『ヴィランチャレンジ』というアトラクションが、I・アイランドにはある。
単純に、『敵』を模して配置されているロボットを、全部壊すまでのタイムを競うだけのものなんだけども……まあ、私ら雄英生からすれば、まあ、ロボ敵なんてのは雄英のカリキュラムで見慣れてるし……というか入学試験の時から相手にしてるし、緊張も何もしない。
完全に的当て、あるいは瓦割みたいな感覚でぶっ壊すものになってるし、純粋にタイムだけを競うような感覚になっていた。
現に、プレオープン期間中に挑戦した切島が、確か……30秒台。
その後、爆豪が15秒、緑谷も15秒、轟が14秒を記録。
その更に直後、むきになった爆豪が本気出して12秒でクリア。
負けじと緑谷も本気+『黒鞭』も使って11秒でクリア。
その後轟が12秒でクリア。最初の1回は氷だけで範囲攻撃だったけど、今度は左側の炎も使って高速移動しての合わせ技だった。
なんか触発されたのか、飯田も参加してた。結果は17秒。スピードはあるけど小回りは効かない分の差かな。
ちなみに私は17秒だった。スピード特化ってわけでもないからな。
敵ロボの半分は、壊したロボの残骸を投げつけて遠隔でぶっ壊してなおこのタイムだし。
ちなみに、緑谷はもう既に皆に対して『黒鞭』を公開している。
当然ながら、パワー型の個性だったはずの緑谷に、明らかにジャンルの違う能力が覚醒してるってことで『どういうこと!?』ってかなり話題になったんだが、結論として『よくわからない』『でも使えるので使っている』というところに落ち着いている。
まあ、暴走とかするような気配も今のところないし、強くなれる分にはいいか、ってことで、皆容認してる感じだ。わからない以上は気にしても仕方ないってのもあると思うけど。
ただ、爆豪は相変わらず面白くなさそうにしてたし、瀬呂は『俺のアイデンティティーがアレなことになる』って何か危機感を覚えていたようだったけども。
……個人的には、そろそろ緑谷が隠している『個性』絡みの事情みたいなのを、そろそろ少しでも知ることができればなー、と思ってるんだけども。
いや、何度も言うように、こっちから急かすつもりはないし、彼に話す気がないなら無理強いするような気もないが……彼を『支える』立場としては、うん。
緑谷がどんどん強くなって、成功していってくれることは私の喜びでもあるが、その傍らに立って効率よく支えることを考えるのであれば、ある程度の情報は欲しいというか……緑谷の成長に合わせて、今後の私の方針とかも考えるからさあ。
なんてことを最近よく考えていたので、今回のこの『I・アイランド』におけるカリキュラムの1つ……デヴィッド博士による『個性数値』を始めとした、『個性』そのものに関する研究・解析は、私が楽しみというか、期待していたことの1つだった。
博士は、専用の機材によって、『個性』保有者の『個性因子』の絶対量や活性化度なんかを数値化して目に見える形で示し、そのデータをもとに様々なサポートアイテムやコスチュームの開発を行うといった手法を確立している。
また、サポートアイテムの開発以外にも、単なる健康状態の把握や、『個性』の伸び率の解析、トレーニングの方針決定なんかに使う資料としても有用なので、そういう狙いもあるそうだ。
そういうわけで、『個性』の解析をしてもらうのを何気に楽しみにしていた私。
てっきり、『個性』マニアでもある緑谷も同じだと思ってたんだけど……何か、妙に緊張してる? というか……焦ってるのと心配なのが半々、ってくらいな気が……どうしたんだ?
憧れのデヴィッド博士の研究手腕を見れるから緊張してる、って感じじゃないな……これはまるで、そう……母親にエロ本の隠し場所を見つかりそうになってる思春期男子みたいな……
例えはともかく……緑谷、何か隠してる? そして、それがバレそうになってるのを焦ってる?
……そういや、緑谷って『個性』がらみで何か隠してたんだっけ……それがひょっとして、このデヴィッド博士の解析でバレるんじゃないかとか、不安なのかな?
けど、ホントに何だ? 緑谷が隠すような、ばれたらまずい『個性』の秘密って……?
