宇宙戦艦ヤマト2199 妄執の亡霊   作:とも2199

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宇宙戦艦ヤマト2202とは別の世界線を歩んだ宇宙戦艦ヤマト2199の続編二次創作小説「妄執の亡霊」です。「白色彗星帝国編」、「大使の憂鬱」、「孤独な戦争」の続編になります。


妄執の亡霊11 旅の終わり(最終回)

 格納庫で寝転んでいたユリーシャは、起き上がって、カプセルの中のサーシャの遺体を確認しようとしていた。

 ユリーシャは、中を覗き込んで、姉の遺体が無事なのを確認した。

「お姉さま……」

 ユリーシャは、カプセルに覆い被さって、目を閉じて安堵していた。

 すると、カプセルから微かに何かが動く音が聞こえて来た。ユリーシャは、訝しげに何の音かを確認しようと、中の様子を見た。

「……!」

 彼女は、声にならない叫びを上げた。

 サーシャの指が微かに動いていたのだ。

「玲!」

 まだ寝転んでいた山本は、何事かと思って飛び起きた。

「どうしたの?」

「お姉さまが……」

 山本も、カプセルに近寄って、中の様子を確めた。ユリーシャが指差す先で、サーシャの指が微かに動いているのが山本にもわかった。

「まさか、そんな……」

「玲、お願い。助けを呼んで」

 ユリーシャは、涙声で山本に言った。

 

 サーシャ蘇生の連絡を受けた真田と新見は、サーシャを医療室に運び込み、医師に診察をさせた。固唾を飲んで見守ったユリーシャと山本に、残酷な結果が伝えられた。医師の診断結果は、サーシャは危篤状態であり、間もなく死亡するだろうとのことだった。

 僅かな期待をさせられたユリーシャは、そこで泣き崩れた。山本は、地球の恩人であるイスカンダルの使者は、特別な存在だと言って、何か方法が無いかを訴えた。

 真田と新見は、その話をもっともだと考えて、対策を検討した結果、ムサシには、ヤマトから移植した自動航法室に、以前ユリーシャを入れていた生命維持装置があることがわかった。緊急避難的な処置として、そこにサーシャを大急ぎで運び、どうにか命がすぐに絶たれる事態だけは回避された。しかし、完全に蘇生させるのは困難だろうと思われた。

 

 生命維持装置の前に座り込んだユリーシャは、サーシャの姿をじっと見つめていた。

「ごめんなさい。こんなところに閉じ込めて。私、必ずお姉さまを元に戻せる方法を探すから。それまで、狭いけど我慢してね」

 ユリーシャは、泣きながら、装置に体を寄せて、しばらくの間そこにいた。

 

 ユリーシャと山本は、その一件が落ち着いた後、第二艦橋に訪れていた。

 ユリーシャは、真田に依頼され、コスモリバースシステムについての説明を始めた。

「皆さん、私は、イスカンダルのユリーシャです。コスモリバースシステム起動時の効果について、私の知っていることをお伝えします」

 ユリーシャは、集まった人々をゆっくりと見回した。

「ご存知のようにコスモリバースは、コアとなった生命の記憶を利用して、惑星の再生を行います。この再生では、そのコアとなった方の記憶と、その人が存在した世界に関係した人々の願いや想いの記憶が集まって反映されます。もし、コアとなった方が、この世界への強い執着や満たされない想いがある場合、それらの記憶に直接接して、再会と別れによってその想いを満たそうとすることがあります。それによって、今回のような事象が起きることが、過去の事例でわかっています」

 新見は、恐る恐る聞いた。

「では、本当にあれは、古代くんの記憶そのものだったということ?」

 ユリーシャは、古代の名を聞いて、新見の方を見た。

「それは、イスカンダルに来た古代守のことですね? そう考えて頂いていいと思います」

 新見は、胸の前で手を抑えて、目を閉じて先程の出来事を思い出していた。

「ありがとう、ユリーシャ」

 山本も、先程の明生との再会が、本物だったことを確信し、胸の中に暖かいものを感じた。そして、それを守るように、自分の身体を抱き締めた。

 ユリーシャは、更に話を続けた。

「それから、もう一つ、コスモリバースの影響下で、亡くなったばかりの方がいる場合、その人自身の記憶が呼び寄せられて、肉体が再生して甦りが起こることがあります。ここでも、私は雪が甦ったことがあると聞いています」

 ユリーシャは、ここまで説明して声を落とした。

「今回、私の姉、サーシャが蘇生した件については、過去の事例があるのか、私も、イスカンダルに戻って確認しないとわかりません。サーシャは、長い年月、異星の惑星で遺体があった状態で、このようなことが起こるのは、私にも想定外でした」

 真田は、ユリーシャに向かって頷いた。

「ありがとう、ユリーシャ。今は辛い気持ちだと思うが、本当に申し訳ない。君がいてくれたことで、先程の皆の体験に一応の説明がつくだろう。これは、私自身も含めてだが、皆の動揺が酷く、精神的な影響を心配していた。出来れば、イスカンダルの技師の話を聞きたいところだが、それは叶わぬことのようなので、我々で引き続き研究を進めて行くつもりだ」

 ユリーシャは、頷いて、無言でその場を後にして行った。

 

 しばらくして、真田は、新見を連れて再び食堂を訪れていた。

「大丈夫かね?」

「ええ、問題ありません」

 新見は、守とどんな話をしたか言うべきか迷ったが、そのまま伝えることにした。

「守に、死んだ俺のことなんか早く忘れろって言われたんです。悲しかったけど、それは確かにそうだし。近くにいい人が必ずいるから、新しい恋をしろ、ですって。本当に、亡くなってからも勝手なひとなんだから……」

