エピソード7 結婚式直前編
古代と雪の結婚式の一週間前――。
イスカンダルからユリーシャ、ガミラスからメルダが、古代と雪の結婚式を祝う為、地球に訪れた。
宇宙港で、マスコミが大挙して取材する中、彼女らをランハルトが迎えた。
結婚式当日は、ランハルトの護衛艦隊を指揮するディッツ提督の盟友、ガゼル提督も参列する予定だ。
結局バーガー少佐とネレディア大佐は、軍務を優先する必要があり、地球に来ることは出来なかった。対して、メルダは、父の意向もあって、地球への旅をあっさりと許可されていた。
メルダが旅立つときには、父ディッツに、憂いを絶ってこいと言われ、気が重くなったまま出発することになっていた。彼女の父は、純血ガミラス人との結婚を望んでいるからだ。
ユリーシャは、以前地球に来たときに買った服を着て、少しはしゃいだ様子だった。マスコミに囲まれた彼女は、地球に救いの手を差し伸べたイスカンダルの使者として、丁重に扱われていた。
月面基地で軍務に励む山本は、式の当日に地球に降りる予定だった。
多くのヤマトの乗組員や、元乗組員が招待されているが、軍務があるため、当日に全員が集まるのは難しかった。それでも、当日はかなりの人数が集まる見込みだった。
軍関係者としては、藤堂や芹沢が参加する。地球連邦政府からは、外務次官のキャッスルが参加することになっていた。
土方は、雪と古代の父親代わりとして、二人に付き添うことになっていた。
地球に到着して、ユリーシャと一緒に迎賓館に通されたメルダは、地球連邦政府に手配された携帯端末で、山本に連絡をとった。
互いに複雑な表情で、スクリーンごしに見つめあった二人は、古代のこの字も口にせず、式の後に遊びに行く約束だけを、ぎこちなくとりつけた。
エピソード8 結婚式当日編
結婚式当日――。
古代と雪は、教会で式を挙げた。
土方に連れられて、ウエディングドレスに身を包んだ雪が教会に入ると、参列者が大きな拍手で迎えた。見知った顔が大勢いる中で、雪は百合亜が既に泣きながら自分を見ているのに気がついて、苦笑いしつつ手を振った。
そして、大勢の参列者が見守る中、誓いの言葉を互いに口にした。
ユリーシャとメルダと山本は、並んでそれを見守っていたが、メルダと山本の二人は、途中から気が遠くなり始めていた。
最後に、誓いのキスを二人が交わしたのを見た二人は、まるで誰かが死んだかのような青ざめた暗い表情になっていた。
式の後に披露宴が行われた。古代と雪は、どのような内容にするかいろいろ話し合った結果、食事を楽しんでもらいつつ、歌と演奏をするプロの人たちを呼び、宴を和ませることにした。雪は、その間に何度かドレスの着替えをすることにし、宴の最後に土方に挨拶をすることになっていた。
ユリーシャたちは、同じテーブルに席を用意され三人で座っていたが、先程のキスのショックでメルダと山本の二人は、しばらく無言になっていた。ユリーシャが、いろいろ話しかけているうちに、メルダの機嫌が少し回復し、続いて山本の機嫌を二人でとっていた。
ユリーシャは、メルダと山本が、少し元気になったのを見届けて、古代と雪の元に声をかけに行った。
「おめでとう。古代、雪」
ユリーシャは、笑顔で二人に話しかけた。
「ありがとう、ユリーシャ」
「遠いところ来てくれて、嬉しいよ」
ユリーシャは、雪にハグをして、少し話をしてから、「幸せにね」と言って、笑顔でその場を離れた。
ユリーシャは、他の席を物色すると、目当ての人が見つかった。当然のように隣に百合亜が座っていたが、勇気を出して声をかけに行った。
「星名」
星名は、振り返ってユリーシャに笑顔を向けた。
「ユリーシャ、久しぶりだね」
百合亜は、少し怪訝な表情で星名とユリーシャを交互に見た。ユリーシャは、百合亜にも笑顔を向けてから、手を星名に差し出した。握手を交わした二人は、笑顔で手を振りあった。そして、それだけでユリーシャは、テーブルを後にした。
ユリーシャは、自分がずるをしたのをわかっていた。手の接触によって、大抵の人の心を読めるからだ。星名は、表情にこそ出さなかったが、ユリーシャとの再会に動揺していた。ユリーシャへ向けられた好意の感情は、確かに彼の中にあった。それでも、百合亜を大切にしたいという気持ちの方が強く感じられた。
ユリーシャは、一抹の寂しさを感じていたが、少なくとも自分に好意を持ってくれていたことが嬉しかった。彼のその想いに感謝しつつ、自分の席に戻ろうとした。
そこに、ランハルトが声をかけてきた。
彼のテーブルは、秘書のケールとガゼル提督、藤堂、芹沢、キャッスルなど、政府や軍の上層部の関係者が座っていた。古代と雪の気遣いが無ければ、恐らく自分もこのテーブルだっただろうな、とユリーシャは思っていた。彼女は、テーブルの全員に挨拶をしてから、ランハルトの元に行った。
「なあに? ランハルト」
「ユリーシャ様、良ければ宴の後に、私とケールと一緒に別の席を設けさせてもらえませんか?」
彼女は、少し考えてから、言った。
「今日はね、メルダと玲と遊びに行くことにしてるんだ。……うーん。もし良かったら、そこに来る?」
