宇宙戦艦ヤマト2199 妄執の亡霊   作:とも2199

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宇宙戦艦ヤマト2202とは別の世界線を歩んだ宇宙戦艦ヤマト2199の続編二次創作小説「妄執の亡霊」です。「白色彗星帝国編」、「大使の憂鬱」、「孤独な戦争」の続編になります。


妄執の亡霊 番外編2 結婚の記憶編

エピソード5 沖田・土方編

 

「珍しいですね。今日は残業されないんですか?」

 藤堂早紀は、真田と新見が連れ立って、帰り支度をしているのを見かけて、彼らの席の近くで立ち止まった。

「今日は、我々の後輩と食事をすることになっているんだ」

「先に帰るわね」

「はい。お疲れ様でした」

 早紀は、にっこりと笑って見送った。

 

「真田さん! こっちです」

 そこは、若い人が多く訪れる外国料理を出すカジュアルなレストランだった。店に入ると、それを見つけた古代がすぐに手をあげて声をかけてきた。

 賑やかな店内の席を抜けて、真田と新見は、古代と雪の待つ席へとやって来た。

「二人とも、久しぶりだな」

 真田が脱いだ上着を、新見が受け取って店員に預けていた。

「ご無沙汰してます」

 古代と雪は、立ち上がって軽く頭を下げた。そして、二人との再会に嬉しそうにしていた。

 座席に着いた二人は、早速飲み物を注文した。

「本当に久しぶりね。変わりないかしら?」

「はい。新見さんもお変わりなく」

 注文した飲み物が、すぐに運ばれてきたので、四人は杯を交わして乾杯をした。

「あまり変わりは無いが、私ももう三十代も半ばに差し掛かったところだ。新見くんも……」

「先生」

新見は、真田の話を遮った。

「女性の年齢を簡単に明かすのは、失礼じゃありません?」

「そうかね? 事実を話そうとしただけだが」

 古代と雪は、顔を見合せて、くすくすと笑った。

 雪は、古代と顔を見合せて頷き、古代も頷いて話始めた。

「今日お誘いしたのは……」

「おめでとう」

 古代が言い終わる前に真田が言った。

「えっ?」

 新見も、にっこりと横で笑っている。

「おめでとう、古代くん。それに森さんも」

 古代は、苦笑いしつつ確認をした。

「誰かから、聞きました?」

「簡単な推測だよ。君たちが付き合ってもう何年か経つ。それに、二人があらたまって私たちを食事に誘うなんて初めてのことだ」

「そ。先生と議論して、結婚の報告に違いないって結論になったわ」

 古代は、雪と顔を見合せて、思わず笑いだした。

「お二人にはかないませんね。ご推測の通り、私たちは結婚することになりました。今日はそのご報告をしようとお誘いしました」

 雪も続けて言った。

「本当は、もっと早めにご挨拶したかったのですが、何だか最近忙しそうですね」

 真田が、楽しそうに話し出した。

「うん。実は、コスモリバースの実験をする準備を進めていてね。準備もそろそろ大詰めなんだ」

「コスモリバースの実験?」

真田は嬉しそうに頷いた。

「前回、君たちとガミラスにいった時に、いろいろと情報を得てね。研究を進める必要性を感じていたんだ。そんな時に、藤堂長官の娘の早紀さんと出会ってね。科学技術省で研究を一緒にやらないかと誘われたんだ」

 新見は、その後を続けた。

「今、科学技術省の予算で、ヤマトと同型艦を建造してるの。私もまだ現物は見てないんだけど、きっとびっくりすると思うわ」

 古代と雪は、その話に驚いていた。

「同型艦ですって?」

 真田は、楽しそうに話し出した。

「ヤマトの改装で取り外した部品を再利用して建造している。コスモリバースとの相性もいいし、予算削減の観点からも、いいアイデアだと思っている。因みに、武装は搭載しない」

「名前は、この話を聞いた桐生さんが考えてくれたわ。ヤマトの二番艦なら、やっぱりムサシしかありません! って言われて。確かに納得感があったので、そのまま決まりそうだけど、軍艦じゃないんだけどね」

 そうして、四人は、近況などを暫く話していた。

 

