仮題名『インフィニット・ストラトスのタスクマスター』   作:蜜柑ブタ

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お試しという名の、プロローグ?


SS  お試し短編

 

 

 あるところに、神のミスで死んでしまった若者がいた。

 神はその詫びとして特典と呼ばれる能力などを付与した状態で別世界への転生を勧めた。

 しかし、若者はとても無欲であった。地位にも力にも興味は無く、死んだのなら普通に死後の世界に行かせてくれと言い、今まで見たことのないタイプだったことから神は目を丸くしてビックリし、けれど死なせた詫びをしなければ治まらないと必死に説得した。

 どんな特典でも用意するっと言っていたら、やがて困った顔をしていた若者の頭の中に、もといた世界で得た唯一のヒーローの能力が過ぎったのを読心によって読み取り、それをあげるっと無理矢理に押しつけて神は彼を転生させた。

 

 

 転生した世界は、転生した若者の世界では小説の世界とほぼ同じパラレルワールドだった。

 

 しかし若者はそのことを知らない。そもそも無欲な彼はそういうことにも興味が無かったのだ。

 

 そんな若者は、その世界における主人公の位置にいる織斑一夏という少年の双子の弟して生まれた。

 

 二卵性の双子で弟だったため、顔は姉にも弟にも似ていない。周りは本当に姉弟なのか?っと疑問に思うほどだ。

 

 織斑春治郎(おりむら しゅんじろう)。それがこの世界での彼の名前だった。

 

 姉の千冬はとても優秀だった。美人で完璧だった…家事全般以外は…。なので基本的に家事分担については弟たちがやった。

 

 ところが成長にするにつれ、一夏との間に差が生じ始めた。それを周りは敏感に感じ取り、春治郎と一夏を比べるようになり、一夏は劣等生だと見られるようになった。

 

 そんな環境を、春治郎は良しとしなかった。

 

 ならばどうする?

 

 答えは簡単、一夏の出来ないところを教えたりして一種の切磋琢磨して努力することだった。

 

 春治郎は、前世でとても家族愛のない家庭で育った。だから家族というモノを愛していた。だから兄の一夏が劣等というレッテルを貼られるのは絶対に許せなかった。

 

 もちろん、それでも馬鹿にしてくる馬鹿は、姉にも兄にも悟られぬよう報復しておく。

 

 しかし、春治郎は、実は決して優秀だったのでは無かった。

 

 それは、神から押しつけられたあるヒーローの能力のせいだった。

 

 

 

 『写真的反射(フォトグラフィック・リフレクシズ)』

 

 

 

 春治郎の前世の世界で海外の漫画に登場した、ヒーローのようなヴィラン(悪役)のような、微妙な立ち位置にあったキャラクター『タスクマスター』の能力だった。

 

 その能力は、写真のように相手の技など、あらゆる技や技術をコピーして体得する記憶能力である。細かいことだと相手の仕草や癖、声まで完璧にコピーできる。まさに究極のモノマネ能力だった。

 

 この能力を生まながらに持っていたため、一見すると天才児のように見えていたのだ。実際は真似をしていただけにも関わらずだ。ただし、努力によってはコピー元より上になる。

 

 春治郎は、その能力の大本と同じように教えることも上手で、それまで差が出来てしまっていた一夏をメキメキと成長させていった。

 

 ところが、不幸は当然訪れる。それは、春治郎というイレギュラーがもたらしたことなのか……、それとも彼を転生させた神とは別の神のイタズラか…。

 

 モンド・グロッソというIS(インフィニット・ストラトス)の大会に出場した姉・千冬を棄権させるために、一夏が誘拐された。

 

 兄の一夏がいないため、探し回って発見した時……、一夏は……。

 

 その後のことは、春治郎は覚えていない。もう…、記憶すらなかった。

 

 すべてを塗りつぶしてしまったから。

 

「春くん…、君は可哀想だ。」

 

 篠ノ之束が、泣いている。

「どうしたんだよ? 束姉?」

 春治郎はおかしそうに笑った。

 その笑い方は……、声は…、春治郎のソレではなかった。

「…春治郎…? お前は…。」

「どうしたんだよ、千冬姉。」

 ワナワナと震えている千冬を安心させようと、“彼”は笑顔を作る。

 

 

 

「なあ、千冬姉、束姉。さっきから言ってる、春治郎…って、誰のことだ?」

 

 

 

 春治郎の声と笑い方は、一夏のソレとまったく同じとなっていた。

 

 絶対安静の患者を収容している病室の中には、生命維持装置で辛うじて生かされている、一夏が眠っていた……。

 

 

 

 『写真的反射(フォトグラフィック・リフレクシズ)』の欠点。

 

 それは、自身の記憶などをコピー能力でコピーした知識や技能などに塗りつぶされ、忘れてしまうことだった。春治郎自身は、ソレに気づかず、単なる物忘れが激しいだけだと思っていたし、言われれば思い出すので家族も気にもとめていなかった。

 

 

 春治郎は、その能力で“一夏”そのものをコピーし、春治郎としてすべてを塗りつぶしてしまったのだ。

 

 一夏が、もう…、この世にいないと思い込みそれを受け入れたくないと現実逃避した結果が招いた、不幸だった。

 

 

 

 束は、春治郎を消させないために、あるISを急ピッチで作った。

 

 IS【タスクマスター】と名付けられたそのISは、副頭脳というシステムによって春治郎が失っていく記憶を代わりに記憶し保存する。

 そして、完全なる一夏になろうとして自らの手で整形までしようとした春治郎の容姿を、ナノテクノロジー(VTシステムの初期タイプみたいなもの)を使い、変身させておくようにする、春治郎を生かすためのISだった。

 

 一夏に成りきってしまった春治郎を現実に引き戻す方法は、たったひとつ……、眠り続ける本物の一夏が目覚めることだけだった。

 

 

 




このネタは、数年前に思い付いたものです。


タスクマスターの能力、フォトグラフィック・リフレクシズを特典に持っていたら?っという思いつきです。

春治郎は、一夏がいない現実を受け入れられず、自らを一夏の特徴などをコピーして一夏にすることで己を保とうとした結果、ある意味で成り代わりになってしまったうえに、春治郎という人物が消滅の危機に。
それを防ぐため、束が特別なISを与えて春治郎を消させないように処置。しかしこの事実を一夏に成りきってしまった春治郎は知らず……。
本物の一夏が昏睡から目覚めない限り、春治郎は死ぬまで一夏でいようとする……そんな悲劇。
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