古代勇者〜2000年前の勇者がデタラメに強すぎる〜   作:カラー・ロザリオ

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勇者眠る

私達の国、セミナルは魔王ゼノンジークによって滅亡の危機に晒されている。いや、きっと私達が負ければこの世界が彼のてによって堕ちてしまう!

 

暗黒の力が彼の周辺を渦巻いている。腕を一振りしただけでその力は私達に襲い掛かる。もう周りは死の大地とかしていて、ここにあるのは私達だけ。その私達も、良い顔はしてない。歯を食いしばって、その腕を魔王に向ける。

 

「姫!」

「ライン! 私のことは気にしないでと言った筈です!」

「しかし!」

「貴方しか魔王にトドメを刺すことができません! たとえ私に命の危機があろうと前に進むのです! でなければ勝てません!」

 

ラインは悔しそうにする。私を守りながらでは戦えないのが、自分の力不足だと責めている筈。私にもっと力があれば、でも今はそんな事を気にしている場合ではない!

 

「どうした?! 随分と疲弊しているな!」

「それはお互い様です!」

 

後少しで、ゼノンジークに勝てる! でも、どうしてもあの暗黒の力がラインの剣を拒んでしまう! あれを破るには、私も攻めに入らないと! でも、あと一撃でも攻撃を受けてしまったら、私は無事ではいられない! そうなれば、暗黒の力を破れないラインはトドメをさせなくなってしまう!

 

「姫様!」

「グラン?! 無事だったのですね?」

「あれぐらいじゃ俺はしなねぇ! です!」

 

相変わらず敬語が下手な人。傷だらけでも、ゼノンジークに対抗する力が無かったとしても、助けに来てくれた。

 

「ライン! なんだそのへっぴり腰は! いつもの勢いはどうした!」

「私を守ろうとするあまり、攻めにいけないのです!」

「なら俺が守る! 対抗出来なくても、防ぐことならできるはずだ!」

 

ラインとグランは目を合わせ、互いに頷く。それと同時にラインは走り出す。私もその合図に合わせ、光の腕輪の力を解放する。

私を守っていた光明の力がラインを守るように流れる。暗黒の中を走り抜けるラインは釣竿を構え、ゼノンジークの足元の岩場を釣り上げる。

 

「小賢しい! 岩で我を傷つけることは出来ぬ! なぬ?! 奴はどこへ?!」

「なるほど! 目眩ましか。脳天にブレイブソードを突き刺せ!」

「上か!」

 

魔王は暗黒の力を腕に集束させ、上に向かって解放する。魔王は手応えを感じた。しかし、その手応えはラインではなかった。大剣だった。グランの。

魔王は、グランの『脳天』と言う言葉を信じて上に攻撃した。それは嘘だと思い込んだ。しかし、それを狙っていたんだわ、魔王は一瞬でも、()()()()()()()()()()と。でも本当に上からの攻撃だった。グランの大剣の上に、ラインがいた。砕けた岩と、人と同じ、いやそれ以上の大剣が彼を隠していた。さっきのアイコンタクトだけで、『戦友』でもあり『親友』でもある彼らだからこそできるコンビネーション。

 

「大剣を投げたですか?! 貴方は今、何で防いで……」

「姫様、俺なんか気にしてたら勝てなくなる」

「そんな……体が……」

「良いファッションだろ?」

「……ッ!! お願いです! ライン! これで、終わりにしてください!」

 

「これで終わりだ! ゼノンジーク! 」

「ぐあぁぁぁぁぁぁあ!!!」

 

ラインはブレイブソードを振り下ろし、そして突き刺す。その瞬間、暗黒の力は消え去った。嵐の後の静けさが訪れたように感じた。聞こえるのは、疲労からくる息づかいだけ。その静けさを破ったのは、倒れる音だった。

 

「グラン…………貴方のおかげで私は光明の力を存分に使うことができました。暗黒の力をかいくぐり、ラインがトドメを刺してくれました……せめて、幸せな人生に生まれ変われるように、神に祈ります」

「祈る前に、暗黒に染まった体を元に戻してくれ。これじゃあ、生まれ変わるまでの間、安らかに眠れない」

「ライン……」

 

暗黒に染まった体を照らす。暗黒に染まった体は元に戻る。安らかな顔をしていた。ラインは、悲しい顔をしながら、グランの顔に手をおき、僅かに開いていた目を閉じる。私もきっと、同じ顔をしているでしょう。

 

ゼノンジークとの戦いは終わった。何時間戦ったのか、それとも10分も戦っていなかったのか、一日中戦ったように感じた体は疲労で休みたがる。

この戦いは数年前から始まっていた。私がセミナルの女王になる前、ゼノンジークは私の召し使いでした。何事にも真面目に取り組んで、自分を犠牲にしてでも誰かを救おうとしてくれました。それなのに、どうして闇に染まり世界を手にいれようとしたのでしょうか。その理由もわからずに、今回の戦いは終わってしまった。

