異世界で俺がモンスター娘達と契約しまくる話。 作:ワロリッシュたん
・・・・『悪夢の魔導師』
その名はここに来て間も無い俺でさえ知っているのだから、商業都市全員が知っているであろう、殺人鬼の二つ名。
奴の殺人に明確な理由は無い。
登山家が山に登る理由を『そこに山があるから』と言うのと同じように、奴は『そこに人がいるから』、人を殺す。
更に奴は人間にして唯一、モンスターのように懸賞金をかけられている。
人を殺しても捕まらないこのファンタジーの世界で彼が懸賞金をかけられるのは、その殺した後原因だ。
奴は死体を弄ぶのだ。
死体を磔にして通行人に見せつけたり、死体を家畜の餌にしたり等、それら行為を死者への冒涜として教会の人間が奴を指名手配したと言う流れだ。
そして今、俺は悪夢の魔導師ーーーエドワード・コミットと対峙している。
「エイトォッ!!」
エドワードと戦おうとする俺の元へ駆けてくるエリーゼ。
・・・・ああ、そう言えばエリーゼの言いつけを破って突っ走っちゃったなぁ。
「エリーゼ・・・・」
「どうして、妾の言う通りにしない!!」
怒り浸透のエリーゼ。
・・・・怖可愛い。
「すまない。」
言い訳など無いので、俺はただ、謝罪の言葉を述べるしか無い。
「・・・・まあ、妾と同じモンスターの為に怒ってくれたのには、感謝する。だから、妾も戦うぞ!」
俺を許してくれるエリーゼ。
なんだかんだで彼女もエドワードに怒っていたらしく、そう言うとエリーゼは俺の隣に立ち、拳を握りしめる。
確かにスーパー吸血鬼の大人エリーゼと2人で挑めるならエドワード相手にも遅れはとらないだろう。
「・・・・それが、お前の契約したモンスターかぁ、英人クン。
おう、中々良質な魔力を持っているねぇ。
それでは、少々、こちらが不利かなぁ。
なら、オイ!オクタヴィア!!
手伝え!!」
「・・・・はい。」
これで、俺とエリーゼVSエドワードとオクタヴィアという戦いになった。
・・・・これは駄目だ。
「エリーゼ、お前はオクタヴィアと戦ってくれ。
エドワードは俺が倒す。」
「どうしてだ!?エイト!?」
「ーーー俺にはモンスター娘を傷付ける事はできない。」
・・・・ごめんな、エリーゼ。
お前の言うことまったく聞いてやれなくて。
「必ず、後で埋め合わせはするから。」
「絶対だぞ!
生きて、絶対に妾に埋め合わせをするのだぞ!!」
「ああ、分かってる。
必ず"生きて"な。」
俺の返事に納得したエリーゼは俺の戦いを邪魔しないようにオクタヴィアを連れて移動した。
・・・・結局、エドワードとの1対1になっちまったな。
「さあ、舞台は整った。
始めようぜ、エドワード!!」
「始めるぅ?何を?」
「戦いに決まってるだろ。」
「あっははははははははは!!」
突然笑い出すエドワード。
こいつは一体どんな思考回路をしてやがるんだ!?
・・・・意味が分からん。
「戦いぃ?
教えてやるよぉ、英人クン、戦いってのはなぁ、実力がほとんど同じ者同士がするものなんだよぉ!
だぁかぁらぁ!これから俺達がするのは俺の一方的な虐殺なんだよっ!!」
「・・・・それはどうかな。」
俺はエドワード目掛けて駆ける。
これ以上話をしても頭が痛くなるだけだ。
強力な魔法を使う為には詠唱は必要不可欠だ。
だから、接近戦をしかければ相手は低級魔法しか使えなくなる。
それなら、剣を持つ俺の方が圧倒的に有利!
「くくっ、『
俺の予想通り、エドワードが放ったのは詠唱の必要ない火属性初級魔法『火の球』。
高温の火球が俺に目掛けて飛んでくるが、その軌道は真っ直ぐで避けやすい。
俺は助走を生かした大ジャンプで奴の頭上まで飛び上がった。
更に、落下の速度を利用し、全体重を乗せた剣をエドワード目掛けて振り下ろす。
初級魔法程度の威力では俺を止めることは出来ない!!
「せりゃあああああああっ!!!」
「くくくっ、くくくく、あっはっはっはっはっ!!
『
「何ぃっ!?」
驚くべき事に奴が口にした魔法の名前は氷属性下級魔法、『氷の"槍"』。
"槍"の名を冠する魔法は下級魔法の代表として有名だ。
そして、下級魔法は詠唱をしなければ発動しない。
・・・・それなのに、どうして俺の目の前に氷でできた巨大な槍があるんだ!?
