この作品どういう風に書いてたか、正直忘れております。違和感あったら申し訳ないです。
烏野高校対条善寺高校。
第2セットも試合は中盤に差し掛かってきた。
……徐々に徐々に、点差を離していけてるな。
ウチが相手の攻撃に慣れて来たってのもあるけど、ここに来てバレーボールにおける基礎の重要さが出てきてる。
確かに、派手な攻撃やカタにはまらない攻撃ってのは良いものだと思うよ。
派手な攻撃は見ていて楽しいし、観客を魅了する。そうやって、観客達を自分達の方へと引き寄せる。カタにはまらない攻撃も、相手のテンポを崩し自分達の流れに持ち込めるからね。
けどね、それは下手をすれば自分達のテンポも崩しかねないんだ。
バレーボールはボールを持てないスポーツだ。ボールを繋ぐスポーツだ。だから基礎が最も重要なスポーツとも言っていい。
そういう中で、カタにはまらないバレーをするなら、それ相応の基礎とチームを支える基盤が必要だ。
そこがウチと条善寺の決定的な違い。
多分、彼らは今、焦って、楽しい時間が続いていなくて、それを自覚しながら目を背けている。
気合いや根性だけで乗り切れるほど、バレーは甘くないよ……
ピー!
おっと、条善寺タイムアウト取ったか。どうやら向こうの監督さんは、堅実でよくコートを見てらっしゃるようだ。
条善寺からしたら明らかに悪い雰囲気だし、ここでのタイムアウトは定跡だよね。
「それにしても、条善寺の1番の彼。彼の最初のプレー見た時、ちょっと期待したんだけどな……」
「ん? どうした潮崎」
「ん? あぁ、いや。何でもないよ」
どうやら声に出てしまっていたらしい。縁下の言葉に誤魔化すように僕は手を横に振る。
「──こいつらのケツ叩いてくれって頼まれてるんで!」
そんな時だ。条善寺のベンチからケツと言う言葉が聞こえてくる。そう、ケツと。しかも女の声でだ。
え? 何事?
「潔子さん。なんかよく分かりませんが俺らの事も叱ってくれませんか?」
「出来れば罵るように」
「しません」
「「じゃあ!」」
「尻も叩きません」
「「はぅ! 潔子さんのお口から、尻いただきましたぁ!」」
田中と西谷がケツを向けたかと思うと、何だかとても幸せそうな顔をしている。
「縁下。……あの馬鹿2人はなにやってんの?」
「さぁ? けどあの2人が馬鹿なのはいつもの事だしな……」
まぁ、確かに。けど試合が始まればスイッチ切り替わるのも事実だし。田中と西谷からすればあれが平常運転か。
「相手に大分焦りが見えてきてるし、この試合このまま上手くいくかもな」
「うーん。どうだろうね。バレーも他のスポーツ同様、何が起こるか分からないしね。ただまぁ、1つ言える事としては、現状では流れを握れてるウチが有利かな」
タイムアウトも終わり、コートに戻っていく選手達の背中を見ながら、隣に来た木下の言葉にそう答える。
しかし、その次の瞬間──
「!!」
ブワッ! というプレッシャーが身体を駆け巡る。
プレッシャーの正体を目で追うと、そこには条善寺の選手達の姿が。
「……木下、前言撤回。この試合、戦況はまだ五分だ」
タイムアウト中に何があったかは分からないけど……
さっきまでの雰囲気とは打って変わって、あの目は、獲物を狩取りに来る獣の目だ。
多分、コートに立ってる選手達は肌で感じているだろうね。少しでも隙を見せれば一瞬で飲まれてしまう事に。
烏野 19ー15 条善寺
「二岐!」
月島のスパイクを2番がワンタッチし、7番がレシーブする。すると、ネット間際まで上げられたボールをそのまま打つように3番が入り込んでくる。
影山が対応するも、3番はスパイクではなくトスを上げ、後ろから走り込んで来ていた1番のバックアタックが決まる。
「……遂にブレイクされたか」
嫌な予感と言うのは良く当たるもので、点差は縮められてはいないものの、離せ無くなっている。確実に此方の背中を追いかけて来ていて、このタイミングで遂にブレイクされてしまった。
タイムアウト開けから、どうにも条善寺の調子が良い。若干の基盤の荒れは相変わらずだが、落ち着いて周りを見てプレーしだした。非常に厄介だな。
「ナイスレシーブ! 大地さん!」
「! ……おいおい。ここに来てまた、スパイクノーマークで来んのか!」
「第1セットで、潮崎にやられてるのに」
「いや、この作戦はちゃんと考えられてますよ」
