天才で病弱な男の奮闘記   作:宮川アスカ

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ハイキュー4期面白いですよね!皆さんは、ハイキューで誰が好きですか?
自分は宮侑が好きです。
ハイキュー見返してると、青城戦とか白鳥沢戦とか早く書きたくなります!
まぁ、合宿編すらまだ終わってないんですけどね…
取り敢えず第4話です!どうぞっ!


第4話 進化の時

 烏野 21ー25 音駒

 

 あの衝突からどうにもチーム全体が噛み合わず、結局ズルズルと試合が進み、負けてしまった。

 

「フライング1周ー!」

 

「「「あーい!!」」」

 

 

「潮崎、さっきの件でお前にも来て欲しいんだけど今いいか?」

 

 ペナルティが終わると、スガさんが日向と影山を連れて僕の所に来た。

 あの件って言うと、速攻で目を瞑るのを辞めるって話かな? 

 日向に進化する事を促したのは僕だ。物凄く、相談に乗ってあげたいんだけど……

 

「はぁ、はぁ。ちょっと、今キツいんで。先、行ってて貰ってもいいですか?」

 

「あぁ、悪い! 大丈夫か? 無理しなくて大丈夫だからな」

 

 やばい。1セット戦ってのペナルティは流石にキツい。嫌な汗流れて来た。

 呼吸するの普通にキツいし、膝に手やんないと、まともに立ってらんない。

 

「潮崎さん、だっ、大丈夫ですか!?」

 

「あっ、あぁ、谷地ちゃん。ありがとう」

 

 僕は谷地ちゃんに貰った水を流し込む。

 大丈夫。落ち着け。ゆっくり、少しずつ肩を使いならがら呼吸を安定させていく。

 

「ふぅ。何とか落ち着いてきた」

 

 重い体を何とか動かしながら、スガさん達が向かった、扉の方へ向かって行く。

 その途中。影山とすれ違った。

 あの様子を見るにダメだったかな? 

 

「……スガさん。どうなりまし「調子が良い時は、スローモーションに見えるんです」……た?」

 

 ドアに手をかけ、顔を覗かせると、日向がポツリと呟いた。

 

「青城と練習試合やった時も、最後の1点。大王様の、及川さんの顔が見えました。目が、見えました」

 

「3対3ではじめて速攻決めたときも、向こう側が見えました。てっぺんからの景色が見えました」

 

 へぇ。なるほどね。

 

 

「ねぇ、ひなt「あぁ、いた。次、始まりますよ!」……」

 

 日向に話しかけようとすると、後ろから大地さんがそう告げる。

 あれ、何か僕、さっきからめっちゃ話遮られてない? 

 

「あぁ。今行きます!」

 

 そう言い、日向とスガさんは体育館の中へ向かう。

 

「ほら、潮崎も行くぞ。肩貸すか?」

 

「すいません。ありがとうございます」

 

 僕も大地さんの肩を借りて次のセットへと向かった。

 

 

 

 

 

「成田! 次、日向と変われ」

 

「えっ、あぁ、はい!」

 

 烏養コーチはそう言うと、日向の方を向く。

 

「お前にも考えがあるだろうが、今日は一旦頭を冷やせ。

 今の状況じゃ、上手くいくとも思えんし、このまま続けて、またさっきみたいな接触で怪我されても困るしな」

 

「ッ! ……はい」

 

「潮崎! お前は、ベンチ座って少しでも体力回復しとけー!」

 

「はい」

 

 2セット連続は流石に厳しいので、タオルを頭をに被せ、谷地ちゃんの隣りに座る。

 

「ごめんね。こんなに汗臭いのが隣に座っちゃって」

 

「い、いえ。そんな事ないです!」

 

 うん。なんて、良い子何だろう。

 谷地ちゃん。マネージャーとして、この部活に入って来てくれてありがとう。これで来年の烏野は安泰だよ。

 

「あの、日向と影山くんがギクシャクし始めたのって、気のせいじゃないですよね……」

「うん。それに、あの衝突からチーム内がピリピリしてる」

 

 谷地ちゃんが清水さんにそう問いかける。

 

「……皆、何となく感じてた事を日向に突きつけられたんじゃないかなー」

 

「感じてた事、ですか?」

 

 僕の言葉に谷地ちゃんは首を傾げる。

 

「そう。今のままじゃ駄目だってやつ。皆それを分かってるけど、中々行動に移せて無かったみたいだから……」

 

