宇宙戦艦ヤマト2199 妄執の亡霊   作:とも2199

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宇宙戦艦ヤマト2202とは別の世界線を歩んだ宇宙戦艦ヤマト2199の続編二次創作小説「妄執の亡霊」です。「白色彗星帝国編」、「大使の憂鬱」、「孤独な戦争」の続編になります。


妄執の亡霊10 青い惑星

 山本は、兄に手を伸ばした姿勢のまま、呆然と立ち尽くしていた。

 周囲の金色の光は、既に収まっており、すぐ近くにユリーシャの姿が見えた。

 山本は、がっくりと項垂れて、その場に座り込んだ。流れる涙が、どうしても止まらなかった。

「兄さん……」

 あれはいったい何だったのか。

 山本には、奇跡が起こったとしか思えなかった。

 項垂れる山本の傍に、ユリーシャがやって来た。そして、彼女は、頭の宇宙帽を両手で掴むと、それを取り外した。そして、呼吸が普通に出来ることを確認していた。空を見上げると、赤い空の代わりに、いつの間にか青い空に白い雲が浮かんでいた。

 山本は、ユリーシャの方を見上げて、黙ってその向こうの空を見た。

「何が起こったの?」

 ユリーシャは、それに回答をした。

「誰かが、ここでコスモリバースを動かした」

 ユリーシャは、遠い空を指差した。そこには、黒い点となった何かが浮かんでいた。

「ヤマト? ううん。ヤマトは、既にコスモリバースを取り外したはず」

 ユリーシャは、山本に聞いた。

「玲こそ、何があったの?」

 それを聞かれて、山本は答えを言い淀んだ。

「……両親と、それから兄に会った」

 山本は、それ以上を口にするのをためらった。

「そっか。玲にとって、一番大切な人に会えたんだね」

 山本は、それには静かに頷いた。

「私も、コスモリバースの機能や仕組みをちゃんと理解しているわけじゃない。あれは、遠い昔のイスカンダルの科学者が開発したもので、私が生まれた時には、もうそういうことがわかる人はいなくなっていた。でも、使った時に何が起こるのかは知ってる」

 ユリーシャは、暫く何かを考えていた。

 彼女は、突然はっとすると、山本に叫んだ。

「いけない。今すぐ、お姉さまのカプセルに行かないと!」

 山本は、涙を拭いながら、ぼんやりしていた。

「何故?」

「早く! 取り返しがつかなくなる前に! お願い」

 

 倒れていた真田は、無理矢理身体を起こして、周りのスタッフ全体に声をかけた。

「全員無事か?」

 真田以外、全員が意識を失っていた。その真田も、意識を失っていたが、たまたま最初に起きただけだった。

「いったい何が起こったんだ? 前に使った時は、こんなことは起こらなかったはずだ」

 真田は、全員の肩を揺すって一人一人声をかけて回った。彼は、ふと艦橋の窓の外を見ると、そこには、遠く海が広がっていた。空の色も、青く染まっている。

「これは……」

 真田は、様子から察するに、数十年前のテラフォーミング時代の火星の姿になっているのではないか、と推測された。

「なるほど。これは興味深い」

 そして、真田は、機関室にも走って行き、同様に倒れていた徳川も起こした。

「い、一体何が起こったんじゃ?」

「わかりません。状況的に、コスモリバースが原因なのは間違いないですが。すいませんが、波動エンジンの状態の確認をお願いします」

「了解じゃ。任せておけ」

 

 地上車は、孟スピードで飛ばしていた。先ほどのカプセルがあった座標は記録していたので、迷うことはなかった。

 地表の様子は、それほど変化はなかったが、空が激変していた。山本は、青空が広がる火星に違和感を覚えながら、車を飛ばしていた。ユリーシャは、カプセルのあった場所の変化を頻りに心配していた。とにかく急がなければいけないようだった。

 すると、目標座標に接近しようとして、それを拒むものが待ち構えていた。地上車のフロントガラスから見える前方一面に、海が広がっていた。

「う、海?」

「玲! 急いで!」

 しかし、先ほどの座標は、この海の真ん中にあると思われた。山本は、先ほどの場所が凍りついていたことを思い出した。あれが、海へと変化したのだろうか。

「ユリーシャ、すまない。海があって、向こうに辿り着けない」

「そんな……お姉さま!」

 ユリーシャは、せっかく連れて帰れるはずだったサーシャの遺体のことを思い、途方に暮れていた。

 仮に宇宙船に戻ったとしても、海上で船を静止させて、あれを引き上げるようなことは、あの古ぼけた宇宙船には不可能だった。しかも、戻るのに何日もかかるはずだ。山本は、一つの可能性にかけることにした。

車に搭載されている、古くて電波も弱い通信機のマイクを掴むと、それでチャンネルを変えながら、連絡を取ってみることにした。

「こちら、地球連邦防衛軍の山本二尉だ。至急救助を請う。こちら、山本。至急救助を請う……」

 

