ダンジョンに神殺しの魔王がいるのは間違っているだろうか   作:dukemon

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第5話

五、

 

1、

 

『よし、これより闇派閥を滅殺する計画を組み上げよう!』

 

「リドトアステリオスヲアイツラの本拠地に投入スレバイイジャナイ?」

 

「たぶん一日で終わりそう」

 

アステリオスの強さは、今やLV.8ぐらいになった。

LV.7に近いリドと組めば、二人だけで制圧できるかもしれない。

…異端児と同盟しているウラノスとガネーシャは都市最大勢力になっただろ、とミカエルとミハイルが密かにそう思っている。

 

『相手は裸足で逃げるから、却下だ』

「犯神はなんとしても確保するか送還させる必要があるよ」

 

今回の目的は異端児と敵対している闇派閥を徹底的に潰すことだ。

 

まずは、構成員たちをできるだけ殺すか捕まえる。

次は、相手の主神を探して天界に送還させる。

 

一般的なファミリアにとって、後者は難しい。

神が本気で逃げようとするなら、神威で冒険者の動きを止められる。

神を捕まえるのは神でしかない。

 

しかし、ミハイルとミカエルが神殺しだ。

彼と対面した闇派閥の主神は即座に送還されるだろ。

 

「二方面作戦はどうでしょう?部隊を二つに分けて、オラリオとダンジョンから侵入する」

 

『相手の逃げ道を封じるのがいい方法だけど、誰がオラリオから侵入するのか?異端児がそんなことをすれば、都市中が混乱するだろ』

 

「ロキ・ファミリアに任せよう」

 

ニョルズの情報によると、食人花はオラリオの地下水路からメレンに流してきた。

ロキも同じ情報を得た。まもなく、敵の本拠地に踏み込むだろ。

 

異端児は同時にダンジョンからの入り口に侵入すればいい。

 

ロキ・ファミリアの攻勢を利用して、闇派閥を潰す。

これで、作戦の大方を決定した。

 

 

2、

 

「ほう、これは凄まじいよね」

『ああ、執念を感じさせる建物だ』

 

18階層から人造迷宮に入り込んだミハイルとミカエルは思わず感想を口からこぼした。

オリハルコンの扉とアダマンタイトの壁。

中の迷路は緻密に入り組んでいる。

まさに、難攻不落の城砦。

しかし、違和感がある。

 

フェルズは自分の考えを述べた。

 

「…設計者は芸術的な建築物を作りたいでしょう。で、金が足りないから、悪事に手に出して、闇派閥になった」

 

「……理解できぬ。これらの金属で武器を作るほうが役に立つだろ」

 

アステリオスはわけがわからない顔で、周りの希少金属を見つめる。

 

「芸術家はそういう人種の集まりで、理解できないのは当然だ。普通の感性を持つ人間でも、ここの設計者は狂人だと断言するでしょう」

『俺たちもそう思うぜ。よし、そろそろ、攻略を始めよう!やれ、アステリオス』

 

そして、黒き牡牛の突進は行き止まりの壁に大穴を開いた。

まさに彼しか出来ない力技だ。

この迷宮の設計者であるダイダロスが血を吐くような暴挙であった。

 

ミハイルとニョルズは秘密通路を発見し、アステリオスが破壊する。

途中に食人花や牛のモンスターと融合する穢れた精霊に接敵したが、相手が攻撃する前にアステリオスの咆哮で動きを止められて、投げ出した大剣と両刃斧で魔石を砕かれた。

 

見敵必殺。それはソロで迷宮深層を探索する時、もっとも重要な心得だ。

無駄に時間をかけると、敵に囲まれて死ぬ。

ミハイルとミカエルの訓練で、アステリオスは優れた戦闘勘と判断力をさらに磨き上げた。

 

《こちら、リド。ミカエルっち、聞こえるか!》

 

『ああ、どうした?神を見つけたのか?』

 

