ダンジョンに神殺しの魔王がいるのは間違っているだろうか   作:dukemon

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第4話

 

四、

 

1、

 

リドは双剣を交差し、振り下ろした斧をいなそうとしたが、できなかった。

パキっと、上質な剣が折われて、相手の勝利が決まった。

 

「勝者、アステリオス!」

 

裁判をやっているミハイルは宣言し、周りに歓声が轟いた。

 

「すげえ、まさかリドを倒したなんて!」

 

「アノヨウナ訓練をウケル甲斐ガアルトイウコトダ!」

 

騒ぎを起こした本人、アステリオスは折れた剣を見つめている。

 

「いや、リドの剣がもっと質が高いものなら、自分は勝てなかっただろ」

 

「それはねえ。剣を持っている手は今でも痺れている。剣がよくなっても、オレっちの負けだ」

 

「あなたの勝ちだと、僕たちは認めた。褒賞を胸を張って受けるが良い」

 

「感謝する」

 

ミハイルとミカエルの訓練を受け、魔石を食べたアステリオスは、深層でソロで鍛錬することを言い出した。

もちろん、新入りのアステリオスが心配しているリドは大反対した。

他の異端児も同じ意見を抱いた。

 

だから、今回の試合をした。

アステリオスが勝てば、ソロの探索を許す。

リドに負ければ、次回の遠征を待つ。

 

驚くことに、アステリオスが勝ってしまった。

最初はリドの剣技に翻弄されながらも、一瞬の隙を逃がさずに逆転勝利をした。

 

36階層で、リドが深層に向かうアステリオスの背中を見て、ミハイルに聞いた。

 

「…オレっちが負けた原因は何なのだ?」

 

「アステリオスは暇人だからだよ」

 

「はあ?」

 

「あなたの仕事を思い出して。隠れ里の警備、異端児の捜索、隠れ里に移動できない同族に連絡など、一日訓練できる時間が少なくなってきた」

『アステリオスは休まずに一日中鍛錬してきたぞ。リーダーの仕事が多いのは当然だから、この結果も当たり前だろ』

 

「真面目に仕事しているから負けたのかよ!」

 

「仕事はあなたにとって鍛錬より大事なものだからだ。異端児のために、誰かがやらなければならないことだよ」

『それに、あんたが訓練に費やした時間はアステリオスに次いで二位だぞ。これ以上やると、仕事に支障が出る』

 

「複雑な気分だぜ…」

 

ミハイルとミカエルの特別訓練メニューはかなり厳しいから、リドとアステリオス以外の異端児は短時間しか耐えられない。

 

だから、ほとんどの異端児は自主訓練用の軽めの訓練メニューをやって、さらにダンジョン探索で経験を積む。

この方法で、短時間に実力をあげるのは不可能だが、負担が少ない。

 

アステリオスがやっているソロ探索は判断力と対応力を上げる訓練だ。

大量な魔石を得られる手段でもある。

 

その時、ダンジョンが大きく揺れている。

しばらくすると、フェルズの連絡は来た。

 

《ミハイルさん、二柱の神がダンジョンに侵入したという報告が入りました。このダンジョンの揺れはダンジョンで神威を使ったからです。場所はリヴィラの街》

 

「わかった。すぐに行く。リドは隠れ里に戻ってくれ。もしかすると、他になにかのイレギュラーが起きるかもしれない」

 

 

2、

 

「幻術を長じる羅刹よ。インドラを倒し、その稲妻を奪う者。我が姿を隠したまえ」

 

18階層に至る通路が塞いだのを見て、ミハイルはすぐに聖句を詠み、権能を発動させる。

 

「向こうにいる人、後ろに下がってください!太陽は光明として、輝く武器として運行する。ミトラの弓よ!」

 

ミハイルは太陽の光で作られた弓を引き、二射を放った。

第一射は19階層と18階層の障壁を破り、第二射は18階層と17階層の障壁を焼き尽くした。

 

瞠目した冒険者達をよそに、ミハイルは即座に黒いゴライアスを最優先討伐対象を定めて、縮地法を発動した。

そして、敵に肉薄した白髪赤目の少年を見て、動きは止まった。

 

――兄弟、彼を支援しろ!

