モフモフしたいドクター   作:影元冬華

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前回から2ヶ月近く経ってますね…

予定していた話を書こうとしたらうまくいかなかったので予定変更しました。

追記:活動報告にある御知らせを書きましたので、お時間があったらご覧ください。


もふもふしたいドクターtake5

 サラサラと静かな執務室にペンを走らせる音が響く。ここにいるのは2人だが、ペンを走らせているのは1人だけ。もう1人は何をしているのかというと…

 

 

「(………!)」

「(すごく…見られてる…。)」

 

 

 …揺れる尻尾を目からビームを出しそうなほどに強く見つめていた。

 

 

 

 本日の秘書を務めるオペレーターはプロヴァンス。ループス族(狼系)の狙撃オペレーターであり、天災トランスポーターとしても活躍している。

 プロヴァンスは鉱石病の関係で尻尾が大きくなり、その毛量と大きさはプロヴァンス本人と同じくらいになっている。本人は尻尾を抱き枕代わりにして寝る時もあるらしいが。

 

 それほどに大きな尻尾を、ドクターの前で振りながら作業をすればどうなるか。それはロドスに来てそれなりに経っているオペレーターからすれば、本能的に理解する。というよりは実感する。

 

 

「………プロヴァンス、貞操か命か。どっちか危機を選んでくれ。」

「どっちも嫌だよ!?」

 

 

 プロヴァンスの盛大な悲鳴が響く。同時に、その尻尾は一気に怯えを表すかのように足の間へと巻かれ、その足ですら内股になっている。尻尾が大きすぎて収まりきらないのはご愛嬌。

 しかしそんな姿はドクターにとって着火剤にしかならない。ただでさえ理性がゴリゴリと削れたところへ、可愛い動作が入ってしまえばどうなるか。

 

 

「いいか?まずそれだけ大きい尻尾を目の前にして【待て】をされる気分は非常によろしくないどころか寿命を減らすほどに辛く苦しいのだ。その上今日は非常にいい天気で尚且つこの部屋は日当たりが最高だ。今私の目の前に存在するのは『お日様の光をめっちゃ浴びてフワッフワでぽっかぽかなお日様の匂いがするめちゃくちゃでかいモフモフ尻尾』という超絶最高な状態のMOFUMOFUに他ならない。それを今ここで堪能しなくていつ堪能するのか!!!!!!!!なあ!プロヴァンス!!!!」

「いつになく理性が足りてなくて僕は怖いよ!?」

「いいや理性なら足りているさ!!!こうして最終宣告をしてまだ手を出していない時点でな!!!!!」

 

 

 そう、まだドクターは手を出していないし共通言語を話している。それはプロヴァンスも理解している。

 だがそれ以上に気になっているのは「命か貞操か」という質問。聞けば後戻りできないと感じている(思い知っている)以上、逃げたくてしょうがないのだ。

 

 

「ドクター!!!!お願いだから今日は辞めて欲しいんだけど!!!!」

「つまり今日でなければ堪能してもいいんだな!?」

「そうじゃないよ!!!!」

「そうか。…では、こうしよう。」

 

 

 急に真顔になって姿勢良く立つドクター。そのまま右腕を上げてパチンと指を鳴らした。

 

 

「ドクター、呼んだ?」

「ぴゃああああああああああああ!!??!?」

 

 

 2度目の悲鳴。しかし今度は本能から来る恐怖の悲鳴だ。もはやプロヴァンスは部屋の隅に縮こまって涙目で震えている。ループスは狼だというのに、これでは生まれたての小鹿の方がしっかり立っているのではないか、というくらいの怯えっぷりである。

 プロヴァンスをビビらせた本人…ドクターの指パッチンによって召喚された(降ってきた)レッドはなんて事のない顔で応接用のソファーに座っている。先程まで居なかったのに、突然現れたのだから、プロヴァンスはたまったものではないだろう。

 ループス族のオペレーター達は何故かレッドを恐れる。レッドから何かを仕掛けるか…といえば時々尻尾を狙ってくるが、ドクターほどではない。寧ろ嫌だといえばちゃんと弁えて辞めてくれる位である。それでも、本能的にレッドから何かを感じ取ってしまうのか、怖がってしまうのだ。

