異世界で俺がモンスター娘達と契約しまくる話。 作:ワロリッシュたん
(今回は話の展開上、地の文は英人ではなくなります。)
時間は少し戻り、英人とエドワードの戦闘開始直後。
エリーゼはエドワードの契約モンスター、魔女のオクタヴィアと対峙する。
「早くお主を倒してエイトの元へ駆けつけねばならないのでな。」
「・・・・そうさせてあげたいのは山々なのですが。」
オクタヴィアは申し訳なさそうに杖を構え、戦闘意思を示す。
「私はこの首輪の所為で主人の言う事に逆らえないのです。」
オクタヴィアの首に付けられているのは、禍々しい雰囲気を放つ藍色の首輪。
その首輪には主人の言う事に逆らうと内蔵されている呪術が発動し、彼女に耐え難い苦痛を与えるのだ。
「そうか、ならば無理矢理にでも黙ってもらうぞ!」
エリーゼがオクタヴィアに向かって飛びかかる。
彼女は、目にも留まらぬ速度でオクタヴィアとの距離を詰める。
一方、オクタヴィアはエリーゼの超スピードを目の当たりにしても眉一つ動かさず、落ち着いた様子でーーー
『
ーーー土属性下級魔法を詠唱をせずに発動する。
エドワードが無詠唱で魔法を放つ事が出来るのは、彼と契約したモンスターであるオクタヴィアの能力の一部を取得したからだ。
つまり、無詠唱魔法はオクタヴィアの能力なのである。
エリーゼの目の前に巨大な岩石の塊が姿を現す。
彼女は強力な魔法が詠唱無しで発動された事態に一瞬だけ驚くが、岩石の側面を蹴ってバク宙の要領で後ろに跳んだ。
「・・・・そうすると思いました。
そして、宙に飛び上がった今の貴女に私の魔法を躱す術はありません。
『
オクタヴィアが放ったのは火属性中級魔法、『火の嵐』。
巨大な炎の竜巻がエリーゼに向かって襲いかかる。
その大きさはアメリカで発生するハリケーンよりも大きい。
確かに彼女の言う通り、空中で身動きの取れない状況では避けることは出来ずに全身が炎に包まれて焼け死ぬだろう。
「・・・・それは、妾が空中で移動出来ないという前提の元の話であろう?」
エリーゼはニヤリと笑う。
吸血鬼特有の八重歯がキラリと光る。
すると彼女の背から黒い大きな蝙蝠の翼が生えた。
翼で空を飛び、炎の竜巻から逃れる。
エリーゼは地上を走るよりも翼で空を飛ぶ方が得意で、速い。
制限時間で竜巻は消える。
静寂が2人を包む。
エリーゼとオクタヴィアはお互いに睨み合う。
先に静寂を破ったのはエリーゼだった。
「どうしてお主はそれほどの力が有って人間の奴隷なんてしているのだ!?」
「・・・・私だって好きで奴隷なんてやってるわけないじゃないですか。
人間の父さんが病気になって、うちは貧乏でしたから、買う為のお金が無くって、仕方ないから自分を売って・・・・」
オクタヴィアは、人間の父親と魔女の母親との間に出来たハーフだ。
人間とモンスターは主従関係以外で結ばれることは禁忌とされており、彼女達は周りから排斥された人生を送ってきた。
だが、それでも幸せだった。
しかし、現実は非常だ。
貧しい暮らしの中で彼女の父親が身体を壊し、重病にかかってしまった。
父親は一生懸命に働いていたが、稼ぎは良くなかった為、彼の病気を医者に見せる事は金銭上の問題で不可能だった。
病気はどんどん悪化していき、父親の命を削っていった。
そんな父親を助ける為にオクタヴィアは両親に黙って自分を売ったのだった。
「・・・・お主は自分が正しい事をしたと思ってるのだろうがな、妾から見ればそれは自己満足の逃避行動にしか見えぬ。」
「なんですって!?
貴女に何が分かると言うの!?」
エリーゼに自分のしてきた事を否定されて今まで感情を表に出していなかったオクタヴィアが初めて声を荒らげる。
「お主はただ、父親が病気で倒れる姿を見たくなかっただけじゃ!!
