遡って、二度目の青春。   作:猟奇的少年A

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なんか、続きを期待してくれてる人が多い…!
リアルの問題もあって投稿頻度は遅いと思いますが、ご了承下さい…。


2015年、8月〜
再会と夏休み編:十千万での夜。


「急に抱き付いて驚かせちまったよなぁ…。それに、遊びに行くって予定も潰しちゃったし……」

 

 

 最愛の妻、高海千歌との再会を果たした日の夜。俺は海辺のベンチに座り、ぼんやりと海を眺めていた。

 

 

「…やっぱ、ここから見る海は綺麗だな」

 

 

 船の洋燈に照らされて、遠くで美しく光を放つ海。

 昔、千歌とのデートで良くここに来ていた。海なんて見飽きてるけど、潮風に撫でられながらたわいも無い話をするのがとても楽しくって、近くのコンビニで買ったみかんアイスを二人で分けて食べてたのを良く覚えている。

 

 

「最後にデートをしたのは、何時だったっけ…」

 

 

 撮影やインタビュー等で仕事が忙しくなっていて、千歌に寂しい思いをさせてしまっていた。梨子達がなんとか時間を作ってくれて、週末にデートをしようって言っていたのに……彼女はその前日に死んでしまった。

 

 

「…でも、また千歌に会えた……」

 

 

 真っ赤になって動揺していた彼女の熱が、まだ腕の中にある気がする。それがとても嬉しかった。

 

 

「これって、一体どう言う事なんだろうな…」

 

 

 俺は善子のようにSFチックな事に関しての知識は無いし、この事を言った所で誰も信じたりはしないだろう。俺だって時を遡って来たなんて言われても、厨二病を拗らせてるのか…程度にしか思わないし。

 とは言え、俺が時を遡っているのは事実。一体何故…?

 

 

「もしかして、死ぬ前の夢とか? …試してみるか」

 

 

 ゆっくりを立ち上がって、靴を片方だけ脱ぐ。

 

 そして─

 

 

『ゴンッ!!!』

 

 

 ─ベンチの脚を本気で、それも裸足で蹴り上げた。

 

 

「ぃ゙──ッ!?」

 

 

 もちろん痛くない訳が無く、俺は崩れるように倒れ、その場で足の指を押さえながら蹲った。

 

 

「ヤバい…これ、死ぬ……マジ死ぬ……!」

 

 

 涙を堪えてのた打ち回る事5分。漸く痛みが落ち着いて来た俺は、目尻に溜まった涙を拭いながら起き上がり、もう一度ベンチに腰を下ろす。

 

 

「少しは加減すりゃ良かった…。ベンチから除夜の鐘みたいな音出てたし…」

 

 

 抱える右足の指は赤紫に腫れていて、少しだけ皮が擦り剥けていた。下手したら骨が折れているかも知れない…。

 

 

「でも、これで夢じゃ無いってわかったな」

 

 

 そもそもこれが夢なら感覚なんて無いだろうし、涙が出る事も無いだろう。

 …わかったのは良いが、腫れている所から異様なまでの熱を感じる…。あっ、少し血が滲み出て来た…。

 

 

「取り敢えず、落ち着いて考えを纏めたいし…一旦家に帰るか…」

 

 

 そこで俺は漸く気付く。今の時刻は夜の11時、田舎な沼津にはもうバスは来ない。そして、ここから実家まではおよそ2キロ弱。

 

 普段なら良い散歩になると思うが…

 

 

「うん、歩けそうにもねぇな。」

 

 

 立ち上がろうとしても痛みで倒れてしまった。

 

 

「……やべぇ、これじゃ帰れねぇじゃん…」

 

 

 今はちょうど真夏。それも相まって脂汗と冷や汗がダラダラと流れて止まらない。

 

 …あぁ、こりゃ死んだな──…

 

 

 

 

 

 

 ▽▼ ▽▼ ▽▼

 

 

 

 

 

 

「もぅ! やっぱり今日のせーくんは変だよ!?」

 