結局それがわからないまま、デヴィッド博士の研究室で『個性数値』を調べてもらう段階になって……まずは、レディーファーストってことで、私から。
「これは……大したものだな。活性化度合いだけで見れば、プロヒーローと比較しても遜色ないくらいにはなっているよ」
「本当ね……それに、安定感もあるし、体にきちんと馴染んで使えているのが見てるだけでわかるわ。これなら、強化したコスチュームの機能も十全に使えるわね」
シールド親子に揃ってそんな風に褒められている私。まあ、悪い気分はしない。
画面に映っている内容は……専門用語ばっかりだし、そもそも英語なので全然わからないんだが……何か、折れ線グラフが結構高い位置にまで上がっていたり、振れ幅型のグラフが大きい幅で豪快に動いている(ただし急さはない)ので、まあいい結果なのかなと思うことにする。褒められてるし。
母さんから聞かされて知ってるんだけども、『個性』というのは身体機能であり、筋肉と同じで、使えば使うほど強くなる。逆に、使わなければ衰える。
個性を限界を超えて使い続けることで、許容上限を上げて強化する……そのまんま『限界突破』と呼ばれる方法で、鍛え上げ、強くすることができる。
私や轟なんかの、ヒーローが身近にいて稽古をつけてくれる環境にあった者は、多少なりそういうのを経験して、『個性』そのものを底上げしている。飯田や八百万も、程度は違うがそういうのを積み重ねているはずだ。
加えて言えば、というかネタバレ気味なことを言うが、今度予定されている『林間合宿』は、主にこの方法で『個性』を伸ばすことを主軸にカリキュラムが組まれているらしい。何をやることになるのかは、まだその時まで秘密らしいが。
しかしその強化度合いは、筋肉とかと違い、腕の太さや筋繊維の本数みたいな、わかりやすい形では現れない。いや、現れなかった。今までは。
が、デヴィッド博士の発見した『個性数値』によって、その度合いを視覚化することが、今日には可能になっているのだ。
で、その『個性数値』で見たところ、私のそれは相当に鍛え上げられているらしく、数値だけを見れば、すぐにでもプロで通用するんじゃないかと言えるほどのものだそうだ。
もっとも、筋肉が大きさや形だけでその性能を判断することができないように、『個性』もまた、『個性数値』や単純な馬力だけでその性能を、あるいは使い手の戦闘能力を直接判断するなんてこともできないんだが。
その辺は、まだまだ私が未熟なところ。これから雄英で勉強して伸ばしていくべき所だ。
それはさておき、私が終わった後はいよいよ緑谷の番、ということになったんだが……
なぜかいつの間に来ていたオールマイトとナイトアイも一緒に見守る中、緑谷の個性解析が行われて……その結果、驚くべきことが明らかになった。
あ、ありのまま起こったことを話すぜ?
私は緑谷が最近色々よくわからない能力を使い始めるから、『個性』が急激に何か成長とか変化してるんじゃないかと思ってたんだけど、調べてみたら変化どころか『個性』そのものが増えていた。
何を言ってるのかわからないと思うが、私も何が起こってるのかわからなかった。頭がどうにかなりそうだったようなそうでもないような。
突然変異とか個性特異点とかそんなちゃちなもんじゃ断じてない、もっとわけのわからない超人社会の片鱗を味わった……!
……ネタはこれくらいにして。
とりあえず、これだけじゃ何もわからないと思うから……順序良く話そうか。
話は、私の次に、緑谷が解析を受けた時のことだ。
なんか、なぜか微妙にオールマイトも緊張しながらその結果を見守っていたんだけど……さっき私の解析を行った時とは打って変わって、デヴィッド博士は驚愕を隠そうともせずに、モニターに表示されている緑谷の『個性数値』に見入っていた。
その結果なんだが……
「これは……こんな現象は初めて見る……! 緑谷君の体内に、複数の『個性因子』が内在して……完全に別々に成長していっている、のか……!? しかも、『個性数値』のみならず、これは……体になじんでいる度合いにも差がある……!?」
「そんな……1人の人間に複数の個性……そんなことが!?」
愕然としているシールド親子。
メリッサはともかく、『個性』関連で言えば海千山千のデヴィッド博士をここまで驚愕させるとは……緑谷の『個性』絡みで何が起こってるのかって部分は、余程特殊な内容らしい。
というか、もしかしてとは思ってたけど……緑谷って個性いくつも持ってんの?
