空色少女は働きたい   作:とはるみな

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ロールとセーラーな集会 1

 人は「神なんていない」そう思っていても、自分ではどうしようもない状況に直面した時つい神に頼ってしまう。そんなツンデレな生き物である。

 故にツンデレキャラとは普通の人間のことを指すのではないか。俺はそう考える。

 つまり銀髪や緑髪にツンデレ扱いされている俺は普通の人間なのだ!

 

 

 

 

 ーーーって、何考えてんだろ…俺。

 

 揺れに身を任せ、窓の外をぼんやり眺めているうちに思考がトリップしてしまっていたらしい。

 

「何してるのさ…」

 

 考えを振り落とすべく頭を横に振っていると、隣に座る銀髪小人に変なものを見る目で見られた。

 確かに銀髪小人からしてみれば、俺は窓を見てたかと思いきや、いきなり頭を振り出した狂人かもしれないが、その目はやめてくれ。

 

「いやちょっと……変なこと考えちゃってて」

「あんまり思い詰めすぎないようにね。考え込むのは君の悪い癖だよ」

 

 銀髪小人はこれからのことを考えていると思ったのだろう。実際は違うけど、そのことを考えていたことにしとこう。

 人類皆ツンデレなのだー、とか狂ったこと考えてことが知られたら死ねるぞ。

 うん、頭おかしいんじゃねーの俺。

 

「ところでさ、ソラちゃん」

「ん?」

「何でバスなんて使う羽目になったのさ」

「仕方ないじゃない。交通手段なんてないんだから。電車よりはマシでしょ」

「そうだけどさ。見てよ、僕ら凄い注目浴びてるんだけど」

 

 今回の集会場所である物件があるのは町外れ。住んでいるぼろアパートから距離にして約30キロも離れている。

 徒歩では遠く、電車は人が多すぎる。

 故に電車よりはマシかとバスを使ったわけだが、それでも多くの注目を集めてしまっていた。

 やはりパーカーを置いてきたのは失策だったか、無理矢理にでも持ってこれば良かった。

 

「見なければいいのよ、緑髪を見習えば?」

 

 緑髪に反対されて素直に従ってしまったことを悔やみながら、通路を挟んだ反対側。黒髪剣士の隣に座っている緑髪を指差す。

 通路側に座っている所為もあり、人の視線を多く集めている。にも関わらず我関せずと言った様子で足をぶらぶら振りながら黒髪剣士と会話していた。

 

「……いやー、僕にはちょっと無理かな。ハードルが高すぎるよ……ていうかあの子、何であんなに自然体でいられるのかな…?」

「緑髪のことなんて私に分かるわけないでしょ。本人に聞きなさいよ」

「なんて言うかさ。ソラちゃん、ロールが入ってから当たりが厳しくなったね……」

「し、仕方ないじゃない。こういうキャラだったんでしょ、私」

「お、おう。分かったから離れて離れて。顔が近いよ」

 

 こちとらやりたくてやってるわけじゃない。

 その意を込めて睨み付けると、銀髪小人は顔を横に逸らした。

 

「はぁ……それにしても行きたくないなぁ…帰りたいなぁ…」

「激しく同意するわ」

 

 バスはちょうど中間地点。あと二十分としないうちに目的地付近に到着するだろう。

 ……胃が痛い。本当痛い。

 

「ソラちゃんはいいじゃん。女だと思われてるんだし。僕なんてホラ。元男だってみんな知ってるのに、セーラー服だぜ? あはは、死にたい」

「銀髪は良いよね、元男だって知られてるんだし。私なんて演技しないといけないのよ。しかもバレたら殺されるかもしれないのに。えへへ、吐きそう」

 

 俺と銀髪小人との間で火花が散った気がした。

 

「いやいや僕の方が辛いって。考えてみてよ。絶対笑われるじゃんか。もしかしたらドン引きされるかもしれないんだよ?」

「いやいやいやどう考えても私でしょ。そっちはただセーラー服着てるだけでしょ。命の危機がないじゃない」

 

「ソラちゃんはバレなければ何の問題もないじゃんか! 僕は確実に名誉が傷つくんだよ」

「私はバレなくても演技するだけで精神的ダメージがエグいのよ!」

 

「僕の方がーーー」

「私の方がーーー」

 

「「絶対辛い!」」

 

 

 

 

 

 

 

「何か二人して言い争ってますけど、止めなくて良いんですか。レンさん?」

「いや、あの視線の中に飛び込むのは流石にな…。殴り合いになりそうなら止めるけど、見た感じただ愚痴ってるだけみたいだし。放って置いても大丈夫じゃないか?」

「そうですか? じゃあ他人のフリでもしてましょうか」

「そうだな」

 

 

 

 

 

 

 

 

 目的地は情報通り、人通りの少ない通りにあった。

 廃墟と化した日本家屋が並ぶ中、ドスンと真ん中に居座っている大きめな西洋家屋。

 その裏には墓地がズラリと並んでいて、不穏な雰囲気を醸し出していた。

 いかにもゴーストハウスと言った相貌だ。

 

 自分の顔が引きつっていくのが分かる。

 

「馬鹿じゃないの? 何でこんな家に住もうと思うのよ…」

 

 今にもUターンして帰りたい。そんな衝動を抑えながら、足を進める。

 

「うわ…本当に墓地裏だねー。アンデッドいっぱい出そうだよ…」

「雰囲気ありますよね! ドキドキします!」

「うん、中々デカいな。いいな、ここ」

「ぜんっぜん! よくない! 黒髪、貴方馬鹿なの!?」

「ソラちゃん、大丈夫。お化けが出ても僕が退治してあげるよ」

「私も守ってあげますから! 怖いの怖いの飛んでけー!」

「うざ……」

 

 しかし何だ。能天気なこいつらを見てたら、若干恐怖が薄れた。

 まぁ、絶対に感謝はしねーけど。

 

「じゃあそろそろ入ろうか、準備はいい? 特にソラちゃんとレーテちゃん」

「…うん、大丈夫よ。演じ切れるわ」

「僕も大丈夫。もう諦めはついたさ」

「オーケー。それじゃ鳴らすぞ」

 

 黒髪剣士が呼び鈴を鳴らすと同時。

 不意に玄関の扉がギィと開いた。

 

「ふん、何か騒がしいと思ったら盟友達か。我が城へようこそ、歓迎するぞ盟友達よ」

 

 扉の隙間からひょこっと顔だけ出した紫髪は、高慢な態度でそう言って顔を引っ込めた。

 

「え、ここアイツの家…?」

「みたいだねー。誰がこんな家を、って思ってたけどそうだね。彼なら喜んで住みそうだよ」

 

 疲れた顔して呟く銀髪小人。

 多分俺も同じような顔をしてると思う。

 

 俺は銀髪小人と顔を見合わせて、深い深いため息を吐いた。

 

 

 

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