やはり俺のモカしか飲まない青春は間違っている。   作:狐月狗沙狸(黒

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1話目はお試しという感じで短めです
需要がありそうで作者のやる気が出れば続き書きます
多分きっとおそらくメイビー


彼は“友達”が多い

 カップにチョコレートソースとエスプレッソを淹れて軽く混ぜる。ミルクピッチャーに冷たい牛乳を入れ、マシンでスチームし、軽く泡立ったらエスプレッソに注ぐ。プラスチックのストローを挿してから、トッピングのココアパウダーやホイップクリームなどを乗せたら完成。『カフェモカver八幡』マックスコーヒーの代わりに飲むようになった俺のアイデンティティ。

 

「お〜、美味しそうですなあ」

「モカ、起きてたのか。おはよう」

「おはよー、モカちゃんも一口貰っていーい?」

「いいぞ、ほれ」

 

 眠たげな表情でゆったりと喋るモカはストローに口を付けて、喉を少しだけ潤す。細められた目がモカの喜びを示していた。

 

「う〜ん、この味ならつぐのお父さんにも負けませんなあ」

「流石にそれは言い過ぎだ、プロにはまだ勝てん」

「ふっふっふ、まだなのかー」

「……おう」

「照れてますなあ」

「うるせえ」

「久々の捻くれですなあ」

「……うるせえ」

「ふっふっふ」

 

 赤くなった顔を掻きながら楽しそうに笑うモカを見る。カフェモカを飲みながら、ふと間接キスだなと思った。モカの顔はほんのり赤く染まっていた。

 

***

 

「おはよう」

「おっはよー」

 

 ところ変わって羽丘学園高等部。ぼっちというわけでもなく、朝の挨拶をするぐらいには知り合いもいた。

 

「今日もメガネ似合ってるねー」

「はいはい、ありがとよ」

「あっ、信じてないなー?」

 

 今井リサ。一年の時から三年間同じクラスで勝手知った仲。ギャル風なのに気配り上手でその上、美人だからモテまくる。クラスのトップカーストの一人で隣の席だ。

 

「八幡、イケメンで性格も良いじゃん。この前、後輩の子達が薫と八幡のどっちがイケメンかで揉めてたんだよ?」

「瀬田はやっぱり女子にモテるな」

「こら、話逸らさないの」

 

 曖昧な笑みを浮かべておく。引っ越して羽丘の中等部へ入学するときに俺は結構変わった。猫背気味だった歩き方を正し、眼鏡をかけるようになり、マックスコーヒーをやめた。積極的にとはいかないが、人に事務的な用がなくても自分から話しかけるようにまでなった。それは軽く言えばイメチェンというやつで、重く言えば現状からの逃げだった。俺はあの時の自分から逃げた。あの時の自分を肯定することをやめたんだ。

 

「もう、八幡もそれだけモテるってことだよ?」

「まあ、嫌われるよりはマシか」

「ん?」

「いや、なんでもない。それよりコンビニに新商品入ったんだって?」

「あれ、モカから聞いたの? そうだよ! オススメはね激辛のカップラーメン。まだ食べてないんだけど、すっごいレビュー良いから今度三人で食べてみよ☆」

「ラーメンか、良いな。でも、モカは辛いのダメだから食うなら二人でだな。放課後にでも寄るか」

「およ、デートのお誘いかな? 嬉しいけどモカを一人にする気ー?」

「違えよ。モカは今日Afterglowの幼馴染組みでつぐみのとこの店行くんだと」

「えー、それじゃあアタシはモカの代わり?」

「んなこと言ってねえよ」

「ははっ、わかってるって。じゃあコンビニ寄ってその後八幡とモカのマンションね」

「……別に良いけどよ。流石にモカに一言いっとけよ?」

「はーい」

 

 リサとの会話も終わり、授業も四度終わると昼休みに入る。木の周りを一周するように繋がったベンチが俺のベストプレイス。ここで飯を食っていると大体アイツが来る。

 

「やっほー、八幡くん」

「よう、氷川」

「今日もメガネだねー。でもそれ取った方が絶対るんっ♪ってすると思うよ?」

 

 そういいながら隣に座ってくる氷川。我らが羽丘学園の生徒会長だが、大抵思いつきで行動するし、天才過ぎる思考回路を持つので周囲の奴らはよく振り回されている。羽沢がその筆頭だ。

 

「残念だったな、俺は外にいるときは眼鏡取らないんだよ。だからそろそろ眼鏡を外させるのを諦めろ」

「ええー、やだよー。そんなのるんっ♪ってしない!」

「つか、お前の身体能力なら無理やり眼鏡奪えるだろうが。なんだってわざわざ毎回律儀に説得しようとしてくるんだ?」

「そんなのるんっ♪ってするからに決まってるじゃん! 八幡くんはどーせモカちゃんにしかメガネの下見せてないんでしょ?」

「それは、どうだろうな」

「誤魔化したって無駄だよ! それぐらいわかるんだから!」

「ヘイヘイ、氷川ポテト食うか?」

「えっ、良いの!? ありがとー!」

 

 実は今日の昼飯は松原が働いている某チェーン店のセットだったりする。天才を誤魔化すにはこのポテトが最適だ。ちなみに姉の方にも効く。朝のやり取りで弁当を用意するのを忘れていたため、二人で山吹ベーカリーとファストフード店に寄ってから学校に来たのだ。相変わらずモカはポイントカードの嵐で山吹を苦笑いさせていた。

 

「……今度、何か買いに行くか」

「何処に行くの?」

「山吹ベーカリー」

「そっか、じゃあいいや」

「じゃあって何だよ」

「んーとね、八幡く『キンコーンカンコーン』ありゃ、八幡くん昼休み終わっちゃうよ」

 

 氷川の言葉を遮るようなチャイム。こいつが俺と会う時、絶対に他のやつはいない。見ず知らずのやつくらいなら、いたことはある。だからだろう。氷川は大好きな姉ですら俺と一緒にいる時は見つけても追いかけない。氷川は、俺がマンションなら眼鏡を外しているのに、モカがいるから絶対に来ないし、氷川の家にも姉がいるから絶対に俺を呼ばない。

 

「教室戻るか」

 

氷川の口元に着いた塩を拭き取って足を動かす。氷川の目は艶やかに輝いていた。

 

「るん♪ってする」

 




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