「ご、ごめん…」

 

 

 …──そう思っていた時期が俺にもありました。

 

 

「ったく、私が砂浜を通ってなかったら今頃死んでたぞ?」

 

「美渡ねぇほんと助かった…」

 

 

 いっその事こと、何時間でも掛って良いから這いつくばってでも帰ろうかと思っていた時、偶然近くのコンビニに酒の摘みを買いに来ていた美渡ねぇが俺に気付き、十千万まで連れて来てくれた。

 

 美渡ねぇが帰って来て玄関まで降りて来た千歌は、俺が居る事に驚いて逃げようとしたが、足に気付いて急いで救急箱を持って来てくれた。すごく心配してくれて、しかも涙目で。…やっぱり俺の妻って最高だわ、マジで。

 

 

「…はいっ、これで手当ては終わったわよ?」

 

「志満ねぇもありがと。明日の仕込みとかあるのに手当てしてくれて…」

 

「気にしないで良いわよ? 可愛い弟の手当ての方が大事だもの♪」

 

 

 そう言って志満ねぇは俺の頭を優しく撫でてくれた。流石はやんちゃでよく怪我をする妹とその親友の手当てをしているだけはあって、足には綺麗で痛みを感じさせない様にテーピングが施されていて、その後の対応も練れてらっしゃる。

 

 

「多分骨は折れていないと思うから病院には行かなくても良いと思うけど…。少しの間は激しい運動とかはダメよ?」

 

「りょーかい」

 

「千兎は運動なんてしないだろうし、心配無いだろ」

 

「いや、結構するからな? これでも俺、アウトドア派な幼馴染しか居ねぇし…」

 

 

 俺って友人少なかったし、遊ぶ相手と言っても幼馴染である千歌と曜、それから果南程度だった。Aqoursが出来てからはもっと増えたけどな。

 

 

「せーくん? なんで怪我してたの…?」

 

「ちょっとドジってな。転んで足を打ち付けちまっただけだ」

 

「…?」

 

 

 そう言うと千歌は不思議そうに眉を顰めた。何かと思い、首を傾げると…

 

 

「朝から気になってたんだけど…話し方、変えたの?」

 

「ん? あっ……」

 

 

 つい普段通りの話し方をしていたが、昔の俺は一人称が『僕』だった。俺にとっての普段は、ここに居る皆にとっては未来。彼女達からすれば急に話し方を変えた様に見えるのか…。取り敢えず適当に誤魔化しておこう。

 

 

「ぁ、あぁ、まぁな。こっちの方が男っぽいかなって思ってさ」

 

「話し方だけ変えても、格好があれだからなぁ?」

 

「うぐっ…!」

 

 

 美渡ねぇの一言が胸に突き刺さった。

 俺は時間を逆行している。要するに、()()()()()がある前までのボサボサ髪に暗い色の服ばかりの『顔は良いのに格好が残念』と言われていた頃の俺にまで戻っている訳だ。

 さっきから目に髪が入って鬱陶しかったんだよな。家に帰ったら何時も通りの髪型に戻そう。…いや、この場合は大人の時のって言うべきか?

 

 

「千兎くん。今日は泊まって行くでしょう?」

 

「えっ…」

 

「そんな足じゃ帰れないでしょうし…ね?」

 

「あー…」

 

 

 どうしようかと隣を一瞥すると、真っ赤になって俯いてる千歌の姿が。朝の事を思い出して恥ずかしがっているのだろうか? …だとしたら可愛いんだが。そうじゃ無くても可愛いけれど。

 

 

「じゃあ、世話になって良いか?」

 

「っ!?」

 

「えぇ、千兎くんのお母さんには私から連絡しておくわね? 千歌ちゃん、良かったわね♪」

 

「なっ、何が!?///」

 

「ふふっ、嬉しそうね♪」

 

「──ッ!///」

 

 

 顔から湯気が出るのでは無いかと不安になるくらいに顔を赤く染める千歌。隣で美渡ねぇは面白そうにニヤニヤとして、そんな二人を志満ねぇが母親の様な優しい笑みで見つめている。