「そういえば、結婚式といえば、沖田さんと土方さんの式は凄かったらしいよ」

「土方さんって、ご結婚されてたんですか?」

「それ、失礼よ。奥さんとは、ずいぶん前に離婚して、お子さんもいたみたいだけど……」

 古代と雪は、顔を見合せた。

「君は、知ってたの?」

 雪は、首を振った。

「何回か、聞いたことはあるけど、詳しい話はしたがらなかったから」

 古代は、土方について、いろいろ疑問はあったが、とりあえず内容を聞いてみることにした。

「どんな式だったんですか?」

「私も、軍に入ってから古代守と二人で沖田艦長に聞いた話だ。何でも、古典的な神前の式と、披露宴をやったらしくてね」

 何か、何処かで聞いた話だったので、古代と雪は、揃って苦笑いをした。

 

 真田の回想――。

 

「あれは、いいものだった」

 訓練の合間の休憩時間に、真田と古代守が昼食を取っていると、そこに沖田も後からやって来て同席していた。沖田は、二人が話していた友人の結婚式の話題を聞いて、自らの思い出を語りだした。

「でも、神前ってずいぶん古典的な式ですよね」

「それがいいんだよ。和装で土方とその女房が、三三九度で盃を交わし、契りを結んだ。参加したわしも、身が引き締まる思いだった。それを見て、後から結婚を決めたわしも、同じようにすることにした」

 守は、その話を聞いて、奥さんのことが心配になった。

「つかぬことをお伺いしますが。奥さんは、西洋式の結婚式をしたいとは、仰らなかったんですか?」

「うん。言っていたな」

 守は、ますます心配になった。

「だ、大丈夫でした?」

「うちは、大丈夫だったが、土方はずいぶん奥さんと揉めたらしい。一度は、破談になるかも知れないと相談されたこともあった。結局、結婚後何年か経ってから離婚して、子供もいたんだが、奥さんが引き取ったらしい」

「そ、そうだったんですか……」

「どちらかと言えば、原因は披露宴の方だな」

「それはどのような……?」

「お前たち、ゴンドラというのを知っているか?」

「ご、ゴンドラ?」

 守と真田は顔を見合せたが、お互いに知らないようだった。

 沖田は、重々しく頷いた。

「結婚した二人がな、こう、スモークを炊いてな、天井からゴンドラに乗って降りてくるんだ。こうやって、二人で手を振りながらな」

沖田は、にこやかに手を振って説明した。

「……」

 守と真田は、その話を聞いて、何と言えばよいかわからなくなっていた。それに気付かず、沖田は更に続けた。

「そして、天井まである大きなウエディングケーキの前に行き、司会者の『二人の初めての共同作業です。ケーキ入力です!』という合図と共に、二人でナイフに手を添えてケーキを切るんだ」

 真田は、暫くその内容を聞いていたが、真剣な表情で疑問に思ったことをそのまま聞いた。

「何故、そのようなことをするんでしょうか。必要性を感じません。そもそも、結婚披露のパーティーというのは、来て頂いた方々を歓待するものだと思っていましたが、伺った内容は、どうも違うように思います」

 沖田は、そこで笑った。

「わしも、そう思う。土方の家は資産家でな、両親が最高の式にするんだと言って、式場の人間に言われるがまま、全てのオプションを選択して、勝手に決めたらしい。それが原因で、奥さんと揉めたそうだ」

「な、なるほど……」

「今言った内容も、二十世紀頃の日本で流行していたものらしく、今はやる人はほとんどいないらしい」

「沖田さんは、普通の立食パーティーとかにされたんですか?」

 沖田は、首を振った。

「いや。わしも、披露宴の形式でやった」

「ええっ!」

「では、沖田さんも、ゴンドラに?」

 沖田は、一瞬目を丸くしていたが、突然笑いだした。

「い、いや。わしは、そこまでは。だが、いいところもあったんだ。うちの亡くなった女房は、お色直し、というのが気に入ってな。ドレスをな、何度も着替えるんだ。結局、三着も着替えていたな」

「なるほど」

 守と真田は、その話を興味深く聞いていた。

「それから、友人による芸の披露があってな。歌を歌ったりいろいろだ。極めつけは、最後に、女房が彼女の父や母に手紙を読むんだ。『今まで育ててくれてありがとう』といった内容だ。手紙の内容を聞いた父親は、それはもう涙が止まらなくなっていた」

 沖田は、目を閉じて、その時の様子を懐かしんでいるようだった。

「それはいいですね」

 守は、その様子を思い浮かべて、素直に言った。しかし真田は、まだ納得がいっていないようだった。

「やはり、歓待するというよりも、されるイメージが強いですね」

 沖田は、そう言われて、確かにそうだなと思っていた。

「かもしれん。だが、あまり無いやり方なので、来てくれた人たちも、最後は皆、喜んでくれたぞ」

 

