霧の艦隊これくしょん   作:蒼月

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2040年
原作と同上。

2043年
●調査中の『ハルナ』の甲板で謎の少女と遭遇。対話の結果、その少女が『ハルナ』の意識体と判明。
この時、『メンタルモデル』が確認される。そして、これが人類と霧との初の対話となった。
●原作同様「海洋技術総合学院」が設立される。


第2話

ハルナが鎮守府に向けて発進してから数十分後。

 

天龍たちは、何とか鎮守府に到着できていた。

 

 

「ふー、今回はマジで沈むかと思っちまったぜ。この天龍ともあろうものが情けない・・・」

 

給糧艦を届けて、自身の艦隊の船体をゆっくりそれぞれの港に付けてから天龍は、額に残っていた冷や汗を拭い、生きて鎮守府に帰れた喜びと、所属不明の戦艦(大きさから予測)に助けられた自身の不甲斐なさに落ち込んでいた。

 

いつも通りに任務の報告書は龍田と雷が作って(本来は旗艦の精神体が報告書を編集、提示するが、天龍はこういった事務仕事が苦手。)提督に提出するらしい。今回の深海棲艦の大艦隊と謎の戦艦に関するレポートも一緒に持って行くと、龍田が天龍に告げていた。

 

「・・・あいつ、誰だったんだろうな?」

 

絶体絶命の危機を救ってくれた戦艦は、自分の代わりに1隻対大艦隊という絶望的な戦いに身を投じた。その甲斐あって自分たちは、その後、深海棲艦の襲撃も受けずにこうして鎮守府に帰還することができた。

 

普通に考えたら、もう轟沈させられている。あの大艦隊相手に引き撃ちや停滞戦術は、不可能だ。こっちが1隻2隻を相手にしている間に残りの艦隊が接近してきてあっというまに包囲されてしまう。そして全方位から砲撃や魚雷を打ち込まれるのだ。もう、そうなったら戦艦でもただではすまない。

 

「でも、何でだろうな・・・」

 

そう、普通に考えて轟沈して当たり前な戦力差なのだ。なのに――

 

 

「あいつが沈んだ光景が思い浮かばねぇ。」

 

 

――その戦艦が沈められた光景が思い浮かばないのだ。

 

天龍にもその理由が分からなかった。ただ漠然とした感覚で『彼女を沈めるには、あの程度の艦隊では無理だ』と直感していた。普通の艦隊、もしくは噂で聞く戦艦大和や戦艦長門でさえ、単艦なら轟沈必須の戦力差でありながら、助けてくれた戦艦が勝利する光景が容易に想像できていた。

 

「ったく、オレは、いつからこんな楽天的になったんだよ。」

 

軽く頭をかいてから天龍は、自身の(カラダ)から降りると今頃は、龍田たちから報告を受けているであろうお人よしの自分たちの提督室に向かった。

 

 

 

そして、天龍が提督室の扉をあけると、丁度天龍を呼びに行こうとしていた提督とばったりあった。

 

「うおっ!?」

 

「うわぁ!?」

 

扉をあけた瞬間に、互いの姿を認識して、驚き天龍はのけぞり、提督は勢い余ってしりもちを着いた。

 

「・・・何やってんだよ提督。」

 

「いたた・・・何って、天龍を呼びに行こうとしてたんだよ。」

 

軽く涙目になりながら立ち上がると、彼―千早提督―は、手に持った写真着きの書類を天龍に渡した。

 

そこには、黄色の戦艦が写っていた。

 

艦の形や砲身の位置から金剛型高速戦艦の4番艦【榛名】に酷似した見た目をしている。

 

渡された写真付きの書類には、この【榛名】に似た戦艦が約40ノットの速度で鎮守府に接近中との報告があった。

はっきり言って戦艦の出せる速度ではない。いくら高速戦艦の名を持っていても榛名は、約25~27ノットが最大速だ。40ノットといえば駆逐艦最速の島風ぐらいしか出せる艦は居ない。

 

「こいつは!?」

 

軽く報告書に目を通した天龍は、見たことのある艦が書かれた報告書に驚愕の声を上げた。

 

「あ、やっぱりこの戦艦って、報告書にあった【謎の戦艦】で合ってるんだ。」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

霧の艦隊これくしょん 第二話~大戦艦ハルナ・・・来たよ~

 

 

 

 

 

 

 

 

「さて、後十数分で鎮守府に到着だな。」

 

大海原を進む霧の大戦艦のブリッジにてハルナが呟く。

最初は、モデルとなった【榛名】の最大速である25~27ノットで移動していたのだが、気持ちが逸ったのか今では40ノットにまで無意識に加速していた。

 

ハルナ自身は、数十分で到着すると予測しているが、すでに鎮守府にかなり接近していた。

 

(・・・?あれは、鎮守府か?おかしいな、到着にはまだ時間が・・・速力40ノット!?しまった!いつの間にか加速してた!これでは警戒される!)

