うちの指揮官はコミュ力が高過ぎる。   作:創作魔文書鷹剣

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前回の反省を踏まえ、今回もAR小隊回。


レッツ、お悩み相談[M4の場合]

 ナターシャ・E・ロックハートという人は大変な変わり者である。人形達のことが大好きで彼女達を蔑ろにする奴らが大嫌いであり、特に人類人権団体の連中は心底嫌いで中指を突き立てながらロケランを撃ち込むぐらいに嫌いである。そんな彼女がR03地区で新たに始めたのが「人形向けのお悩み相談室」である。今回はその相談室に来た最初のお客様の話を少し・・・

 

「指揮官さま・・・AR-15が怖いんです。」

 

「怖いって、具体的にはどんな感じで?」

 

 ナターシャが指揮官としての業務とは別に始めた「お悩み相談室」、人形達のメンタルケアを目的として始めたこの活動の最初の相手はM4A1だった。話を聞くに同じ部屋で暮らしているAR-15との間に何かあったみたいだが・・・

 

「ホラ・・・一言で怖いって言ってもカツアゲするヤンキーみたいな物理的な恐怖と、この人ヤバい奴かもって感じの精神的な恐怖の2つがあるじゃん。」

 

「え、えっと・・・精神的な方です。AR-15はいつも私に対して辛口なんですけど、急に甘やかしてくれたり・・・何よりも怖いのが、寝る時なんです。」

 

「寝る時が怖いってどういう事?」

 

「・・・裸なんです。」

 

「あぁ〜・・・」

 

 どうやらAR-15は全裸で寝るタイプの人のようだ。この基地に来て一緒のベッドで寝るようになってから知ったらしく、そのような習慣が無いM4からしたら変人にしか見えないだろう。それ以外にも色々とおかしく思っているようで、M4の精神を擦り減らしている模様。

 

「寝てる時も抱いてきたりして・・・い、嫌じゃないんですけどちょっと怖くて・・・」

 

「あーっと・・・まぁ、偶に裸で寝る人いるけど。(寝てる時に無意識に好きな相手を愛でちゃうとかあるのかな・・・?)多分AR-15の『嫌い』は『好き』って意味だろうから、ホントはただ好いてくれてるだけって思った方が良いよ。」

 

「嫌いが好き・・・?そんな事あるんですか?」

 

「ツンデレってヤツだよ。」

 

 因みにM4はツンデレの意味をよくわかっておらず、ナターシャの言葉を聞いても疑問符が拭えない様子だ。その一方でナターシャの方は「AR-15と不器用にイチャラブしてるところを物陰から眺めてやるぞグヘヘ」みたいな顔になっている。ハッキリ言って気持ち悪い。

 

「とりあえず先ずは受け入れてあげなきゃ、このまま怯えながら寝るの嫌でしょ?いっそのこと抱かれた時に抱き返してみるとか・・・」

 

(だ、抱き返して・・・!?)

 

 以下、M4の想像。

 

「うぅん・・・むにゃ・・・」ダキッ

 

(き、来た!し、指揮官さまに言われたように・・・ギューッ!!)ダキカエシッ

 

「M4ぉ、好きぃ・・・♡」サラニダキカエシッ

 

「え、はうぅ・・・♡」サラニサラニダキカエシッ

 

 朝になるまで抱き合って体を絡ませながら愛を囁きあった・・・以上、想像終わり。

 

「・・・だ、ダメです!そんなえっちなのはダメです!」

 

(エロい想像しちゃったかな?えっちって言い方かわいいゾ〜。)

 

 抱き合って寝るのは初心なM4には刺激が強すぎたようだ。

 

「も、もっと穏便に・・・普通の方法で何とかならないんですか・・・?」

 

「穏便に済ますなら・・・いっそM4も裸で寝るとか?」

 

「それもダメです!何で私も脱いだら解決すると思ってるんですか!?」

 

 お悩み相談はどこへやら、ただナターシャの愛欲が暴走するだけの時間になってしまった。しかもM4のリアクションがいちいち大きいせいで調子こいて更にボケ始め、完全にただの漫才コンビになっている。

 

「で、気を取り直して・・・言いたいことがあるなら、ちゃんと本人に向かって言ってごらん。ここで喚いても何も変わらないからさ。」

 

「喚かせてるのは誰だと思ってるんですかぁ・・・」

 

 M4の嘆きもナターシャの(都合の良すぎる)耳には届かず、問題の夜を待つのみ。

 

《その日の晩・・・》

 

 M4は落ち着かない様子だ。ナターシャに教わったとおりAR-15に向かって直訴するつもりだが、もし受け入れられなかったら・・・なんて考えて中々言い出せずにいる。そう、隣にAR-15がいるのだ。裸で。件の存在を前にして固まってしまっているのだ。

 

「M4、落ち着かないみたいね。」

 

「え?い、いや別にそんな・・・」

 

「私と一緒なの嫌?」

 

「ち、違う・・・」

 

 急に話しかけられて思わず目線を逸らしてしまい、自分と一緒なのが嫌なのかと答えづらい問いを投げられた。M4とてAR-15の事が嫌いなわけではなく、むしろ家族として愛している。しかし今彼女に向けられているのは紛れもない恋愛であり、そもそも同性での恋愛の是非もわからない彼女には対処しようがない。

 

「・・・貴女のことは(家族として)好きです。でも・・・やっぱり裸で寝るのはどうかと思います・・・」

 

「M4・・・」

 

 やっと言えた。正直なんで裸云々でこんなドラマチック風味な雰囲気になるのか不明だが、当人たちにとっては大事な話だからそっとしておこう。

 

「わかったわ・・・私も貴女のことが(恋人として)好きだもの。少しぐらい言うこと聞いてあげる・・・」ダキッ

 

「AR-15・・・」ダキカエシッ

 

 結局抱き合うことになったが、喧嘩もなく割と穏便に済んだだけましだろう。致命的なすれ違いを抱えている事以外は。因みに・・・

 

「・・・なぁSOP。」

 

「何?」

 

「アイツらは何なんだろうな・・・」

 

「・・・?」

 

 M16とSOPMODIIも同じ部屋にいる以上今の会話は丸聞こえであり、2人が今まさに抱き合っているのがわかってしまっている。指揮官のご好意(?)で取り付けられたカーテン越しに、2人は件のベッドを見つめている。SOPはわかって無いけど。

 

《翌日・・・》

 

「指揮官さま、昨日はありがとうございました!」

 

「その口ぶりだと、AR-15とも上手くいったみたいだね。」

 

「はい、おかげで上手く行きました!」

 

「そうそう、その顔だよ。女の子は笑顔が1番ってね!」

 

 M4は今までにない満面の笑みでナターシャにお礼を言っていた。おかげで少しギクシャクしていた関係が良くなったのだから当然と言えば当然だが、ここまで笑顔なM4も珍しいだろう。

 

「これからもよろしくお願いします、指揮官(・・・)!」

 

「よろしくねー。(美少女の笑顔、プライスレス!)・・・写真に収めたかったなー。」

 

 彼女はこれからもナターシャを頼ることになるだろう・・・その変態性を知らないまま。




とりあえず、ナターシャは変態って事だけ覚えといて下さい。

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