 

 …あぁ、また目頭が熱くなって来た…。この三姉妹が楽しそうにしているのを最後に見たのは、何時だったかな……。

 

 

「そ、その…せーくん…?」

 

「ぁ…、どうした?」

 

 

 美渡ねぇと志満ねぇが違う方向を向いている間に、千歌は俺の耳元まで顔を近付けて…

 

 

「…今日は遊べなかった分、いっぱいお話ししようね…?」

 

 

 そう囁いて、目を合わして優しく笑った。

 

 

「っ…!」

 

 

 あぁ、まただ…

 

 

 

 

 

 

       …俺はあと、何度千歌に惚れ直せば良いんだろうな…。

 

 

 

 

 

 

 ▽▼ ▽▼ ▽▼

 

 

 

 

 

 

「ふぅ、もうお腹いっぱいだよ〜…」

 

「俺も…少し食い過ぎた…」

 

 

 晩飯を頂き、俺は千歌の部屋に敷かれた布団に寝転がっていた。千歌はベットの腰を下ろして、海老のクッションを抱いている。

 

 

「…ねぇ、せーくん…」

 

「ん〜?」

 

 

 ゴロンと寝返りを打って千歌の方を向くと、どこか照れ臭そうな表情をしていた。

 

 

「なんで朝、チカの事を抱き締めたの…?」

 

「…」

 

 

 …さて、なんて答えようか。どうせ事実を言った所で信じて貰えないだろうし、適当に誤魔化しておく事にしよう。

 

 

「…少し、怖い夢を見ててさ…」

 

「怖い夢…?」

 

「っそ。いやー、あれはマジで怖かった…」

 

「…だから泣いてたの?」

 

「なんか千歌の顔を見たら安心しちゃってさ。それで泣いちまったんだよ」

 

 

 少し適当過ぎたか? いや、でもまぁ…これくらいが丁度良いだろう。

 

 

「そっか…」

 

 

 もう一度寝転がろうと後ろに倒れようとする。でも、背中が布団につく事は無かった。

 

 

「…千歌?」

 

「…」

 

 

 何故か千歌に抱き締められていた。胸元に顔を埋めているせいで表情は見えないが、千歌からは何処か物哀しさを感じる。

 

 

「だいじょーぶ、チカはここに居るからね」

 

「ッ…?」

 

 

 まるで俺の心情を見抜いているようで、千歌は安心させるように柔らかい笑みを浮かべた。

 

 …これは不味いなぁ…、俺ってこんなに泣き虫だったっけか…?

 

 

「えへへ…なんだか恥ずかしいね……?」

 

「…そう、だな……」

 

 

 あれ…? なんか、やけに眠い……。もしもここで寝たら、どうなるんだ…?

 

 もしも、これが夢なら…醒めてしまうんじゃ…!

 

 

 何とか意識を保とうと舌を噛む。だが、全然力が入らない…。

 

 

 折角会えたのに…? 嫌だ…、嫌なのに……!

 

 

「おやすみ、せーくん…♪」

 

 

 

 だめ、だ…────

 

 




…あれだなぁ…、書き直そっかな……

あっ、今決まってる主人公の設定、下に載せときますね。


【白咲 千兎】
白髪に紅色の瞳をした兎の様な青年…だった。
妻である千歌が亡くなってしまい、精神的に危ない状況になっていた曜と果南が落ち着いた後に自殺をし、目が覚めると高校時代まで時間を逆行していた。

好きな事は本を読む事と、妻である千歌と戯れる事。
特技はギター演奏と歌唱。大人だった頃はバンドを組んでおり、Gt.Voを務めていた。

父親は幼い頃に病気で亡くなっており、母親と二人暮らし。…と言っても母親は仕事が忙しく、家に帰って来るのは月に一度程度。

千歌と砂浜で交わした約束を今度こそ守ると決め、二度目の高校生活を送る事に。
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