うちの指揮官はコミュ力が高過ぎる。   作:創作魔文書鷹剣

7 / 21
 いちいち反応する彼女と遊びたいだけのナターシャは相性最悪な模様。


会話に混ざりたい彼女

 WA2000という戦術人形がいる。彼女は非常に優秀なスナイパーであり、極めて高い実力を持つために多くの指揮官が彼女の恩恵を受けている。当然R03基地にも彼女がいるのだが、1つだけ困った事がある。

 

「・・・・・・・・・・」ソワソワ

 

 WA2000が物陰から見ているのは、この基地の指揮官ナターシャと副官のVectorが廊下で談笑している他愛もない光景。

 

「だからねVector、このカタログに掲載されてるスキンはいつだって取り寄せられるの。学生服からミニスカメイドまでね。だから貴女は欲しいスキンを選ぶだけでいいの。」

 

「ナターシャ、下心見えてるよ。」

 

「特にこの水着スキンなんて最&高、誰かが来てるのを想像しただけで・・・おっと鼻血が。」

 

「ナターシャ、そういうとこだよ。」

 

 いや、他愛もないとは到底言い難い内容だった。覗き見ているWA2000も抗議を申し出たい気分だが、そのための1歩も1声も出せない。そう、困った事とは、他人に話しかけられないのだ。向こうから話しかけられたら大丈夫なのだが、自分から話しかける・・・特に会話中の相手に話しかけるのが極端に苦手なのだ。

 

「・・・わーちゃんも混ざる?」

 

「わーちゃんって言うな!!」

 

「いたんだ・・・」

 

 物陰から飛び出して来て開口一番に放ったのは、自分の渾名への反発だった。ナターシャ曰く、「本当は渾名つけられて嬉しいけど、照れ隠しで嫌がってるんだよね。生ツンデレおいしいです。」らしい。

 

「混ざりたいオーラ全開だったくせに〜、かまってちゃんなんだから〜・・・痛い痛い痛い!Vector!耳取れるって!!」

 

「・・・・・・・・・・」←無言でナターシャの耳を捻る

 

「いやいやいやいや違うんですよ!?部下とのコミュニケーションは指揮官として必須だからやってるだけで別に浮気やセクハラじゃああぁぁぁ!!」

 

 Vectorの強烈な平手打ちがナターシャの尻に炸裂し、彼女はその場に崩れ落ちた。部下に尻を叩かれて悶絶する姿は威厳の欠片も無いが、元々変態なことで有名な彼女に威厳がある時など無い。呆れたVectorは帰ってしまった。

 

「なんで今のを受けてピンピンしてるのよ・・・」

 

「くぅ・・・指揮官になって数年、その間Vectorにお尻ペンペンされること182回!内2回は30分弱の間に100回叩かれ、「次はみんなが見てる前でお尻ペンペンだから」と脅された記録を持つ私ならこの程度の痛み・・・あ〜痛い・・・」

 

(何でここに来ちゃったんだろう・・・)

 

「今何でここに来ちゃったんだろうって思ったでしょ?でもここなら充分な戦果と充実した私生活の両立が出来るし、職場恋愛も自由だし・・・」

 

「私は殺しのために生まれてきたの、余計なお世話よ!」

 

(この表情・・・これは「自分の事を考えてくれて嬉しい」と「素直になれない自分への嫌悪感」が1:9ぐらいのブレンド・・・微かにだがデレは始まっている!今追撃せねば明日は無い!)

 

 お決まりのフレーズを言い放ったWA2000の表情を読んだナターシャの思考は、ありえない程にゲスだった。よく今まで生きてられたなと思うぐらいに乙女の心を弄び、ドクターと呼ばれる程の手腕を悪用しだした彼女を止められる者などいない。

 

「特におすすめはスプリングのカフェだね、ムチムチでエチエチな美女が淹れたコーヒーを飲めるのはあそこぐらい・・・他にも宿舎の一角を改装して新しい施設作る予定だし・・・」

 

「ま、まあ・・・そこまで言うんなら仕方なく(・・・・)行ってあげるけど、ただアンタがかわいそうで見てられないから行ってあげるだけだからね!」

 

(まさに純ツンデレ・・・一切の無駄を取り払った芸術的な美・・・いただきました。)

 

 色欲に染まりきったナターシャはもはや人間以下のゲスに成り下がり、WA2000のデレを拝みたいだけのクズと化した。それでも真剣に彼女が楽しめるような施設を作ろうとしている姿勢には多少感心するが、そこまでする理由の大半が下心なせいでゴミクズにしか見えないが。

 

「中には自分は人形だからって四六時中働こうとする子もいるからね、ちゃんと休憩できる場所作ってあげなきゃならないの。」

 

「わ、私はそんな事ないわ。そんな手のかかる問題児になった記憶無いもの。」

 

「ふふっ・・・」

 

「な・に・が!そんなにおかしいの!!」

 

 こうしてナターシャの一挙手一投足に律儀に反応してる時点で彼女の毒牙にかかってしまっているのだが、それに気づかず相手をしてしまっているWA2000が手籠にされるのは時間の問題だろう。今の笑みは「口では散々言っても、ブンブン振れる犬の尻尾を幻視するような態度で帰りを出迎えてくれる彼女」みたいな姿が想像できてしまったが故の笑みである。

 

「いや・・・ね?ただ、早く来ないかなって。」

 

「・・・何を想像したの。」

 

 もうこれ以上相手をしても疲れるだけだと察せるはずなのに、メンタルが破損しているのか気が済むまで付き合ってしまっている。見えている地雷を踏んでいるあたり、いかに彼女が追い詰められているかがわかる。

 

「・・・・・・ホラね、最初さえ入れれば人と話すなんて簡単だよ?」

 

(え?あ・・・)

 

 彼女は自分自身の変化に気づいた。最初は人に話しかけるのさえ出来なかったのに、今は満足に会話できている。気づかぬ内にナターシャの策謀に嵌められていたのだ。最初はナターシャの方から話しかけ、相手が会話を続けやすい出だしを作る。その後で何かしらの小トラブル(今回はVectorによるお仕置き)を起こして「自分は人と話せない」という自己認識から意識を逸らさせ、後は会話が途切れないように話を続ければ完了。つっけんどんでコミュ症なわーちゃんを変えてあげるならこれで充分だ。

 

「もっとお喋りしたいならお悩み相談にいらっしゃい。」

 

「・・・わかったわよ、悩んだ時だけよ。」

 

「おっ、わーちゃんがデレた。」

 

「わーちゃん言うなーッ!!」

 

 WA2000が勢いよく尚且つ精密にナターシャを蹴った脚は、的確に彼女の股間を直撃した。凄まじい激痛に悶絶し、股間を手で覆ったまま崩れ落ちる。女だろうとソコは痛い。

 

「我々の業界ではご褒美です・・・」

 

 変態発言も聞き流された。その後、本当に何でこんな基地に来てしまったのだろうかと嘆くわーちゃんの姿が目撃されたとか。




 ナターシャの変態性が加速する・・・これでも削ったんだけど。
  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。