「――と、いう話を聞いた」

 古代と雪はもちろん、新見もその話を初めて聞いて、関心を抱いた。

「土方さんが、ゴンドラ……」

 雪が神妙な顔で呟くと、古代と新見は、その姿を想像して笑い転げた。

「雪、そ、その話題は……」

 雪も吹き出して、お腹を抱えて笑いだした。釣られて、古代も再び笑いだして、止まらなくなっていた。新見も、顔を手で覆って笑いを堪えているようだった。

「や、やめて、思いださせないで」

 真田は、三人の様子に困惑していた。

「そんなに面白かったかね?」

 三人は、真田を置き去りにして、土方と沖田の話で暫く盛り上がっていた。

 

「……」

 雪は、笑いがおさまってから、先程の話の幾つかのポイントが気になっていた。

「どうかした?」

 古代は、落ち着かない様子の雪のことを気にしていた。雪は、何やら考え込んでいた。

「その……さっきのお色直しの件だけど。ちょっと興味わいたっていうか」

「えっ?」

 雪は、少し、しどろもどろになりながら言った。

「ほら、ドレスを何着も着るとか。ちょっとそれは興味あるかも……」

「えー? そうなの?」

 古代は、そんなことを言い出すとは、意外だと思っていた。

 そして雪は、何かを思い付いて、古代の方を向いて言った。

「あと、私たちには、両親がいないけど。たぶん、式を挙げるときは、私たちの親代わりって、やっぱり土方さんだよね?」

「そうだね……。ん? もしかして、さっきの手紙の話?」

 雪は、いたずらっ子のような顔して言った。

「そうそう。古代くんも、泣かせてみたくない? 土方さんのこと」

 古代は、暫し考えた。そして、結婚の挨拶に行って、からかわれた時のことを思い出した。

「うん。それはいいかもしれない。でも、本気?」

「別に、そのままやる必要は無いじゃない? いいとこ取りして、パーティーの内容を検討し直してもいい?」

「もちろん、僕はいいよ」

 二人は、見詰め合って楽しそうに話し合っていた。

 真田と新見は、二人の仲睦まじい様子を見て、微笑んでいた。

「いいですね。幸せそうで」

 新見は、真田の方を横目で見ながら言った。

「そうだな」

 真田は、自分のグラスを手に取って少し飲んだ。

「先生は、結婚、しないんですか?」

 真田は、それを聞いて、少し咳き込んでいた。そして、そばにあったナプキンで口許を拭いながら言った。

「そういう相手がいればね」

「あら、そういう気が無いんだと思っていました」

「私がそう思うのは、変かね?」

「いいえ。むしろ、安心しました」

 新見は、少し口許を緩めて真田を見詰めながら、グラスを傾けた。

 

 

エピソード6 山本の場合

 

 月面基地では、加藤が去った航空隊の新人教育を、山本が任されていた。訓練が終わり、くたくたになった山本は、シャワーを浴びてから、食事をとることにした。

 そして、いつものように、食堂で遅い夕食をとっていると、目の前に篠原がやってきた。

「よ、お疲れさん」

 篠原は、無遠慮に向かい側の席に座った。

「座ってひひって言ってないへど」

 山本は、皿から、夕食をスプーンで食べながら言った。

「食べながら喋るって、ちょっとお行儀悪いんじゃないの?」

「ううさひ」

 山本は、上目遣いでひと睨みすると、顔も上げずに言った。

「おー、怖い」

 篠原も、自分の夕食を食べ始めた。

 そこに、二人の携帯端末から、同時にメッセージの着信音が鳴った。

 二人は、同時に端末を操作して、メッセージを確認した。

「ん? 古代さんからじゃん?」

「……」

 山本の端末には、古代ではなく、雪からメッセージが届いていた。

 嫌な予感のした山本は、メッセージを開封するのを躊躇したが、メッセージの件名に、「結婚」の二文字が一瞬だけ見えた。山本は、ぎゅっと目を閉じて、見なかったことにしようとした。

「おー、古代さんと森さん、結婚するんだってさ!」

 無情にも、篠原が内容を声に出して言ってきた。

 山本は、そっと目を薄く開けて、メッセージを覗いてみた。

「結婚式のお知らせ」と書いてある。

 青ざめた山本は、メッセージの開封をせず、がっくりとテーブルに額を乗せた。

「どうかしちゃった?」

「別に……」

「もしかしてさ、まだ諦めてなかったの?」

「……」

 山本は、顔を上げて、遠い目をして言った。

「お酒」

「えっ?」

「お酒。持ってきて」

 山本は、篠原に、顎で売店の自動酒類販売機の方へ行くように促した。

 篠原は、そんな山本に優しい目をして見つめた。

「確かさ、あんま、飲めないんじゃなかったっけ?」

 山本は、小さく頷いた。

「いいから。付き合って」

 篠原は、少し間を開けて微笑して言った。

「はいはい。少々お待ち下さい」

 