「あっははははははは!!
ざぁんねんだったなぁあ!おい!!
俺は中級魔法までなら詠唱無しで使えるんだよ!!
そのまま串刺しになって死ねぇえええ!!」
・・・・インチキ能力もいい加減にしろ!!!
なんだよ無詠唱魔法発動って!?
巫山戯てんのか!!?
魔法は威力が高く、遠距離まで届く。
更に、弱点である詠唱が無くなるとそれは接近戦でも使用できるようになり、全距離対応に。
逃げ場がねえし、もし一発でも当たると下手したらそのまま死ぬ。
俺は目の前に迫る氷塊の側面に目掛けて剣を突き刺し、ぶら下がった。
そして、氷塊を蹴ってジャンプし、剣と共に脱出する。
・・・・あっぶねー、氷だったからなんとか避けられたが、火とか不定形の魔法だったら直撃してたな。
それにしてもどうすればいいんだ・・・・無詠唱で魔法を放てる限り奴に隙は無い。
隙が無い・・・・隙が無いならーーーー
「ーーー隙が無いなら、作ってやる!!
『
時間が止まる。
そう、『時間停止』ならば隙だとか距離などは関係無くなる。
この時間停止中にエドワードの間抜けに晒している首を落とせば終わりだ。
奴の元へ近づき、その首を剣で斬り落とーーーー
「っ!?」
結果から言おう、奴の首を落とす事は出来なかった。
俺の剣は見えない壁のような物に阻まれて奴の首に届かなかったのだ。
・・・・何度か斬りつけるが、ガキンという無機質な音がするばかりで、一向に剣は首に届かない。
体力消費を避ける為に『時間停止』を解除する。
エドワードは俺が急に目の前に現れて自分の首に目掛けて剣を振っている状況に少し驚くも、自分にそれが届かない事に気付くとすぐに笑顔を作って
「あっはははは、俺は少しお前の実力を見誤っていたぜえ!!
だが、この魔法壁がある限り俺は無敵ィ!!!
・・・・くくくっ、教えてやる、この魔法壁は強力な魔法攻撃でしか破壊出来ない。
まあ、それを知ったどころでどうしようもないだろうがな!!
あは、あは、あはははははははは!!!!」
「うるせえ!!まだやってみないとわからねえだろうが!!」
まずは奴の魔法壁の破壊を第一に考える。
奴の言う通り、魔法壁には魔法攻撃しか効かないのだろう。
何度も剣で斬りつけても傷一つつかないのだから。
そして、恐らくあの魔法壁を破壊するには最低でも下級以上の魔法でないとならないだろう。
俺は闇属性下級魔法の『黒の槍』を発動する為に詠唱を開始する。
足元に魔法陣が生まれ、頭に呪文が浮かんでくる。
「漆黒のーーー『
俺は詠唱を中断して全力で横に跳ぶ。
・・・・やっぱり、詠唱している暇は与えてくれないよなぁ。
先程俺の立っていた場所に激しく燃える巨大な火柱が出現する。
「熱っ!?」
咄嗟に横に跳んだおかげで直撃はしなかったものの、逃れきれなかった左腕を炎は容赦無く襲う。
・・・・酷い火傷を負っちまった、左腕はもう使い物にならねえ。
俺が下級以上の魔法を放つ為には詠唱が必要不可欠だ。
しかし、奴は詠唱無しで魔法を使える。
俺が詠唱している間に強力な魔法の連打で殺されるのは容易に想像出来る。
頭をよぎった魔法壁を壊すもう一つの手段・・・・『時間停止』中に魔法を使って魔法壁を壊し、首を撥ねる。
これも無理だ。
何故なら、『時間停止』は俺以外のすべての動きを止める。
それは俺が放った魔法も例外ではない。
『時間停止』中に魔法は使えないのだ。
・・・・奴の言う通りにどうしようもない。
くそっ!諦めるな!
考えろ!思考を止めるな!
瀬尾英人っ!!
「万策尽きたかぁ?英人クン??」
ニヤニヤ笑いながら俺を見下すエドワード。
くっそ、うぜえええええええ!!!
ウザさのインフレが起こっとる!!
「まぁでも、お前は頑張った方だよ。
普通の人間は俺に近づく事すら出来ず魔法壁の存在すら知らずに命を落とす。
そう考えればお前はよぉく頑張ったよ。」
「けっ、お前に褒められても嬉しくもなんとも無いね。」
「手も足も出ない状況にも関わらずぅ、強がるその態度、尊敬に値するねぇ。
そんなお前には敬意を示して、俺の最高の攻撃で骨も残らず消し飛ばしてやるよ!!!」
そう言うと奴は両手を天に向かって突き出す。
貧弱一般人の俺にだって感じられる程の圧倒的な魔力が集まっていくのを感じる。
身体中が警鐘を鳴らしまくる。
これをまともに食らったら死ぬぞ、と。
「さぁ、終わりにしようぜぇ!