 

「まだだ」

「?!」

「終わって……いない。我は、まだ……おわって! ない!」

「ゼノンジーク! まだ生きて!」

「グオオオオオオオオ!!!」

「あれは…………」

 

ああ、そんな。どうして、ゼノンジークはまだ生きていたの。暗黒の力が彼に集まって膨れ上がり、姿を変えていく。あの姿は、魔神王ゼノン。かつて世界を闇に染めた最強の悪魔。私達は勝てなかった。世界は滅んでしまう。

 

「……姫、お逃げください」

「逃げても無駄です。もう逃げ場など」

「倒す方法ならあります」

「?!」

「ですので、光の腕輪を俺に()()()()

「ライン? 一体何を考えているのですか?」

 

ゼノンは暴れまわる。生き物とか地面とか関係なく、ただ暴れ壊す。既に荒れていた地は塵になって逆に綺麗になっていく。ゼノンジークでさえ、倒せなかったのに、暗黒の力が極限にまで高まった魔神王を倒す方法など、想像もつきません。

 

「ゼノンは闇の腕輪を取り込み今や暗黒の力の器そのものです。光の腕輪を破壊し、暴走した光明の力を当てれば、器は壊れ奴の体は自然と滅びます」

「確かに可能ですが、それには全ての力を当てなければ行けません。しかし、暴走した力をコントロールするなど」

「奴は巨大化しました。俺が突き刺した場所も同じです。そこから突っ込み壊せば全ての力を奴に当てることができます」

「ですが、壊すには強大な力が……やめるのですライン」

「姫、俺は」

「やめるのです!!」

「?!」

ライン! 貴方は、ブレイブソードで腕輪を壊すつもりです! ブレイブソードは貴方が触れてないと効力を発揮しません。壊すには、貴方が近くにいないといけない。暗黒と光明の力に巻き込まれたら、貴方は助からない…………私達を置いてってしまうのですか!

 

「方法は1つしかありません。俺は勇者として、最後まで戦います」

「だめです……貴方は父親になるんですよ」

「?!」

「私のお腹にいるんです。この戦いが終わったら、教えようと思っていました」

 

ラインは複雑な顔をする。私は何て酷い人なんでしょう。ラインの命を犠牲にしなければゼノンは倒せない。それなのに、こんなことを教えるなんて。

 

「死んでほしくないのです。ゼノンは自我がありません。きっとまだ大丈夫です。他の方法を」

「自我がないのは少しの間だけです。俺にはわかります。何度も奴と戦ってきましたので」

「……」

 

私は何も言えません。何か言わないといけないのに。言葉が見つからないのです。死んでほしくない。でも犠牲にならないといけない。なんと言う残酷な運命なのでしょうか。

 

「名前は決まっているのですか?」

「名前?」

「はい。子供の名前」

「決まっていません。この戦いが終わったら、貴方と決めたかったのです」

「そうか、なら今考えないとな」

「今ですか?!」

「そうだ、自我ない時間が少ししか無いとは言え、この時間ぐらいはあるでしょう」

 

な、名前! え、えーと……パ、パカラ? ま、マイラバ?

 

「わ、笑っているのですか?! 」

「すみません姫。困惑している顔を初めて見ましたので」

「初めてって、何年も一緒にいるのですよ?」

「ずっと戦っていましたので、こんなことで悩むことなんてなかったですから」

「平和でしたら、この悩みが沢山ありますのに」

「平和、か…………『パス』はどうだろうか?」

「パス……『平和』」

「はい。平和な世界をこの子が生きていけるようにって」

「パス……この子は、パス」

「パス、すまないな。父親になれなくて」

「…………私が、貴方の分も愛します。父親なんていなくても、寂しくないように。だから、見届けます。貴方の最期を」

「それは頼もしいですね」

 

ゼノンの動きが止まる。自我を取り戻して、何がどうなっているのかわからないのでしょう。私は光の腕輪をラインに渡す。ラインは立ち上がり、最後の笑顔を見せてくれる。私も笑顔を見せました。

 

「パス、姫………」

 

笑顔が崩れた瞬間、ラインは走り出した。それを見た私も笑顔が崩れてしまった。泣くのを我慢していたのに、泣いてしまった。

 

行かないで!

 

心の底からそう叫びました。けれど、叫ぶことは出来ませんでした。彼の背中が小さくなっていくほどに強まって涙が止まりませんでした。

 

 

 

 

 

光と闇の大爆発が起こる。互いの力を打ち消し合うと自然と爆発は収まった。その跡には何も残っていたなかった。

 

 

 

 

 

 

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