TSから始まるヒロインアカデミア   作:破戒僧

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第11話 TS少女と個性制御

Side.緑谷出久

 

「ふぅ……はぁ……ふぅ……! っく、ぅ……んんっ……!」

 

「……なんか、寝転んで私の下になってそういう喘ぎ声っぽいのだしてる緑谷、エロいな」

 

「それ……栄陽院さんだけは、言っちゃダメな奴……っ!」

 

 むしろ僕を押し倒してるのは栄陽院さんの方で、どっちかっていうと襲ってる絵面だし……って、そんなことはどうでもいい。今は、修行に集中しないと。

 

 栄陽院さんに手伝ってもらって、『ワン・フォー・オール』の制御のための修行を進めている僕だが……今の所、情けない話だけど、一向に進展はない。

 前からそうではあるけど、『卵が爆発しないイメージ』で『ワン・フォー・オール』を使うっていうことが、上手くできない。

 

 暴発しないように使おうとすると、結局何も出てきてくれない。

 しかし、ムキになって使おうとすると、暴発して腕が壊れてしまう。

 未だに僕は、0か100かでしか力を使えていない。

 

(『個性』は体の一部……僕の個性は最近、しかもオールマイトに貰ったものだとか、そんなことは言い訳にしかならない。体の一部なら、使おうと思えば自在に使えなきゃおかしいし、使えないのならそれは僕の努力が足りないだけだ…………それはわかってるんだけどなあ……)

 

 せめて、とっかかりが欲しい。なにか、この力を制御する第一歩になるものが。

 

 オールマイトは、感覚だって言ってた。何でもいい、力を暴走させずに制御できるイメージを持って使うことが大事だって。

 

 けど栄陽院さんは、『イメージは大事だけどそれ『だけ』でできるはずもない』って言ってた。

 力の制御に限らず、何かしら『できない』を『できる』に変えるには、すべからく『積み重ね』が必要なんだって。失敗を繰り返して成功へ少しずつ近づけるのが一番確実だって。

 

 けど、僕の『ワン・フォー・オール』は、失敗がイコールで大怪我になる。だから、それもできない……失敗しないようにしつつ、手探りで正解への道標を探すべくやってるのが今の訓練だ。

 けど、コレはコレで進捗が全く感じられない……手ごたえがないから改良のしようがないというか、ここからどう進めればいいかわからないというか……。

 

 何せこの姿勢、本当に僕の『素の力』だけじゃ、全く、1ミリも栄陽院さんの体、持ちあがらないんだよなあ……。全力で腕を伸ばそうとしても、組んでる場所から全く押せない。

 そしてそれがずっと続いてる。一瞬たりとも力が抜ける時間はなく、隙をついて一気に押す、なんてこともできない…………いや、隙をついて押せても、それじゃ今度は訓練の意味ないけど。

 

 ……そう考えると、栄陽院さんはすごいな……

 

 ずっとこの状態のまま、僕が押し返せないギリギリの力を込めて、それを維持してるんだろう。

 重心とか関節とかを利用してるって言ってたけど、それ以上に、超がつくくらい精密に『個性』であるエネルギーの操作を行っているんだと思う。必要なだけのエネルギーをこめて使い、継続的に必要な力を腕に発揮させている。

 

 ……いや、多分腕だけじゃなく、腹筋や背筋、足なんかにもそうしてるんだと思う。

 さっき、つい腕だけじゃなく、時々腹筋とか足とかにも力を込めて動かそうとして、それを助けにどうにか腕を動かせないかな……って試したことがあった。

 

 結果は、やはり無理。胴体も足も、拘束されていない部分はともかく、やはりこちらも動かすこともできなかった。まるで、彼女は全身をギプス代わりにして僕を固定しているかのよう。

 

 ……昔のテレビアニメに、体を鍛えるためにすごい強力なばねの力のギプスをつけて練習をする野球少年の物語があったらしいけど、それを彷彿とさせるなあ……今の僕の状況。

 

 それにしたって、腕だけじゃなく腹筋も足も全く動かないってことは、そっちも『個性』で強化している可能性が高い。

 つくづく便利な『個性』だな、と思う。腕や足だけでなく、その気になれば全身どこでも強化できるんだから。それこそ今なんか、全身そういう風にしてるから僕の力じゃ抵抗する余地がないんだろうし……そう考えると不安になるな、ホントに僕、これ腕の力だけで……

 

 

(…………あれ?)

