ダンジョンに神殺しの魔王がいるのは間違っているだろうか 作:dukemon
一、
1、
なんなのだ、この状況は。
「――――――!」
「――――――!」
いくら何十もの世界を旅してきた神殺し・ミハイルでも、このようなシチュエーションは初めてだ。
普段なら、交流できる知性がない敵を即座に切り捨てるミハイルだが、今はかなり戸惑っている。
相手は明らかに知性を持っていて、何らかの言語で話してきた。
千の言語で言葉を理解するのは時間が要する、
「えーと、僕たちは敵意はないです」
試しに、日本語で話したが、やはり分からないようだ。
その時、心の中で住んでいる弟・ミカエルが話してきた。
彼はもともと自分の二重人格だったが、あるきっかけで魂は完全に二つに分けた。
大切な家族で、最高のパートナーだ。
――戦わないほうがいいぞ、兄弟。相手はかなり怯えている。
――分かっている。
ミハイルは大人しく手足を縛られた後、怪物たちはなにかを言い争っている。
言語を段々理解できるようになっているので、この世界の状況を分かってきた。
この世界では、ダンジョンから湧いてきたモンスターは人間の敵である。
退屈な神々は新たな刺激を求め、天界からこの世界にやってきて、人間たちに
また、神の力の使用は下界では禁止されている。
違反者は天界に送還させられる。
よって、神々の身体能力は一般人と変わらない。
――なるほど、さっきの変な感じはこれだな。
――ええ、無闇に権能を使うと強制的にこの世界から追い出されるでしょう。
――まあ、俺の考えが正しいなら、兄弟の権能で何とかなるだろう。護堂はもし《反運命の戦士》で召喚されるなら、この世界の規則も無視できるだろ。
護堂はミハイルの甥で、神殺しの一員だ。
――しかし、このモンスターたちは人間に敵意はないようだ。
――今の話を聞くと、彼らは普通に地上で生活したいだけで、人間と争うことを望んでいねえ。だから《
リーダーのリザードマンはリドという。
「えーと、リドさん」
「言葉、喋れるのかよ!」
「知らない言語を喋れるようになるまで、少し時間がかかるから、そういうスキルなんです……まずここにきた経緯を説明します」
並行世界の来訪者や神殺しのことは混乱を招くため、話さないと決めた。
すべては転移魔法の失敗というものにしておこう。
最初は転移魔法というものに疑いを抱いたリドたちは、縮地法を目の前で実演されたから、一応納得してくれた。
「しかし、これからどうしますか」
「あんた、やっぱり変だ」
「どこが?」
目の前の
「オレっち達を見て、何も思わねえのか」
「僕から見れば、神々も人間もあなた達《
周りの異端児達はざわつくのを感じた。
この考えはこの世界には受け入れないものでしょう。
だが、いきなり殺しにかかってくるまつろわぬ神より、ずっといい相手だと思う。
リドは少し考えた後、結論を言った。
「まず、オレっち達の保護者、ウラノス様に連絡しよう」
「それはいいと思いますよ。ああ、それと僕の名前はミハイル、種族は『エピメテウスの落とし子』です。ウラノスほどの神様はたぶんそれを知っています」
リドは通信用の魔道具を使い、ウラノスの側近に報告した後、すぐに返事が来た。
『今すぐあの者を
「え、それはどういう……」
「ここ(ダンジョン)で権能を使うほど馬鹿ではありませんよ。僕もここを無闇に刺激したくはないのです」
ダンジョンで権能を使うのは細かい注意が必要だと、直感で分かるんだ。
そもそも、ここはたぶん凄まじい力を持つ地母神が作り出した環境だ。
何の準備もなしに、こんな場所で権能を使うと、どういう影響が出るか分からない。
ミハイルは大人しくウラノスの指示に従って、ダンジョンから出た。
2、
ウラノスとの対話は思いの他、すんなりと進めた。
ウラノスは地上で神殺しと争いたくはない。
ミハイルとミカエルも戦う意思がない相手と争いたくはない。
結局は契約関係を結んだ。
ミハイルとミカエルはダンジョンの問題を異端児と共に解決する。
その代わり、この世界の身分をウラノスが用意する。
パンドラ・ファミリアのミハイル・ミカエル。レベル3の冒険者。
これは今のミハイルとミカエルの身分だ。
レベルの設定をこれ以上上げると、色々と面倒なことになるとウラノスが言った。
そして、今。
ミハイルの目の前には、双剣を持つリドが倒れている。
この数ヶ月、仕事仲間である
最初はただ自分がこの世界から離れた後のことを考えて、異端児の戦力を強化させたいと思っていた。
だが、異端児たちが一生懸命に頑張っているのを見て、彼らも段々とやる気が出てきた。
もともと、ミハイルとミカエルは元の世界では神域と謳われる武技の持ち主である。
その指導を受けた異端児達はめきめきと力をつけてきた。
今のリドはレベル6相当の力を持っている。
他の異端児も目に見える成長を遂げている。
「アレハオカシイダロウ」
彼はもともと人間に対して非友好な感情を持っていた。
だが、ミハイルとミカエルに数回助けられてから、少しだけ人間を信じる気になってきた。
彼らの指導にも真剣に取り組んできた。
だから、ミハイルの動きを見て、少し頭が痛くなった。
今回の模擬戦はリドが提案したもので、ミハイルとミカエルの本気を見たいという。
もちろん、権能抜きの戦いだ。
その望みは、ミハイルとミカエルが快く応えた。
そして、遁行歩法と縮地を駆使し、リドの背後をとって、一撃でその意識を奪った。
遁行歩法について、ミハイルとミカエルは異端児に話したことがあるが、誰も習得できない。
しかし、使用するところを何回見た事があるから、リドは自分なりの対策を考えたが、反応する前に倒されてはどうしようもない。
気絶したリドを治療している途中、フェルズの連絡が来た。
事件の調査を頼みたいという。