紗夜と俺。   作:たわかなはたやかや

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自己満小説です。なので軽-く書いてます。更新も出来るだけ間を開けないように努めてまいりたいと思っております。


プロローグ『紗夜との出会い』

昨年の春、俺は俺の生きる原動力だった妹を亡くした。

交通事故だった。魚屋の前の交差点で大きなトラックに跳ねられて即死だったそうだ。

妹は真面目で友達も多くて頭もよくて、あと剣道で全国大会で優勝する実力を持った、何処をとっても完璧な妹だったんだ。そんな妹が死んだ。

 

俺がやってた仕事を放り投げてまで向かった時には息を引き取っていたよ。俺はただ妹の亡骸を前に泣き叫ぶことしかできなかったんだ。

 

 

それからはもう、仕事場には顔を出していない。一年も行ってないから流石にクビだろう。

 

...もう、それでもいい。

 

............もう。

 

 

プロローグ『紗夜との出会い』

 

 

 

ゴミみたいな生活を送っている俺だが、未だに死のうとは思っていない。いや、死ぬのが怖くて死ねないから拒絶しているんだろうな。情けないったらありはしない。

けど生きてたってこの先に待っているのは過酷なものでしかない。一体どうすれば俺はこの途方もない悲しみから救われるのだろうか。

 

そんなことを考えたって仕方がないので取り敢えず飯調達のために近くのヨロズマートへ足を運ぶことにする。知人に出くわしたら大変なことになりそうなのでパーカーで顔を隠す。そもそも髪がボサボサだからわからないだろうけど。

 

「いらっしゃいませー」

 

ここ最近うんざりする程聞いたその声を聞き流し、俺はいつもここに来れば買うシャケおにぎり、焼きそばパン、妖緑茶を手に取り会計を済ませる。

そして店から出ようとした時、会計の手前のアイスコーナーで三人の中学生が仲睦ましく会話をしているのが目に入った。

 

「やっぱりコンビニのアイスって言ったらキング・オブ・モナカ一択でしょ!」

「いーや!安くて旨いゴリゴリ君だな!トウマもそう思うだろ!?」

「...僕はどっちも好きなんだけど。」

「「どっちもとかないよ!!(ねーよ!!)」」

「ええ...」

 

 

...楽しそうだな。

俺の妹も生きていたら、あんな風に友達と笑って休日を過ごしていたんだろうか。

 

.........駄目だ、やっぱり妹のことが頭から離れない。早く帰ろう。

 

〇●〇●

 

帰った所で別に何もするわけではないので、コンビニ前の竜見川端公園で昼飯を食うことにする。

昔は妹とよく来たんだがな、大人になってからはめっきりだ。

 

「...買い過ぎたな。」

 

手のレジ袋に入っている物を見てそう呟く。

昔、よく妹が俺に焼きそばパンをせびっていたから、今でもつい焼きそばパンを買ってしまう。

別に俺が好きなわけじゃないのに。

 

こんな俺じゃ、妹に顔向けできないな。

 

そう思って焼きそばパンにがっつこうとした時、どこからか視線を感じた。仕事の同僚か知人に見つかったかと思い、辺りを見渡すが誰もいない。

 

「...気のせいか。」

 

そもそもこんなクソダサ男をじっと見るような奴もいないだろう。そんな事するのは物好きな奴だけだ。

そう思って再び焼きそばパンを食べようとした時、今度ははっきりと、あきらかに僕の正面に()()がいるのを感じ取れた。思わず顔をバッと上げる。

 

『おいしそう...だけど、負けん!食欲に!!.........じゅるり』

 

目の前にいたのはその身と全く丈のあってない刀を持つ、こじんまりとした少女だった。

...俺の焼きそばパンが欲しいみたいだ。

 

「...食べるか?」

 

俺は手に持つ焼きそばパンをその子に差し出す。

 

『あなた、私が視えているのか!?』

「...?見えるけど、おかしいか?ほら、腹減ってるんだったら食べろ。」

 

俺がそう返すと少女は黙って俺のパンを受け取り、隣のベンチに座った。そして俺がさっき齧り付こうとしたそれを頬張る。

 

『.....おいしい。』

「だろ、昔はよく妹と食べたよ。」

『妹がいるのか?』

 

「...ああ、自慢の妹がね、頭も良いし友達も多いし勉強できるし、どこをとっても最高の妹だよ。」

 

『......へぇ』

 

