(フロストリーフの性格がだいぶ変わっている気がします)
ロドスは毎日騒がしい。
今日も今日とて理性のないドクターの被害者は増えていく。
▽▽▽▽
それは本当に偶々だった。
この日は朝からとても冷え込み、日差しが射していても肌を突き刺すくらいに外は荒れていた。
いつものドクターは、この時間であれば戦術指揮に入り敵の情報と自陣戦力を見ながら戦闘配置を考えていることであろう。あるいは、大量に入ってくる書類を捌いているか。どちらにせよ理性が溶けていくことばかりである。
だが、朝から冷え込み吹雪いている為にこの日は全員が突然の非番となった。ドクターは少々残った書類を早々に片付ければ、やることを探してあちこちウロウロしていた。
「ドローン配備施設の不調は配電盤からの漏電、事務所のボヤ騒ぎはスカイフレアのアーツが漏れたのが原因で…」
「ん?ドクター、ここで何をしている?」
「フロストリーフか。いや、早々に仕事もなくなったので見回りをしていたんだが、なにかあったか?」
「問題は特にない。ただ、珍しくまともなドクターが歩いているなと思ったから。」
「随分とひどい言われようだな…。」
「事実だろう?」
廊下で声をかけてきたのはフロストリーフだった。白い髪に赤い瞳、自分は冷たいと言っているがそんなことはなく、音楽が好きなちょっと不器用な優しい子である。それでいて戦闘面では遠距離攻撃も兼用できる前衛オペレーターであり、戦闘経験も豊富であるがためにとてもありがたい存在であった。
だがしかし、ドクターが気にしているのはそこではない。今は理性があるために自重しているが、その頭部から生えている、いかにもモフモフそうな耳とふわっふわな尻尾に無意識に手を出しそうになっている。耐えろ理性、ここで手を出すんじゃない。場所を考えるんだ。
「フロストリーフこそここで何を?」
「ミルラの手伝いをしていた。薬を入れるビンを運ぶから手伝ってほしいと言われてな。」
「そうか。仲がいいんだな。」
「ん、まあ。」
前を歩くフロストリーフの尻尾がユラユラ揺れる。当たり前なのだが、ドクターに対しては特攻が入るのだ。主に残っている理性に対してである。
「(あれぜったい柔らかいというかもっふもふでしょ。見た目からして完全に気を使ってるの分かるよ。あまり気を遣わなさそうに見えて細かいところまで気にしてこだわってモッフモフじゃん。)」
「…ドクター、一体どこをじっと見ているんだ?」
「無論そのふわっっっふわな尻尾を───ッハ!?」
「…。」
ドクターが尻尾をジィーっと見つめていることに気が付いたフロストリーフはサッっと両手で尻尾を隠す。そのまま尻尾を器用に脚の間を通すように移動させている辺り、完全に警戒している小動物のソレである。目つきは完全に不審者を見るジト目。
ただしドクターに対してその行為は完全にスイッチを入れるものであった。
「フロストリーフ、頼みがある。」
「───私の斧で貫かれるか、斬られるか、それとも大人しく撤退するか選ぶ時間を与えようドクター。」
「話が早くて助かるなぁ!」
「ええい近づくなこの尻尾ばかりを付け狙う変態が!!!」
「ありがとうございますっ!!じゃなかった、尻尾をモフらせてくれ!」
「今日は理性があるんじゃなかったのか!?と言うか本性を突然出してくるな!!」
ワッキワキと両手を滑らかに動かし近寄っていくドクター。フロストリーフは施設を壊しそうな気配がするのでまだ攻撃を加えていない。
気のせいだろうか、若干フロストリーフが涙目になっている気配がする。
「いいかフロストリーフ。確かに私は作戦の指示を出すときやドローンの整備をするときに理性を使う。だがあれは感覚として例えるのならば紙やすりで削られる豆腐だ。それに対して今私が残っている理性を消費した理由は目の前で揺れる至高のMOFUMOFUが私を揺さぶって仕方がないからだ。そう、この理性の揺さぶり方と消え方を例えるとすればそれはまさしくなめとられていくアイスクリーム、あるいはソフトクリームと言っても過言ではない。何よりこれだけの近い距離にそんなものがあって触れることができないとなれば抑えきれない衝動が理性を削ってでも行動に移そうとするんだ。そう、つまりこれは!紛れもなく仕方のない事!いわば生理現象と同じなんだ!」
「何が言いたいかよく分からないがとりあえずお前は危険極まりない状態で私の敵であるという事だな!!!!!!」
「さあモフらせて私の理性回復に協力してくれフロストリーフ!」
「近寄るなぁー!」
