Dear Welsh Dragon   作:黒天気

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※注意書き
 この話は蛇足も蛇足、余分なものです。
 本当に色々と余計なものまでくっ付いてます。
 お読みになる際は、お気を付けください。


















 死が終わりなら、きっと託しなんてしなかったさ。
 俺は終わりでも、お前たちには先がある。
 そこに少しでも残せるものがあったのだとしたら、それは紛れもなく、俺にとっても先だ。
 死の向こう側――未来にある希望だ。


Dear My Partner

 

 

 

 消えて、零れて、なくなっていく。

 

 一欠片も残さずに、そのすべてを犯され、踏み躙られ、あとは周囲にその記録と記憶と言う痕跡を残すだけ。

 

 これが消滅。

 

 正しく終わり、そのものにもはや意味はない。

 

 意味があるとしたら。それは後付されるもの。

 

 ゆえに、終わりは、終わりの向こう側を迎える。

 

 

「我、お前には興味ない。でも、お前に我、恩がある」

 

 

 何もない世界で、声なき声が響き渡る。

 聞こえている/聞こえていない。

 誰の声だったか/これは誰かの声なのか。

 声って何だ……わからない。

 

 

「無と無限は限りなく近い。我、無からお前を掬い上げる。

 そこからは夢幻を超えて、お前、向こう側へ行く」

 

 

 何だろうか、わからない。

 けど、知っている――気がする。

 “俺”って言うのは何だろう。

 でも、叫んでる。

 言っておけ、と。

 言わなければ、俺足りえないぞ、と。

 

 

「もうすぐイッセー、目を覚ます。だから、お別れ」

 

 

 もう“俺”にはそんな力はない。

 すでに身体はないし、魂もないに等しい。

 ないに等しい、“俺”に相応しい終わり。

 でも、そこに次を用意してくれたのなら、言うべきことは一つ。

 そして、“俺”として言っておくべきこともあと一つ。

 

 

「ありがとう。イッセーを頼んだ」

 

「ん。任された。寝るといい、■■■■」

 

 

 吹き消えるように最後の一欠片は消滅し、無が生まれる。

 無は無限と夢幻に近しい。

 ゆえに龍神は力を行使し、残滓を痕跡として向こう側へと送り付ける。

 彼はそうするに値する。

 龍神はそう判断したがゆえに己が力を行使する。

 あとは向こう側で自力で補え。

 ここまでが彼らが領分、それ以上は彼らにとってはもはやどうでもいいことで、どうしようもないことだ。

 

 ゆえにここから起きる物語は在って無いもの。

 アンコールとまでは行かない舞台終わりの、ちょっとした小話に過ぎない――一場の幻のような夢。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 一人で少年が遊んでいる。

 その日はいつも一緒に遊んでいる少女が用事で遊べず、他の遊び相手を探したものの誰も捕まえることができず、結果として少年はただ一人公園で遊んでいた。

 

 しかし、その程度でめげる少年ではない。

 遊ぶ友達がいないのならば、遊べる友達を今から作ればいいのだ。

 この公園は広い。

 探せば、暇そうなヤツや少年が混ざっても大丈夫そうな集まりくらいあるだろう。

 そう思い至った少年は公園内を駆けずり回る。

 

 そして、少年は出会った。

 それを見た瞬間になぜか話しかけないと、という衝動が胸の奥底から溢れた。

 

 公園の端にあるブランコで、独りでそれを揺らしている少女がいた。

 少女の容姿は大変見目麗しく、髪は銀で日本人らしくない相貌だ。

 だが、その表情は今にも不安に押し潰されてしまいそうなほど、どこか悲痛なものであった。

 

 ――話しかけないと。話しかけて――何だろう。

 少年は、そこまで考えて、思考が停止する。

 ――どうしても話しかけないといけない気がする。

 ――でも、それはどうしてだろう?

 ――話しかけて、その後いったいどうするんだ……?

 駆け出したくなる衝動の中、少年は考え込み、そして気付く。

 

 ――何だ、考えるほどじゃなかった。

 

 少年がなぜここにいたのか、そこまで思い出せば、あとは行動するだけだ。

 

 

「なあ、お前! 一緒に遊ぼうぜ!」

 

 

 言葉を考えるまでもなく、まるでそう言うことが当然であったかのように少年の口からは言葉が出てきていた。

 この言葉に対する答えも、なぜか“すでに知っている気がする”。

 

 少年の問いかけに少女は、驚愕とでも表現するべき驚きに満ち溢れた様子で固まる。

 その後、まるで信じられないと言った言葉を顔に貼り付けて、震える小さな唇から紡ぐ。

 

 

「へ?」

 

「へって何だよ」

 

 