「そんな中、1人だけいつも通りのプレーをしてたのは誰かしら?」

 

「ハハハ。さぁ? 誰でしょうね」

 

 正直、僕も焦ってないわけじゃない。今はただ、自分の実力だけで何とかしてるだけ。まだ、連携も何も出来ていない。

 チームから離れた数ヶ月で、烏野は新1年の加入も相まって、新たなチームとしての形を作り始めた。

 ほぼ輪郭が出来始めたチームに、短期間で新たな異物を溶け込ませるのは難しい。

 だから、進化し、新たな形を作ろうとしているこの期間に、僕は新生烏野に馴染まなくてはいけないのだ。

 

「まぁ、間違いなく言えるのは、さっきの試合は、ウチにとっての大きなターニングポイントになったでしょうね」

 

 

 

 

 

「4番きます! せーのっ!」

 

(あっ、これフェイントくるな)

 

 予想通り、木兎さんはフェイントでブロックを避けてくる。

 

「ナイスレシーブ!」

 

 僕が上げたボールはセッターの元へ向かい、影山のトスをそのまま田中が撃ち抜いた。

 

「しゃー!!」

 

「こら、田中! 服脱ぐな!」

 

 服を脱いで騒いでいる田中を大地さんが説教している。

 まぁ、それは何時もの事として……

 

「いゃあ、木兎さんのフェイント分かりやすいなぁ」

 

「なんだとぉ!!」

 

 煽り過ぎも良くないけど、熱くなりすぎた木兎さんって読みやすいからね。

 まぁ、木兎さんの攻略法の1つだよ。

 

「烏野に焦りが見え始めたと思ったんですけど……

 潮崎は大分冷静ですね」

 

「んぁ? あいつが焦ってる所なんて見た事ねーよ。おっしゃ、ドンマイドンマイ! 次1本とるぞ!」

 

「ドンマイドンマイって。木兎さんのフェイント読まれたのがきっかけですけど……」

 

「ウギッ! 赤葦、余計なこと言わなーい!」

 

 

 

 

 

 

 

 

「「「あざっしたー!!」」」

 

 

 

 体育館へ挨拶をし、東京遠征の全日程が終了した。

 結局、中々上手くいかず、負け越しだったけどね。

 

「はぁ。悔しいな……

 帰ったら、反省会だな」

 

 僕の中での恒例行事。1人反省会。

 あぁ、勿論、チームでの反省もしっかりするけどね。

 例え1セットのゲームだとしても負けは普通に悔しいしヘコむ。

 負けたのには、絶対理由がある。それを放っておく訳にはいかないし、負けるのが当たり前になる。僕は、その感覚が何よりも怖い。

 

 次は夏休み明けの、春高予選前最後の、1週間の長期合宿。

 この遠征で多くの課題を見つけた。

 次の合宿を通して、そのピースを1つ1つはめていく必要があるな。

 

「今更だけど、そっちも3年全員残ったんだな」

 

「おう。あのままじゃ終われねーし、期待の星も帰ってきたからな!」

 

 バン! と澤村さんに肩を捕まれる。

 えっ、何!? ビックリするんですけど! 

 

「潮崎束か。木兎に聞いたぞー。U19の代表候補だろ? 通りで上手いわけだわ。

 次はぜってー、ドシャット決めてやるから覚悟しとけよー!」

 

「黒尾さん。僕も絶対負けませんよ」

 

 この人、ミドルブロッカーの中でもトップクラスだし、ブロック凄い上手いからな。マジで、絶対負けたくない。

 

「で? そっちは、インターハイ予選、2日目に去年の優勝校と当たったんだっけか? 日向に聞いた」

 

「! 聖臣の所ですか……」

 

 佐久早聖臣。去年の全日本ユース強化合宿で一緒だったけど、化け物級に上手い。正直、高校バレーでは牛島さんと並んで頭1つ抜けてる。

 

「そう。お陰様でベスト8止まりだわ……」

 

「東京都のベスト8とか、普通にスゲーな」

 

「勝ち残んなきゃ意味ねーよ」

 

「……だな」

 

 

 

 

 

 

 

 

「皆さん、お疲れ様でしたー」

 

「「「したぁ!」」」

 

「明日は、体育館に点検作業が入る予定なので、部活はお休みです! 

 この所、休み無しでしたので、ゆっくり休んでください」

 

「「「はい!」」」

 

 

 うーん! 久しぶりの宮城! 数ヶ月ぶりの学校! 