《いや、手ごわい相手と戦って、逃がされた。仮面を被っている凄腕だ》

 

『それほどの実力者があるのか!?』

 

「噂の怪人かもしれない。怪我はないのか?」

 

《全員無事だ》

 

『それはよかった』

 

《心配要らねえだろけど、一応報告するぜ。それじゃ》

 

リドとの通話が終わると、何か思い出したようでフェルズは顔が青くなった。

 

「ミカエル、リドは確かにLV.7ぐらいの実力があるでしょう」

 

『ああ、それはどうした?』

 

「彼が手ごわいと評した怪人がロキ・ファミリアにぶつかたら、どうなる?」

 

ミハイルとミカエルは目を閉じて、シミュレートをする。

この迷宮の構造。

敵の強さ、ロキ・ファミリアの実力。

噂に聞いた、フィンの判断力。

 

「断言できないよ」

『もし、慎重なフィンが早く探索を切り上げて帰還したら、たぶん何も起こらないだろ』

 

「そうでなければ?」

 

「フィンは重傷を負うか死ぬよ」

『俺が敵なら、真っ先にフィンを狙う。副団長のリヴェリアは外で待機している今、フィンが指揮不能の状態に陥れば、ロキ・ファミリアの戦意が低下する。古い幹部といえば、ガレスもいるけど、彼は指揮官に向いてねえ』

 

「…たとえ相手がLV.7でも、フィンは易々に倒されないでしょう?他の幹部陣も無能ではない」

 

「問題は戦場だ。敵は地利を得ている」

 

アステリオスも分かってきたようだ。

彼の言う通りだ。

蟻の穴のような複雑な通路と計り知れない隠れ道があるこの人造迷宮は、敵の大きな優勢だ。

何か規律があるように見えるが、初探索で見破ることはできないだろ。

最初の奇襲で最大な戦果を得るためにも、フィンを狙うのは合理的だ。

 

「攻略スピードを上げよう」

『中心部を制圧すれば、救援もやりやすい』

 

ミカエルは槍を投げ出し、目の前の壁を粉砕した。

アステリオスは右側の壁を潰した。

フェルズはリドチームと連絡して、情報を共有した。

 

そして、

 

「タナトス様のために!」

 

敵を道連れしようと、死神(タナトス)の眷族は特攻を始めた。

 

「なるほど、闇派閥の主神はタナトスか」

『数多く死を司る神の中でも知名度が高いほうだ』

 

「タナトスだけではあるまい。狩猟者のファミリアはタナトスの眷族ではない」

 

「しかし、これで詰んだよ」

『神の血があれば、追跡できるぜ』

 

アステリオスの咆哮で気絶したタナトス・ファミリアの構成員を見て、ミカエルは魔術の準備を始める。

元の世界では、隠れようとするまつろわぬ神を発見するのは難しい。

権能で自分の気配を消すのは容易いことだから。

 

しかし、下界(ここ)で神の力は使えない。

 

 

3、

 

仮面の怪人がフィンを重傷を負わせてから、レフィーヤは敵の罠に嵌って、仲間たちとはぐれた。

友人であるフィルヴィスも傍にいない。

それでも、仲間と合流するため、彼女は前に進んだ。

 

そして、その神と神殺しと会った。

 

「え、ミカエルさん…」

 

赤髪の戦士はローブを纏う魔術師と全身武装のミノタウロスとともに、神に見つめる。

レフィーヤの声を聞こえているはずなんだが、無視された。

眼前の相手がそれほど重要なのだ。

 

「タナトス神ですよね」

『探したぞ』

 

「………ハハハハハハ、毒にも使い道によると薬になる、ということか。まさか、ウラノスが貴様と手を組んだとは。最大のイレギュラー。忌まわしき神殺しの獣よ」

 

「…神殺し?」

 

下界最大の禁忌を耳にしたレフェーヤは唖然とした。

 