 

 

 何だ? 今何か、おかしなところが……今考えたことの中に、何か違和感があったような?

 見過ごしちゃいけない何かを、さらっと頭で考えて、そのまま流しちゃったような気が……

 

 今、僕は何を考えた? 思いだせ。

 

(足も胴体もろくに動かせないことからして、栄陽院さんは恐らく、腕だけでなく全身を『個性』で強化してる。それを僕は、僕だけ『腕だけ』で押し返せるのかって…………ッッ!!)

 

 そうか! 『全身』だ! 腕だけじゃなく、他の所を使う……これだ!

 

 腕は、肩とつながっている。肩は背中と、背中は腰や腹筋と、そして下半身とつながっている。

 腕を使って大きな力を使う時、これらの繋がっている部位、ないし筋肉をうまく使えば、同じ腕力でもより大きな力を生み出せる。ましてや、『個性』でそれを強化できるならなおさらだ。

 

 だから僕は、『個性』で全身を強化している栄陽院さんに対して、僕は腕の力だけでそれを押し返すことなんてできるのか、と思った。

 ついでに、栄陽院さんは全身強化してるのに、僕だけ腕だけなんてずるい、とも思った。

 

 そこで、ふと思ったのだ。

 

(だったら……僕も使えばいいじゃないか! 全身を!)

 

 思えば僕は……栄陽院さんに、『ほんの1~2%程度力を出せれば、腕の力だけでも押し返せる』と言われた。

 けど……『腕の力しか使うな』とは言われていない。

 

 さらに言えば、僕は無意識に、僕は腕でしかこの力を使えない、ということにしてたけど……思えば、それだって勝手な決めつけ、思い込みだ。

 入試の時、足で力を使って跳ぶことができた。

 体力テストの時は、指先の一点に力を込めた。

 

 腕以外で使うことができるんだから、そして、どこか一点に絞って力を使うことができるんだから…………それとは逆に使うこともできるんじゃないか?

 

 つまり……『全身で『ワン・フォー・オール』を使う』ことが、できるんじゃないか?

 

 そしてこれって、今思いついたけど、ひょっとしたらもう1つの『課題』……力を使っても大丈夫な『土台』を作るっていうそれの答えにもなるんじゃないか?

 

 腕だけで力を使おうとすること、それ自体に無理があるんだ。腕と繋がってる肩や背中も鍛えて強くしてあって、初めて十分に強い力を、思う通りに、あるいは思う以上に発揮できる。

 だったら、あらかじめ全身をそれに……力の行使に耐えられるようにしておければ……力も強まるし、腕への負担・反動も少なくなるはず。

 

 よく考えてみれば……オールマイトだって、戦う時、『ワン・フォー・オール』の力を使う時は、『マッスルフォーム』に変身してる。あれだって多分、力を使う前準備になってるんだろう。

 あのやせた姿、『トゥルーフォーム』のままで『ワン・フォー・オール』を使う所は……ちょっと想像できない。というか、出来そうにない。

 それこそ、僕みたいに反動で腕を壊してしまうんじゃないかとすら思えてしまう。

 

 だから、『土台』が必要なんだ! より強く、より安全に力を使うために。

 

 僕はオールマイトみたいに『変身』するなんてことできないけど……というか、あの変身ホントにどういう仕組み? あれも『ワン・フォー・オール』の力の一部なんだろうか?

 オールマイトは『力んでる』って言ってたけど……力んだだけであんな、体積変わるほどのことは起こらないだろうし……いや、まずはそこはいい。

 

 ともかく! 今、僕がすべきこと……できるようになるべきことは定まった!