緑谷は……なんか緊張継続中。言葉があんまり出てこないみたいなので、私から。
「……クラスメイトに、『半冷半燃』つって、炎と氷の2種類の個性を使う奴がいるんですけど……そういうのとは違うんですか?」
「あ、ああ……そのクラスメイトは多分、エンデヴァー氏のご子息の轟焦凍君だね? たしか、レセプションパーティーにも出ていたと思うが。まあ、彼の個性数値を計測していないから何とも、というか断定はできないけれど……ああいった形の『個性』なら、前にも解析したことがある。しかし、あれらは『複合型個性』として、2つの個性が混ざり合って何らかの形になっているもの。『個性数値』そのものは通常と変わりない計測パターンを示すから、データ判別上は普通の個性と同様に扱えるんだ。しかしこれは……」
言いながら、デヴィッド博士は再度モニターを見上げる。
そこに表示されているグラフは……さっきまで表示されていた、私のグラフとは大きく違う。
私の解析結果のグラフは……中身の詳細がわかるかどうかはこの際置いといて、折れ線グラフも波長のグラフも、どちらも色々と大まかな、あるいは細かい特徴はあれど、1つだけだった。
しかし、今表示されている緑谷のグラフは……3つの線が別々に表示されている。
数値、振れ幅ともに最も大きい『個性』が1つと、中くらいのが1つ、そしてやや小さめのが1つ……合計3つのグラフが、一度に表示されている。
これが、能力的には2つ3つを宿しているように見えても、『複合型』として1つにまとまって混ざっているのであれば、こんな結果にはならない。どんな形であれ、1本の線、1つのグラフにまとまる。
つまりこれは……完全に分離した状態の3つの個性が緑谷の中に覚醒している、ということに他ならず……前代未聞の話だ。
そりゃ、専門家であるデヴィッド博士も……いや、専門家だからこそ驚くだろう。
……と、思っていたんだが……
「これは、まさか……まるで……!」
……どうも何か、そういう反応とは違う気がするな。
博士……何を考えてるのかまではわからないけど、緑谷の測定結果を見て、小声で何かつぶやきながら……何でか、緑谷とオールマイトの方を交互にちらちら見てる。何だ、博士……何を察した?
それが何かはわからない。が……『何か』があるのは確かなようだ。
また、オールマイトか……
そんな私の予想を裏付けるように、そのオールマイトに動きがあった。というか、この人も何でいきなりここに現れたんだかな……
『んんっ!』とわざとらしく咳払いをすると、
「あー……すまないね、ちょっとそのぉ……栄陽院少女とメリッサ、席を外してくれないかな? これからおじさん達、緑谷少年も交えてその……ちょっと、男同士の話し合いがあってね。うん、ちょっとばかりデリケートな問題だから……」
……ごまかすつもりがあるのか――あるとしたらちょっとお粗末だと言わざるを得ないが――オールマイトはどうやら、関係者のみで話をしたいらしい。そしてそこに、私とメリッサは含まれないと……
メリッサは何か言いたそうだったけど、彼女の方はデヴィッド博士が説得していた。どうやら彼も、何らかの形で、緑谷の、ひいてはオールマイトの『秘密』的なものに関わりがある立場らしい。
で、私の方は……言うまでもない。
気にならないわけじゃない……というか、むしろ大いに気になるが……緑谷に『ごめん、何も聞かないで』と言われたら……その通りにするのが私だ。
仕方ない……メリッサと一緒に、外のフードコートででも時間を潰すか。……何食べても、ちょっと味とかわからないかもだけどな。今のテンションだと。
☆☆☆
Side.緑谷出久
栄陽院さんとメリッサさんが退室した後……僕らは、デヴィッド博士の部屋の談話スペースに場所を移して話を始めた。
その際、『秘密』を知っている人しかここにはいなくなったということで、オールマイトはトゥルーフォームに戻っている。やっぱりというか……デヴィッド博士も知ってるんだな、このこと。
その博士はというと、オールマイトが姿を変えたことにはさして反応せず……むしろ、ほとんど僕に視線を固定したような状態で、話し始めた。
「トシ、コレは一体どういうことなんだ……君は何か知っているのか?」