 やっぱ良いね! 落ち着くわ! 

 早速、久々の我が家へ帰ろうとしていると、顔を真っ青にした谷地ちゃんがこちらに向かって走ってくる。

 

「潮崎さーん。死ぬぅ。日向と影山くんがぁ。死ぬぅ。死ぬぅ!」

 

「えっ? え? なっ、何? 怖い。怖いから、谷地ちゃん。一旦落ち着いて」

 

 

 

 

「てめぇ! 俺のトスが悪かったって言いてぇのか!」

 

「違う! 完璧だった! なのに止められた! 

 俺が! 今のままじゃ、上にはもう通用しないから!」

 

「うぉ、なにやってんのお前ら!」

 

 谷地ちゃんに連れられ、体育館に来てみると、影山と日向が取っ組み合いをしていた。

 

「いい加減にしなさい!」

 

 日向と影山の間に入り、一旦落ち着かせる。

 

「2人とも、一旦、頭冷やせ」

 

「「……すいません」」

 

「ねぇ、日向。日向は、調子が良い時は、スローモーションに見えるって言ったよね」

 

「えっ、あっ、はい」

 

「あと、相手の顔が、目が見えたって」

 

「青城戦のあの1回だけですけど……」

 

「烏養コーチやスガさんは、そんな気がしただけって言ってたけどね、僕にはその感覚分かるよ」

 

「えっ?」

 

「だって、僕、試合中はしょっちゅう、そんな感じだもん」

 

 まぁ、勿論、試合中ずっとではないけど。

 相手がスパイクうつ瞬間とか、逆にこっちがスパイクうつ瞬間。

 冷静になればなるほど、その瞬間は多く訪れる。

 

「だから、日向。僕が培ったことをフルに活かして、今の日向に足りないもの、経験、その多くを教えてあげるよ」

 

 確かに、影山が言う事は間違ってはいない。

 けど、このままでは勝てない事は、この2日を通して自分達が1番良く分かってるはずだ。

 小さな雛鳥が進化をしようとしてるんだ。そんなの、僕達先輩が支えるしかないでしょ。

 

「そんなわけだから影山! トスの練習しとけよー! 春高までに、日向をお前が言う、勝ちに必要な奴にしてみせるから」

 

 なーんて、言ったはいいものの。

 いきなり言われても処理おいつかないよね。

 

「取り敢えず2人はもう帰りな。明日1日休みだし、良く考えると良いよ」

 

 僕はそう言い、2人を帰らせる。

 帰り道で2人がまた喧嘩しないか心配だったけど、一旦落ち着いたみたいだし、谷地ちゃんもいるから多分大丈夫でしょ。

 

「さて、僕は今からこれを1人で片付けるのか……」

 

 目の前に広がる、ボールやネットをみて大きなため息を1つつく。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 ──おまけ──

 

「ただいまー!」

 

「あら、おかえりなさいレーヴォチカ。遠征どうだった?」

 

「ただいま、ねーちゃん。強い人いっぱいいて、すげー楽しかった! 

 あっ、あと、潮崎さんも居たよ。姉ちゃんの彼氏なんでしょ?」

 

「束くん!?」

 

「えっ? う、うん。そう」

 

 束の名前を出すと急にグイッと寄ってくる姉にリエーフは若干ひく。

 

「……るい」

 

「な、何? ねーちゃん」

 

 目の前でアリサがプルプル震えはじめ、何か呟いている。

 何を呟いているのかと、リエーフが聞き返すと、

 

「ずるい! レーヴォチカだけ、束くんに会ってズルいわ!」

 

 そう言うと、アリサはリエーフの肩をつかんで、前後にグラグラと揺らす。

 

「ちょ、ちょっと待って。落ち着いて、ねーちゃん

 えっ、何? 知らなかったの?」

 

「知らなかったわ! レーヴォチカが梟谷グループ? と合宿があるのは知ってたけど、そこに烏野が来るなんて、私聞いてないもん!」

 

「もんって。そもそも、俺もねーちゃんの彼氏が潮崎さんで、烏野にいるなんて、はじめて知ったし……」

 

 その後、リエーフは小一時間ほど、合宿での束の様子を、アリサに質問され続けた。

 そして、思うのであった。

 

(潮崎さん。ねーちゃんが弟大好きって言ってたけど、潮崎さんの事になると、それ以上じゃないですかー!!!)

 

 その後、クタクタになったリエーフがアリサの部屋から出てきた姿が目撃されたという。

 




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