考えてみろ!
自分の娘が自分の身体を売って手にした薬を父親が喜ぶと思うか!?
思わないに決まっておる、娘の人生を売るくらいだったら自らの死を選ぶ、それが親というものじゃろうが!!」
「煩い!煩い!煩い!
そういう貴女も奴隷じゃないですか!?
貴女だって、どうせ親の為に身体を売ったんでしょう!?」
「・・・・妾には両親は既におらん、殺された。
そして、お主は今、妾を"奴隷"と言ったな?
生憎だが、妾は自分を奴隷などとは思っておらぬ。
妾の首を見ろ。」
そう言うとエリーゼは自らの首を指差す。
「・・・・!?
どうして貴女は首輪をしていないの!?」
"首輪"
それは契約者にとって奴隷としたモンスターに自分の言う事を聞かせる為の必需品である。
手の甲の痣と首輪、それが奴隷の証である。
「妾は別に着けても良いと思っているのだがな・・・・。
エイトが頑なに着けようとしないのだよ。」
「う、嘘です!
ありえません!!
首輪を着けさせない契約者なんているわけがない!!」
「残念だが、ここにいる。」
「じゃあ、どうして貴女は逃げ出さないんですか!?」
何より、契約者が首輪を使用する一番の理由は、首輪が無いとモンスターが逃亡する可能性があるのだ。
確かに契約者が死ぬと契約したモンスターも死ぬ。
だが、それだけだ。
人間に隷属する事は、時に死よりも辛いと考えるモンスターだって少なくない。
だから、契約者の元から逃げ出すモンスターも少なくなかったが、首輪が流通するようになってからそれは無くなった。
首輪の効果は二つ。
一つ目は、主人の言う事を聞かないモンスターに罰を与える効果。
もう一つはモンスターを主人の元へ強制的に呼び寄せる効果。
これらは主人の意思でいつでも発動できる。
だから、奴隷のモンスターは主人に逆らう事が出来ないのだ。
エリーゼは首輪をしていない。
彼女はいつだって英人から逃げ出す事が出来るのだ。
しかし、彼女は今まで決して逃げ出す事はしなかった。
そして、これからも逃げ出す事は無いだろう。
「エイトは、妾を孤独という地獄の苦しみから救ってくれた。
その恩がある。
・・・・そして何より、妾はエイトが大好きだからな。」
照れて顔を赤く染めながらエリーゼが言う。
それを聞いたオクタヴィアは信じられないというように頭を振る。
綺麗な緑のポニーテールが暴れまわる。
「有り得ない!有り得ない!有り得るわけ有りません!!
首輪を着けない主人に主人を思いやる奴隷?
そんな事がこの世界で許されるわけが無いでしょう!?」
人間はモンスターを殺し、排斥する。
モンスターは人間を憎み、決して許さない。
それがこの世界の人間とモンスターの絶対的な関係。
しかし、英人とエリーゼの関係の中に憎しみなどという感情は一切無い。
「許されない?
はっ!笑わせるなよ、小娘!!
お主の両親は愛し合って無かったのかよ!?」
エリーゼの言葉でオクタヴィアの顔が驚愕に染まる。
そう、彼女は人間とモンスターの混血。
この世界では有り得ない異端の存在なのだ。
「妾とエイトの関係を否定する事はお主の存在を否定する事になるのだぞ!?」
「黙れ!!
今更そんな話をされても遅い!
遅過ぎるのよ!!
私は奴隷、死ぬまで奴隷として生きなければならないの!!!
私はもう、諦めた!!
友達も恋人も!!!
私にはもう何も無い!!!
人生すらも諦めた!!!!
だから、二度と私に希望を見せないで!!!!」
英人とエリーゼ。
エドワードとオクタヴィア。
その二組の違いはほとんど無いと言える。
契約者とその奴隷。
そして、言葉が通じるところも同じ。
しかし、エリーゼは笑い、オクタヴィアは涙を流している。
どうして差が生まれてしまったのだろうか?