 

――分かっている

 

愛弟子のライバルを見定めるため、ミハイルが取った行動は牽制だ。

 

「混沌より生まれし巨人よ!我に力を!」

 

地面から飛び出した五本の鎖は巨人の手足と躯体に縛りつけた。

ゴライアスは力づくで、その戒めから脱出しようが、権能で作り上げた鎖はビクともしなかった。

少年は右手を出して、魔法を放とうとする。

 

「胸を狙えて!このモンスターは頭を破壊しても復活します!」

 

「っ! 【ファイアボルト】!!」

 

ミハイルの助言を聞いた少年は軌道を修正し、その手から放たれた大炎雷が黒いゴライアスの胸を貫いた。

次の瞬間、大歓声が巻き起こした。

 

だが、ただ二人、ミハイルとミカエルが頭を抱いた。

 

「ああ……これは……やりすぎた」

『俺に代れ!』

 

ダンジョンの鳴動が止まらない。

たとえ、幻術の権能を使っても、神災が起きた階層で神の力を行使するのは、ダンジョンが見逃すはずがない。

 

『契約の名にし負うミトラよ。我が同盟者ウラノスの力をここに!』

 

ミカエルが持っている契約神ミトラの権能は契約を結んだ相手から力を借りる権能だ。

ウラノスにミトラの権能を説明し、神災が起きた地点だけで力を借りられるという契約を結んだ。

 

借りたウラノスの神威(いのり)は18階層を浸透し、大きな反応を起こした。

二柱の神以外の冒険者達は一瞬で気を失った。

ダンジョンが孕み落とそうとする階層主はバラバラと砕け散った。

 

「これは…ウラノスの神威、一体どういうこと…まさか!」

 

「さっきの太陽の矢、そしてウラノスから借りた神威……なるほど、神殺しの獣か!」

 

『えーと、俺のことを黙ってくれねえか?正体が知られたら、少し面倒だから』

 

ヘスティアとヘルメスはミカエルの正体を見抜いた。

これほど有名な神の前で権能を使ったから、当然だった。

 

「一つ聞きたい、キミは下界に害をなそうとするか?」

 

ヘスティアはもっともな疑問を発した。

 

「ありません。僕はただ旅人として、この世界に来ただけです」

『俺もねえ。この世界に気に入った。ちなみに、あんたの眷族もすばらしい戦士だぜ』

 

神の前でついた嘘がすぐに見破られる。

神殺しでも、神を騙すのが難しい。

ヘスティアとヘルメスはミハイルとミカエルの発言を真実だと判断した。

 

「いやぁ、しかしこのことを黙ってやることは高くつくぜ」

 

さすが商人の守護神、すぐに交渉してきた。

 

『何が欲しい?俺は傭兵だ。一回だけ、無料で依頼を受けてもいい。ただし、俺の弟子たちや家族などを危険を晒すような依頼は流石に拒否するぜ』

 

「これで手を打とう。連絡手段は?」

 

ミカエルは紙を持ち出し、何かを書いた。

 

『これは俺の居所だ。依頼があったらそこに行け。ヘスティアは?』

 

「ボクももらおう。危険人物の場所を知っておかないと危ないから…」

 

紙をヘスティアに渡した後、ミカエルはウラノスに事の顛末を報告し、18階層を離れた。

 

――宿敵のことはアステリオスに話さないほうがいい。

 

――わかってるって、今のアステリオスと対峙すれば、瞬殺されるだろ。

 

――あの少年を訓練してもいいが、無断に接触すると、ヘスティア神とヘルメス神が僕たちのことをばらす可能性がある。今は彼の成長速度に賭けるしかない。

 

少年の戦いを見届けたミハイルとミカエルは弟子の鍛錬に気になって、深層に向かった。

 

 

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