うちの指揮官はコミュ力が高過ぎる。   作:創作魔文書鷹剣

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存在しない部隊

 このR03地区は最前線から一歩引いた位置にあり、最前線のS09地区あたりを迂回した鉄血の部隊が確認される事が度々起こる。先日遭遇した「ラヴァー」はよくこの手の地区に現れては、多大なる迷惑をかけて去っていく傍迷惑な存在なのだ。そしてR03基地の指揮官であるナターシャにとって奴は不倶戴天の敵であり、なんとしても引っ捕らえてやりたいぐらい敵対意識を向けている。

 

「ラヴァーの出現、それと失踪か・・・」

 

「指揮官・・・あのハイエンドモデルがそんなに重要なんですか?」

 

「M4・・・私とあの性犯罪者(←ブーメラン)は色々とややこしい因縁があるの、それこそ親の代からね。」

 

 ナターシャとラヴァーにはそれはそれは長くて複雑な因縁があるのだが、あまりナターシャが話したがらない為に知っている者は限られている。Vectorあたりなら知ってるかも・・・教えてくれるかは別問題だが。

 

「まあ、また行方をくらましてるみたいだし・・・次に会った時仕留めればいいわけだから、お疲れ様。」

 

 お疲れ様と言われても聞きたい事が色々あるのだが、それを聞くような度胸がM4には無かった。追い出さすようにM4を退室させたナターシャは静かに溜息をついた。

 

「はぁ・・・、最低と最高がドライブデートしてる気分。」

 

 ラヴァーがもたらす被害はとうとう当人がいないところまで及び、ついには顔も合わせていないナターシャにさえ被害が出始めた。しかし現状は悲観するばかりでもない。ラヴァーとの接触直後、とある4名の人形がR03基地への所属移転を願い出たのだ。

 

「指揮かーん?この基地はお茶とか出ないの〜?」

 

 今まさに執務室のソファで茶を要求している彼女・・・「UMP45」と、彼女が所属する部隊である「404小隊」はラヴァーとの接触後にやって来た。時系列から考えて十中八九ラヴァー絡みなんだろうが・・・貴重なエリートの戦力であるため余計な詮索はしない事にする。

 

「お茶ならあるよ〜、はいどうぞ。」

 

 因みにUMP45が率いる部隊は表向きは存在せず、隊員もそれぞれ別の部隊に所属した後に行方不明扱いになっている事も把握している・・・なんでナターシャがこんなに詳しいのか、その点は考えてはいけない。

 

「うちは色んなところと繋がりあるからね、他の基地じゃこんなに上物なお茶は飲めないよ?」

 

「もちろんわかってるわよ・・・?このお茶がどこから貰ったものかもね。」

 

「おお怖い怖い・・・『耳』がいい女の子は恐ろしいねぇ。」

 

 一見するとただの呑気な会話に聞こえるかもしれないが、両者とも目が笑ってないせいで殺伐とした空気感が発生してしまっている。誰が入ってこようものなら失神するかもしれない・・・

 

「うちは人形の経歴は問わない主義だからね、来るものは拒まず去るものは追わないけど・・・」

 

「・・・『裏側』まで来たものは話が別って事でしょ?」

 

「そゆこと。多分だけど貴女『達』って、私の裏側まで見ちゃってるんでしょ?」

 

 ナターシャの問いに45は何も答えない。その沈黙が何を意味し、何を伝えようとしたものかはナターシャ次第である。

 

「うちにいる以上は何をしようと自由だよ。他所様からの依頼があればそっちに行ってもいいし、逆に私の依頼を優先したっていい・・・でも、せめて他の子とは仲良くする事。」

 

「・・・仲良く?」

 

「そ、仲良くできなきゃ一つ屋根の下で一緒に暮らしてる意味がないからね。」

 

 45は意味がわからなかった。この基地へは任務で来ているだけ、それが終わったらサヨナラの予定なのだ。それなのに、仲良く?彼女には不要な事だ。

 

「まあ、他の子とお喋りしてれば自然と打ち解けるよ。先ずは食堂でも行ってみれば?」

 

「・・・そうするわ。」

 

 程よく厄介払いされた気もするが、向こうが食堂に行かす気なら逆らう必要もない。この程度で腹を立てて騒ぎを起こすような問題児ではないのだ。

 

「・・・ああ言っただけで仲良くできるなら、私も苦労しないんだけどなー。」

 

ガッチャ「よう指揮官、私と「ジャックダニエルなら今は飲まないよ。仕事終わってからね。」ちぇっ・・・」

 

 入ってくるなり一緒に飲んだくれようとしたM16、大方M4と一緒に飲もうとしたんだろうが真面目な彼女はそれを拒否。そして独り飲みするのは寂しいからとお相手を探して今に至るといった具合だろう・・・

 

「お酒はいいけど、飲む時間と場所と量は気をつけてね。M4に嫌われるかもしれないから。」

 

「おいおい、私とM4は固い愛情で結ばれてるからな。嫌われるなんてそんな事は・・・」

 

「この前『姉さんがお酒飲んでばっかりでいつか倒れたりしないか心配』って言ってたよ、早めに手を打たなきゃ大惨事かもね。」

 

「・・・え?」

 

 思わず硬直してしまったM16だが、ナターシャにとってその話はとりわけ大事な事じゃない。むしろM16がここに来た理由・・・何を話す気だったのかが知りたいのだ。

 

「・・・それで?本当は飲み仲間を探しに来たわけじゃないんでしょ?」

 

「あー・・・そうそう、さっきここから出てきた人形の事なんだけどさ・・・」

 

「UMP45と、404小隊の事でしょ?わかってるよ、彼女達が存在しない筈の人形だってことは。」

 

「なんだ、知ってたのか・・・」

 

「それについて言及しようとしてるあたり、M16も詳しいんでしょ?彼女達について。」

 

 言いたい事を先に知られてしまっていたM16だが、せめてこれだけは自分の口から伝えようと話しだした。自分と404小隊の隊員である「HK416」の因縁を。

 

「アイツはいつもいつも私やM4にちょっかいかけてたしなぁ、今も同じ基地にいる以上接触は避けられないし・・・何とかM4だけでも助けてやりたいな。姉として。」

 

 しかし向こうがM4シリーズ全般を目の敵にしている以上、M16がどう足掻いたところで現状は何も変わらない。むしろ向こうがあーだこーだ言い出す好奇を作り出しかねない現実に彼女は顔を顰めた。だが、幸いにもここはR03基地である。

 

「フッフッフッ・・・そのお悩み、お姉さんに任せなさい。」

 

「・・・?」

 

「名乗りたくて名乗ったわけじゃないけどんだけど、私って『ドクター・ロックハート』って呼ばれてるんだよね。」




 というわけで・・・次回は416回です。
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