夜の闇と静寂を引き裂く銃声と爆発、鉄血のハイエンドモデル2体が大暴れしていた。「ハンター」と「エグゼキューショナー」、たった2人のハイエンドによって戦局は混乱を極めていた。元より馬力というか性能が段違いなハイエンドはグリフィンにとって厄介な存在であり、こうやって大暴れしている現状は最悪にも程がある。
「ナターシャ、こっちは既に半分が撤退中。これでどうやってアレを倒す気?」
『大丈夫、すぐに応援が来るから・・・って、もう来たか。早いな~』
木陰から姿を現す四つの影、ナターシャの言っていた応援が到着した。
「ロックハート指揮官のとこの・・・Vectorだよね?ちょっと力貸すよ?」
「ナターシャの言ってた応援?何処の隊?」
「よくぞ聞いてくれました!アタシらは「ちょっとちょっと、そんな呑気な事してる場合じゃないって!」「いや、名前ぐらいちゃんと「後でいい」「い、いやだから「隊長さんの言う事聞きなさい。」「わーったよ!ゴメンね緊急事態だから色々後回し!さっさとアイツら仕留めて戻るから!!」
応援に来た連中はわっちゃわっちゃと騒ぐだけ騒いで風の様に去っていった。一人とり残されたVectorはとりあえず彼女らの後の追った。
「ナターシャ、今のが・・・応援なんだよね?なんだか頼りにならなそうだけど?」
『いやいや大丈夫だって、実力ならVectorやAR小隊とどっこいどっこいだし。』
不安しかないが、長らく一緒にやってきた相方がそう言うならとVectorは1人納得した。
一方その事前線基地の地下通路にて、404小隊はスケアクロウを完全に追い詰めていた。通常グリフィンの戦術人形はスペック的にハイエンドに勝てないものだが、404は少々特殊な存在故にその「通常」を見事にひっくり返す。
「・・・諦めなさい、もう戦う力は残っていないんでしょう?」
「諦める必要などない、もう既に勝利しているから・・・」
416の問いに答えるスケアクロウを尻目に45が端末を弄り倒す。だがほとんどの情報が既に削除されており、僅かに残された断片的な情報を回収するだけとなった。
「45姉、それが欲しかったの?」
「そうよ、ただ求めてた物そのままじゃなかったけど。」
45が握りしめるデータディスク、その中には本来なら鉄血の通信記録が刻まれているはずだった。
「データがほとんど削除されてたわ。誰かが意図的に削除したのなら・・・そこにいる奴か、そのバックにいる奴ね。」
そして地上では2体のハイエンドを葬るべく一同が奮戦していた。
「AW50!援護して!!」
「りょーかい!時間外労働だけど・・・どうだ!!」
放たれた弾丸は真っ直ぐに飛び、エクゼキューショナーの右脚に鮮血を滴らせる。一瞬だけ動きが止まり再び動き出すまでの僅かな時間に、1人の人形がその銃口を向けた。
「チェックメイトです、大人しくしてればこれ以上痛い目には遭いません。」
「へっ・・・そんな小せえ銃で止まるかよ・・・ッ!?」
エグゼキューショナーが抵抗しようとした瞬間、1発の銃声が響き、エグゼキューショナーは倒れた。
「隊長さん、生け捕りにするって『あの人』は言ってましたが?」
「生け捕りが『望ましい』というだけ。」
「じゃあ仕方ないですね、報告はそう言う事で。」
上への報告を考えている2人に襲いかかる影、相方を討ち取られたハンターが敵討ちに燃える。しかし2人も無策で突っ立ってたわけではない。
「・・・時間外労働。隊長、追加の給与は何処に申請したらいい?」
「鉄血にでいいんじゃない?お金無さそうだけど。」
ハンターの挙動を捉えた弾丸が1発、彼女の脳天を貫いた。
「でもコイツら多分捨て駒だよ?じゃなきゃこんな簡単に終わらないもの。」
「鉄血お得意の試験運用と学習かあ・・・時間外労働が増えそう。」
若干一名がぼやく中、ハイエンドモデルが討伐された事により他の戦域でもグリフィン側が勝利を重ね、前線基地は制圧されつつあった。中はほとんどガラ空きだし。
「片付いたみたいだね。」
Vectorが合流した。
「・・・指揮官に連絡は?」
「もうした。今基地内の制圧に移行してる。」
「じゃいいや、それじゃまた近いうちに。じゃあね〜」
ハイエンド2体をあっさり蹴散らした謎の応援は風のように去り、すぐに姿は見えなくなる。
「ナターシャ、基地の制圧は?」
『今終わったところ、割とあっさり片付いてくれたみたい。後は最低限の部隊を基地に残したら、今日は撤収でいいよ。みんなに伝えておくからね〜♪』
一夜のうちに起きた大騒動、鉄血の前線基地を襲撃する作戦はグリフィン側の完全勝利に終わった。だが彼女達はまだ知らない。この裏で暗躍する存在がいる事を・・・
次回で第一戦役は終了という事で。五部構成の予定なので役20%完了。