 

(腕だけじゃなく、全身で……その上で腕を、あるいは、特に腕に力をこめて使う……! プールに入る前の準備体操と同じ。いきなり使って反動が大きくなるのを防ぐために、『力を使うための力』を間に用意して……いや、そもそもこの考え方がダメなんだ! 栄陽院さんも言ってたじゃないか、『個性』を特別視しすぎだって、体の一部、使えて当然のものだって!)

 

 

 かっちゃんは攻撃だけじゃなく、移動や姿勢制御、威嚇にすら『爆破』をうまく使ってた。

 

 栄陽院さんも肉体を強化しての戦闘……そこで、打撃のみならず移動、さらにはこんな訓練中の人間ギプスみたいな形ででも使えている。

 

 麗日さん、飯田君、クラスの皆……幼い頃から『個性』を使って来たからだろう、わざわざ『使う』なんて意識を持たずに、手足を動かすように、当然のように使えている。

 『個性』は体の一部、使えて当然の……そこにあって当然のもの……!

 

 僕も同じように、もっとフラットに『ワン・フォー・オール』を考える……!

 一発一発が特別な『技』としてじゃなく……

 

(弱くていい、扱えるだけでいい……常に、全身に……!)

 

 そう強く意識して、全身に力を籠めるようにした瞬間……

 

 にこり、と、

 

 目の前にある、栄陽院さんの顔が……笑った。

 

 

 ☆☆☆

 

 

 個性『無限エネルギー』を持ち、自画自賛ながら、体内における『エネルギー』の扱いに長けていると自負している私は、他者の体から感じ取れるエネルギーにも敏感だ。

 特にこんな風に、密着している状態であれば、なおさらに。

 

 それこそ、まだ流れていない、しかし、『流れようとしている』エネルギーの挙動すら、時に見抜けてしまう。

 

 だからこそ、早くも緑谷が、謎の超パワー個性を『全身で』『少しずつ』使うという発想に至ったことを感じ取った時、思わずにやりと笑ってしまった。

 

 しかし、だからといってすぐさま一歩前進、というわけにはいかない。

 『全身を強化する』ことで『土台を作る』のはいい。けど、それに回すために肝心な『力の制御』という課題がそのまま残っているのだから。

 

 …………だから、もうちょっとだけ手助けしてやるくらいは……いいよね?

 

 

 

「今日はここまでだな……初日だし、まあ、こんなもんだろ」

 

「うん……そう、かな。でも、全然うまくいかなくて……結局、栄陽院さんに時間使わせちゃっただけだった気が……なんかごめん」

 

「いいんだって、私がしたくてやってるんだから」

 

「え? したくて……?」

 

「ああ、いや、こっちの話。それよかほら、疲れただろ? コレでも飲んで」

 

 そう言って私が差し出したカフェオレに、緑谷は『あ!』と、ちょっと驚いたような反応を見せた。それは、前に私が緑谷に渡したのと同じメーカーの、同じ商品だ。

 運動後で熱いだろうと思って、今回買ったのは最初から『冷たい』である点を除けば。

 

 それを、何か考えこむようにしながらも、『ありがとう』と言って受け取った緑谷は、キャップを開けてそれを口に含み……飲み込んでから、

 

「……おいしい」

 

「だろ? 私もこのメーカーのは一押しで……」

 

「……それだけじゃない。何だか、コレ……飲むと力がみなぎってくるような気がする。あの時と同じ……やっぱり、気のせいじゃなかったんだ」

 

 ……おぉ、気付いたか。

 思わずにやりと笑ってしまう私。それを見てかどうかはわからないが、緑谷はもう一口カフェオレを飲んでからこっちを向いて、

 

「ねえ栄陽院さん、このカフェオレ……何? ただのカフェオレじゃないよね? すごく美味しいし、それ以上に……この力が湧き出てくる感覚……僕は、知ってる。これって、君の『個性』の……『無限エネルギー』の譲渡の時と同じことじゃない?」

 

「美味しいのはともかく……よく気付いたな緑谷。その通り、それも、こないだのカフェオレも……普通に市販の奴だけど、私がちょっと弄って手を加えたものなんだ」

 

 そう言って、私が飲んでいたもう1本のカフェオレを緑谷に『飲んでみ』と差し出す。

 