 実験艦ムサシの第一艦橋では、アナライザーが、その通信をキャッチしていた。

「徳川サン。山本二尉トイウ方カラ、救助ヲ求メル通信ヲキャッチシマシタ。最優先事項ト判断シ、ソチラニ向カイタイ。至急エンジンヲ動カシテクダサイ」

「救助じゃと。ここは、誰もいないはずじゃなかったのか?」

 アナライザーから艦内通信で連絡を受けた徳川は、そう言いながらも、補助エンジンをすぐに起動して、回転数を上げていった。

「三十秒で発進可能だ。行き先はお前には任せたぞ」

「ワカリマシタ」

 徳川は、第二艦橋の真田にも、すぐにその連絡をした。

「救助ですって? 誰からのものか、わかりますか?」

「先程のアナライザーから聞いた話じゃ、山本二尉らしいぞ」

「何ですって?」

 ムサシは、補助エンジンの出力で一気に山本たちが連絡した場所に向かって飛んでいった。

 

 山本とユリーシャは、接近する宇宙船の姿を見て呆気に取られていた。

「あれは、やっぱりヤマトじゃないか……」

 

 ムサシに救助された山本とユリーシャは、急いで第一艦橋に上がった。同じように、第一艦橋に上がって来た真田に、この船がヤマトではなく、同型艦のムサシであることが説明された。

 ユリーシャは、とても焦っていて、早口で真田に話しかけた。

「真田、さっきの光は、コスモリバースを使ったんだよね?」

「お久しぶりです。ユリーシャさん。そうです、我々科学技術省の者で科学実験をおこなっていました」

 山本は、挨拶もそこそこに、焦る気持ちを抑えて、簡単に状況を伝えた。

「真田さん、ユリーシャの姉のサーシャさんの遺体が入ったカプセルがあった場所が、地表の激変によって海に変わってしまったんです。至急、カプセルの引き揚げに協力して頂けないでしょうか?」

 真田は、その話を聞いて、その情報を思い出していた。

「なるほど。確かに、ここはイスカンダルの二人目の使者が亡くなった場所だ。アナライザー、捜索できるか?」

「ハイ。ソレナラ既ニ、発見シテイマス。座標モ把握シテイマス」

 山本は、真田に聞いた。

「コスモシーガルは搭載してますか?」

 真田は、頷いた。

「ヤマトでいうと第三主砲の位置に、艦載機格納庫がある。民間用の同型機がそこにある」

「私が行きます!」

 山本は、走って第一艦橋から出ていった。ユリーシャも、すぐに山本の後を追って、艦載機格納庫へ向かった。

 

 ムサシから発艦した民間用コスモシーガルは、海の上を低空で飛行していた。

「アナライザー、すぐに座標を送って!」

 山本が通信でムサシに呼び掛けると、アナライザーが即座に反応して、座標が送られて来た。座標は、すぐに機体のナビゲーションシステムに投入され、山本は、機体をそちらに傾けた。そして、暫く飛行を続けると、目標のカプセルが海上に見えてきた。

「あった!」

「玲、お願い!」

「任せて!」

 カプセルは、海に漂っていたが、今にも沈みそうな状態だった。山本は、機体を海面すれすれまで、低い位置に降ろすと、機体をホバリングさせ、少しずつ、カプセルに近付いていった。

そして、すぐ近くに来ると、機体の後部をカプセルの方に向けて回転させ、そこで静止した。彼女は、機体の操縦を自動操縦に切り換えて、その場に固定し、コックピットの操縦席から立ち上がった。そして、急いで後部コンテナに向かって走った。

 後部コンテナの内部で山本がハッチを開けると、開口部から強い風が入ってきて、機体が激しく揺れた。山本は、ハッチの出入口の取っ手を掴んで、海に落ちないように掴まって耐えた。

