モフモフしたいドクター   作:影元冬華

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この先理性を持ったまま来てはいけない。

(モフモフじゃなくてナデナデです)


モフモフしたいドクターtake2

ロドスには魅惑と言う名の誘惑が多すぎる。ドクターは一人図書室で悩んでいた。

 記憶を失っているドクターは少しでもブランクを埋めるため、図書室で静かに書物を漁っていることがある。大体の場合は真面目に本や資料を読みこみ、自らの戦術に生かしたり、各部隊長たちと相談しつつ新しい戦い方を行うことができるのかを検討したりなどしている。

 

 だがしかし、このドクターは手遅れであった。

 

 今日ばかりは真面目に資料などを読むのではなく、若干限界気味になった脳を整理(+クールダウン)するために来ていたのだが、ふと目に入った一つの本が原因で余計にヒートアップしていた。

 他の人からすれば「唯の医療関係の本か」くらいの認識であるのだが、医療知識も持っているドクターからすれば「…まさか」案件の話が書かれていた。

 

 その本の中身を要約し、ロドスのメンバーで当てはめれば「大体頭(臀部)にある【+α】の身体要素には神経が通っている」という事。さらに言ってしまえば、その部分は非常に敏感であると同時に大事な部分であるため、大体は柔らかいもので覆われている…といったことが書かれていた。

 

 

Q:つまり

 

 

「(魅惑のモフモフ達は皆触られると力が抜けてしまうナデナデスポット…!)」

 

 

 

A:理性の溶けた後先を考えられない手遅れドクターの着火剤

 

 

 

 

 

 

 完全にアウトな事案であった。

 

 

▽▽▽▽

 

 後日。執務室には秘書としてリスカムがやってきた。やるべき仕事は事前に伝えてはいるので、今はその処理を執務室にある別のソファーとテーブルでやってくれている。

 ドクターは基本的に週一で秘書を交代させ、持ち回り制にするようにと通達している。理由としては「記憶喪失状態なのでいち早くメンバーの性格や得手不手を把握し直したい」「名前と顔が一致しないと困るので多くのメンバーとコミュニケーションを取れるようにしたい」という意見を組んでの事である。このルールを決めたときはまだドクターの煩悩は健全だった。いや、まだ理性がすり減っていなかったというべきか。

 

 

 基本的にリスカムが来てくれるときは書類の整理と物資の移動をお願いしている。リスカムは重装オペレーターという事もあり、力も結構あるのだ。そのため、重いものを持ったりするときは手伝ってもらったりしている。

 

 

「リスカム、この棚を動かすので手伝ってほしい。」

「ん、了解した。少し待ってくれ…よし、今行きます。」

 

 警備報告書をまとめていたリスカムは一度きりのいいところで作業を中断し、ドクターの方へと向かった。高さ2.5mほどの金属フレームの棚は、重さはそこまでではないが一人で運ぶには少々厳しい。2人で棚の端を持ち、その場から移動させる。部屋の中に置くものが増えたので棚を部屋の隅に移動させたかったのだろう。

 

「助かった。…む、時間もそこそこだな。一度休憩しよう。」

「もうそんな時間でしたか。」

「ああ。少し待っていてくれ、今お茶を持ってくる。」

 

 

 そう言うとドクターは執務室と直通の簡易キッチンの方へと歩いて行った。いったいどこで学んだのか、ドクターが淹れるお茶やコーヒー、紅茶などは軒並みおいしいのである。本人曰く「持てる武器は多いほうがいい」とのことであるが、何に対しての武器なのか全く想像がつかない。

 その間にリスカムはテーブルの上に広げていた書類を束ねてファイルに綴じこんでおいた。おそらくドクターはお茶の他に何かしらのお菓子も持ってくるはずだろう。そしてそのお菓子ですらドクターの手作りというのだから本当に何ができるのか、と言うかなんでそんなこともできるのか分からない。

 

 

「───今回は羊羹を作ってみた。龍門からいい茶葉が入ったから、丁度いいだろう。」

「ありがとうございます、ドクター。それにしても、何でドクターはこのような物を作れるのですか?」

「………そうだな、まあ言えるのは『取れる手段と選択肢はいくらあっても困らない』からだろうな。」

「…?」

 

 リスカムは気づかない、ドクターが若干ビクッとしたことに。

 回答までに若干の間があったのが少し気になったが、出された羊羹を口にした瞬間、そんな疑問は飛んで行った。

 

 

「…!おいしい。」

「そうか、初めてだったから少々不安だったのだが…口に合うようで何よりだ。」

 

 

 仄かな甘みと滑らかな口当たり。それでいて後味もさっぱりとしておりしつこくない。一緒に出された緑茶もまた、絶妙な味であり、まさしくピッタリであった。

 リスカムはドクターが出してくれた羊羹に夢中であり、ドクターが「じぃー」っとある一点を見ていることに気が付かない。

 

 

 

 

 ドクターが見つめていたのは、リスカムの頭部、その側面から上に伸びている青い角である。

 

 

「(本によれば、ヴイーヴル(リスカムの種族の事)の角と尾はアーツの発生源であり、尚且つ神経が集中している部分でもあるとのことだが…それが本当ならばリスカムの角&尾とアーミヤの耳はイコールである…!)」

「…ドクター?どうかしましたか。」

 

 