 

ただでさせ黄色い船体という目立つ姿をしているのに、これに加えて速力40ノットという明らかに戦艦にあるまじき速さで接近しているともなれば、今頃鎮守府内部は、大混乱になっているだろうと予測できたハルナは、急いで速力を落としつつ、鎮守府の監視カメラ類にアクセス(ハッキングとも言う)して内部の様子を探る。

 

(・・・予測通り大混乱だな。情報が交錯しすぎて纏まりがなくなってしまっている。)

 

様々な憶測や、接近中の戦艦に対する対応などで鎮守府内部は、滅茶苦茶な状態となっていた。その惨事に思わず頭を抱えたくなったハルナ。

 

(これじゃ、最初の案は、使えそうも無いな・・・ん?彼は・・・!よし、これならプランCでいけそうだな。)

 

あるの監視カメラに映る、一人の提督と艦娘の姿を確認したハルナは、即座に計画を組み直して行動に移した。

 

 

 

ハルナが鎮守府の目と鼻の先にまで接近すると、幾つかの航空機と戦艦に率いられた艦隊がハルナの周囲に集まってきた。

 

「そこの黄色い戦艦!止まって下サーイ!」

 

一番近くに来ていた戦艦の艦首にいた少女から広域音声(メガホン)での停船命令が飛ぶ。

その命令を聞いたハルナは、ゆっくりと速度を落とし、戦艦の近くに停止した。

 

(艦首で叫んでる少女って、妖怪紅茶寄こせ?・・・なんだろう凄まじい違和感を感じる。・・・喩えるならお堅い冷血才女がハイテンションな英国被れにジョブチェンジした様を目撃したような・・・)

 

戦艦―金剛―の姿と喋り方に凄まじい違和感を覚えるハルナ。

無意識のうちにコンゴウが金剛のような言動や行動をしてる様を思い浮かべてしまったようだ。

 

「貴女の所属する鎮守府を教えて下サーイ!それと、この鎮守府に何の用なのヨ!あと、貴女みたいな派手な等色をした戦艦なんて初めてデース!」

 

コンゴウがバァァニング!ラァァブ!!とかティータイムが大事なのデース!とか言ってる様を想像して身震いしていたハルナに金剛の声が届き、ハルナは不謹慎な想像をかき消した。

 

艦首にでて来たハルナは、広域音声(メガホン)で返事をした。

 

「無所属。用と言うか目的は、深海棲艦に襲われていた給糧艦とその護衛艦隊が無事に鎮守府に着いたのかの確認のため。」

 

「無所属?少しお待ち下サーイ、提督に確認を取りますネ!」

 

ハルナの返事を聞き、無線で鎮守府にいる自身の提督に確認を取る金剛。

 

その通信中、暇になったのか周囲の艦隊をハルナは、見渡した。

 

 

正規空母二隻。重巡洋艦四隻。雷装巡洋艦二隻。高速戦艦四隻。

 

計12隻の艦隊がハルナの周囲に展開していた。

 

 

(やっぱり警戒されているなぁ・・・まぁ、40ノットもの速力を持つ所属不明な戦艦とか警戒されない方がおかしいしな。)

 

金剛の通信が終わる前に、この状況に対する次の行動の演算を終えるハルナ。

 

(あと数分、といったところかな?そこからが勝負所だ。)

 

 

 

 

 

 

 

 

一方、天龍の船体が停泊している千早提督のドックに彼らはいた。

 

「天龍、出航まであとどれくらいかかりそうだ?」

 

天龍の艦に乗り込んだ千早提督がブリッジから問いかける。

 

自身の機関(エンジン)の調子を確かめながら叫ぶ。

 

「もう少しだ!・・・よし!エンジン始動!行けるぜ!」

 

 

ボロボロな状態で殆ど修理も済んでないありさまでありながら、黄色い戦艦の報告書を読んだ天龍は、千早提督に詰め寄り、事の詳細を聞き出した。

 

その後に、入渠待ちだった自身の艦に乗り込んだところで千早提督まで乗り込んできたのだ。いわく、「あの戦艦と、直接話しをしたかった」らしい。

 

 

