異世界で俺がモンスター娘達と契約しまくる話。   作:ワロリッシュたん

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Stage15 時として少年は女を殴るか?下

魔力を視認出来るようになった俺の目を引くのは未だに青白い光を放つゾンビを操る魔法陣だ。

エリーゼとリサがゾンビを引きつけてくれているから、俺達の近くにゾンビの姿は見えないが、耳をすませばエリーゼがゾンビ達と闘っている音が聞こえる。

 

「術者であるクロエはそこで寝てるのに・・・・」

 

寝てるクロエの方に視線を送る。

 

「ふふ、誰が寝てるって?」

「なっ!?」

 

突然、聞き覚えのある声がした、この声はクロエだ。

それも、俺の背後から・・・・クロエは俺の前方で気絶していて寝てるはずなのに。

ギョッとして振り返る。

だが、それはもう遅く、俺の脇腹にクロエの回し蹴りが叩き込まれる。

 

「ぐあっ!」

「マスター!?大丈夫ですか!?」

「残念でしたー、よくも殴ってくれたわね。

これはそのお礼よ。」

「クロエ!?どうして!?」

「死霊魔術師を舐めてもらっては困るわ。

私は死体相手ならどんな事だって出来るの。

そう・・・・死体に私の自我と身体情報を植え付けることだってね。」

「自我と身体情報・・・・死体を自分のクローンにする事が出来るって事なのか!?」

「ご明察、人間の癖に中々頭が切れるようになったじゃない。

私はお気に入りの子には私の意思で私に身体を私に変化出来る仕組みを仕込んでいるのよ。

ちなみに、この身体もニセモノよ。」

 

・・・・おいおい、マジか。

確かに寝ているクロエと目の前にいるクロエの放つ魔力の質と量は同じで区別がつかない。

見た目も変わらないし、完全なるコピーだ。

 

「そして・・・・」

 

パチン、クロエは指を鳴らす。

その直後、足元から無数の手が・・・・ゾンビ達だ。

・・・・地面から這い出してくるのがゾンビの登場の仕方で固定なんだな。

数にして15くらいか。

 

「ーーーこれでチェックメイト」

 

更に、パチン。

這い出してきたゾンビ達の身体がすべてクロエに変わった。

 

「・・・・クロエ、貴女。」

「どうかしら、オクタヴィア。

これが私の魔術。

やっぱり、私が1番優秀なのよね。

だから、私は私を増やしたのよ。」

「・・・・凄く気持ち悪いですね。」

 

ウットリと自分の魔術の優秀さに酔っているクロエとそれを吐き捨てるように呟くオクタヴィア。

・・・・これがクロエか、究極の自己愛者(ナルシスト)ーーーそれが死霊魔術師、クロエ・フラットの本質、真の姿だったんだ。

 

「そして、更なる驚愕の事実を教えてあげる。

・・・・ねえ、夜明けってこんなに遅かったかしらね?」

「なん・・・・だと」

 

確かに、俺もそれは頭の片隅で疑問に思っていた。

俺が夜の散歩に出たのが午前1時頃、俺が攫われたのが午前4時頃だ。

俺がどれくらいの時間気絶していたかは分からないが、墓場に出てからは1時間くらい経っているはずだ。

だから、時間的に夜明けは確実に訪れているはずなのだ。

しかし、未だに墓地は薄暗い闇で包まれている。

 

「・・・・お前の仕業なのか、夜明けが来ないのは。」

「そうよー、正確には私のコピーが墓地の四隅に散って、日の光が届かないように闇属性の魔術で膜を作っているのよ。」

 

空を見てみると確かに空を包む闇に違和感を感じる。

人工感と言えばいいのだろうか、レストランで展示されている食品サンプルのような、天然でなくて人工であると分かる、本来の空との差異を感じた。

 

「私のペット達は日光の中では身体が維持出来ないのよね。

だけど、私の作った闇の下ではずっと行動していられるのよ。」

 

残念でしたー、と言ったように俺を見下すクロエ。

たが、俺はそんな彼女に対してーーー

 

「くっ・・・・く、くはははははっ!!」

 

ーーー思わず、笑みがこぼれた。

 

「・・・・何が可笑しいのかしら?