「玲! 大丈夫?」

 ユリーシャも、後部コンテナの中にやって来ていた。

「危ないよ!」

「何か手伝えることがあったら言って!」

 山本は、ハッチの開口部の目の前にカプセルがあるのを確認すると、少しずつコンテナの内部の方へ戻ってきた。

「磁気ワイヤーを射出して、カプセルを捕まえる。ユリーシャの側にも、同じ装置があるから、一緒に操作して!」

「わかった!」

 山本は、機体の揺れで苦労して内部の右側の射出装置のところへ戻った。そして、磁気ワイヤーの操作パネルの小さなディスプレイを見て操作し、カプセルに照準合わせた。

「ユリーシャ、そっちの左側にも磁気ワイヤーの操作パネルがある。スイッチで、カプセルに照準を合わせて。出来る?」

「やってみる!」

 ユリーシャは、そこのパネルで照準器がスイッチ操作で上下左右に動かせることを理解した。すぐに操作を始めると、どうにか照準にカプセルを捉えた。

「準備出来たよ!」

「三つ数えたら、同時に発射する。三、二、一、発射!」

 二人の操作で、左右から磁気ワイヤーが射出された。それは、海に沈む寸前のカプセルに左右から命中し、磁気でロックされた。

「捕まえた! 後は、ワイヤーを巻き上げるスイッチを入れればいい! 行くよ? 三、二、一、ゼロ!」

 モーターが唸りをあげて、ワイヤーが巻き取られ始めた。そして、コンテナの開口部に、カプセルが引きずりこまれた。

「玲! やった!」

「よし、ハッチを閉じる!」

 後部ハッチは、山本の操作で閉じた。彼女は、急いでコックピットに戻ると、自動操縦を解除して、機体を上昇させた。

「や、やったぞ!」

 

 山本とユリーシャは、ムサシに戻って、機体から降りると、疲れきってその場に倒れ込んだ。

「やったね」

「うん、やった」

 二人は、笑いあっていた。

 少しあとで、格納庫にやって来たアナライザーが、格納庫の装置を操作して、クレーンでコンテナを開け、内部のカプセルを取り出した。

山本とユリーシャは、疲れきって起き上がれず、そのまま二人で格納庫で寝転んでいた。

 

 その頃真田は、第二艦橋で、実験の結果を確認していた。真田を中心に、中央テーブルに、全員が集まっていた。

「皆、外の様子は見たと思う。どうやら、二十一世紀終わりから二十二世紀後半にかけて、テラフォーミングが成功して維持、管理されていた時期の火星の状態に復元されたと思われる。地表は大きく変化して、海が現れている。そして、待機組成に大きな変化があり、気温も大幅に上昇している。大気は呼吸も可能な状態だ。コスモリバースシステムから未知の元素を含む光が発せられて、惑星全体を僅かな時間で覆うように展開されていたが、これがこの変化をもたらしたと考えられる。これらの変化やコスモリバースシステムの起動時の観測結果は、以前ヤマトが地球で起動した時と比較して、全く同じ事が起きていたと言っていいと思う」

 そこで一区切りして、真田は、全員を見回した。

「前回と大きく違うのは、ここにいた全員が意識を失っていたことだ。これは、前回ヤマトで起こっていない事象だ。もっと詳しくデータを比較しなければ、違いを明らかにすることは難しいだろう。それぞれ、意識を失っていたのは把握しているが、まずは、それぞれの持ち場の状況について簡単に報告して欲しい」

 真田が促して、神崎が最初に報告した。

「波動エンジンの観測データを確認しました。全力運転中に起動した結果、エンジン出力が大幅に低下したことがわかりました。前のコア生成実験の結果に似ていますが、出力の低下が著しかったようです」

 市瀬が次に報告した。

「コスモリバースシステムは、完全に正常動作したと思われます。艦内のセンサーでも、未知の元素が放出されているのが観測されていますが、解析には時間がかかりそうです。また、コアが消失し、起動パルスの反応が消えました。完全に機能を停止してしまったようです」

 最後に、日下部が報告した。

「あの……」

 真田は、日下部の様子を見て、先を促した。

「君の報告、私は、注目してるよ」

 日下部は、頷いて、口を開いた。

「はい。医療室のセンサーは、前の実験と同じように、静電気のような反応がありましたが、一瞬でなく、かなり長い時間に渡って電気が流れていました。その流れは、コスモリバースシステムに向かっているようでした。それから、先程、医療室に直接行って病人の方々の状況を確かめて来ました。亡くなった三名の方のうち、一名の蘇生を確認しました。また、残りの六名の方々ですが、二名の方の病気が改善して、症状が軽くなっていることを確認しました」

 全員、その報告を驚きを持って聞いていた。

「やはり、甦り現象が起こったか」

「先生……」

 新見が、言いにくそうにしていた。

「どうかしたかね?」

「データの報告ではないんですが……。その、実は。……私は、亡くなった古代守に会いました」

 真田は、困惑している様子の新見の方を真っ直ぐに見た。

「詳しく教えてくれるかね?」

「出来れば、頭を整理してからにさせて下さい。間違いなく、実際に会って話をしたと思っています。夢とかではなかったと感じています」

 神崎が、手を上げて話を始めた。

「実は、私も、亡くなった父母に会いました」

 日下部も、市瀬も手を上げた。

「実は、私たちも・・」

 早紀も言いにくそうに話をした。

「真田さん、私も意識を失っていた間に、そういう体験をしました」

 真田は、全員の様子を確認してから言った。

「なるほど。興味深い。実はね、私もなんだよ」

 

続く…

 




注)pixivとハーメルン、及びブログにて同一作品を公開しています。
注)但し、以前pixivに連載した小説の加筆修正版です。以前のpixiv連載版とは、一部内容が異なります。
注)ヤマト2202の登場人物は、役割を変更して登場しています。
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