 篠原は、自動販売機を操作して、アルコール度数の少なめなカクテルを買って戻ってきた。

「はい、お嬢さん」

 山本は、グラスを受けとると、それを一気に飲み干した。

「あ、ちょっと!」

 山本は、焦る篠原を睨んで言った。

「強いやつ。ボトルで持ってきて」

 篠原は、仕方なく再び売店に行き、ロシア産の酒のボトルと、グラスや氷などを抱えて戻ってきた。

 山本は、テーブルに置かれた酒のボトルを掴むと、グラスにストレートでなみなみと注いで、グラスをあおった。

「ちょっと、ちょっと。玲ちゃんさぁ、それは飲みすぎだって」

 篠原は、ボトルを山本から奪うと、テーブルに置いて、グラスに氷を入れ始めた。

「俺の前で、そんなに飲んでいいの? お待ち帰りさせて貰おっかなー?」

 篠原は、いつものように冗談っぽく言った。

 山本は、人差し指をその篠原に向かって突き出した。

「な、何?」

 山本は、既に顔を赤くしていたが、眼光も鋭く、はっきりと言った。

「指一本、触れたら殺す」

 

「あいつわぁ、絶対私が好きだったとおもーの」

 山本は、まだ二杯目だったが、呂律が回らなくなり始めていた。

「もう、止めた方がいいんじゃない?」

 篠原は、心配していた。

「うるはいなぁ、いいじゃん、こんな日ぐあい」

 彼女は既に、首まで真っ赤になっていた。

 篠原は、ため息をついた。

「だったらさ。俺と付き合っちゃう? そんな奴、忘れられるようにさ」

「それは無理」

 急に、はっきりとした口調で、山本は断った。

 篠原は、食い下がってみた。

「何でさ? 俺、結構いけてると思うけどなぁ」

 山本は、少し黙り込んだ。

「篠原、絶対浮気するもん」

「えー? そんな風に思ってたの? しないって絶対」

「嘘だ。イスカンダルの帰り道、やることなくて暇だった時、いろんな女に言い寄ってた。主計科の人と、衛生士の人と、あとほれから」

 篠原は、少し焦った。

「な、何でそんなの知ってるの?」

 山本は、少しグラスに口をつけて、そのグラスをテーブルに叩きつけると言った。

「ちょっとはさ! 気になってたんだよ! だから、良く見てたんだよ!」

 山本は、目を反らして、更にグラスをあおった。

 篠原は、慌てて弁解をした。

「あの時ってさ、暇だったからさ。ナンパは、昔から趣味みたいなもんで、本気じゃないし」

「そうそう。あんたは、だーれも本気じゃないんだよ」

「違うって」

「ふーんだ」

 

 山本は、三杯目の途中で、頭がこっくりとしだすと、結局眠ってしまった。

 篠原は、自分のグラスを傾けながら、そんな山本を優しく見つめた。

 そこに、空間騎兵隊の制服を着た若い女性が食堂に入ってくるのが見えた。

「おっ」

 篠原は、好みのタイプだったので、そのまま目で追っていた。

「新人かなぁ?」

 いつもの癖で、声をかけに行きたい衝動に駆られ、席を立ち上がりかけた。しかし、眠っていたはずの山本の声が聞こえた。

「おこ行くのよー」

 テーブルに手をついて立ち上がりかけた篠原の袖を、彼女が掴んでいた。

 一瞬だけ目が合ったが、結局袖を掴んだまま、山本は再び寝息をたて始めた。篠原は、仕方なく、上げた腰を再び落とした。

「まったく、困った姫さんだ」

 先程の女性は、少し離れた席に座り、食事をとろうとしているようだった。その女性から、視線を山本に戻した。

「今日は、止めとくよ」

 篠原は、穏やかな表情になり、山本の寝顔を眺めた。そして、再び自分のグラスに口をつけた。

 

続く…

 




注)pixivとハーメルン、及びブログにて同一作品を公開しています。
注)但し、以前pixivに連載した小説の加筆修正版です。以前のpixiv連載版とは、一部内容が異なります。
注)ヤマト2202の登場人物は、役割を変更して登場しています。
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