 この時点でのドクターの理性は3/120しか残っていない。理性は残っているが残っていないも同義である。

 じぃ、と見つめたまま動かないし返答もしないドクター。リスカムは頭上に疑問符を浮かべている。

 リスカムがもう一切れの羊羹に手を付けようとドクターから目をそらした時だった。

 

 

 キラーン、とでも効果音が付きそうなくらいに目を輝かせた(見えないが)ドクターがリスカムの角をつぅ、と撫でた。その動作には一片の迷いも無駄も無い。最小限の動きと最短距離での行動、とてつもなく無駄に訓練された無駄な動き、ここに再発動である。

 

 

「ひゃうぁっ!?」

 

 

 まだ羊羹に手を付けていなかったのは幸運だろう。リスカムは普段なら出すことの無い可愛らしい声の悲鳴を上げ、ビクゥッと大きく体を揺らした。

 角に突然触られたことと、そこから伝わってくる何とも言えぬ感触がリスカムを混乱させる。が、しかし。ドクターはそんなリスカムの混乱をスルーして、とてつもなく滑らかな動きでスルスルと角を撫でまわしていく。

 

 

 

「(おお…アーミヤの耳とはまた違うがこれはこれでまた…見た目からして表面はゴツゴツしていると思ったのだがそんなことはない。それどころか磨かれた大理石のごとく滑らかだ…。)」

「ど、ドク、ター…!んぅっ。」

「(角である以上、何からの部分が硬質化した部分であるとは思うが…まさか人肌位の温度もあるのか。あぁ…それにしてもなんという滑らかさだ。ずっと触っていたいものだ…。)」

「まっ…そ、そこ、は…ぅあっ」

「(根元は…おお、ここはまた少し感触が違うのか。少し荒めの手触りだが、頭部に近い関係上ここだけは硬くなっているのだろうな…いやだがそれもそれでまた…)」

「んっ、ふ、うぁ…んんぅ…!」

 

 

 ドクターは気づいていない。角の手触りを堪能することに対して集中しすぎている為に、リスカムの様子が普段とは違ってきていることに気が付いてない。

 リスカムは敏感な角を触られているためか、段々と体がドクターの方へと傾いてきており、口から洩れる声もどこか艶っぽくなっている。顔も赤くなっており、普段見せている凛々しい表情は影も見えない。

 

 しかしドクターはそれに気が付いていない。唯々目の前の角を撫でまわし、堪能しているのである。

 

 

「(………ふぅ、角と言うのもまた興味深いものだ…。次はこの尾を)」

「───ドクター、いったい何をしているのかしら?」

「Escape!!!!!!!」

「逃・が・さ・な・い・わ・よ?」

 

 

 そんなところに現れたのはフランカであった。だがしかし一切気配も音も感じさせない登場の仕方である。なぜここのオペレーターは一部このような技術を習得しているのだろうか。疑問が絶えない。

 そして理性のない手遅れドクターでも本能的に危険を感じたのか、やってきたフランカに声を掛けられた瞬間、猫のごとく軽やかな身のこなしで逃げようとした。が、抵抗空しくフランカに捕まってしまった。

 

 

「Bitte, bitte erbarmen Sie sich!」(どうか、どうかご慈悲を)

「問答無用!!!!」

「Bedauerlich…」(無念…)

 

 

 ドクターがどうしていつも使っている言葉ではなく、別の国の言葉で悲鳴を上げるのかは分からない。が、しかし。そんなことはどうでもいいと言わんばかりにフランカによる渾身の鳩尾ストレートが綺麗にドクターに決まったのであった。

 

 

 

 

▽▽▽▽

 

 後日、共同訓練の時の事。

 護衛を想定した訓練を行っていたフランカとリスカムがある事について話をしていた。

 

 

「ねえリスカム、貴方のアークって確か自分も反動で動けなくなってたよね?」

「…やはり気づきました?」

「当たり前よ。悪戯を仕掛けようとしたのにまっっったく止まらないんだもの。」

 

 

 カウンターアーク。リスカムが使用する技の一つであり、敵をスタンさせる攻撃を繰り出す代わりに自分も反動で短時間動けなくなるというものがある。しかし、この時のリスカムはカウンターアークを使用したにも関わらず、全くスタンしていなかったのだ。

 襲撃犯役をしていたフランカがスタンするタイミングを狙っていたが、いくら待ってもスタンしない、しかし同じ部隊のメンバーはスタンしている為にずっと「????」となっていたのだ。

 

 

「まさかとは思うけど…。」

「そのまさかです…ドクターに好き勝手された時から…。」

「…。」

「…。」

 

 

 

 2人は黙ってしまう。まさかドクターによるセクハラまがいの行為が思わぬ効果を発揮しているという仮説に至ってしまったのだから。

 

 

 

「………フラン「嫌よ!?」返答早すぎじゃないですか!?」

 

 

 

 食いつく勢いで返答したフランカではあったが、結局この訓練の後に理性の無くなったドクターに見つかってしまいモフモフされたのであった。

 

 

 

 

▽▽▽▽

 

「…フランカが来てくれなかったら、今頃どうなっていただろうか。」

 

 

 リスカムは少しだけ、気になってしまった。

 




書いてて思った。これはひどいって


ちょっと蕩けたリスカムちゃんのイラスト待ってます(強欲)
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