英人クゥン!!
『多重詠唱』ォッ!!!
火×土×光っ!!!」
その直後、
奴の頭上に集まっていた膨大な魔力が巨大な岩石に形を変えた。
「木っ端微塵に消え失せろぉおおおおっ!!!
『メテオ』!!!」
エドワードが吼えた直後、岩石は俺目掛けて飛んで来る。
そのスピードは遅く、走って容易に躱す事が出来た。
「ははっ、あれだけの魔力も当たらなければどうという事はない!!」
「それはぁ、どうかなぁ?」
岩石が地面に着地した直後、それは大量の熱と光を発して大爆発を起こした。
視界は光で埋め尽くされ、耳は爆音でまともに機能しない。
手足の感覚も無くなる、痛みすら感じない。
俺は、五感から得られる情報をすべて失った。
・・・・虚無。
俺は爆発の中でただただ虚無感を感じていた。
俺は、無力だ。
エドワードの圧倒的な力に手も足も出ない。
やがて、爆発は止む。
街の中に大きなクレーターが空いていた。
「う…あぁっ…」
その中心に倒れこんでいるのは、傷だらけの俺。
所々出血し、血溜まりを作っている。
俺の身体が辛うじて五体満足でいられるのは爆発の寸前に『
しかし、『力の暴走』の反動で俺の体力はスッカラカン、指一本すら動かない。
たとえ体力が残っていたとしても身体中の傷で立ち上がる事は不可能だろう。
最早、戦闘不能だ。
「あははははははははははははははははははっ!!
凄い凄い凄い凄いよ!!
英人クン!!!
俺の想像以上だ!!
まさかあれをまともに食らって生きているとは!!」
「こ、の、やろ…」
まともに口が機能しねえ。
身体も全然動く気配がしねえし、これは生きてるって言わねえよ。
「まさにぃ、ゴキブリ並みの生命力!!
気持ち悪いねぇー?
ホラ、なんとか言えよ!!」
「うぐっ…」
エドワードが俺の顔を踏みつける。
まったく抵抗が出来ない。
奴にされるがままだ。
・・・・痛いなあ、畜生。
段々意識が遠くなってくる。
「オラオラ!!
少しは抵抗してみたらどうですかぁ!?」
「げふっ」
今度は俺の腹に蹴りをいれるエドワード。
俺は意識を無理矢理戻される。
そして、腹から血液が込み上がってくる。
堪らず血を吐く。
我ながらなんて無様な姿なのだろうか。
・・・・ああ、こんなことになるなら最初からエリーゼの忠告に従っておけばよかった。
俺は本当に無力だ。
泣いているオクタヴィアを見たら助けたくなって出しゃばって、結局何も出来ていない。
力が無ければ、誰も救えないし護れない。
それどころか、自分の意思を貫き通す事すら出来ない。
悔しい!そして、力が無い自分を許せない!!
俺は悔しさのあまり、無意識のうちに涙を流していた。
「おおっ?泣いてるのかィ?
英人クン?
カッコ悪いねぇ〜!哀れだねぇ〜!
今どんな気持ちだよ!オイ!!」
背中をグリグリと踏みつけられる。
・・・・畜生!畜生!畜生!畜生!畜生畜生畜生畜生ぉっ!!!
「ああ、楽しかったぁ〜!
でも、もう飽きちまったなぁ。
そろそろ殺すか。」
そう言うとエドワードは俺の傍らに落ちていた俺の剣を拾って
「辞世の句を聞いてやろうと思ったけど、喋れないんじゃ仕方ないよなぁ!!
あばよ、瀬尾英人ぉ。
地獄へ落ちな。」
両手で持ち、それを真っ直ぐ俺に向かって突き出す。
死が近づくその瞬間俺の脳裏を過ぎったのは、エリーゼとオクタヴィアだった。
エリーゼは俺と契約したばっかりに俺が無力な所為で俺と共に命を落としてしまう。
オクタヴィアはこれから先もエドワードの下でしたくもない人殺しを一生し続ける。
・・・・・・・・・・・・駄目だっ!!!
それは駄目だぁっ!!!!!
彼女達を苦しませる終わりだけは決して俺が許さない!!!!!!!!!!!!
だから!!!俺は力が、力が欲しいっ!!!!