頭空っぽのくせに伏線貼ろうとしてやっぱ止めた。
「イメージ...イメージ...こうか?」
「あ、出来てるよジンくん!」
「なるほどね、これが魔法の感覚か。悪くないな」
「凄いよ。身体強化だけだけど、まだ初日なのにここまで魔力制御が出来るなんて」
「気の使い方と何となく似てるからかな。それに、なのはだってあれぐらい出来るんだし、普通じゃないの?」
「なのはがおかしいだけで君も十分凄いのになぁ」
「ユーノ君、それ褒めてるの?」
「まぁいいや。ちょっと試してみたいから結界貼ってくれる?」
「うん...はい、貼ったよ」
「サンキュー。じゃあ2人とも、ちょっと離れて」
「「?」」 トコトコ
「せーのっ」
ドゴォォォォォォン!!!
「えぇ...」
「地面を殴ったら大きなクレーターが出来たの...」
「こんなもんか。うーん、思ったより強化されてないな」
「「これで!?」」
「じゃあユーノ、やってみようか」
「いやいややらないから」
「なんでだよ、俺と比較が出来ないじゃんか」
「僕を近接型だと勘違いしているね?」
「男は殴ってなんぼでしょ」
「君はいったいどういう育ち方をしたんだ...」
「聞きたい?」
「遠慮しておく」
「解せぬ」
〇月□日
魔法が使えました。
と言っても、魔力量は大きくないどころか、ほとんど無いに等しいくらいらしい。それでも魔法が使えないことは無いというので、なのはにレイジングハートを借りて魔力調整はレイハ(長いから略)に任せてやってみた。
とりあえず、簡単な身体強化が出来た。魔力量と制御に左右されるからそこまで強化はされなかったけど。
他にも色々試してみた。
何も出来ませんでした。終わり!閉廷!
いやー、何をするにも魔力量って必要なのね。そもそも魔法とは、リンカーコアというものが必要で、そこに魔力が蓄積されているらしい。リンカーコアの有無、そして魔力量は元々持っている素質であり、大きい人は大きい、小さい人は小さいという、例えるなら身長のようなもの。
成長により魔力量は増えることもあるけど、劇的に増えることはなく、それだけに、なのはほどの魔力量はとても貴重で稀有な存在だと。なのはって凄いんだな。
だから俺は魔力量が伸びたところでたかが知れてるという訳だ。別にいいよ。武器が1つ増えただけでも価値はある。もう使い方は分かったし。
魔力って気とはまた違う感覚で、まだ馴染まないけど使い方はそんなに変わらない。引き出しが違うだけって言うのかな。魔力はここから取り出して、気はここから取り出すって感覚的に分かる。制御はユーノのお墨付きだし、俺自身ちゃんと使えていると思う。
まぁ、今使えるのは身体強化と念話だけってことだ。念話っていうのはいわゆるテレパシーのことで、リンカーコアを持っているものならコツさえ掴めば誰でも出来るらしい。実際簡単だった。
これで遠くにいても連絡を取れるし、戦闘にも活かせる。相手に伝わらないように会話できるからね。作戦を伝えたり用途はある。
魔法についてはこれくらいかな。
さて、そろそろ本題に入ろうか。魔法が使えたからと言っても飛べなきゃ話にならない。いくら身体能力で上回っていても、飛ばれちゃ気弾とかかめはめ波打つくらいしか出来ない。それじゃダメだ。魔法どうしの戦いについていけない。
実際苦戦した。
ジュエルシードを狙っている人が他にもいた。そりゃ居てもおかしくないよね。危険とはいえ、願いを叶えるという本質を持っているのは間違いないんだから。
ジュエルシードの反応があったから行ってみれば、猫が巨大化していた。大きくなりたいという願望が叶えられた結果だと言うが、どうやら暴走はしておらず大人しいままだった。
封印するだけで終わりかと思ったその時、横から電撃を放ってきた奴がいた。流石に大人しい猫をやらせるのは可哀想なので防いだけど、そこそこの威力を持っていた、なのはのアクセルシュートくらいかな。
攻撃が来た方向を見ると、空を1人の女の子が居た。なのはと同じ魔法少女。フェイトと名乗った彼女の要求はジュエルシード。理由は言ってなかったけど、きっと願いを叶えることが目的だろうね。
そこから彼女と戦闘開始。空飛ぶなのはとフェイトとの戦いに俺はついていけなかった。フェイトは鎌のデバイスを使う近接型で、スピードでなのはを翻弄していた。なのはも必死に自分の得意な距離である遠距離に持ち込もうとしたけど、如何せんスピードが違った。引き離そうとしても食らいつくフェイトに対して防戦一方だった。
俺も援護しようとしたけど、かめはめ波だとなのはを巻き込むかもしれないし、そもそも避けられたと思う。気弾も同じ。気弾をコントロール出来たら良かったんだけど。
結局なのはは負けてしまった。けど、ジュエルシードだけは渡すまいと、フェイトと戦ったんだ。最初は近接戦だったんだけど、不利を悟ったのか飛べないのがバレたのか、途中から遠距離で攻撃してきた。そこまで威力は無かったから負けることは無かったけど、こっちも攻められないからジリ貧だった。
そしたら、また横から俺に近づいてくる奴がいて、そいつを対処している間にフェイトにまんまとジュエルシードを回収されてしまった。目的を果たすと去ろうとしたフェイトとケモ耳のやつ。悔しかったのでかめはめ波1発お見舞いしてやったけど、避けられてしまった。分かってたけど悔しい。