 

 

「さて…プロヴァンス。これで分かっただろう?命(レッド)か貞操(ドクター)か…。」

「ど、どどどどどっちもこっこま、こまりゅっ、困るんだけど!??!!?!?!」

 

 

 プロヴァンス、あまりのことに噛み噛みである。しかしドクターは追撃をやめない。呼ばれたレッドも、自分か呼ばれた理由を理解したのか、目を輝かせてドクターと共にプロヴァンスににじり寄って行く。

 

 

「プロヴァンス…選択をしなければ命と貞操の両方を頂くことになるぞ?」

「ぴゃぁ…ぴゃぁあっ…。」

「尻尾…!」

 

 

 涙目で尻尾を抱き抱えるプロヴァンスに近寄っていく2人組。側から見れば最早犯罪一歩手前にしか見えないだろう。

 しかし運はプロヴァンスにあったらしい。にじり寄っていたレッドが突然、執務室の扉の方へと顔を勢いよく向けたのだ。

 

 

「違う狼の匂い…!」

 

 

 尻尾をぶんぶんさせて扉の方へと向かうレッド。どうやらテキサスが何かしらの理由で執務室に来ようとしていたらしい。既に一度狩りをした(尻尾を堪能しただけ)プロヴァンスではなく、まだ襲った事のないテキサスの方が優先度が高いらしい。

 

 

「ドクター、レッド、テキサスのとこ行く。」

「ああ、行ってくるといい。」

「ん!」

 

 

 ドクターはいい笑顔で(見えてない)レッドにそう告げる。哀れテキサス、君が来てくれてよかったよ、とプロヴァンスは密かに思った。その直後にレッドが扉を突き破ってテキサスに突撃し、予想外の登場に驚いたテキサスの声がした。

 

 

『待てレッド!!!何故扉を突き破っ…ええいこっちにくるな!!!』

『レッド、尻尾捕まえる…!』

『エクシアァァァァ!!!!!』

『えっ冤罪だよ!!??!!!?!?!!?』

 

 

 一緒にいたらしいエクシアにも被害が及んでいたがスルーするプロヴァンス。自分に被害が及ばないことが一番なのだ。

 しかし危機はまだ去らない。目の前にはドクターがいるのだ。

 

 

「ねえドクター…なんで…なんで尻尾をそんなに狙ってくるの…?」

「……………聞きたいか?」

 

 

 あっこれ聞いたら多分やばい。そう直感的にプロヴァンスは感じた。そして悟る。ドクターは逃すつもりは一切ないと。

 

 

「……やめておくよ。」

「恐らくその方がいいだろう。と言うより、私が耐えきれずに言語が崩れる。」

「そこまで!?」

(エーギル語)「当たり前だろう?」

「既に崩れてる…。」

 

 

 プロヴァンスは逃げることを諦めた。もうこうなったらさっさと尻尾を触らせて満足させるしかない、と気持ちを切り替える。

 

 

「ドクター、お願いだから手加減してね…?」

「善処するが諦めてくれ!!!!!!!」

「加減はしてぇぇぇ!!!」

 

 

 何度目かわからない悲鳴が響いた。

 

 

▼▼▼▼

 

 プロヴァンスは別に尻尾を触られることが嫌なわけではない。ある程度信頼関係を築いた人であれば、多少もふもふするくらいならいいと思っている。ドクターもその例外ではなく、いつものように「触ってみる?」と言ったことがある。

 しかし、その結果プロヴァンスはものの見事に崩れ落ちた。文字通りの意味で、である。

 ドクターの超絶技巧によるもふもふ、それはMOFUMOFUであり、プロヴァンスは何かいけない一線を超えそうでヤバイと感じていた。無論、性的な一線ではないのだが、これを超えてしまうと後戻りできないとナニカがあると直感的に悟り、それ以降は迂闊に触らせないように気を使っていた。

 

 そんな危機管理は理性の消えたドクターの前では無意味だったが。

 

 

 

 

「あっ…んっ…ふぁ…っ…!」

「oh…yes…it's Wonderful MOFUMOFU…!」

「んんっ…!まっ、て…!そこ…そこ、は…っ!」

「쓸모가 없다」(ダメ)

