですよ」
俺を同情するような目で見てくる市ヶ谷さん。何かこの人も苦労してそうだな。
「あれ、アリサさんどこかいつもと喋り方違いませんか?」
「そんな事ねー!ですよ…おほほ……」
「何か…どんまいです」
「くっそぉぉ!隠しきれると思ったのに!!」
若宮って暴力的なまでに純粋だな。いつか天然で傷抉ってきそうで怖いわ、いやもう抉ってるんだけど。
「はぁ…仕方ない。じゃあ言うけど本当にいいのか?」
「いいですよ」
息を吸って吐いてを覚悟を決めたようだ?こちらに向き直る。
「最近、友達に避けられてる気がするんだ」
「気の所為だったりしないんですか?」
「ポピパ…いやその友達とはいつも皆んなで一緒に帰ったりするんだけど、ここ何日かは私を除いた四人でそそくさと帰っていくんだよ」
「たまたまとか無いですか?」
「いやそれだけじゃねえ。その友達の中の一人とはクラスが同じなんだけど、会話する時も目線が泳いでたりすぐどっかにいっちまうんだ」
割と真面目にやばい気がしてきた…
「あと4人でひそひそ何か喋ったり、昼の時間も会話がぎこちなかったりもする」
「何か心当たりとか無いんですか?」
「うーん…あっ」
「あるんですね」
「練習の時に強く言い過ぎたかもしれない…」
まぁ、友情関係の崩壊なんてそんな簡単な所から始まることもあるしね。女子の事はよかわからないけど男子よりえぐいってのは聞いたことあるくらいだからなぁ。
「若宮、なんか聞いてたりしないか?」
「聞いて無いですね…でもそんなコトで仲が悪くなったりしないと思います」
「難しいなぁ」
友情関係の事は外からじゃわからない事が多いから安易な事は言えない。もう少し話を聞こうとアリサさんを見たら手で顔を覆っていた。
「うぅっ……香澄ぃ…みんなぁっ…」
「ちょ!大丈夫ですか!?」
「ひぐっ…これからは…優しくするからっ……」
「若宮、ハンカチと水持ってきて!」
「了解です!」
とりあえず深呼吸をさせて、落ち着いてから水を飲ませて溢れ出る涙を拭ったりした。ある程度は落ち着いたがまだ顔は赤い。
「本当にもうダメなのかな…」
「そんなコトで香澄さん達は怒ったりしません!きっと大丈夫です!」
「若宮…」
こう言う時に衝撃を吸収して宥めれる若宮がいてくれてとても助かった。俺では無理だ。
「でもあんなに楽しかったのももう昔の事なんだな…」
ダメだ。人間って思考や気分がマイナスに向かうと、とことん落ちるとこまで落ちてしまうかもしれないから本当に難しい。
「あんなに楽しみにしてた週末の誕生会もなくなっちゃうんだなっ…」
仲悪くなったら中止だよな…って待てよ。誕生会?誕生会!?
「えっともしかして市ヶ谷さんって誕生日近いんですか?」
「今週の土曜。そこで誕生会もやる予定だったんだ…」
「それだぁぁ!!」
「へ?」
「何かわかったんですか!?」
「俺の推測になるけど、市ヶ谷さんの友達が市ヶ谷さんを避けてるのは誕生会のためじゃないかな。だって有咲さんを除いて帰るのとひそひそ話すのは何かのプレゼントを買ったり計画をするため。会話で目線が泳ぐのは単純に嘘がつけないからと考えれば頷けるし、昼休みぎこちないのは誕生会って話題をわざと避けるためって考えられるよ」
「なるほど…!」
「だから多分、週末に期待すれば大丈夫だと思うよ」
「確かに…心配しすぎてたかもしれないな」
「アリサさん達の仲は簡単にきれないって信じてました!」
その後誕生会の準備と結論付けてこの話題は終わった。そしていきなり泣いてしまった事を謝ったり恥ずかしそうにしたり、若宮とバンドトークをしたりしてお開きとなった。
「ありがとう村西!あと色々ごめんな…」
「いやいいよ、あとこれからはあんまり怒らないようにね」
「そうするよ」
「じゃあ俺向こうだから」
「じゃあな!」
市ヶ谷さんは立ち直り足取り軽く帰っていった。
「やっぱりヒロヤさんは頼りになりますね!」
「そうでもないと思うけどな」
「そんな事あります!」
「はいはい」
「また困ってる人がいたら助けてあげて下さいね!」
「いや華道部室に頼むから連れてくるな」
「ゼンショします!」
「お前絶対わかってねえな」
「??私、今からレッスンなのでここらへんでオサラバです!」
「はいはい、じゃあな」
「また明日!」
次の週、若宮伝いで市ヶ谷さんの誕生会が盛大に行われて彼女の心配は全て杞憂に終わったことを知った。
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