「コレは、とは……さっきの測定結果のことかい、デイヴ?」
「そうだとも。こんな例は今までに見たこともない……! いや、まれにだが、複数の『個性因子』を持ち、『個性数値』の測定結果にそれが現れる者がいないわけではない……だが、それら全てが発現し、ほぼ十全にという形で使えている例など……私は彼の他には、1つしか知らない」
デヴィッド博士はそこまで言って……何か辛いことを思いだすような、苦虫を嚙み潰したような表情になった。そこから先、口を開くのも躊躇しているというような感じだ。
それをオールマイトも悟ったのか、博士よりも先に口を開いた。
「先に結論から述べておこう。君の懸念は外れているから安心してくれ。彼は……緑谷少年は、奴と……『オール・フォー・ワン』と何らかのつながりがあるわけではないよ」
「……そうか、なら……それなら、いい」
……そっか、そうだよな。
何も知らない人からしたら……そしてその人が、『オール・フォー・ワン』のことについて知っているとすれば、『個性を複数持っている』という特徴から、僕という存在と、オールマイトの宿敵『オール・フォー・ワン』のつながりを危惧しても仕方ないだろう。
この『超人社会』においても、いやだからこそ……『個性』は1人1つという、基本にして絶対のルールは大きい。それを外れている存在なんて、今までいなかったんだから。数少ない事例同士を結びつけることに、不自然なことはない。
そう……『知らなければ』。
「……こうなった以上は、君にも話さなければならないのだろうな……」
「トシ……?」
「オールマイト? しかし、それは……」
呟くようにオールマイトの口から出た言葉に、ナイトアイは『まさか』といったような表情になって、止めるような視線を向ける。
しかし、オールマイトは頬のこけた顔で力なく笑うと、
「遅かれ早かれだ、ナイトアイ。どのみち……デイヴに緑谷少年の『個性』の解析結果を目にされた以上は……ここでごまかしても、いずれ彼なら自力である程度は真相に、あるいは近いところにまで行きつくだろう。それなら、最初から事情も含めて話しておくべきだ……黙っていたのは、我々の方なのだから、そのくらいの誠意は見せてもばちは当たらんさ」
「しかし、そもそもあなたは彼のことを案じて……」
「そうですよオールマイト! そもそも、その……今回のことだって、僕が不用意に……こういう結果になるかもって予想できていれば、もっと……」
と、ナイトアイに続けて僕もオールマイトを止め――実際、『デウス・ロ・ウルト』の一環だからといって、不用意に『個性』の専門家であるデヴィッド博士の検査を受けてしまったわけだし――生意気かもとは思いつつかばおうとするけど……それを遮って、デヴィッド博士が口を開いた。
「待ってくれ、サー・ナイトアイ、緑谷君……勘違いしないでくれ、私は別に、トシや君達を責めているわけではない。そもそも、トシが私に話せない何か秘密を抱えているのだというのは……カレッジの時代からわかっていたからね。しかし、理由があるのなら無理に聞こうとは思わないし、それ自体について何か言おうというわけではないんだ。緑谷君とAFOについても、トシがそう言うのなら無関係なんだろうし、それ自体は私としてもよかったと思っている。せっかく娘にできた友人の一人に、後ろ暗い事情があったのでは、と思っていたからね」
「……そう言ってくれるとありがたいよ、デイヴ。だがさっきも言ったように……こうなった以上は、君にも知っておいてもらわなければならないと思っている。それに実は……もともと、今回の来訪で、君にこの秘密を打ち明けることも検討していたんだ。個性研究者としての君の力を……借りなければならない事態になる可能性があったからね」
「……? そうなのか、トシ……私の、研究者としての力を?」
また別な方向に意外そうな表情の博士。
横で聞いていた僕も少し驚いている。オールマイト……と、ナイトアイもだろうが、2人は元々デヴィッド博士に……恐らくは『秘密』って、『ワン・フォー・オール』のことだと思うけど、それを打ち明けるつもりだった……。
そしてその理由は、博士の協力を得るために、そうしなければならないから。