それとも、状況が絶望的過ぎて頭がいかれてしまったのかしら?」

「いいや、笑いが収まらないのさ・・・・。

ようやく、"正解"が見つかったからな。」

「正解ですって?」

「確かにクロエ、お前は優秀だ。

更に、身体は不死。

そして、それが複数存在する。

そしてそして、日光という弱点をカバーする闇・・・・だが、それが弱点なんだよ!!

オクタヴィア、空に向かって出来る限りの光属性魔法を放ってくれ、出来るか?」

「・・・・なるほど、あの天を覆う闇を払う事が出来れば日の光が降り注ぎ、不死のクロエ達は行動不能になるというわけですね。」

 

頷いて合図する。

流石、オクタヴィア。

俺の考えている事を即座に理解してくれる。

 

「・・・・ふふ、やっぱり所詮は人間ね。

お粗末な頭を振り絞って考え出した答えなんでしょうけど、それは不可能よ。」

 

とんだ驚き損よ、と言った風に呆れた表情を見せるクロエ。

 

「この闇は私が4人集まって創り出した最強に近い闇属性魔術よ。

それをオクタヴィア1人だけで破れるわけないじゃない!

それに、そんな魔術を放つ為には長時間の詠唱は不可避、私が15人もいて、それを止められないわけがないじゃない!

だから、貴方のアイデアは実現不可能、時間の無駄、とっとと死になさい!

愚かな人間がっ!!!」

 

不可能・・・・?愚か・・・・?

それは誰が一体決めたんだ。

人の可能性を決める事が出来るのは本人以外にいない、他人が決める事なんて出来ないんだよ!!

俺は右手のカードにプライドを、左手のデュエルディスクに魂を宿す奇抜な髪型の男達のように言う。

 

「それはどうかな?」

「何ですって!?」

 

俺の言葉がまるで合図になったかのように膨大な魔力がオクタヴィアから放たれる。

 

「【神聖なる輝きよ、この世の総てを正しく導きーーー】」

「嘘、嘘嘘嘘、嘘よぉ!!

何よこの魔力の量はは!?」

 

オクタヴィアが闇夜を払う魔術の詠唱を始める。

彼女が発する魔力はクロエを1とすると10。

闇を払うのは容易な超強力な魔術だ。

例えどれほど強力な魔術であってもその魔術が一度に放つ魔力に限界が存在する。

某国民的RPGの魔法、メラはMPを2使って火の玉を放つ魔法だ。

だが、どれだけ強力な魔術師でもメラを放つ時に消費するMPは2で固定なのである。

したがって、どれほど上位の魔術であっても消費する魔力は一定でそれに魔術師の技量で威力が決まる。

一般的に、どれほど技量のある魔術師でも魔力消費の多い上位の魔術の方が魔力消費の少ない下位の魔術より威力が高い。

魔力の消費量が一定になっているのは不便だと思うかもしれないが、魔力の温存と制御の為という方向から見れば実に有用な機能であると思われる。

つまり、魔力を使えば使う程威力は上昇するが、魔術に消費する魔力の量は固定されているから魔術師の技量という概念を除けば魔術の威力も固定されてしまっている。

・・・・しかし、例外も勿論存在する。

その一つが、オクタヴィアの能力ーーー『多重詠唱』だ。

『多重詠唱』は複数の属性の魔術を同時に唱える事で、新たな魔術を創造する能力であると同時に、同じ属性の魔術を重ねて唱える事でその威力の限界を突破させる事が出来る。

つまり、今彼女は光属性の魔術を幾度も繰り返し詠唱する事でその威力を高めているのだ。

 

「【ーーー明けない夜に終わりを齎せーーー】」

「くっ、だけど詠唱を潰せば問題無いわ!!『黒の球(ダークボール)』!!」

 

クロエがオクタヴィアに向けて彼女の詠唱を妨害する為に攻撃を放つ。

下級闇属性魔術、『黒の球』。

威力の低い代わりに詠唱が必要の無い魔術だ。

しかし、クロエの魔術師として力量が高い為その大きさは俺が以前に放った『黒の球』の3倍程の大きさがある。

 

「残念だが、魔術なら俺には通用しないぜ」

 

俺はエリーゼから得た能力、『魔力吸収』を起動して黒球に触れる。

黒球は吸い込まれるように俺の掌に消えていった。

 

「ちっ・・・・だけどこれならどうかしら!!