スガさんと縁下はそう言っているが、今回は先程とは少し違う。
日向はあの状況から僕の様に強打を打てるわけでは無い。それをこの第2セットで理解した上でやっている。
そして、上げさえ出来れば……
「多少崩れても、返せると……」
非常に理にかなった作戦だな。
烏野 20ー18 条善寺
2点差まで縮められたか……
日向のスパイクはまだ軽い。ここから先の数点。影山は日向をどう使うか。
そもそも、日向はこの状況をどう打開するのか。そこにかかっているけど……
「日向!」
おぉ、早速使ってきおったよ。
影山から上げられたボールを日向はしっかりと目で追う。しかし、ここで見ているのは、ボールだけでなく相手のコートもしっかりと確認する。
そして、空いているスペースへ確実に打ち込む。ブロックが居ない分、スパイクは打ちやすいし、際どいコースとなれば、ノーマークでのスパイクを拾う事はそう容易ではない。
そうそう。それだよ日向。大胆な作戦には必ず穴があるものだ。その欠陥を見つけ出し、今自分が持っている武器で何が出来るかを考える。
そうすれば、格段に強くなれる。
その後も、日向の強打への警戒を逆手にとったフェイントでマッチポイント。
よし! 条善寺の調子が上がってるけど、ウチも負けてない。
烏野 24ー20 条善寺
11番がサーブを上げると、条善寺全員が走り出す。
んなっ! 第1セット同様、落としたら終わりの土壇場で、またシンクロ攻撃。
付け焼き刃だ。付け焼き刃だと分かっているのに恐ろしい。
恐らくだけど、彼らは今、失敗した時の事なんて考えていない。今を楽しむ事、成功した時の快感だけに全てを注いでいるんだ。
調子が良い時の木兎さんなんかは、この典型的な例。そういう選手は怖い。
完璧なトス。完璧な助走。完璧なタイミング。
大地さんの脇を抜き、1番が振り抜いた完璧なストレートは、ほんの数センチ、ボール1個分ではあったが、コートの外へと落ちた。
ピッピー
「「「よっしゃぁあああ!!!」」」
試合終了を知らせる審判の笛と共に、僕達はベスト8進出を果たした。
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「あの!」
「あん?」
試合終了後、撤収している条善寺に、束が声をかけた。
いや、彼らにと言うよりは、照島に、と言った方が正しいか。
「えーっと、確か……「照島」あっ、そうそう。照島くん。
君は多分、カタにはまらないと言うプレースタイルとしては、僕に1番近い存在だと思う」
オールラウンダーと言う点において、束は、1番自分とバレーボールにおける根本が近いのは星海だと思っている。
だけど、プレースタイルと言う点においては、今まで見てきた選手の中で彼が1番自分に近いと感じた。
最初はただ、漠然としたものだった。けど試合の後半、特に最後の彼のスパイクを見た時、それが確信に近いものに変わった。
最後の条善寺のシンクロ攻撃は完璧だった。照島のスパイクも決まっていてもおかしくなかったと束は思っている。
「第2セットのタイムアウト開けの条善寺は、考えて思考を巡らせた上での、君たちで言う所の『遊び』だったよ。
多分条善寺は、照島くんはもっと強くなれる。来年のインターハイを楽しみにしてるよ」
束はそれだけ言うと、スタスタと歩いて行く。
「なっ、なんだったんだあいつ?」
「さっ、さあ?」
「台風みたいな奴だったな……」
「けど、すげーじゃん! 照島ぁ! あんなうめぇ奴に認められるなんてよ!」
「うっせぇよ! 茶化すな!」
照島はそういうものの、内心満更でも無かった。別に照島自身、自分のプレースタイルが間違ったものだとは思っていない。
だけど、上手い奴にそう言われるのは素直に嬉しいし、頭の中のシュミレーションと現実が一緒になる事に快感を覚えていた。
「おい!」
照島の叫びに、少し離れてしまった束は足を止め、照島の方を振り返る。
「また遊ぼうぜ! そんの時は俺が遊び勝つ!」
その言葉に、束は一瞬驚いた顔をするも、笑顔で照島に手を振り、再び歩き出す。
「名前、聞いとけばよかったなぁ」
照島が小さく呟いた言葉は、体育館へと消えていく。
条善寺高校。春の高校バレー、宮城県代表決定戦2次予選。
【敗退】
鬼滅の方も恐らく近日中には投稿します。