うちの指揮官はコミュ力が高過ぎる。   作:創作魔文書鷹剣

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強襲

 鉄血の前線基地周辺に忍び寄っていたM4達。ナターシャから来るはずの合図をずっと待っているが、未だに合図は無い。

 

「指揮官から通信は無い、まだ攻撃のタイミングは来ない・・・M4、貴女も作戦の全容は聞いてないの?」

 

「はい・・・指揮官は『その時が来たら、合図が来るより前に出番だってわかるはずだけどね。』って言ってて・・・」

 

「何が起きるかもわからないのに、警戒と備えはしろってか。指揮官もここまで盗聴を警戒してんのか・・・ん?」

 

「どうしたのM16?」

 

「いや、今何か・・・」

 

 基地の上に誰かが居たような・・・見間違いかと思ったM16だが、直後にそれが見間違いではなかった事を知る。

 

「・・・ッ!!」

 

 特大の轟音と共に、先程人影を見つけた辺りが爆散したのだ。間違いなく、先程見かけた人影が仕組んだはずだとM16は確信した。しかもこのタイミングでナターシャからの合図が来た。

 

『総員ッ!突撃開始!!』

 

 爆発による混乱は鉄血の強みである「徹底した統率」に綻びを生み出した。ただでさえ夜間は統制に支障をきたし易いというのに、鉄血の通信は混乱して各部隊が緊密な連携をとれずR03基地の戦力を前に蹂躙されていった。

 加えて前線基地の防衛機能が停止しているのも大きかった。今や基地はただの箱にしかならず、鉄血は「前進すればグリフィンと交戦して壊滅、その場に留まれば支援も無く蹂躙されて壊滅、後退すれば機能停止した基地でジリ貧」という最低な三重奏を聞かされる羽目になる。指揮権を握っている奴が不憫で仕方がない。

 

「SOP!もう味方以外は全員敵だ!片っ端からぶっ倒せ!!」

 

「わーい!!」

 

 夜の闇は奇襲を仕掛けるのに好都合、しかもグリフィン側は事前に夜戦装備を備えているおかげで視界を奪われる事なく大暴れしている。ナターシャが夜までもつれ込むかもしれないからって昼間にも夜戦装備を持たせたがるおかげで全部隊に充分な数の装備があり、グリフィンは最初の爆発から一時間足らずで基地周辺を完全に制圧しつつあった。

 

「正面入り口の制圧、完了しました!」

 

「スプリングも気合入ってるね〜、アタシも頑張らなきゃ〜!」

 

 正面入り口を制圧したグリフィン。既に野外にいる鉄血は3分の2が駆逐され、残るは基地内に逃れている残党を狩り尽くすのみとなった。

 

「ナターシャ、正面入り口の制圧完了。中に入る方法は?」

 

『もちろん準備完了、M686、正面入り口を開けて。』

 

 ナターシャが小声でボソボソ喋ったかと思ったら基地の正面入り口が開いた。基地のシステムを乗っ取っている仲間がいるらしい。

 

「どこまで手を回したの?ナターシャ。」

 

『ちょっと昔の知り合いを読んだだけだって。』

 

 重工な扉が開ききるのを待たず、突入を敢行する一同。しかしその行動は数発の銃弾に遮られた。

 

「グリフィンに・・・R03地区の指揮官。まさかこうも簡単に追い込まれるとはな。」

 

 追い込まれた黒い狩人、ハンターの登場である。本来なら彼女の方が追い込む側だが今夜は逆になった。だがこの程度でパフォーマンスが落ちるようなハンターじゃない。

 

「だが簡単にやられはしない・・・来い。」

 

《基地内部、地下室》

 

 外が大騒ぎになっている頃、地下道を進む4つの影があった。

 

「ほら、いちいち寝ようとしないで歩きなさい。」

 

「いたいよぉ、ほっぺ引っ張らないでぇ・・・」

 

「45姉、ホントに探してる物ってこの先にあるの?」

 

「あら、疑ってるの9?」

 

 存在しない部隊こと、404小隊であった。

 

「この基地に目当てのハイエンドモデルがいたのは事実、でも今姿が無いなら記録を漁るしかないわ。」

 

 この基地のどこかにある筈の通信記録、爆発した一角に無ければ地下室あたりが怪しいとアタリをつけてみたらこのとおり。如何にも何かありそうな雰囲気を漂わせる地下通路が存在した。しかもこの通路は45が事前に入手した基地の図面上には存在しない通路であり、何か大事な物を隠すにはうってつけの場所だった。

 

「そこまでです。」

 

 感情という物を一切合切排除したような冷淡な声が通路に響く。404小隊の行手を遮るように現れたのは鉄血のハイエンドモデル、スケアクロウだった。

 

「残念ね、たった1人で私達と戦うなんて。」

 

「いえ、残念などではありません。」

 

 スケアクロウは顔色一つ変えず、404小隊と対峙する。全ては自分の任務を果たすために。

 

(元々、此方の勝ちですから。)

 

 既に決着は付いたも同然の一戦が始まった。

 

《一方その頃、正面入り口では・・・》

 

 正面入り口の戦いは激しさを増すばかり。ハンターは付近にいるグリフィンの人形達を1人ずつハントし、少しずつ戦況は変わりつつあった。

 

「グリフィンの人形もこんなものか、もう少し狩りがいがあると思ったんだがな・・・」

 

 夜の闇はハンターも望むところ。例えサーチライトが軒並み破壊されて視界が悪かろうとも、その脳髄(AI)に刻まれた戦闘技術が敵の位置を教えてくれる。地形から敵の位置を推測し、2丁の拳銃から放たれる凶弾が戦局を覆しつつあった。しかしナターシャも無駄に戦力を擦り減らしているわけではない。

 

『スプリング、WA2000。準備はいい?』

 

「勿論です。」

 

「私に仕留められないわけないでしょ!」

 

 2人のスナイパーがハンターを狙う。慎重に照準を合わせ、獲物が動きを止める一瞬の隙を待つ。チャンスは僅か、ハンターが攻撃のために動きを止める一瞬。

 

「「今っ!!」」

 

 全く同じタイミングで発射された銃弾、正確に狙い済まされた狙撃だった。

 

「・・・ッ!!」

 

「ハンター・・・気づいてなかったって言わせねぇぞ・・・」

 

「処刑人、今の狙撃で私が倒れると思ったか?」

 

 このタイミングで現れた援軍、大剣の一振りで銃弾を弾く剛力の持ち主は鉄血にも1人しかいない。

 

「指揮官様!もう1人ハイエンドモデルが!」

 

『OKスプリング・・・手は打ってあるよ。』

 

 ナターシャの打った一手は彼女に打てる最強の一手だった。ちょっとした応援を呼ぶだけなのだが、その応援は恐ろしく強力で頼りになる存在だ。

 

『追加労働、報酬なら用意するから頑張ってね皆。』




 この襲撃作戦も次回で最後、第一章終了間近です。
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