帰る場所を君に   作:小池蒼司

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4.冒険心

【ガーベラ】

・・・ガーベラは、キク科ガーベラ属の総称。

花言葉は「冒険心」

______________________

 

 

 

「シオンさんって不思議な方ですよね」

 

外で迅とシオンが戦闘をしている中、玉狛では修行中の三雲修、空閑遊真、小南桐絵、烏丸京介、宇佐美栞の四人が休憩がてらに談笑していた。

 

「不思議っていうか大分変よアイツ」

 

修の問いに答えたのは小南である。小南はシオンよりもずっと前からボーダーに属しており、年下ながらによく世話をしていたらしい。

 

「でもシオン先輩は迅さん同様(ブラック)トリガー持ちだし、ふわふわした雰囲気とは反対に実力の方はかなりの人だぞ」

「じゃあ小南先輩と迅さんとシオンさんだとだれが強いんだ?」

「うーんそうだな……」

 

遊真の質問に悩む烏丸を横目に、代わりに宇佐美が答えた。

 

「一番は迅さんで、その次がシオンくんじゃない?って言ってもシオンくんの場合は黒トリガー使ってる時限定だけどね」

「ほう……?」

「シオンくんの黒トリガーはシオンくんと迅さんにしか適性がなくてね。だから本部もずっとシオンくんに持たせてるんだけど、それがまた相性が良くてさぁ」

 

首を傾げる遊真と修に宇佐美が分かりやすいように説明を始める。シオンの黒トリガーと迅の黒トリガーについてだ。

 

「迅さんの風刃は遠隔斬撃が出来る狐月に似たトリガーなんだけど、シオンくんのは本当に特殊で私も短刀のようなものとしか説明が出来ないんだよね。」

「た、短刀??」

 

ずる、と修のメガネが少しズレた。短刀のようなトリガーなんて存在するのか、実際にみた訳では無いし修には分からないが、実際シオンはそれで戦っているのだという。

 

「シオンくんのサイドエフェクトは知ってる?触れた相手の思考が十分間読めるってやつなんだけど……」

「いえ、今初めて知りました」

「そっか、まぁ今言っちゃったから話し続けるけど!で、その黒トリガーの短刀みたいなもので相手を攻撃するんだけど、どうやらシオンくんのトリガーはテレポートが出来たり足の速さが格段にあがるみたいでね。」

「なるほど」

「シオンくんは元々の足も速いし危機回避能力も高いからSEさえ発動すればそこそこ素手でも戦える強さなんだけど、まぁそれもあって使ってる黒トリガーとはかなり相性いいみたいなんだよね。不意打ちや素早い攻撃は優れてるよ。デメリットは超接近戦じゃないと役に立たないのと、あまり大きい武器じゃないし小さいから攻撃力が高くないことかなぁ。まぁそれでも!玉狛が誇る!先輩なのです!」

 

カチャ、とメガネに手を当てドヤ顔をする宇佐美を見て何故か烏丸が頷いた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

『狙撃手が……全滅しました……!』

 

その連絡は敵も味方も関係なく、確実に全員を驚きで震わせた。

嘘だろ、なんて声も出ないほどにそれは一瞬の出来事だった。

 

 

 

戦闘開始からわずか数分。一発の弾丸が彼に撃ち放たれ、それは彼の頬を掠めた。

撃った狙撃手、奈良坂は未来を予知し避けられてしまう迅を狙うよりも先に、戦いが好きではないという彼を狙ったのだ。

 

『よせ奈良坂!!』

 

しかし、それが間違いだった。

 

撃たれた彼はそれが嬉しいかのように笑顔で、そしてまるでこちらが見えているかのように、その笑顔をこちらへ向けた。

 

それからは一瞬だった。

 

気付けば緊急脱出、わけも分からぬまま後から狙撃手が全滅したと報告を受けた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「あー、良かった上手くいって」

 

 

ーー危なかった

 

 

屋根の上、そよぐ風に髪を揺らしながらシオンはため息をついた。

 

「何一人で突っ立ってんだ?」

「悠一」

 

トン、と隣に降り立った迅が聞いた。

「いい働きだったよ、狙撃手瞬殺と俺のサポート、ナイスというかパーフェクト?期待以上だった」

「そっか、なら良かったよ」

 

目を伏せて夜風を感じた。人の役に立てたのならそれでいい。それだけで満足するべきだ。

 

「にしても、お前のテレポート優秀すぎない?」

「だからこれテレポートじゃないんだって」

 

シオンの黒トリガーに付属されている能力として移動速度の倍増がある。目に見えないほどの速さで移動することが出来、元の機動性から思い切り走ればテレポートしているかのように見えるのだ。迅曰く、まるで忍者のよう。

今日の狙撃手襲撃は全てそういったシオンの活躍により終えた。

 

「でもま、本当相性いいよな、俺達は」

「……だな。お互いに師匠に愛されてるのかもな」

「ーーさ、そろそろ本部に行こう。最後の仕上げだ」

 

 

 

 

 

 

 

 

会議室に入室すると見慣れた上層部の面々が揃っていた。

先程まで戦闘していたとは思えないほどのおちゃらけた態度で入室する迅と、数分で隊員数名を緊急脱出に追い込んだとは思えないほどの静けさを持ったシオン。

正反対の二人が揃って会議室に顔を出した。

 

やってきた理由は一つ、「風刃」を手放す代わりに空閑遊真の入隊を認めること。

 

 

「そんな事せずとも私は太刀川たちとの規定外戦闘を理由におまえからトリガーを取り上げることも出来るぞ?」

 

城戸の目は鋭く迅だけを見ている。

 

「その場合は当然太刀川さんたちのトリガーも没収なんだよね?それはそれで好都合。平和に正式入隊日を迎えられるならどっちでもいい」

「没収するのはおまえのトリガーだけだと言ったら?」

「試してみなよ、そんな話が通るかどうか」

 

まさに一触即発とはこの事である。

火花が散りそうなほど見つめ合う二人になにか言及出来る人間はここに一人しかいない。

 

「もし玉狛に遊真、黒トリガーが入隊すれば確実にうちは強くなる。けれどそれじゃ分が悪いから何としてでも阻止したい。そう思って今回の襲撃を仕掛けてきたのなら風刃を差し出す代わりに遊真の入隊を認めるっていうのはいい条件だと思います、むしろ良すぎる。迅の風刃だけでトップチームを蹴散らしたんですよ、風刃のその力も考慮した上で考えてください」

 

シオンの発言に城戸は迅に向けていた目線をシオンにずらす。

 

 

「さぁどうする?城戸さん」

 

 

 

 

 

 

その後、色々な話をした上で取引が成立した。

これで遊真は正式入隊日を迎えることが出来る。

 

玉狛に帰宅した迅とシオンは、屋上に二人並んでぼんち揚げを齧る。

 

「何とか上手くいったな」

「なぁ良かったのか」

「何が」

「最上さん」

 

 

ぼんち揚げの袋に入れた手がぎこちない。明らかに動揺しているのが分かる。珍しい。

 

「仕方ないさ、こうするしかなかったんだ」

 

何事もないようにぼんち揚げをまたひとつ頬張った。

 

「僕は寂しいと思ったよ。そんな簡単に手放しちゃうんだって」

「分かってるだろ、未来のためだって」

「そりゃ、分かってるよ。けど、悠一があんなに」

「もういいんだよ。俺達は未来を、前を見なくちゃいけない。いつまでも過去に縋ってたら始まらないんだよシオン」

 

ーーそれは僕に言ってるのか?

 

「…うん」

 

今日のぼんち揚げがやけにしょっぱく感じた。

 

 

 

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