結局逃げられてしまい、ジュエルシードは彼女たちの手に渡ってしまった。色々と反省の多い戦闘だった。なのはも経験不足が露呈したし、俺は飛べない。なのははともかく俺がどうにかならないと連携も何もない。目下の最優先事項は舞空術を習得する事だ。
それにしても、フェイトたちは本当に自分の意思でジュエルシードを集めているんだろうか。あのケモ耳はともかく、フェイトはどことなく遠慮がちだった気がする。気の所為かもしれないけど。
とにかく、ジュエルシードを集めている以上また鉢合わせるはず。次に会う時には思いっきり殴ってやる。この拳が欲求不満なんだよ。女の子だからって遠慮しないからな。
☆☆☆☆☆☆☆
ジュエルシードを回収したフェイトたちは、住まいのマンションへと戻っていた。この地球で活動する拠点である。
元々この地球とは別の世界からやってきたフェイトたちは、母親であるプレシア・テスタロッサに命じられてジュエルシードを回収しに来た。理由は教えられていない。ただ回収して来いと命じたのだ。
フェイトは母から虐待を受けていた。貼り付けに鞭、魔法による罰。ことある事にフェイトを罵倒し、痛みを与えた。それを、自分のせいだと思っていた。自分がちゃんとしないから母は怒っているのだと。自分が母の期待に答えていないから罰を与えるのだと。これは躾の一環である。そう言い聞かせた。
それでもフェイトは、母を嫌いにはならなかった。
優しかった頃を知っている。今は怒っていることが多いけど、本当はもっと優しくて、カッコよくて、自慢の母であることを、フェイトは知っている。
だからフェイトは、母が好きだった。
そんな母がジュエルシードを集めて来いと命じた。何か理由があるのだろうが、教えてくれない。だが、フェイトはそれでも良かった。今は命じたことを実行するだけ。
そうして期待に答えれば、きっと褒めてくれる。昔のように優しい母に戻ってくれる。
そう信じている。
「フェイト、大丈夫かい?」
「うん、平気だよ。アルフ」
アルフとはフェイトの使い魔である。戦闘から身の回りのサポートまで行う従者のようなものだ。アルフは心の底からフェイトを慕っており、先の戦闘でフェイトの身を案じる。
それにしても、とアルフはプレシアに憤りを示す。自分の娘をこんな危険な目に合わせ、尚且つ、何の愛情も示さず虐待。はっきり言ってアルフはプレシアの事が嫌いである。大嫌いである。
出来ることならこんなことは止めさせたい。危険な目に合わせたくない。そうじゃなくても、ロストロギアの奪取など犯罪だ。犯罪に手を染めて欲しくない。
これも全てプレシアのせいだ。だがフェイトがそのプレシアを慕っている。いくら言って聞かせたとて、私は大丈夫だと繰り返すのだ。自分がサポートすることでフェイトの負担を軽減するしかない、自分が助けるしかない、アルフはその決意でフェイトのそばに居る。
「にしてもアイツら、何者だろうね。まさか管理局が嗅ぎつけたのか?」
管理局とは、次元世界を管理している組織の事だ。世界とはいくつもある。本で例えるなら、本という大きな枠組みがあり、その中にページという世界がある。そして、薄い紙が重なりあって本は出来ている。だからこそ世界を行き来することが出来る。
その本全体を管理、警備するのが管理局の役割である。
ちなみに、ジンの場合はまた別で、そもそも本自体が違うと言ってもいい。本来重なり合うことの無い本と本が、これまた本来重ならないはずのページがたまたま重なった結果転移したのだ。偶然も偶然、天文学的確率で偶然。もちろんこのことをジンは知らない。誰も知らないんじゃないかな。
閑話休題。
そんな次元世界を管理する管理局であるが、この地球はまだ管理下に置かれていない。次元世界とはあまりに広い。この地球のように管理外の世界もあるのだ。
しかし、ロストロギアがばらまかれたとなれば話は別。すぐにでも管理局が駆けつけるだろう。それまでにフェイトは、ジュエルシードを集めてプレシアの元へ持って行かなければならない。
「いや、管理局じゃないと思う。あの女の子の方は戦い慣れていないみたいだったし、男の子はデバイスを持っていなかった。魔力も感じなかった」
「それじゃあ、ただの現地人ってことかい。管理外の世界にあれだけの魔力量を持った人間がいるなんて。それに、あの坊やも...」
「うん...」
「女の子はともかく、坊やは明らかに戦い慣れてた。飛べないみたいだから良かったものの、近接戦なら負けてたよ」
「それに最後の収束魔法。当たったらきっと無事じゃなかった」
フェイトとアルフは共に近接型である。しかも、指標の1つである魔道士ランクはAAAランク。近接戦なら、そんじょそこらの魔道士相手ならなんとかなるという自負もある。
そんな自分たちが軽くいなされた。今回は結果としてジュエルシードを回収出来たが、今後はどうなるかわからない。彼が飛べるようになれば、より苦戦することは間違いない。警戒するのは当然である。
「とりあえず回収出来たから良いじゃないか。また会ったらその時考えればいい。それよりフェイト、アタイお腹空いたよ」
「ふふ、そうだね。ご飯にしよっか」
今はまだ大丈夫。次に会っても勝てる。大丈夫。フェイトとアルフはそう言い聞かせた。失敗したらフェイトにプレシアからの罰が待っている。それは想像もしたくない。
だから大丈夫。成功をイメージする。
大丈夫。きっと大丈夫。
☆☆☆☆☆☆☆☆
「あ、飛べたわ」
フェイトアルフ 「負ける気せーへん地元(空)やし」