答えは、愛だ。
同じ契約でも愛の有無でそれは、永遠の隷属から永遠の約束へと形を変える。
もし、英人がエドワードのように残虐非道な男だったら?
エリーゼはオクタヴィアと同じく泣いていただろう。
少しでも運命の歯車が狂ってしまっていたら、エリーゼは、オクタヴィアと同じ境遇になってもおかしく無い。
だから彼女はオクタヴィアを放っておけないのだ。
そしてーーー
「お主は最初から全てを諦めてただただ泣いていたに過ぎん。
・・・・泣き言言いたきゃ、自分の全力を出し切って、それでも駄目だった時だけ言え!!!
このバカ小娘がぁああああああああ!!!!」
ーーーー諦めてただ泣いているオクタヴィアを彼女は許せなかった。
エリーゼは両親を失って失意のドン底で今までを生きてきた。
なんど死のうと思っただろうか。
けれど、彼女は歯を食いしばっていきのびた。
その結果、英人と出会う事が出来た。
「黙れぇえええええええ!!!
『多重詠唱』!!!
雷×雷×雷!!!」
だが、目の前のオクタヴィアはどうだろう、最初から全て、自分の人生すらも諦めて生きる事を放棄している。
「そんな事を言えるのは貴女が、素晴らしい主人に出会えたから言えるんです!!!!
貴女に私の気持ちは分からない!!!!
もう、黙って死んでください!!!
『サンダーボルト』ォッ!!!!!!!」
巨大な雷がエリーゼ目掛けて落ちてくる。
しかし、エリーゼはその場を一歩も動かない。
ただ、拳を強く握り締めて
「ああ、お主の気持ちなんか分からん!!
・・・・だが、一つだけ分かる事がある。
今を生きる事を諦めている奴には幸せなど訪れる事は決してない!!」
エリーゼは雷を拳で殴りつけた。
そんな事をすれば感電して死んでしまうに決まっている・・・・それが人間なら。
しかし、エリーゼは吸血鬼だ。
吸血鬼がどうして人間の血液を好んで飲むのか知っているだろうか。
彼等は血液自体を好んでいるわけでは無い。
血液に含まれている魔力を吸収しているのだ。
つまり、吸血鬼には魔力を吸収する能力が備わっているのだ。
雷はエリーゼの拳にみるみるうちに吸収され、消え去った。
「この程度か、小娘?」
「・・・・嘘、でしょ?」
オクタヴィアが後退りする。
魔力を吸収する。
これは魔法を全て無効化された事に等しい。
勝てない。
オクタヴィアは既に己の負けを確信していた。
直後、爆発が起こった。
爆発が起こったのは、エリーゼとオクタヴィアいる場所では無くそこから少し離れた、そう英人とエドワードが戦っている地点からだった。
数秒後爆発は止み、街の中にクレーターが空き、その中心にボロボロの英人の姿があった。
「エイトッ!!」
エリーゼは直ぐにその場へ駆けつけようとするが、オクタヴィアが立ち塞がる。
「退け!小娘!!」
「もう、終わりです。
貴女も貴女の主人も。」
エドワードが英人の頭を踏みつける。
それを見たエリーゼはオクタヴィアを無視して駆け出す。
しかし、オクタヴィアがそれを許すはずもなく、エリーゼは彼女に羽交い締めにされて身動きがとれなくなってしまう。
「離せ!離せっ!!
早く、早くしないとエイトが!!!」
「そうですよね。
あの人が死んだら貴女も死んでしまいますからね。」
「妾の事はどうだっていい!!
エイトが!!エイトが!!」
必死に英人の名を呼ぶエリーゼ。
彼女の必死の形相から彼女が自分の事がどうでもいいという発言は嘘じゃないことは明らかだ。
「・・・・どうして、そこまで」
「エイトは妾の全てだ!!!
妾を救い出してくれた恩人だ!!!
そして、妾の愛する人だ!!!!」
エドワードが英人の首に向かって剣を突き出す。
「ーーーーエイトの為なら妾は全てを捧げよう!!!」
ーーーその直後、エリーゼの契約の痣が赤く輝きだした。