「天龍ちゃん!?そんな艦体(からだ)でどこに行くつもりなの!?」

 

同じく入渠待ちだった龍田が、出向しようとしている天龍を見つけて困惑の声を上げた。

 

「悪い龍田!説教は、後でな!今は1分1秒が惜しいんだ!」

 

「え!?ちょっと!天龍ちゃん!?て、提督!天龍ちゃんを止めて!」

 

「すまない。一緒に行くつもりだから止められない。」

 

「て、提督ーー!!」

 

「発艦!」

 

狼狽える龍田を置き去りにしてドックから出航する天龍。

 

「もう!後で二人ともお仕置きよー!」

 

後ろから聞こえてくる龍田の怒鳴り声に額に冷や汗を流す天龍だった。

 

 

 

 

「はは・・・。お仕置きかぁ・・・。龍田のお仕置きってきっついんだけどなぁ・・・」

 

「まぁ、一緒に謝るから何とか・・・なるといいなぁ・・・」

 

二人そろって乾いた笑みが浮かんでいた。そして一緒にため息を吐いた。

 

 

 

 

 

 

 

 

提督との確認連絡が終わった金剛は、迷っていた。

ハルナが無所属なのは、確認できたがその対応については鎮守府本部で割れているらしく、待機命令を受けてしまったのである。

 

鎮守府の出入り口近くで・・・である。

 

はっきり言って邪魔である。どうしようもなく邪魔である。空母やら戦艦やらが揃いも揃って13隻。

そんなのが出入り口付近に集結しているのだ。

 

さっきから出入りしている他の艦娘たちの視線が痛いこと痛いこと。

穴があったら入りたい。金剛は、この言葉の意味をリアルタイムで体験していた。

 

(さっきから凄く見られてるネ!分かってるヨ、私だって出入り口付近にこんな大勢でたむろされてたら同じ視線を投げかけるからネ!でも待機命令受けちゃったんだからしょうがないんデース!)

 

さっさとこの場を離れたい感覚と、愛する提督から受けた命令を遂行しようとする意思がぶつかり合ってなんだかよく分からないもやもやした気持ちになっていた。

 

今すぐにでもこの場を離れるか、このまま他の艦娘から投げかけられる視線に耐えるか・・・金剛は、二つの選択肢を頭に浮かべながら・・・迷っていた。

 

ある意味、羞恥プレイである。他に待機命令を受けている艦娘もどこか落ち着かない様子だった。

そりゃ、そうであろう。同じ鎮守府に所属する他の艦娘から『邪魔だなぁ』的な視線が刺さるのだ。しかも、悪いのはどう考えてもこちら側である。これでは、居心地が悪くなるのも当然といえた。

 

そんな中で、視線に晒されても顔色変えずに、良く言えばマイペース、悪く言えばぼーっと突っ立ってるのがハルナだ。

 

(天龍、ドック出航確認。到着まで後、3分。)

 

鎮守府のカメラの視界をジャックしてこちらに向かってきている千早提督たちを見ていたようだった。

 

 

そして、ハルナが演算した3分後、天龍が金剛たちのもとに到着した。

 

「よう!お邪魔するぜ!」

 

「立て込んでるところ、ごめんね?」

 

色々とガマンの限界が近かった金剛だが、二人に話しかけらた途端、まるで砂漠でオアシスを見つけたような表情をした。

 

「丁度良かったデース!千早提督ゥ!内の提督に言って欲しい事があるのヨ!」

 

「・・・え?」

 

 

 

 

待機命令が解除されて、各々ドックに戻る中、金剛は、深々と千早提督に礼を言う。

 

「本当に、ほんっっとうに!感謝しマース!」

 

「いや、そんなに感謝されてもこっちが困るのだけど・・・」

 

何度もペコペコとお辞儀をする金剛にどう対処すればいいのか分からずにオロオロとする千早提督。

彼には分からないだろうが、30分以上視線に晒され続けていた金剛にとっては、これ以上ない助け舟だったのだ。

 

そもそも、彼は、自身がどれだけ他の提督たちの助けになっているか分かっていないのだ。と金剛は思った。

 

深海棲艦の出現によって海上輸送を著しく制限された現状において、海上輸送任務を成功させた提督は、実はとても少ないのだ。

海上輸送を成功させている提督は、その殆どが最前線で戦う古参兵《つわもの》ばかりだ。

若い提督は、高々輸送任務と油断して、補給艦を失ったり、手塩にかけた艦娘を失ったりしている。

 

その殆どの原因は、【海図】だ。

 

