うちの指揮官はコミュ力が高過ぎる。   作:創作魔文書鷹剣

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ワンコMOD II

 人形にもいくらかパターンがある。特に指揮官に対する態度は様々なパターンが確認されているが、中には突き抜けた愛情表現をする子もいる。

 

「なぁM4・・・お前、アレをどう思う?」

 

 M16が言うアレとは、基地の玄関でソワソワしているSOPMODの事である。いつもの彼女は元気いっぱいで暴れ回り、一箇所に留まるなんて出来やしない。そのはずだったのだが・・・

 

「待って・・・ますね。犬みたいに。」

 

「ああ・・・私もあんな姿は見た事がない。一体何が・・・」

 

 その印象はどこへやら、今の彼女は飼い主の帰りを待つ犬のように玄関に居座っている。同じ小隊の仲間さえ困惑するような異変に原因は、案外簡単だった。

 

「ただいまー。」

 

 病院での仕事を終えたナターシャが帰って来た。勿論その場に居合わせたM4とM16はお帰り(なさい)の一言を返すのだが・・・。お帰りなさいよりも早く、ただいまの「た」の時点で駆け出す強者がいた。

 

「指揮かーん!!」

 

 戦術人形としての性能をフルに発揮したSOPMODは全速力で駆け出し、玄関のドアが空いてナターシャが顔を出した瞬間に飛び込んだ。日大も真っ青な高速タックルで抱きついたのだ。

 

「よいしょっと・・・SOPちゃんお腹空いてる?一緒にご飯食べよ?」

 

 しかしナターシャも伊達に「ドクター・ロックハート」と呼ばれていないのだ。出会い頭に日○も真っ青な危険タックルされるのも慣れっこである。その勢いを巧みな足捌きで殺し、動きが止まった一瞬の隙を突いて抱き上げる。ワンコ系の人形はだいたい抱っこされると喜ぶ。でも中にはちょっと違う反応をする子も・・・

 

「・・・・・・///」シュダッ!

 

「ありゃりゃ、フラれちゃった。」

 

 抱き上げたのも束の間、ナターシャの腕に収まったSOPMODは急に赤くなって逃げ出した。恥ずかしかったかな?とか曰うナターシャだが、この手の反応をする場合は十中八九「アレ」である。確信があって勿体ぶるんだからタチが悪い。

 

「M4・・・今の反応は一体・・・」

 

「わかりません・・・SOPMODのあんな顔は一回も見た事が無くて・・・」

 

 隊員にも何もわからない程、この事態は想像を絶する案件なようだ。

 

《一方その頃・・・》

 

「ハァッ・・・ハァッ・・・ハァッ・・・」

 

 SOPMODは自分のベッドに転がり、荒ぶる息を整えた。戦場でだってこんなに息があがった事は無いのに、今の自分に何が起きているのかさっぱりわからない。

 

「うぅ・・・何で?何でこうなるの・・・?ただ指揮官が帰ってきて嬉しかっただけなのに・・・」

 

 ただ純粋に遊びたかった。ちょっと体当たりして、かまってもらおうと思った。でも、抱き上げられるのは予想外だった。指揮官の顔が目の前にあり、その腕に収まった途端逃げ出してしまった。

 

「嫌われちゃったかな・・・」

 

 いくら考えるのが苦手な彼女でも、他人に嫌われたかもしれない事ぐらいわかる。指揮官に嫌われた人形がどんな末路を辿るのか、それは全ての人形がわかっている。それ故に中には指揮官に媚を売ったりする者もいる。彼女はそれが苦手なばかりか、更に鉄血人形の亡骸で現代アートを作る趣味が災いして他人に拒絶される事も多々あった。

 

「やっと優しい指揮官に会えたのに・・・」

 

 自分を生み出したペルシカととある人形(・・・・・)の勧めで来たこの基地、想像の8倍以上優しい指揮官に喜び、やっと自分を受け入れてくれる指揮官に出会えて嬉しかった。でも、それは想像以上に彼女を悩ませた。

 

 結局、この日は散々悩んだだけで終わった。

 

《翌日・・・》

 