その子は聞いてきたくせに興味なさそうに呟いてパンを頬張る。なんだこいつ。

だが、とてもおいしそうに食べてるのを見て俺も食欲が沸いてきた。なので袋からシャケおにぎりを出す。

 

『...おいしそう』

「流石にやらんからな」

『えー...ケチだな。』

「お前が食いしん坊すぎるんだよ。」

 

それだけ言って俺はシャケおにぎりを頬張った。何故だかわからない、凄くおいしく感じた。

 

『...おいしいか?』

「ああ、久々にうまいと思ったよ。」

『そうなのか?今の世の中おいしいものであふれてるのに、変なやつだな。』

「いきなり現れたお前に言われたくねぇよ。」

 

『それなんだよ、何で私のことが視えてるんだ?...えーと名前は......』

「ユウマだ。...何だ、お前ってもしかして()()()()()()()()()の存在なのか。」

『そ、そういうわけじゃない!.........ただ、私のような存在は本来人間には視えない筈なんだが...』

 

その言葉を聞いて思わず苦笑する。

 

「...そうか、とうとう俺もそこまで来たか。」

『いや、その...えーっと.........』

「うれしいよ、俺は。」

『......え?』

 

「...それってつまり死が近づいているってことだろ?一年も待たされたがやっと天から迎えが来るってことだ。有難いよ。やっと死ねるんだから。」

 

俺の心からの叫びだった。自分で死ぬのが怖かった俺にとってこれほどのチャンスはない。妹を亡くし、路頭にさまよう俺に天は手を差し伸べてくれたのだ。

 

『......ユウマ、本気で言っているのか?』

「ああ、本気だ。」

 

『.........駄目だ、死んでは。何も残らないんだぞ!輪廻転生すれば何も残らないんだぞ!妹の記憶も!ユウマのことも!!』

「いいんだよ、もう生きても楽しいことなんて無いしな。」

 

こいつは...俺と出会ってまだ数分やそこらなのに何を本気にしてるんだろうか。

 

『.........決めた。私は今日からユウマの家に住む!』

「は?」

 

ちょっと待て、意味が分からない。

 

『私がいれば死のうなんて考えないだろ?あと』

「...言ってることの意味が分かってるのか?」

『当たり前だ、まず大前提として私は妖怪。人には見えない存在だから幼女監禁とかの心配は無用だ。食べるものだけは用意して貰わなければならないが。』

 

「そういう事じゃない!会って間もないヤツの家に住むんだぞ!?何されるかわかったもんじゃないだろ!!」

 

つい大声で叫んでしまった。大人げなくだ。

...公園の子供たちからの視線が痛い。

 

『...ユウマがそんな事する人間だとは、私は思えない。』

 

この子は俺の目を曇りなき眼で真っすぐと見て、そう発した。

大人だなぁ、色んな重荷をしょってふらふらしてる俺なんかよりも、よっぽど。

 

『何なら家事一般は私が受け持つ、頼む。』

 

「.........。」

 

そこまで言われちゃ断りづらい。

......いや、何を断ろうとしてるんだ俺は。どうせこの先真っ暗な人生を歩むんだ。そんなの、誰かが傍にいてくれなきゃやっていけないのではないか。

こいつも来たいって言ってるんだし、家事してもらえばわざわざこうやってコンビニに通う必要もないのでは...?

.........俺が背負うデメリットと言えば、こいつの寝床を用意することぐらいだ。圧倒的に得でしかない。

 

「...あぁ、仕事探さなきゃならないな」

『! ということは...!!』

 

俺は隣に座る彼女に手を差し出す

 

「来いよ、これからよろしく頼む。名前も知らない少女。」

『!!せ、精一杯頑張るぞ!!名前は紗夜だ!よろしく頼む!』

「え...!」

 

その名前を聞いてメリットデメリットの話が頭の中から風化するように消え去った。

......俺の妹と同じ名前なのは偶然なのだろうか。

...妖怪と言っていたが、もしかしたら妹の生まれ変わりなのではないか。

 

 

――いや、何でもかんでも(彼女)に当てはめようとするのはやめよう。そんな奇跡、あるわけがない。

だが...今この瞬間、こいつは確かに俺の心に一筋の光を差してくれたのだ。

 

俺は隣の彼女に目線を合わせ、静かにほほ笑む。

 

「よろしくな、紗夜」

『ああ!』

 

これから起こるであろう様々な事柄に思いを馳せながら、俺は紗夜と一緒に帰路を辿った。




主人公は重度のシスコンですが妹を亡くしています。
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