ランハルトも、それを聞いて少し思案した。
「ええ、構いません。では、ご一緒させて下さい」
ユリーシャは、更に少し考えた。
「でもね……。今日は、荒れるかも知れないよ? それでもいい?」
「荒れる? そ、それは一体……? 尚更、ご一緒した方がよさそうですね」
ランハルトは、いろいろと疑問を感じていたが、ユリーシャが笑顔で頷いたので、気にしないことにした。
「じゃぁ、場所を後で連絡するね。ケールも、後でね」
「はい! ユリーシャ様。楽しみにしてますね!」
ケールも笑顔で応えた。
山本とメルダは、席に戻ったユリーシャに促されて、祝福を言いに行かされていた。二人とも、魂が抜けたような状態でふらふらと古代と雪の元に歩いて行った。
その途中、互いの表情を見て、おかしいと感じた二人は、どちらからともなく隅の方へ移動して確認をした。
「メルダ。前からうすうすは気がついていたんだけど。もしかして、古代さんのこと」
驚いたメルダは、目を丸くしていた。
「な、何故わかった?」
はっとしたメルダは、山本に言い放った。
「そ、そうか。玲、お前もそうなのか?」
二人は、暫し互いの表情を窺った。
「やっぱりそうだったか……」
メルダは、山本の肩を叩いた。
「玲、お前ならわかってくれると思っていたが、それ以上だった」
「物好き。異星人とか、無理あるでしょ」
「酷い……。父上と同じことを言う」
「だって、そうでしょう?」
「お前こそ、すぐ近くにいたくせに、今まで何をやっていたんだ」
「そ、それは……」
そんな二人の様子を見つけた古代が、離れたところから声をかけてきた。
「山本、メルダ!」
古代が、笑顔で手を振っていた。
山本とメルダは、目を細めて古代の方を見た。
「なんだ。あの空気読めない感じは」
「そう言えば、ああいう人だった……」
横にいる雪は、意味ありげに苦笑いしている。
「あっちは察してるみたいだぞ」
「なんかむかつく」
二人は、行くしかないと決意して、古代と雪の方へ向かって行った。
「古代さん、森……いいえ、雪さん。この度は、おめでとうございます」
「古代、雪。祝わせてもらうぞ」
祝いの言葉を頑張って言った二人だったが、若干、棒読みであった。
「ありがとう、山本、メルダ」
古代は、白いタキシード姿で凛々しい出で立ちだった。それを見た二人は、少し気持ちが高揚するが、雪の言葉で我に返った。
「山本さん、メルダさん。今日は本当にありがとうね」
雪は、純白のウェディングドレス姿で、にこやかに言った。
山本とメルダは、何故そこにいるのが自分では無いのかと考えると、気が遠くなり始めていた。
「山本も、新人教育でヤマトを離れていたから暫くぶりだな。また、ヤマトで会えるのを楽しみにしてるよ。それに、メルダ。わざわざ、遠いところを本当にありがとう」
古代は二人を労った。
山本は、二人のいるヤマトに戻って、正気でいられるか想像してみると、絶望しか無い気がしていた。メルダはメルダで、こんな半年もの期間をかけてガミラスと地球を往復する意味について考えると虚しくなっていた。
古代は、少し言い淀みながらも、二人の姿を見て言った。
「そ、その、二人とも。凄く綺麗だ」
山本もメルダも、地球のフォーマルなドレス姿で着飾っていた。軍の仕事柄、普段は薄化粧の二人も、今日は少し派手目なメイクだった。
褒められて山本もメルダも、嬉しくなっていた。
「あ、ありがとうございます」
「ほ、褒めても何も出ないぞ」
古代は、雪にも同意を求めようと笑顔を向けた。
「そうね。二人とも、とっても綺麗」
その雪は、余裕の笑顔だった。
敗北感に打ち拉がれた二人は、その後何を話したか記憶が薄いまま、すごすごと自席へと戻って行った。
披露宴も終わりを迎え、雪は土方に感謝の挨拶をした。参列者全員が見守る中、雪と土方にスポットライトがあたる。
雪は、外務次官を務めた父の友人だった土方に、小さな頃から世話になっていた。その思い出を、一つ一つ丁寧に感謝を込めて話していった。そして、父と母が亡くなった後、家族同然に大切にしてくれたことに感謝を述べた。
土方は、小さな頃の思い出話をされている最中に、既に目頭を熱くしていた。そして、家族を失った時の話で号泣する寸前となっていた。
「土方さん。今だけは、お父さんと呼ばせて下さい」
雪のその言葉に、土方は驚いて雪を見た。
「お父さん、私はこれから、幸せになります。今まで見守ってくれて、本当にありがとう」
土方は、その言葉に遂に号泣してしまった。
古代と雪は、笑顔で見つめあった。そして、二人で土方の傍に来ると、雪は土方にハグをした。
見かねた山南が、ハンカチとティッシュを持って土方の傍にやってきていたが、土方はそれに気付かず、雪を抱き締めたまま、声を出して泣いていた。
こうして、二人の結婚式は、土方の涙で終わりを迎えたのだった。
続く…
注)pixivとハーメルン、及びブログにて同一作品を公開しています。
注)但し、以前pixivに連載した小説の加筆修正版です。以前のpixiv連載版とは、一部内容が異なります。
注)ヤマト2202の登場人物は、役割を変更して登場しています。