うちの指揮官はコミュ力が高過ぎる。   作:創作魔文書鷹剣

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完璧・・・?

 ナターシャ・E・ロックハート、彼女は戦術指揮官としての業務を全うする傍で、もう一つの仕事を兼任している。(薮)メンタルカウンセラー、ドクター・ロックハートとしての仕事である。

 

「情報が確かなら、今日もここにいる筈なんだけど〜・・・っと、いたいた。」

 

 彼女は今日も指揮官としての仕事をチャチャっと終わらせ、自身のライフワークと化している戦術人形達へのちょっかい・・・もといお節介焼きの時間に入った。先日M16A1との会話で話題に上がった「問題児」を探しに基地内を散歩してみたところ、宿舎でタイミングよく目当ての人形を発見した。

 

「こ〜んに〜ちわ〜♪」

 

「・・・何よ。」

 

 お目当ての問題児「HK416」。M4シリーズを目の敵にし、事あるごとに自分は完璧だなんだと口にし、酒を飲ませれば誰にも止められない暴れ馬と化す。そんな問題児が目の前にいる彼女である。

 

「HK416ちゃん?ちょっとお話いいかな?」

 

「・・・気安く呼ばないで。」

 

「そんな事言わずにさ、ホラおいで。」

 

 ナターシャはこうなったら梃子でも動かないのである。それを知ってか知らずか416は観念して話につきあってやる事にした。

 

「何よ、話って。」

 

「いや〜ちょっとだけ、ちょっとだけなんだけどさ〜。小耳に挟んじゃったんだよね。貴女が喧嘩一歩手前な事してるって。」

 

「・・・喧嘩じゃない、あれは向こうが仕掛けてきた。」

 

 彼女が言うには「自分はM16が酒を浴びるように飲んでいたのを目撃し、向こうが煽ってきたからノっただけ。自分が暴れたのは酒を飲ませた向こうのせい」らしい。

 

(どっちもどっちだな〜、本当なら。)

 

 思わずそう言いかけてしまったナターシャ、そもそも煽られたからってノルな。酒の勢いで暴れるぐらいなら自制しろ。煽った(?)M16も悪いっちゃ悪い。いくら相手が酒癖悪いからって、やたらに煽ったら喧嘩になるってわかれ。

 

「まあ・・・とりあえずM16にも後でお説教だけど。416ちゃん、悪いのは貴女もだよ。」

 

「・・・」

 

 露骨に機嫌が悪くなった。当然と言えば当然なのだが、プライドが天より高い416は自分の非を中々認めない。だから周りとの衝突は絶えず、事あるごとに周囲の反感を買ってしまうのだ。

 

「そんなに気に食わないなら相手しなきゃいいのに・・・、何でそんなに喧嘩しちゃうの?」

 

「・・・」

 

(だんまりか・・・さては、この子探られたくない腹があるな?)

 

 大当たりである。この416、いつも秘密裏に動いているせいでこれまでの作戦行動が全て探られたくない腹なのである。普通のコミュ障とかならナターシャの専門分野なのだが、ここまで範囲が大きくなると一個人が手を出せるモノじゃない。相談室の話だけ仄めかして終わるのが1番だ。

 

(普通のコミュ障や問題児ならまだ何とかなるんだよね・・・この手の子とはよく出会うし。)

 

「・・・何?」

 

「いや別に?どんなお話しようかな〜って考えてたとこ。」

 

 ドクター・ロックハートと呼ばれたその手腕を振るい、416の「中」へと一歩ずつ進んでいく。彼女が何を考え、何を記憶し、何を内に秘めるのか。その心を包み込む「HK416」という仮面を外した時に何が残るのか・・・

 

「喧嘩したいなら喧嘩すれば良いし、したくないなら喧嘩しなければ良い。でも、これだけは覚えておいて。『他の子と仲良くして、その日その時を楽しく生きれればいい・・・刹那の時間を最大に。』って。」

 

「・・・指揮官?」

 

「貴女が誰か1人だけ、一緒にいる時間を楽しめる相手がいればいいの。」

 

「1人・・・」

 

 そう言われても、自分にとっての「楽しめる相手」とは誰かがわからない。小隊の仲間は所詮偶々一緒にいただけだし、更には厄介な「置物」までいる始末・・・

 

「別に今すぐに見つける必要はないよ?ウチにいる間に見つけてくれればそれで良いし・・・何よりも、無理して見つけたんじゃ意味がないからね。」

 

 自分が今この瞬間を楽しめる相手を見つける・・・口で言うのは簡単だが、それを実行するのは難しい。特に416にとっては難題の極みであり、まともに他人とコミュニケーションを取らない彼女がその相手を見つけるなど無理がある。一応ナターシャだって応援はしてくれるだろうが、彼女は重度の変態性を有しているためいつ爆発するかわからない恐怖があるのだ・・・もうやだこの基地。

 

「用が済んだなら帰って・・・」

 

「はいはい、ナターシャは忙しいからすぐに帰りますよっと。お悩み相談が忙しいし。」

 

 風のようにナターシャは去っていき、後には呆気にとられる416だけが残された。

 

(・・・指揮官。)

 

 本当はもう少しぐらい話していても良かったし、なんならお悩み相談室とやらに通うのも良いかもしれない。だが指揮官に悩みを相談するのは外聞がちょっと・・・いや、かなり気になる416にはハードルが高すぎた。

 

( 余計なお世話なのに・・・)

 

《その夜・・・》

 

 ナターシャの執務室は静かだった。自分で入れたコーヒーを飲みながら残った作業に手をつけては、416が相談にこないかチラチラ確認しているせいで仕事が全然進んでいない。

 

(流石にまだ来ないかな・・・)

 

 その時、扉の外に誰かがいる気配を感じた。よーく目を凝らして見てみると見覚えのあるベレー帽風の帽子がチラチラ・・・完全に416である。彼女は暫く部屋の前をウロウロした後に、そそくさと立ち去って行ってしまった。

 

「ふふっ・・・」

 

 どうやら、なんとかなりそうだ。ナターシャは安堵した。




 後は9とG11か・・・
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