深海棲艦が放つ謎の電波により、コンパスを始めとした海上で方向を知る道具の殆どが使用できなくなり、現状使えるのは、【羅針盤】を持った妖精だけだ。

その為に、殆どの提督が道に迷って深海棲艦出没地域に輸送艦を突っ込ませたりしてひどい損害を受けるのだ。

 

しかし、彼は、海図と他の提督から聞いた深海棲艦の出現報告だけで、どの航路が比較的に安全かが分かってしまうのだ。

 

一度、自分たちの提督が攻略作戦で行き詰った時、彼は、海図と深海棲艦の出現域だけでもっとも深海棲艦と無駄な戦闘を行わずに最短で目標まで進める航路を割り出してしまった事があるのだ。

 

最初は、半信半疑だったが、いざ出撃してみると今まで湯水のごとく溢れ出してきた深海棲艦と殆ど(1、2回は遭遇戦があった)戦闘する事無く目標地点にまで進めてしまったのだ。

 

それ以来、彼を頼る提督が増えていったのだ。彼従来のお人よしの性格がそれに拍車をかけ、今では、この鎮守府にいる提督の殆どが彼が割り出した航路を頼りに攻略作戦に挑んでいる。

 

そして、彼が輸送した物資と彼が割り出した航路で他の提督が攻略作戦に乗り出しているのがこの鎮守府の現状だ。

 

その為にこの鎮守府には、彼に頭が上がらない提督が思いのほか多いのだ。

 

その彼に、黄色い戦艦の取り扱いを押し付け・・・もとい、任せると他の提督から文句がでにくいのだ。(別名【めんどくさい事は、千早提督に押し付ければ大丈夫だろ】作戦・・・作戦?)

 

 

金剛たち(正確には他の提督たち)から黄色い戦艦―ハルナ―の取り扱いを押し付けられた千早提督。

 

礼を言い終えた金剛は、ドックに帰ってしまったが、ここまでの怒涛の流れに追いつけなかった天龍が頭に多くの?マークを浮かべながら首をかしげていた。

 

そして、また面倒ごとを押し付けられた事を悟った千早提督は、軽く黄昏た。

 

「はぁ、しょうがないなぁ・・・君の名前・・・艦名と艦級は、言える?」

 

「ハルナ・・・コンゴウ型高速戦艦のハルナ。」

 

「榛名・・・予想は、していたけど、艦名と艦級まで一緒とは、ね。」

 

ハルナの答えた名に、軽く考えるそぶりを見せるもここが出入り口付近だと思い出した千早提督は、自身のドックの方を指差した。

 

「・・・とりあえず、ここじゃ、他の艦娘の邪魔になるから、ドックに行こうか。・・・ほら、行くよ天龍。」

 

「っ!・・・あぁ、ドックに戻るんだな?分かった。」

 

声をかけられてようやく正気に戻る天龍。しかし、今だよく事態が飲み込めてないのか、千早提督に説明を求めるような視線を投げかけた。

 

「後で説明してあげるから、そんな目で見ないでくれよ。・・・榛名もおいで、たしか戦艦用のドックもあった筈だから。」

 

「・・・分かった。」

 

宥められて渋々といった感じに疑問を飲み込むと、ドックに向かう天龍。

 

 

(・・・ふぅ、うまくいったか。しかし、予測より時間がかかってしまったな。)

 

ゆっくり息を吐くと天龍の後を追うようにハルナは、艦を進めていった。

 

(先ずは、第一関門クリア・・・次にするべき行動は・・・と。)

 

ドックに向かう最中、ハルナは、次の行動に対するシミュレートを開始していた。




今回の戦利品はこれ!

【粒子砲】【★★★★★】
別名偽ビームカノン。
ナノマテリアルを粒子状にし、それを加速させた状態で打ち出すトンデモ大砲だ!
これは、ハルナが【ある人物】からヒントを得て作った言わば人と霧の合作兵器とも言える。
ただし、ナノマテリアルを砲撃として打ち出している為、威力は高いがクソ燃費である。

ゲーム的に言うと一発撃つ度に燃料40ボーキサイト40消費するといえばどれだけクソか分かってもらえると思う。ただし、威力も燃費にあったもので何と戦艦も一撃!鬼や姫も当たればHPの半分は、持って行くぞ!当たれば!

ゲーム的あれこれ
種別:特殊主砲 火力:+65 対空:+5 射程:超々長(狙撃出来る位長い)

特殊効果
全てのフェイズで砲撃可能。砲撃フェイズでの攻撃回数+1 【空母と潜水艦以外が装備可能】

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