うちの指揮官はコミュ力が高過ぎる。   作:創作魔文書鷹剣

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 気がついたら6月が終わりそう。


リベンジ・ドール

 今日はとてもいい日だ。鉄血の部隊も現れず、朝から陽の光が暖かく降り注いでいる。そよ風が頬を撫で、遥か彼方から小鳥の囀りが聴こえてくる。きっと今日は穏やかな一日になるだろうと、誰もが思っていた・・・ナターシャ以外。

 

ピンポーン!

 

「・・・?はーい!」

 

 呼び鈴の音を聞いてカリーナが対応に出た。それが惨劇の始まりだった。

 

「えーっと・・・どちら様で『せんせぇーッ!!』ギャーッ!?」

 

 ドアを開けた瞬間4つの影が猛突進を繰り出し、カリーナの体を遥か彼方にブチ飛ばした。その衝撃に耐えられなかった彼女は意識を手放して失神し、この事態の下手人達は構わずに爆進し続けた。そしてナターシャがいる執務室に辿り着き、その扉を蹴破って突撃した。

 

「「「「せんせーッ!!」」」」

 

 その姿を確認した瞬間ナターシャは音速を凌駕するスピードで動き出した。目にも止まらぬ速さで4人を順番に受け止め、自分が座っている椅子の近くに配置した。

 

「はいはい、久しぶりだね〜皆。もう2年ぶりぐらいかな?直接会うのは。」

 

 まるで何事も無かったかのように振る舞い、4人の訪問者をナデナデして対応する。

 

「ちょっとナターシャ、何この騒ぎって・・・あっ。」

 

 Vectorの視界に飛び込んで来たのはかつての前線基地襲撃作戦で出会した4人、鉄血のハイエンドモデル2体を1個小隊で撃破した増援部隊である。

 

「Vectorには先に紹介しちゃおうかな〜?この子達は「Revenger小隊」、私もお気に入りの教え子ってところかな?」

 

「よろしくお願いしますね。」

 

「・・・先生の副官は譲らないから。」

 

「ところで前回の労働時間超過に対する特別給与がまだ貰えてないんだけど。先生、早く給与を。」

 

「AR小隊がいると聞いてすっ飛んで来たんだ!早く感動の再会と行こうか!」

 

「・・・1人ずつ喋って。じゃないと聴覚モジュールが壊れる。」

 

 いい意味で騒がし過ぎる。因みに誰も飲酒はしてないし草をキメているわけでもない。だが4人共大好きな先生ことナターシャと再会できた事からメンタルモデルがオーバーヒートし、この大騒ぎっぷりである。嬉しいのはわかるが、ここまでハメを外されるとナターシャも困る。ていうか騒がし過ぎて今まさに騒音公害レベルの被害が出てるんだが。

 

「久しぶりに会えて喜んでくれるのは嬉しいんだけどね、こんなに騒ぐと皆に迷惑だから。あとAR小隊には今夜にでも会えるから!給与も後!」

 

 ワイワイガヤガヤと騒ぐRevenger小隊に逐一対処するナターシャを見て、自分の相方は底無しの浮気性だと改めて自覚したVector。なにしろ彼女の預かり知らぬところで教え子を4人も育てていたぐらいだし、後何人の愛人がいる事か・・・

 

(・・・なんでこんな事考えてるんだろ。)

 

 自分はナターシャの副官、故に彼女の浮気性をいくらか矯正して少しは真っ当な人間にしたいだけ。決して嫉妬しているわけではない。

 

「さぁて・・・皆が私のところに戻って来たわけだし、今夜はパーティーだ!スプリングフィールドとカリンに色々発注するぞー!」

 

「あ、カリーナさっき倒れてたよ。」

 

「うそーん。」

 

 

 

 その夜・・・

 

 パーティーは極めて素晴らしい時間だった。新顔の参入とその他諸々祝えていなかった祝い事を纏めて祝い倒し、復活したカリーナが仕入れた酒とスプリングフィールドが作った料理で一同身も心も満たされていた・・・10分前までは。

 

「なんでこうなったんだろうね。」

 

「416は、禁酒・・・」

 

「素敵だと思わないVector?昔教えてた子が一人前の特殊部隊になって戻ってくる事って。ちょっと気にかけてた子が酒を飲んだ途端に服を引き裂いて踊り出した事も含めてね。」

 

「そのセリフ・・・絶対、ナターシャが最初に・・・」

 

 Revenger小隊の歓迎会が主目的のはずが、酒気を帯びた途端若干一名が暴走を起こしてしまい滅茶苦茶になってしまった。会場は激闘の果てに倒れ伏す輩や飲み直した輩で秩序の概念が崩壊し、現にVectorも意識が飛びそうである。

 

「素敵といえばあの子・・・AR-10とAR小隊が再会できたの、すっごく素敵だと思わない?まさに刹那の時間を最大にってね。」

 

「ナターシャ、それ・・・文章繋がって・・・」

 

 2人がそんな事を言っている頃、件のAR-10はAR小隊と飲み交わして・・・否、飲んでるのはAR-10だけでAR小隊側は酒も喉を通らない状態である。

 

「いや〜ホントにもう一回会える日が来ると思ってなかったさ、なにしろ先生が言うには存在すら非公開情報な特殊部隊やってるって聞いてたし。」

 

「「「「・・・・・・・・・・。」」」」

 

「つれないなぁ〜、折角こうして一緒に飲める時間がとれたのにさ。」

 

「あの、AR-10・・・」

 

 テンションの差に押されながらもM16A1が口を開いた。

 

「ん〜?なんて呼べって言ったっけ?」

 

「AR-10・・・・・・・・・・

 

 

 

 

 

 ・・・・・・・・・・先輩。」

 

「よーしよーし、よく言えました。」

 

 AR小隊にとってAR-10は教官的存在・・・本人の言を借りるなら「先輩」にあたる立場なのである。前線でギリギリ合法な仕事をする傍らに後方で後身の育成に励み、数々の「後輩」を育成してきた中にAR小隊も含まれているのである。

 

「あの頃は4人共未熟で育て甲斐があったよね。今じゃ皆立派になったけど、それでも可愛い愛弟子である事に変わりはないんだから、これからも一緒にツルもうか!」

 

(姉さん、この感じは・・・

 

(ああ、言いたい事はわかるぞM4・・・)

 

( ( 指揮官と同じだ・・・ ) )

 

 AR-10の性格は、びっくりするぐらいナターシャに酷似していた。こっちに話しかけているようで会話が自己完結しがちな話し方といい、教え子の成長を我が身の如く喜ぶ姿勢といい、あまりにも似過ぎている。生き別れの妹とか言われてもしっくりくるぐらいである。

 

「あの頃の話だけで夜が明けるまで話せる自信あるよ、やってみる?」

 

「「「「 ノーサンキューで。 」」」」

 

「つれないなぁ。」

 

 彼女達が分かり合える日は遠いのかもしれない。




 まさか6月中に1話しか書けないとは思わなかった。
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