フロストリーフ、涙目である。しかしそれでもドクターに対して危害を加えないことからして、相当気を許しているのも分かる。たとえこんな変態であろうとも根はしっかりしているドクターである。一応分かってはいる、が本当ならば強烈な一撃を加えて撃退しているであろう。
「…そうだな。ではここで堪能するのは諦めよう。」
「頼むから触るのもやめてくれ…。」
「───だが私は尻尾を諦めないからちょっと失礼!」
「っひゃあ!?まっ、ちょっ、お、おおおお降ろしてくれドクター!?何でいきなり運び…と言うかどこに連れていくつもりだぁ!?」
バタバタと(お遊び程度に)抵抗するフロストリーフと、所縁「お米様抱っこ」をして移動するドクター。
フロストリーフはそのままドクターによってドナドナされていったのであった。
▽▽▽▽
なんやかんやで連れてこられたのは執務室、要はドクターのいつもの居場所である。
フロストリーフはドクターの肩からソファーに降ろされるや否や速攻で尻尾を触られる。その速度とやり方は完全に犯罪者とも受け取れる。
なぜこんなことに対して技術を磨いてしまったのだドクターよ。
「Oh…The fur that cares is wonderful…」(おぉ…気を使っている毛並みはやはり素晴らしい…)
「ふぁっ…んっ。」
「(それだけではない…これだけふわっとさせるにはただ乾かすだけではなく、時間をかけて乾かさなければいけないはず…)」
「んっ、まっ…ド、クター…!」
「(嗚呼…やはりこの感触を堪能しなければ何もできない…いっそこのまま埋もれて眠りたいくらいだ…)」
「ふみゃあぁぁ……。」
もふもふもふもふ。なでなでなでなで。
力加減を変え、撫でる方向を変え、時折少しだけ力を込めて揉んでみたり。
ドクターはフロストリーフの尻尾を堪能している。
だがしかし、触られている当の本人はそれどころではない。鋭敏な尻尾を容赦なく責められ、抵抗しようにも力が入らない。それどころか、僅かな抵抗でさえも楽しむような素振りをするドクターに対して完全に無力な状態になっているフロストリーフである。
しかしドクターの責めの手は止まらない。尻尾を堪能していた手は、次第に上の方へと移っていき…その頭部にある柔らかな毛でおおわれた耳にも手を出してきた。
「んっ!」
「(おぉおぉおお…耳の毛は尻尾よりも柔らかい…まるで羽毛かと言わんばかりにふわっっふわしているではないか!)」
「ぅあ、ん、ふぁ…。」
「(前に触った時よりも柔らかくなっているとは…やはり気を遣うのは女性特有の事なのか…excellent…。)」
耳の根元を親指と人差し指を用いてつまむようなしぐさで揉んでいく。その力加減は的確であり、フロストリーフは完全に脱力しきっていた。
「(確かフロストリーフは耳の根元…から少し上が一番弱かったはず…。)」
「んぅ、ぁふ、んっ。」
「…ふむ、ここか。」
「んんぅ…。」
「おや?…しまった、少しやりすぎてしまったか。」
ドクターの的確なMOFUMOFUの影響か、フロストリーフは完全に油断しきった表情と体勢で眠ってしまったようである。しかし、今の体勢ではドクターに膝枕された格好であり、ドクターも動けなくなってしまっていた。
すぅすぅと寝息を立てて寝てしまったフロストリーフを起こすわけにもいかず、ドクターは「どうしたものか」とつぶやく。が、元々の原因を作ったのは他ならぬドクターであるため、起こすような野暮はしない。
「…とりあえず一枚。」
動けなくなったドクターはとりあえず、新しいHDDに入れるための写真を一枚撮った。
▽▽▽▽
後日、訓練室でミノムシの様に天井から簀巻きでつられたドクターと、それを標的として遠距離攻撃の精度を上げようとするフロストリーフの姿が見られたという。
『私の!尻尾に!勝手に!触るんじゃない!!』
『ふぅぅん!!!どうした?その精度で私のMOFUMOFUを躱すことはできないぞフロストリーフ!』
『いい加減に…!懲りろ無理性変態ドクターがあああああ!!!』
「はわわ…。」
「まあ、いつもの事ですから。それとミルラさん、今度の作戦でフロストリーフさんと出てもらうつもりですがいいですか?」
「いいですけど…あの、ドクターはあのままで死んだりしませんよね…?…アーミヤさん?」
「すみません、ちょっと私も参加してきます。」
「アーミヤさん!?」
ドクターにはMOFUMOFU禁止令が言い渡された。
ライン生命、あと夫婦喧嘩してる2人がいません。
早く来てよサリア!サイレンス!娘が2人を待っているぞ!!!
(チェンさんは50連ほどでお出迎えしました。すり抜けシャイニングさん)
(あと最初の予定だとチェンさんをおさわりするつもりだったけど予定変更した)