つまり、『ワン・フォー・オール』関連で、博士に協力してもらうことになる、ということ……恐らくは、『個性』に関する研究や解析の分野で。
デヴィッド博士は、また僕とオールマイトを交互に見ながら、顎に手を当てて考えるようにして、
「……先程までの話からすると、トシがこれから話す『隠し事』というのは、緑谷君に、そして、『オール・フォー・ワン』にも関わりのあること……というわけだな? そして恐らくは、現状抱えている何らかの課題・問題を打破するために、私の力がいる……と?」
「こっちが何も言わないうちから理解が速くて助かるよ、デイヴ……その通りだ。これから話すことは……私と緑谷少年、そして奴に関わりのある話だ……できることならデイヴ、君やメリッサを巻き込まないためにも、墓場まで持っていきたかったことなんだが、な」
「水臭いことを言うな、トシ。これでも昔は、散々君の無茶に付き合わされてきたんだぜ? 今更そのくらいで怯むものじゃないさ……君の、そして君の作った平和のためなら、そうだな……テロリストでも何でも雇ってI・アイランドを丸ごとジャックするくらいのことだってやってみせよう」
「HAHAHA! おいおい、やめてくれよデイヴ、そんなことしたら私は君を逮捕しなきゃいけなくなるじゃないか、悲劇だろそんなの。君が刑務所にぶち込まれてる間に、メリッサが愛想つかしてどこかの馬の骨とも知れない男と結婚して出ていっちゃったらどうするんだい?」
「それは困るな……うん、やめておこう。君に迷惑がかかったり、メリッサを泣かせるようなことはしたくないしな。目に入れても痛くない自慢の娘だ、どこの馬の骨とも知れない男にくれてやる気もない。それならそうだな……緑谷君にでも貰ってもらった方が安心かな?」
将来有望なヒーローのようだしね、と続けて笑いかけてくるデヴィッド博士。いきなり話を振られた上に、内容が……ジョークだとはいえ、あんまりにも予想外の方向だったので、『へぁ!?』ってびっくりしてしまった……。
め、メリッサさんが僕の……い、いや考えるなバカ、ジョークだジョーク。アメリカンジョーク。それに僕にはもうとw……え、栄陽院さんが……
なんて考えて必死に心を落ち着けようとしている僕だったが、それを待たずに……会話は進み……ふいに、シリアスな空気が帰ってくる。
「そうだね、割とそれもいいかもしれない……トシが目をかけているということはもしかしたら、君の後継者にでもするつもりなのかい? だとしたら未来のトップヒーローだな」
「HAHAHA……そうだな、ああ、その通りだ。その通りなんだよ……デイヴ。彼は……私の選んだ、私の……いや、『平和の象徴』の、後継者なんだ」
「……? 何……?」
突如変わった空気に、デヴィッド博士もたたずまいを直す。
僕も、そしてオールマイトの隣にいるナイトアイも……これから始まる真面目な、そしてデヴィッド博士にとっては寝耳に水極まりない話のために、心の準備をした。
「……デイヴ。これから話すことは……私というヒーローの『原点』に触れる話であり、この世界の人々の心の拠り所である『平和の象徴』という存在の根幹にも関わってくる内容だ。今から話すこと、決して忘れず、そして漏らさず……君の心のうちにとどめておいてくれ。そしてその上で……私達から君に、彼の……緑谷少年のサポートと、もう1つ……頼みたいことがある」
僕のサポート……恐らくは、僕の『個性』……ワン・フォー・オールのことを打ち明けた上で、これから先の特訓のため、そして『敵』と戦っていくための協力を、ってところか……
そこまでは予想がつく。ついた。
けど……もう1つ、って何だ……?
考えてもわからず、気になっていたその疑問に答えを出してくれたのは……オールマイトではなく、その直後に口を開いた、ナイトアイだった。
「そしてもう1つの頼み事とは……先程までここにいた少女……栄陽院永久、そしてその『個性』についてです」
(え……!? 栄陽院さん、の……?)
「彼女の『個性』……その名も『オール・フォー・ユー』……! これの解析をお願いしたい。私の考えが正しければ、その力はある意味……『ワン・フォー・オール』よりも、『オール・フォー・ワン』よりも特異で、強力で……そして、残酷な力だ。私達は、それを知って……見極めなければならない」