「僕にはこの世界の神殺しの定義は分からないですよ」

『殺してねえし、死んでもねえ。送還されるだけじゃねえか』

 

 

「さすが、神を殺し、その権能を奪った戦士。貴様がやっていたことに比べれば、下界の神殺しは罪と呼べないさ。で、俺をどうするつもり?」

 

「ウラノスに渡します。抵抗すればこの場で送還させますよ」

『穏便に済ましてえのだ。フェルズ、アステリオス、俺の後ろにいるエルフのお嬢さんにも、神を送還させる現場を見せたくはねえんだ』

 

「どちらも嫌だな。こんな俺にも矜持がある。神殺しの言いなりにするのは拒否する」

 

タナトスは懐から短刀を取り出し、自分の胸に刺した。

 

「なるほど、戦うつもりですか?」

『受けて立つぜ』

 

神の力(アルカナム)』を発動したタナトスは無数の光の玉に包まれ、姿を霞ませる。

神威によって、人造迷宮(グノッソス)全体が震えている。

レフィーヤとフェルスという魔術師は思わず膝を突いた。

ミノタウロスは全身に力を込めて、この威圧感を抗っている。

そして、ミカエルは槍を持ち、笑い出した。

 

タナトスが繰り出せる攻撃は一回しかない。

だが、人は神の力に抗えない。

よって、ミカエルは何もできずに消え去る運命だ――

 

しかし、次の瞬間。

二匹の狼がタナトスの体を貪っている。

黒い狼はまるですべての光を飲み込むような闇色の毛を持ち、滅びそのものの化身みたいだ。

 

「え……」

 

「うぐ……スコルとハティだと……っ!」

 

タナトスは目を見張り、自分の手と足を咀嚼している神喰らいの獣の名前を呼んだ。

 

「……ミカエル?」

『いや、俺はなにもしてねえぞ。彼らは自分で飛び出した……ああ、なるほど』

 

ミカエルはレフィーヤと目を合わせた。

 

「ロキの眷族がここにいるからか…」

『そのようだ』

 

「……こいつらに喰らい続けると本当に死ぬ。死んで復活するのは面倒だから、負けを認めるよ。大人しく天界に戻る。」

 

そして、タナトスは光の柱となって、天井を貫き、まるで逆流する滝のように空に向って伸びていく。

二匹の狼はレフィーヤにちらりと見ると、ミカエルの影に帰った。

急展開に頭が追いつけないレフィーヤに代わって、フェルズは疑問を投げた。

 

「……あの狼達は一体?」

 

『ロキの孫だ』

 

「はあ!?」

 

「待て、これはどういう意味ですか!?」

 

流石に、看過できない発言に、レフィーヤは声を出した。

 

「お前こそ、ロキの家族を把握してないのか?……この世界の神の関係性は不明だから、違う可能性があるが。とにかく、僕が知っていることから話そう、ロキはアングルボサと三つの子供をもうけた、長男フェンリル、次男ヨルムンガンド、長女ヘル。こいつらはスコルとハティ、太陽喰らいと月喰らいの狼で、フェンリルの子供だ。父さんと祖…母大好きの子だから、あんたを助けるためにタナトスに攻撃した」

 

「なんで、ロキの孫が狼なのですか!」

 

『狼の形が好きだけだそうだ。種族は巨人だぞ。ウラノスの本体も巨人だ。神が下界に来る時、できるだけ人に近い外見に変えるのは規則だそうだ』

 

「……後で、ロキに聞きます」

 

『それでいい。じゃ、武運を祈るぞ。もう会うことはないだろ』

 

ミカエル一行は来る道に戻り、たちまち姿を見えなくなった。

レフィーヤは空を見上げて、外に繋がる大穴を上り始めた。

さっきの振動は迷宮全体に伝わった。

仲間たちは間もなくここに集まる。

 

どうやって説明するのか?

この問題はレフィーヤに頭を悩ませた。

 

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