 緑谷はなぜか顔を赤くして困ったようにした。

 ……ちょっと考えて、間接キスになるからだと気づいたが、そんなもん気にしなきゃ一緒だと押し切る。恐る恐る、って感じで緑谷は口をつけて、ごくりと一口。

 

「……普通だ。味も……性能も」

 

「性能て。ははは……んじゃ、ちょっと貸してみ」

 

 緑谷からカフェオレを受け取り、私はそれに……『個性』を使う。

 ペットボトル越しに、私の体から『エネルギー』が注ぎ込まれ、カフェオレに溶け込んでいく。

 

 エネルギー自体は不可視だ。隣で見ている緑谷には、ただ私がカフェオレのボトルを持っているようにしか見えないだろうが……扱っている当人である私は、感覚でそれを理解できる。カフェオレに溶け込んでいるエネルギーの量が、どんどん多くなっていることも含めてだ。

 

 15秒ほどで、その作業は終わり……私の手元に出来上がったのは、『エネルギー』がたっぷり溶け込んだ特製カフェオレだ。

 

 もう一度それを緑谷に渡す。それを口に含んだ緑谷は、

 

「……やっぱり、僕のカフェオレと同じになってる」

 

 驚いた、しかし納得した顔でそう言った。

 

「私の『個性』は、エネルギーを他人に譲渡できるのは知ってるだろ? それの応用で……食べ物とか飲み物に溶かし込むこともできるんだよ。そしてそれを摂取すれば、体内に入った瞬間、体力を回復してくれる……回復アイテムになるってわけだ」

 

 もっとも、あまり効率はいいとは言えないが。

 エネルギーを注ぎ込む際に、一部は霧散してロスしてしまうし、一旦注ぎ込んだエネルギーも、時間と共に少しずつ消失してしまう。今やこの間みたいに、作ってすぐに食べたり飲んだりしてもらわないとあまり意味がない。

 いざという時のために大量に作って、エネルギー入りのドリンクをストックしておく……なんてことはできない。

 

 また、この能力はカロリーの高いものほど多くエネルギーを溶かし込める。

 水とかお茶みたいに、ほぼゼロカロリーのものにはあんまり多くは溶かせないし、エネルギーが抜けてしまうのも早い。逆に、カロリーが大きめで、かつ、味が濃い目で、『動物性たんぱく質』に近い性質のものであれば……より多く溶かし込めて長持ちする、という性質がある。

 要するに、牛乳やカフェオレなんか最適なわけだ。

 

 もっとも、ロスするエネルギーのことを考えれば、普通に手を握るなりハグするなりして譲渡した方が効率はずっといいわけだが……コレはコレで使い道はあるんだよな。

 

 今、ちょうど緑谷が、目の前でごくごくカフェオレを飲んでるわけだが……恐らく、その効果というか、私が意図した『使い道』に気づいたんだろう。

 

「回復する……だけじゃない。体の中に、エネルギーが満ちていく感覚がよくわかる……! もしかして栄陽院さん、あの時も今も……コレを狙って?」

 

「いや、あの時はただ……まあなんていうか、頑張ってるから差し入れみたいな気持ちで、ただのお節介だったよ。でも今回は……狙った通りの反応してくれて嬉しいよ、緑谷」

 

 『食物からエネルギーを摂取する』という、本来のプロセスに近い形で取り込むからだろうか……この方法で摂取すると、そのエネルギーが体に染み渡るような感覚がより強く感じ取れるのだ。

 

 そしてその感覚は……『力を体にいきわたらせる』という点において共通しているため、今まさに緑谷がしようとしていることの参考になるはずだ。

 

 ちなみに、味は別に変らないはずなんだが……人によっては、より美味しく感じることもあるようだ。体にエネルギーがみなぎる感覚が心地よく思えて、脳が錯覚するんじゃないかって、母さんは言ってたっけな。

 

 感覚をつかむため、そして体力を回復させるためっていうのも合わせて、あっという間に私が渡したカフェオレを飲み干した緑谷。

 もともと持ってた自分の分もそのまま全部飲んで……飲み終わってすぐに、すっくと立ちあがる。

 

 ……何気に2本全部飲みつくされたけど……まあいいか。

 

「……すぅー……はぁー……。食べ物、飲み物は、吸収されて体の一部になる……そして、個性は体の一部……なら、今の、エネルギーが染み渡る感覚を追いかけて……『ワン・フォー・オール』を、自分の体の一部にする感覚で……!」

 

(…………? 『ワン・フォー・オール』……?)

