「んー?君に何ができるんだい?」
「俺だって仮面ライダーになってやる…!」
戦兎はそこで拓哉の腰にスクラッシュドライバーが巻かれていることに気付いた。
「やめろ!刺崎!」
そこで、エイマもドライバーに気付く。
「あはは!まさかそれで変身する気かい?無理に決まってるだろ!」
しかし、刺崎の決意は揺るがない。
「やってみなけりゃ、分からない!」
そう叫んだ刺崎の眼光が赤色に煌く。その光が伝播し、左手のボトルが変化する。
「まさか…」
エイマはそこで自身の誤算に気づく。戦兎達の居場所を見つけるため、刺崎に遺伝子を残した。それが彼に呼応するはずはなかった。が、しかし。目の前で起きていることは明らかに遺伝子の呼応によるものである。
刺崎がボトルを捻り、ドライバーへ装填する。それと同時に、ドライバーに変化が起きる。
《ヴェリノラッシュドライバー!》
《スコーピオン!》
ボトルを装填した勢いのまま左手を伸ばし、拳を握る。そして、レバーを右手で押す。
「変身!」
刺崎の足元からスクラッシュドライバーに共通するビーカー状の物体が現れる。その中に満たされているのは紫色の液体。そして後ろにある巨大な針がビーカー状の物体を割る。
《スコーピオン!スコーピオン!ヴェリノスコーピオン!》
《フハハハ…フハハハハ!》
変身が完了した刺崎の姿はブラッド族に似たようなものであった。しかし、その姿から悪意は感じられない。右手に携えられた槍、「ヴェリノスティンガー」と相まって、さながら騎士のようだ。
「うそ、だろ…」
目の前で起きたことに戦兎は驚きを隠せなかった。
(刺崎は人体実験を受けていないはずだ。なぜ変身できる?)
(まさか…)
そこで戦兎は変身前の刺崎の目が赤色に煌めいていたことに気付いた。
「そういうことか…」
「どういうことだよ戦兎」
「後で説明する」
「行くぞ、エイマ!」
刺崎は槍を構え、エイマへ迫る。そして、エイマへ一閃する。攻撃が当たったエイマは吹き飛ばされた。
「なっ…!?」
「まだまだぁ!」
ひとっ飛びでエイマに追いつき、さらに追撃を加える。
「ぐっ…」
自身の誤算により少なからず焦っているエイマはその攻撃をもろにくらってしまう。
「(このままじゃまずいな…)」
「残念だけど、ここまでだよ。」
そう言うとエイマは素早くレバーを回転させる。
《Ready go!》
「フンッ!」
そしてエネルギーを込めた右手を地面に叩きつけ粉塵を巻き起こす。
「チッ、おい待て!」
すかさず刺崎が槍で粉塵を払うが、そこにエイマの姿はなかった。
「くそっ…」
呟きつつ、ボトルを抜く。振り向くと戦兎が厳しい顔をしていた。
「あんたがなんで変身できたか、分かったよ。」