『黒の球』!!!」

 

クロエが再び詠唱妨害の為に黒球を放ってきた。

ただし、今度は1つではなくここにいるクロエのコピー全員ーーー15人が同時に黒球を放ったのだ。

迫る15の黒球。

1つ1つは俺には通用せず、受け止めるのは容易いが、15の黒球を一度に全てを受け止めるのは不可能だろう。

受け止め損なって、オクタヴィアに当たってしまってはならない。

 

「・・・・」

 

だから俺はーーーパチン、と指を鳴らした。

直後、轟音と爆風が巻き起こった。

それは目の前に迫る黒球を全て掻き消し、その上そこにあった墓石を全て粉砕して更地にしてしまった。

そして、更地になってしまった場所に立つ人影が1つ。

 

「呼んだか?エイト。」

 

エリーゼだった。

美しく煌めく金髪を掻き上げるその姿は優雅で思わず見惚れてしまう。

・・・・流石は吸血鬼、夜の方が映えるなあ。

 

「・・・・えっ」

 

クロエは開いた口がふさがらないようで、小さく驚きを表現していた。

・・・・まあ、そりゃーそうだろうな、下級魔術だけど自慢の魔術を地面ごと消し去られたんだからな。

ていうか、エリーゼさん強過ぎィ!!

 

「リサもいるよー!!」

「おー、無事だったか、リサ。」

「えへへー」

 

元気良く俺に抱きついてくるリサを撫でる。

いやー、癒されるなあ。

 

「貴女、何者なのよ!?」

「妾か?妾は、エリーゼ・ディミヌエンド、ただの吸血鬼だ。」

 

俺がリサに癒されている間にクロエとエリーゼが衝突していた。

・・・・衝突というよりも、クロエが一方的にエリーゼに噛みついてるだけか、エリーゼは飄々としてるし。

 

「理解出来ない!!

貴女程の強力な吸血鬼があんな貧弱で低能な人間に従っているのか!?」

 

愚鈍とか低能とか言われ過ぎだ、俺。

・・・・クロエはどうしてそこまで人間を嫌うのだろうか。

いや、クロエだけじゃないのかもしれない、むしろこのクロエの人間への憎しみこそがモンスター達が人間へ抱く感情なのだろうか?

俺には人にしろモンスターにしろその心を読む事は出来ないから、答えの出ない問なのだろうが。

 

「・・・・」

 

クロエの言葉に対するエリーゼの反応は沈黙。

だが、エリーゼは沈黙したままゆっくりと一歩、一歩、歩いてクロエに近づいていく。

 

「な、何よ・・・・?」

「・・・・」

 

無言のエリーゼに不穏なものを感じたクロエは一歩、後ろに下がろうとした瞬間・・・・エリーゼに1番"遠い"位置にいたクロエの身体が爆ぜた。

爆ぜる、といっても実際に爆発が起きたわけではない。

まるで、爆発したかのように1体のクロエの身体がバラバラになって弾け飛んだのだ。

 

「えー、何ー、お兄ちゃん、暗いよー。」

 

咄嗟にリサの目を手で覆う。

見ちゃいけません、死体だから血は少ないけども、肉塊となったクロエはそれだけで教育上よろしくない、非常によろしくない。

・・・・それにしてもエリーゼさんが凄過ぎる。

1番近い位置にいたクロエでさえ2.5mくらいの距離はあったのに。

1番遠いクロエのところまで移動し、その上その身体をバラバラに砕いたのだ。

しかも、それはあっという間の出来事であった・・・・いや、「あっ」と口にしようと思った瞬間には終わっていたように感じる。

エリーゼさんが弱ってたから俺は契約出来たものの、万全の状態だったら契約以前にバラバラにされてたかもしれない、いや、絶対バラバラになってる。

味方で良かったよ、本当に。

 

「・・・・妾の前でこれ以上エイトの悪口を言ってみろ、粉になるまで身体を砕き切り裂いてやる。」

 

手についた返り血をペロリと舐めながらエリーゼが言う。

その仕草は妖艶だったが、彼女の放つ言葉と威圧感の所為で逆に他人の恐怖を煽るように見える。

 

「・・・・っ!!」

 

流石のクロエでもエリーゼの放つ威圧感に気圧されてしまっているようだ。

だが、直ぐに気を取り戻すと彼女は俺に目掛けて走り出してきた。

 

「あんたを殺せばあの化け物吸血鬼女も死ぬ!!