 

 今、多分……緑谷の悪い癖の1つである、独り言をブツブツ呟く癖が出てるんだと思うけど……何か、気になること言ってたな? それも、恐らくは無意識に……自分自身気づいてないかも。

 何だ、『ワン・フォー・オール』って……文脈からすると、緑谷の個性名か?

 

 しかし、それを聞くより前に……緑谷の体に、劇的な変化が起こった。

 

 

 ――バリ、バリバリ……

 

 

 弾けるような音と共に、緑谷の体全体に……明るい緑色の火花が散り始めた。

 線香花火くらいか、それよりも小さいものでしかないが、手に、足に、胴体に肩に迸るそれは、不思議な『力強さ』のようなものを見る者に感じさせる。

 

 『エネルギー』に敏感な私にはわかる。これは……『兆し』だ。

 これから緑谷が強くなっていく、ヒーローとしての高みに駆け上がっていくための……紛れもない第一歩。それが、この現象に現れている。

 

 オールマイトが、戦闘訓練の時に言ってたセリフを思いだす。

 

 『有精卵』とは……よく言ったもんだ。まだ生まれることもできていない……どころか、どんな形に育つかすら定かでない、未熟どころの問題じゃない状態。

 卵の中で殻と親に守られ、静かに形ができるのを待ち、漂っているだけの時期。

 

 けど……

 

(だからこそ……育つのが楽しみになる……!)

 

 全身に散る緑色の火花を自分でも見て、1つのラインを超えたことを確信し、笑顔になる緑谷を見て……私は、自分の抱いていた2つの『予感』が正しかったことを知った。

 

 1つは、緑谷はこれから、飛躍的に強くなるということ。

 今まで輪郭さえ見えていなかった、自身の『個性』を……その一端とはいえ、確かにその手につかんで見せた。彼の勤勉さをもってすれば、ここから怒涛の勢いで追い上げていくだろう。

 

 そして、もう1つ……私が、彼に惹かれる理由。

 

 ちらっと考えた、頑張り屋で危なっかしい彼を支えていたいというお節介な思い、ないしは母性……その予想、ある意味で間違っていなかった。

 ただ、そんな微笑ましい感情が根源にあるものじゃなかっただけで。

 

 ……私は、彼の傍にいたい、と思っている。

 彼を傍で支え、後押ししたい。彼に強くなってほしい。成功してほしい。ちょっと生意気な言い方をするなら……彼を一流のヒーローに育て上げたい。

 

 まだまだ制御は未熟だが、底知れない力を秘めているのであろう、彼の『個性』。

 何事にも一生懸命で、正義感と向上心に満ち溢れた、彼の精神。

 それらから導き出される、彼の将来性。頂点にすら手が届くであろう可能性。

 それが、私が彼にほれ込んだ理由だ。

 

 未だ残る、私の男としての感性が、彼の不屈のハートを気に入った。

 2度目の人生で培った女としての感性が、彼の危なっかしさを放っておけなかった。

 

 そして……最後にもう1つ。

 コレは、直感的にしかわかっていないこと。しかしそれゆえに、はっきりとわかること。

 

 

 

 私の『個性』が、彼の『個性』を選んだ。

 

 

 

 かつて母さんが言っていたことが、少しずつ私にもわかってきた。

 

(わかったよ母さん……この『個性』を持つ者の宿命、ってやつが……言葉じゃなくて、魂で理解できた)

 

 がんばれ、緑谷……今決めた。

 あんたが前を向く限り……私も全力であんたを後押しするよ。

 

 

 

 




緑谷、いきなりフルカウル習得の兆し。
USJもまだなのに……(汗)。

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