 新見は、あれから何度も彼と会話した時の気持ちが甦り、大切な思い出として、忘れないようにしようと、心に誓っていた。

 その話を聞いた真田は、どう話を切り出したものか、と考えていた。

「あの時、実は私も、古代守に会ったんだよ」

 新見は、少しだけ驚いていた。

「そう……。そうだったんですね」

 真田にしては珍しく、少し言い淀んでいるようだった。

「あいつから、君のことを頼むって言われてしまったよ。どういう意味だと思う?」

 新見は、珍しく視線を合わせてこない真田のことを不思議そうに見つめた。

 もしやこれは、意識しているのだろうか、と彼女は思っていた。

 そして、新見は微笑して言った。

「そのまんまの意味じゃありません? 頼まれて見たらどうですか? それに、私のいい人って、先生以外にいないと思いません?」

 真田は、大分困っているようだった。

「君のことは、以前から大切にしているつもりだよ」

 新見は、そんな真田の姿を見て、いじめたい気持ちに少しだけなっていた。

 本当に、この人って、科学以外は駄目な人――。

 二人は、そこでしばらく、その話題で議論を始めた。

 

 真田たちが去った後、山本とユリーシャも食堂にやって来た。特にすることもなく、テーブル席に着いた二人は、ぼうっとしていた。

「ユリーシャ。大丈夫?」

 山本は、それとなくユリーシャを心配して言った。

「うん。たぶん」

 ユリーシャも、先程の一件で呆けていたが、想いを伝えようと考えた。

「私、お姉さまをイスカンダルに連れて帰ったら、何とか治療方法を探すつもりだよ。もし、もう一度元気な姿に戻せたら、本当にいいと思ってる。もう一度話したいから頑張る。大丈夫、心配はいらないよ」

 そう言ってから、ユリーシャも、山本は大丈夫だろうか、と心配をした。

「玲こそ。大丈夫?」

 山本は、少し考えてから言った。

「うん。私、今回の旅に来て、本当に良かったと思ってる。兄さんに会えた奇跡を大切に、これからの人生を生きようと思ってる」

 ユリーシャは、微笑して無言で頷いた。

「兄さんに、この火星に、また人が住めるようにして欲しいって頼まれたんだけどね。さっき新見さんに聞いたら、このまま放っておくと、すぐにまた元の火星に戻っちゃうみたい。テラフォーミングの維持管理が必要なんだって。どうしよう。私がここに住んでそれをやるっていうのはどう?」

 ユリーシャは、うーんと考えていた。

「でも、そんなことしてたら、いい人、出会えないと思うよ」

 山本も同じようにして、うーんと考えていた。

「そう言えば、いい人と子供作れって言われたんだよね。これ、両立は難しいよ」

 ユリーシャは、くすくすと笑っていた。そして、少し真顔になって言った。

「もう、古代のことはいいの?」

 山本は、少し照れたように笑った。

「うん。そう言えば、兄さんに会ったら、古代さんのことは吹っ切れたみたい。大丈夫、心配ないよ」

 ユリーシャは、笑顔で言った。

「良かった。お互いにこれから頑張ろうね」

 山本も笑顔になった。

「うん。頑張ろう。あなたが居てくれて、本当に良かった。いろいろありがとう」

「私も、玲のおかげだよ。ありがとう」

 二人は、どちらからともなく、握手を交わした。

 ユリーシャは、何かに気がついてその手を見つめた。

「どうしたの?」

「何でもない」

 ユリーシャは、その手を通じて、山本の兄への想いが恋愛感情であることを知ってしまった。しかし、そのことは、胸の内にしまっておこうと心に決めた。

「さて、じゃあ、私は、行くね」

「どこへ?」

 山本は苦笑して言った。

「下に置いてきた地上車と、宇宙船を防衛軍に返さなきゃ。あと、拾ったぬいぐるみも、置きっぱなしだし」

「私も、行こうか?」

「あなたは、お姉さんについてなきゃ。一人で行くから。大丈夫」

 ユリーシャは、少し寂しそうにしていた。

「そっか。たぶん、これでしばらくはお別れだね」

「お姉さんが元気になったら、こっちから会いに行くよ。ユリーシャも、また地球に来ることがあったら連絡を頂戴」

 ユリーシャは、満面の笑みを浮かべた。

「わかった。じゃあ、またね」

「またね」

 二人は手を振って、食堂で別れた。

 

 火星に降りた山本は、その空気を思い切り吸い込んだ。

「気持ちがいいね。宇宙服がいらないって」

 彼女は、あえて宇宙船ではなく、地上車のところに降りていた。もう少しだけ、この火星で過ごしたいと思ったからだ。

 山本は、地上車の運転席のドアを開けて、乗り込んだ。運転席のフロントガラスの前に、アルカディア市の自宅で拾ったぬいぐるみを、静かに置いた。

「さて、じゃあ、出発するか。何日かかるかな」

 エンジンを始動して、山本はアクセルを踏み込んだ。

 

 

宇宙戦艦ヤマト2199 妄執の亡霊

 

完――。

 




注)pixivとハーメルン、及びブログにて同一作品を公開しています。
注)但し、以前pixivに連載した小説の加筆修正版です。以前のpixiv連載版とは、一部内容が異なります。
注)ヤマト2202の登場人物は、役割を変更して登場しています。
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