うちの指揮官はコミュ力が高過ぎる。   作:創作魔文書鷹剣

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 彼女は、コミュ力が高かった。否、高過ぎた。


第一戦役 愛情
コミュ力は大事


 20??年・・・戦争と災害により世界は荒廃し、進化した技術力は人間に酷似したロボット「人形」を作り出した。やがて軍事力は戦闘力を有する人形や無人機によって賄われ、民間軍事企業は民生用の人形を改造した「戦術人形」を利用してその基盤を固める。これは、民間軍事企業最大手の「グリフィン&クルーガー社」に勤める1人の指揮官が、部下の戦術人形達を類稀なるコミュ力で支えるお話である・・・

 

《R03地区、グリフィン基地》

 

 今日も基地内は忙しい。この基地にいる戦術人形は人類に反旗を翻した「鉄血工造」の人形と戦うのが主な仕事だが、それ以外にも担当地区内の警備や自主的な訓練などに追われて時間が足らないのである。特に指揮官は忙しく、戦闘中の部隊の指揮を執ったり、次々と回される書類に目を通してサインし、部下の人形達との交流も欠かさない。特にこの基地は新設された直後であり戦術人形の数が少ないのも忙しい理由の一つだ。この状態で満足に職務を遂行できる指揮官は大したものだ。

 

「・・・書類あと何枚?」

 

「23枚」

 

「OK、パパッと終わらせるよ。」

 

 自分の執務室で書類の処理に追われてるのがこの基地の指揮官「ナターシャ・E・ロックハート」で、その隣で書類仕事に付き合っているのが副官の「Vector」である。立場上は上司と部下という関係だが、この2人は長年連れ添った親友のような関係だったりする。

 

「終わり!とりあえず休憩だね。」

 

「・・・いつみてもホント早い。」

 

「ふふっ、ありがと。」

 

 ナターシャが軽く笑うと、Vectorもつられて少しだけ口元が緩む。これが彼女が自然にできる笑顔の限界なんだとナターシャは知っているため、別に嫌な気持ちになったりはしない。

 

「じゃ、散歩がてらみんなのところに顔だそっか。」

 

「あたしはパス・・・」

 

 1人で執務室を出て、基地内を散歩しに行くナターシャ。Vectorが周囲と触れ合うのに乗り気じゃないのはわかっているし、彼女も1人で休む時間が欲しいだろうと思っていたからちょうどいい。ついでに最近配属された人形とも交流しておきたいし。彼女のコミュ力にかかれば1人五分もあれば時間は十分。そんな時に都合良く誰かがやってきた。

 

「ふっふ〜ん!しきか〜ん?こんな所でのんびりしてていいのかな〜?」

 

「大丈夫だよ『スコーピオン』、もう書類仕事終わったし。」

 

「は、はやッ!?」

 

 ナターシャに絡んできたのは戦術人形の1人「スコーピオン」である。・・・(スコーピオン)といっても毒の尻尾は無いが。明るくお気楽でトラブルを呼び込む体質だが本人は気にせず、周りを振り回しっぱなしである。本人に悪気は無いが。

 

「指揮官さま〜、一緒にチョコ食べますか?」

 

 更にもう1人やって来た。チョコレートを持って走り回る「FNC」はいつも甘味を求めて右往左往し、内緒のおやつ倉庫がたくさんあるらしい。

 

「3人で一緒に食べようね、みんなで食べると美味しいよ。」

 

「やった〜!ほらほら1個ちょうだいよ〜!」

 

「うぅ〜、なけなしの・・・チョコレートバーです!」

 

 ちょっと出し渋ったが、ナターシャと食べたい気持ちが勝り懐から3本のチョコレートバーを引っ張りだした。基地の一角で3人一緒にチョコレートバーを頬張る。たったそれだけの事が楽しくてしょうがない。

 

「仕事中に休めるっていいね〜。」

 

「特に今は忙しいからね、ちゃんと休まなきゃダメよ。」

 

「指揮官さまと食べるおやつ美味しいです!」

 

「ちょっと!あたしのこと忘れないでよ〜!」

 

 この時代にこんなに平和な時間は少なく、それ故にナターシャはこの時間を大切にする。その精神は執務室に堂々と掲げられており、「刹那の時間を最大に」と書かれている。常に周囲とのコミュニケーションを欠かさず、上司と部下という関係を超越した友達になりたいと願う彼女の座右の銘である。

 

「いつまで見てるのかな?出ておいでカリンちゃん。」

 

「指揮官さま・・・い、いえ!別に覗き見していたわけでは!」

 

 廊下の角からひょっこり顔を出したのはこの基地の後方幕僚を担当する「カリーナ」である。まだナターシャとは出会って数日しか経っていないが、両者はすっかり仲良くなり「カリン」という愛称で呼ばれている。カリーナはナターシャのことを「指揮官さま」と呼ぶがこれは彼女がナターシャの部下にあたるからであり、まだ愛称などで呼ぶほどの関係じゃないと思っているからでもある。

 

「よろしければ皆さまもご一緒に、チョコレートバーをお買い上げいただけませんか?」

 

「うん!ほら、買いにいこ?」

 

 スコーピオンもFNCも喜んでついて行き、カリーナの経営するお店でチョコレートバーを買い足す。この何でもない時間も4人はお喋りを絶やさず、ナターシャも部屋に戻るまで笑顔のままだった。

 

「はい、1本あげる。」

 

「・・・ありがと」

 

 因みに普段クールでアンニュイなVectorがこうやって人に感謝するのは稀であり、2人がどれだけ一緒にいるかが伺える。貰ったチョコレートバーを頬張るVectorを眺めながら、椅子に腰掛けてゆっくりと一息つく。

 

 これから彼女は様々なハプニングや問題児に立ち向かい、基地の仲間達と固い絆で結ばれていくわけだが・・・彼女の行く末やいかに?




 先ずは序盤お役立ち組とカリーナ+Vector(リアル副官)だけ、これから増えてく予定。
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