「うー・・・どうしよう・・・」

 

 今日はAR小隊全員で16labを訪れている。生まれ故郷とも言えるこの場所に来た理由は簡単で、ペルシカに会うためだ。機密情報の塊であるAR小隊の4人をメンテナンスできるのは彼女だけであり、そのためにR03地区の基地に配属されてからも度々此処に通っている。ただ、今日のメンテナンスは少し時間がかかった。周りが話してる間、SOPMODがずっと上の空だったからだ。

 

「SOPMOD、ちゃんと聞いてる?」

 

「・・・・・・・・・・」ボー

 

 AR-15に怒られかけても反応せず、ずっとナターシャのことばかり考えていた。今の自分じゃ面と向かって話せるわけがないから基地の外にいる現状はありがたいのだが、少し出かけた程度でこんなに会いたくなるなら側にいたかった。完全に混乱して思考もまとまらない。

 

「SOPMOD、大丈夫?どこか調子悪い?」

 

「ううん・・・」

 

 調子が悪いと言えば悪いのだが、それは体の不調ではなく心の不調だ。いくらペルシカが16labきっての天才であろうとも心の病・・・特に恋の病は「ドクター・ロックハート」の管轄であり、彼女は人形達の心を癒す最適な方法を知っている。少なくとも無意識にそれを実行してしまう程に。

 

「SOPMOD、お前昨日からそんなだろ。指揮官に抱っこされた時も逃げてたしな。」

 

 M16の言葉も途切れ途切れに聞こえる。

 

「大丈夫・・・だよ?」

 

「大丈夫じゃあないだろ。昨日指揮官に抱き抱えられて逃げた時からずっと落ち込みっぱなしだろ。」

 

「・・・M16、詳しく教えてくれる?」

 

「昨日さ、指揮官が出張から帰って来た時にSOPMODが体当たりして絡んでたんだよ。それで指揮官が体当たりをいなして抱えたら、それ以来この調子だ。」

 

 さて、これまでに判明している事柄を纏めよう。

 

 ・ナターシャに懐く

 

 ・出張からの帰宅を出待ち

 

 ・姿が見えた瞬間高速タックル

 

 ・抱き上げられた途端に逃げ出す

 

 ・それ以降落ち込みっぱなし

 

 ・・・勘のいい読者の皆様なら、察しがついた事だろう。

 

(ええ〜・・・コレってまさか・・・)

 

(アレ、なんですか・・・?)

 

(いや、でも・・・あのSOPMODに限ってそれは・・・)

 

(もしかしたらと思ってたが・・・まさか、その通りだったとは・・・)

 

 ペルシカも、M4も、AR-15も、M16も察してしまった。あのSOPMODに限ってそれは無いと思ったが、ここまで揃ってしまっては断言するしかない。

 

((((・・・・・・恋か・・・!))))

 

 最早それ以外に可能性は無いだろう。戦場では有名な人形解体趣味のSOPMODがこんなにしおらしくなる理由なんて他に考えられない・・・因みに誰も知らないが、あのナターシャ・E・ロックハートに恋をするというのは恐るべき茨の道なのである。なにせ日頃から他所の人形と遊び、夜は怪しげなクラブに入り浸っているとの噂が流れる程のロクデナシだ。一体何故グリフィンをクビにならないんだろう・・・

 

「あーっと・・・SOP?」

 

「ペルシカ・・・?」

 

「あの・・・頑張ってね。」

 

 こんな何にもならない応援しかできない自分が恨めしい。SOPMODは真剣に悩んでいるのに、いかんせん恋愛経験に乏しいペルシカではなんと言ってあげたらわからない・・・というか、この手の相談事はドクター・ロックハートが受け持つ話だろう。いくら正式には自分の部下じゃない(・・・・・・・・・・・・・)とはいえ、少しぐらい・・・いや、絶賛片思い中の相手に恋愛相談なんてSOPMODの身がもたない。

 

「とにかく・・・先ずは彼女と話せる状態にならなくちゃか。」

 

 果たしてSOPMODはナターシャに想いを伝えられるのか・・・

 

 続く!!

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