 問いかけに対する言葉は声にならないものであった。

 少女の声、それが耳に届いた瞬間、少年の心に浮かんできたのは、とてつもない安心感だった。

 聞いたことのない綺麗な声だ。

 でも、そこじゃない。

 もっと根源的な何か、そこに在るということが凄く嬉しくて仕方がなかった。

 

 

「いや、私と、遊んでくれる、の?」

 

「だから、遊ぼうって言ってるじゃんか」

 

「名前も知らないのに?」

 

 

 そして、この時が来た。

 なぜだろうか、この時を生まれたその瞬間から待ち侘びていたような気がする。

 ――会えてうれしい――“また”巡り合えたよ。

 だから、少年は気合を入れて、宣言するかのようにその口から言葉を紡ぐ。

 紡ぐ言葉なんて考えるまでもない。

 

 

「おう、そっか! 俺は兵藤一誠! みんなイッセーって呼ぶからイッセーって呼んでくれ!」

 

 

 返しを待つ。

 きっと彼……女は答えてくれるはずだ。

 

 少女は言葉を紡いで、その声を返す前に胸の奥に押し込んでいたものが溢れて涙が込み上げる。

 少年――イッセーがこの程度で怒るはずがない。

 確信すらあった。

 でも、早く返したい。

 だから、と涙を堪えて、できる限りの答えを返す。

 

 

「イッセーね。イッセー、うん」

 

 

 少年の名前を舌の上で転がす。

 まるで恋人の名前を呟くようだ。

 そんな想いの形ではなかったけど、きっと今ではそれに近いのかもしれない。

 そして、少女も意を決して言葉を紡ぐ。

 本名ではないが、きっと許されるだろう。

 

 

「私の名前は、トーカ・ゼンドー。好きに呼んでね」

 

 

 ここに再び邂逅は果たされた。

 

 

「おう! トーカ! これで知り合いだし、俺とお前は友達だ!

 だから、俺と遊ぼうぜ!」

 

「友達……? 友達ね……ふふ、そうね! 倒れちゃうまで遊びましょう!」

 

「あぁ!」

 

 

 こうして、巡り巡って新たな物語が紡がれていく。

 この後がバッドとなるかハッピーとなるか、どう転ぶかは、彼の龍神でもわかりはしない。

 

 

 

 けれど、それは野暮なことだろう。

 

 

 

 

 きっと、次は――――








ついカッとなって書いた。
反省している。色々な意味での後悔もある。

BADENDだったけど、その向こう側がなかったとは言ってない。
これが救いとなるかは、あとは彼で彼女なあの子次第。

――と最後の最後にペンを投げ捨ててしゅーりょー!
風邪ひいて頭痛が凄まじい状態で書いているから、もはや普段のテンションではない。

オチとしては、並行世界に転生を果たした冬也くん。
そこでは冬也くんは冬也くんではなく、トーカちゃんだった!?
知っているようで全く知らない世界。
生まれから何もかもが違う境遇を生き、混乱の中、彼――彼女は大事な親友を思い出す。
彼――彼女は覚えているが、他はそうでない。
しかも、彼は今、彼ではない。
色々と思惑やら私情やらが合わさり、家を追い出された彼女は意を決して思い出の公園へ。
確かこの日だったはずだと希って、それは現実となって実を結ぶ。

――とまあ、だいたいこんな感じ。
あとこの世界の冬也くんは器用貧乏な才能なしな努力家ではなく、万能な天才な努力家。
神器はないけど、その代りとなりそうなものは山ほど持って生まれてきている。
種族的には悪魔と人間のハーフ。
ん? 悪魔と人間のハーフで銀髪……?

なお、この世界、実は設定が練ってあるというか、実は私が書きかけの他のDDのSSである。
公開予定は今のところない。

原作との差異は、
・自分が全力で戦える場所を探している超強い戦闘狂な曹操(主人公)
・みんなのアイドル戦闘狂なヴァーリちゃん(ヒロイン)
・かっこいい英雄派
・そこまで悪人じゃないリゼヴィム
・色々な意味で暴走する魔王と堕天使総督
・最後は神様シリーズほどのインフレ
こんな感じの世界。

TSってところに不快感を持つ人は当然いると思う。
でも、実はこっそりと「Dear Welsh Dragon」の時からフラグは立ててた。
礼のアザゼル発明暴発事件では良妻冬也くんが出現することを妄想するくらいには、実はあの頃からこのオチは書いていなかったけど、作ってました。
一応TSしている理由としては、魂が消えかけだったので、そのものとしては復元されなかったっていうのと、イッセーの冬也と一緒にいたかったっていう思いが龍神さまに汲み取られた結果、変な化学反応を起こしたっていうことで。

一応本作はこれにて終了。
これ以上は続きません。

それでは、ここまでお読みになってくれた方々、駄文駄作ではありましたが、皆さんの暇つぶしにでもなっていてくれれば幸いです。
機会があれば、またどこかで文章と言う形でお会いしましょう。
これまでありがとうございました。

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