「っぁ…!」

 

 

 

 プロヴァンスはドクターによるMOFUMOFUで完全に脱力状態になっていた。抵抗らしい抵抗もできず、ソファーの上でぐってりとしていた。

 ドクターが尻尾…その中でも特に弱い部分を指でスリスリと撫で回し、もう片方の手で尻尾の付け根を絶妙な加減で揉んでいる。

 弱いところばかりを攻められるプロヴァンスからすればたまったものじゃない。しかしドクターは攻める手をやめない。多少弱めたりするが、今度は弱い刺激のせいで満足できず、尻尾が反応して催促してしまうのだ。

 

 

(エーギル語)「…口では抵抗しても体は正直、と言うのはまさしくこの状態であろうな…。嗚呼…素晴らしきMOFUMOFU…。」

「う、んぁ…っ、ふぁぁ…!」

 

 

 非常に満足げなドクター。しかし、ドクターはプロヴァンスの尻尾を堪能するあまり、プロヴァンスの様子が変わってきているのに気づかなかった。

 いつもより高揚している声、何処となく蕩けた目、乱れた呼吸。ただMOFUMOFUされて弱っているだけではなく、ドクターは危ないスイッチを押してしまったのだ。

 

 

 ある程度堪能して満足したドクターはプロヴァンスの尻尾から手を離す。もし覆面がなければ非常に満足げな表情であっただろう。

 

 それ故に油断していた。

 

 いつものように寝かせておこうと離れ、背中を向けた。しかし変にスイッチの入ったプロヴァンスが背中を向けたドクターに飛びかかった。

 

 

「ぬぅおぉっ!?」

「……。」

 

 

 突然の襲撃に情けない声を出すドクター。そして同時にプロヴァンスの様子がおかしいことに気がついた。

 今の体勢はドクターがうつ伏せで床に倒され、その背中にプロヴァンスが馬乗りになっている。プロヴァンスはそのままドクターの首元に顔を寄せ、しきりに匂いを嗅いでいる。それだけでなく、尻尾はご機嫌なことを意味する全力のブンブン。異変に気付かないはずがなかった。

 

 

「ねえドクター…僕、言ったよね…手加減してってさ。」

「プ、プロヴァンス…?」

「なんで手加減してって言ったか、理由を考えなかった?」

 

 

 ドクターの長年の勘が言っている、やべえと。今のこの状態では逃げると言う選択肢を取ることは不可能。ひ弱なモヤシなどと言われるくらいに力のないドクターでは抜けることなどできない。理性がなければ話は別であるが、残念ながら全回復した直後である。

 

 

「僕が手加減してって言ったのはさ…スイッチが入りそうだって前々からおもってたからなんだよ?」

「ちょっと待てプロヴァンス!!私は尻尾とツノと耳に手を出すことはあっても性的に手を出すつもりも出されるつもりも毛頭無いぞ!?」

「ふぅーん…今この状況でもそんなに抵抗できるんだね…」

 

 

 まずい、これ食われる(意味深)かも知れねえ。ドクターは妙に冷静になった頭でそう思った。

 グイッとプロヴァンスによってうつ伏せから仰向けの状態にされる。

 相変わらず馬乗りになったままのプロヴァンスの表情は獲物を捕らえた肉食獣(意味深)そのものである。

 

 プロヴァンスは非常に愉しそうな顔でドクターの服に手を伸ばし………

 

 

 

「御用改めの時間だドクタァァァァァアアァ!!!!!!」

「ってプロヴァンスさん!?リスカムさん、急いでプロヴァンスさんをドクターから引き摺り落として…」

「チャージ!チャアァァジ!!」

 

 

 仕事をしていないことに気がついたリスカムとアーミヤの突撃で事無きことを得たのであった。

 

 

 

 

▼▼▼

 

 

 後日。事情を聞いたエイヤフィヤトラとアーススピリットによる仕置きがドクターに敢行され、プロヴァンスはあまりの恥ずかしさに1週間自室から出て来れなかったと言う。




どっかのサリア一辺倒のドクターはライン生命だけで5-10までクリアしたと聞いて(見た)戦々恐々してました

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