だから、死ねぇええええ!!」

 

どうやらクロエは手の甲の痣を見つけて、エリーゼが俺と契約している事に気付いて、俺が死んだらエリーゼも死ぬということがわかったのだろう。

クロエは右手の爪の一本一本をまるでナイフのように鋭く長くのばし、俺の首に目掛けてそれを突き出してきた。

・・・・なるほど、身体は死体だから死霊魔術で身体を自在に弄れるんだな。

 

「リサ!」

「あいさー!」

 

刀に変化したリサーー略してリサ刀でそれを受け止める。

ガキンと火花を散る。

お互いに一歩も譲らぬ鍔迫り合いとなった。

決死の表情で向かい合う俺とクロエ。

しかし、俺の身体は生身。

それに比べ、クロエは死体かつ死霊魔術の影響であり得ない程の力で俺の咽喉を突き刺さんと鋭い爪を突き出してくる。

必死にリサ刀で抑えるが、段々と押されてきている。

ーーーだが、俺とクロエの衝突は思わぬ結果で終わりを告げた。

クロエの身体が突然痙攣し、白目を向いて動かなくなってしまったからだ。

それはまるで糸の切れた操り人形のようで。

その場にいた全員が驚きの表情を示したーーーただ、俺を除いて。

俺は驚くどころか口元に笑みを浮かべていた。

 

「・・・・なるほど。

これが俺の魔術か。」

 

俺は自分の腕から流れる青白い電流を見つめながら言った。

前にオクタヴィアから聞いたことがある。

魔術師は初めて魔術を使う際に必ず自分固有の魔術を発現するらしい。

そして発現した魔術の種類によってその魔術師が得意とする属性が分かるのだという。

どうやら、俺は雷属性のようだな。

・・・・死体に電気って効くのか?

疑問に思ったが、実際にクロエは痙攣して倒れた。

ということはこの魔術は・・・・使える、クロエ軍団と戦うのに有効なものだ。

指一本でも触れることができれば、そこから電気を流して彼女達を無力化出来る。

 

「さあ、決着をつけよう。」

 

バチバチと身体から電流を出して威嚇をする。

そして、ゆっくりと接近する。

 

「うっ・・・・」

 

近づく俺から離れようと数歩後ろに下がるクロエ。

だが、彼女達の後ろにはーーー

 

「何処へ行こうというのだーーー死人娘共?」

 

ーーーエリーゼがいる。

 

「ひぃぃぃぃ!!」

 

エリーゼの圧倒的威圧感に怯え、散り散りに逃げ回るクロエ達。

そんな中で、逃げ出さないクロエが1人。

彼女がクローンの元である本物のクロエなのだろうか。

 

「・・・・死体に自我を埋め込むと恐怖心も自然とインプットされちゃうから不便ね。

手駒も尽きたし、降参。降参よ。」

 

彼女はやれやれと言った表情で、両手の平をこちらに向けて降伏の意を示す。

・・・・だが、その目は明らかに諦めてはいない。

 

「・・・・っ!?何をしている!?」

 

クロエの足元でほんの僅かな魔力の蠢きを感じた俺は彼女に走って近づいたものの・・・・。

 

「うーん、なるべく気付かれないように魔力を使ったんだけどばれちゃったか、私もまだまだね。

・・・・だ・け・ど、ちょっと気付くのが遅かったわね。」

「待て!!」

 

俺は叫ぶが、クロエは即座に魔術を発動させてしまい。

 

「じゃ〜ね〜。」

 

その言葉を最後に、彼女の姿は闇に消えた。

 

【ーー現れろ!!もう一つの太陽!!!】

 

クロエがいなくなった直後にオクタヴィアの詠唱が終了して、まるで太陽のような規模の光属性魔術が放たれて、ようやく長かった夜に夜明けが訪れたのだった。

 

 

クロエ・・・・彼女とはまた何処かで会うような、そんな気がした。

 

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