ダンジョンに神殺しの魔王がいるのは間違っているだろうか 作:dukemon
三、
1、
『リド、フェルズ。俺から一つ提案があるぞ』
「どうした、ミカエルっち?」
「事件と関係があるのか?」
事件の犯人を殺し、異端児の隠れ家に戻ってから数日、ミカエルはリドとフェルズを呼んで、次の一手を打つ。
二重人格ということはとっくに全員に教えた。
『50階層を攻略するぞ!』
「むちゃだ」
「いきなり何を言い出した……」
『別に無茶じゃねえし、ちゃんとした理由がある。50階層には
「仲間を探すのはいいが…オレっちたちの実力は大丈夫なのか?それと、ここの守りはどうする?」
『半分ぐらいの主戦力はここで留まって、俺は遠征に同行するぜ』
「これなら、戦力のほうは大丈夫だが、もしあなた達が出払った時に
『ロキ・ファミリアに秘密依頼を出せ。あんたがウラノスの部下という事はもうばれたから、正式に依頼をすれば、ロキ・ファミリアは拒否しないだろ』
「ばらした本人がそういうのか……」
『ああ、それともう一つ。この時点で起きた
に関する可能性が高いぞ』
「それは知っている」
少し準備をした後、異端児の遠征団が出発した。
2、
――悪魔だ。こいつは悪魔だ。善意でやっている分、たちが悪い。
遠征に出た異端児は全員、ミカエルに対してそう思った。
リドは自分とフェルズに話した理由はただの建前ということを理解した。
ミカエルの真の目的は異端児の特訓である。
謎の勢力がダンジョンで出現したため、異端児の仕事は過酷なものになると予想される。
ミカエルはその異変を一蹴できるほどの力が必要と思っているから、遠征を提案したのだ。
本人は自分の特訓は師姉・羅濠教主のそれに比べるものにならない優しいものだと思い込んでいる。
実際は、同じきついものだった
特訓中は死ねないという一言に尽きる。
ミカエルは生死の挟間で彷徨うとき、新たな力が得られるという持論を持っている
ゆえに、ミカエルは遠征団を限界を超えるまで追い込み、相手が死にそうになった時はアーサー王の治療の権能で全快させ、また限界を超えさせる。
37階層の闘技場に放り込まれるときは、異端児たちは目が死んでいた。
50階層についた時には、あまりの感動で泣き崩れた。
……そして、50階層で宝玉がないという知らせで全員気絶した。
気絶しても、すぐに治療の権能に蘇らせるというミカエルの優しさに涙目した。
今回、ミカエルは地図をうっかりにヴァルガング・ドラゴンの砲撃で焼き尽くされたから、遠征団の最終到達階層は54階層。
心の中で密かにそのドラゴンに感謝する異端児たちは一ヶ月に亘る遠征を終わり、帰り道についた。
3、
『人が来る。隠れろ!』
ミカエルは人の気配を感じて、異端児達に指示した。
リドが指示通りにみんなと共に近くの通路に駆け込んだ。
あそこは行き止まりだから、地図を持っている冒険者は普段その道に行かない。
ミカエルは通路の真ん中に立って、相手を待っている。
「ミカエルさん、どうしてここに?」
『伝えたい事があるからだ』
先頭に立っているのはロキ・ファミリアの団長《
『俺は50階層から54階層を探し回ったが、宝玉のようなものを見つからなねえ。だが、新種などが出たから、55階層以下には何かがあるに違いねえ。気をつけろ。それじゃ』
次の瞬間、ミカエルは縮地法を使って、異端児たちのもとに帰った。
「ミカエルっち。さっきの人間たちと知り合いなのか?」
『ああ、ハシャーナの事件で犯人を探し出した人だ。彼らも遠征をしているから、50階層のことについて警告した。まあ、あいつらは59階層に簡単にたどり着くだろ』
「すげえな。正直、あのところにもう行きたくはねえ」
『それはどうかな?俺の見立てでは装備と良い指揮官を揃えたら、あんた達の実力も59階層を突破できるぜ』
「そうなのか?」
『過信はいけねえけど、もっと自分たちの実力を信じろ』
ロキ・ファミリアが通り過ぎた後、異端児達は移動を再開する。
そして、ミノタウロスの異端児を拾った。
4、
「ミハイルっち、相談してえことがあるんだ」
ミノタウロスのアステリオスを拾って、異端児の隠れ家に帰ってから、数日が過ぎた。
リドはミハイルの指導を受けながら、そう言った。
「どうした?」
「アステリオスは何かに悩んでいるようだ。少し心配で…」
「わかった。聞いておこう」
「頼む。彼の悩みはたぶんオレっち達
アステリオスは有望な人材だ。
ここに来て、数日しか経っていないが、訓練に凄まじく真面目に取り組んで、その戦闘勘は僕たちも舌を巻くほどのものだ。
今はもう僕たちの愛弟子である。
将来、魔石を食った後は異端児の上位になると予想されている。
――アステリオスの悩みか……実際、心当たりがあるぜ。
――……ああ。
「アステリオス、何を悩んでいるのか?」
一人で巨大な斧を振っているアステリオスに近づいて、直接に聞いた。
「…ここを離れようと思っている」
「原因を聞いてもいいのか?」
「自分の『夢』は同胞たちの『夢』を壊しかねない」
アステリオスが闘争にしか意味を見出せないということは、リドたちも知っている。
僕もミカエルも、彼がそういうことに悩んでいると思っていた。
だが、アステリオスの『夢』とは何なのだ?
「たった一人の人間と戦った夢、血と肉を飛ぶ殺し合いの中で、確かに意志を交わした、最強の敵。彼を倒したいのだ」
「それは、あなたの原点か」
『いい。実にいいぜ。そういうものがある戦士は幸せだぞ』
思わず感心した。
自分を倒した敵と再戦して勝ちたいというのは、戦士の本懐。
やはり、お互いを高め合う宿敵があるのはいいものだ。
「なら、リドたちから離れる必要はないよ」
「…いや、だから」
「戦士が戦いを求めるのは当然だ。リドたちは生きるために武器を取った。アステリオスは好敵手と戦うために生きている。どちらも良い事だ。それに、あなたの『夢』がリドたちの『夢』を壊すのはただの予測でしかない。予測を打ち破るのは英雄だ。英雄になれ、アステリオス。……どころで、あなたの好敵手をどのような姿をしていた?僕たちは探そう」
「白い髪と赤い目、そして紅き雷光を使う戦士だ」
「わかった。さて、その敵を破るために、訓練を続けましょう!」
その後、リドと他の異端児がドン引きする特訓が一週間続いた。