TSから始まるヒロインアカデミア   作:破戒僧

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第112話 魔獣その他色々の森

 

 

「あーいたいた、よっす心操、青山。よかったー合流できて。元気?」

 

「いやいやいやいや、元気とか聞く前にお前ら一体何があってそんなことになってんだよ。何だってA組とB組がごっちゃ混ぜになって土石流と一緒に流れ落ちてくるんだよ」

 

「雄英だからだよ」

 

「そうか、うん……わかるようなわからないような」

 

 アホなやり取りを交えつつ、心操たちとはまあ無事に合流できたので……状況を整理するか。

 

「「マジュウだ―――!?」」

 

 ……移動しながら。

 瀬呂と上鳴の悲鳴。どうやらあっちに、さっそく出たっぽいな。

 

 

 

 落下直前に聞こえて来たラグドールの言葉からして、私らへの課題は、この『魔獣の森』とやらを抜けて宿泊施設を目指す、というもののようだ。

 

 上鳴曰く所の『ドラクエめいた名称』であるが……『ワーキングホリデー』でワイプシのところに行った面々からすれば、その意味するところはすぐに理解できた。

 

 要するにあれだ……ピクシーボブの『土魔獣』が跋扈してる森ってことだ。

 

 彼女の『土流』は、土を自在に操る『個性』だ。コンクリを操るセメントス先生や、ゴムを操るラバーと同系統の能力だな。

 しかし、その規模はともするとその2人以上である。さっき私達を展望台もどきから流し落としたみたいに、超広範囲に大規模に、地形変動並みの動きを起こすことすらできるんだから。

 

 そしてその応用で、土で作ったモンスター的な奴を操る『土魔獣』ってのがある。

 

 ワーキングホリデーの時にも使ってたな。遭難者を運ぶ時に、担架や大八車の代わりに。

 

 それを今回は、戦闘訓練用の的として使うわけだ。今まさに、土くれのモンスターが大量に、私達に襲い掛かってきている。

 戦闘能力はそこまで大したことないが、大きさとしぶとさ、そして数が厄介だ。

 

 何せ、入試や体育祭でおなじみ『敵ロボ』と違って、どこを壊せば動かなくなる、なんていう弱点みたいなのがなくて……全体を粉々にするくらいに破壊しないと死んでくれないから。

 いや、もともと命ある存在じゃないが、便宜上『死ぬ』って言うのでよろしく。

 

 四つ足の、ネコ科の肉食獣みたいな見た目の『土魔獣』を、後ろ半分破壊しても、前半分で飛びかかってきたりするからな……痛覚も何もあるわけない、というかそもそも動かしてるのはピクシーボブだろうから、文句なく『死んだ』っていうくらいに破壊しないと止まってくれない。

 

 ……上空をドローンが飛んでるんだが……多分彼女、アレ越しにこっちを観察してるんだろうな。

 アレ壊したら目を減らせるだろうけど、多分ルール違反だろうからできない。

 

 それでも……母さんこと『アナライジュ』監修の強化カリキュラムをこなし、例年の生徒以上に成長しているA組、B組、そして普通科コンビは、襲い来る土魔獣達を片っ端からなぎ倒して進んでいく。

 

 特に直接的な攻撃力のある、緑谷や爆豪、B組の鎌切や宍田を中心に攻める。

 

 次いで、範囲攻撃ができる轟や塩崎、中~遠距離で攻撃できる常闇や角取、鱗に青山あたりはサブに立っての攻撃役だ。

 

 同じように攻撃が得意だが、許容上限や時間制限なんかがある面々……砂藤や切島、鉄哲や、前述した連中程の攻撃力はない尾白や回原は一歩引いて、適宜支援するような立ち位置にいる。あまり前に出過ぎると消耗が早いし、切島や鉄哲はその防御力でガード役も担えるからな。

 

 直接的な攻撃力以外の面が強い者は、後方支援とかに回っている。

 瀬呂や峰田、泡瀬や凡戸、それに骨抜きなんかは、襲ってくる相手を拘束して動きを封じ、その隙に攻撃役がタコ殴りにする。言ってみればデバフ要員だ。

 

 相手の攻撃から味方を守る場面では、さっき言った切島や鉄哲に加え、円場が強い。ある程度近くであれば、空気の壁で即座に任意の形の防護壁を作れるから。

 

 周囲に気を配る索敵役も重要だ。奇襲を食らわないよう、耳郎や障子、口田や取陰といった面々が常に目を光らせ、発見した端から手の空いてる奴が斬り込んでいく。

 

 戦闘向きでない個性や、相性が良くない個性の者は、支援に回っている。

 前者は、麗日や葉隠、小森に心操なんかがそうだな。後者は、上鳴とか黒色か。

 

 葉隠や心操は、ロボに引き続き戦闘に生かしづらい個性だしな……上鳴の電撃は、生物相手なら強いけど、こいつら生き物の形してるだけの土くれだし、黒色は黒い土以外には手を出せない。

 麗日は多少接近戦もできるし、触れれば浮かせて落として壊す、っていう手も使えるが、重量があるだけにキャパの消耗が早いんだよな。

 

 彼ら彼女らは、その時その時で必要になる支援や、八百万が作り出した武器を使って戦っていた。心操は、相澤先生の使ってるのと同じ『捕縛布』を持ってたので、それを使ってたが。

 

 そして意外と多いのが、トリッキーな戦い方で、攻撃的でもないけどかなり活躍する面々。

 相手を溶かして無力化したり、地面に『酸』を撤いて滑らせる芦戸や、色々な『効果音』を実体化させて場面に合わせた活躍ができる吹出、そしてオールラウンダーの代名詞ともいえる個性『創造』を使いこなす八百万。

 

 面白いのが、B組の3人が組んで見せてくれた攻撃パターンだった。小大が小さくした岩や木片を、柳が飛ばし、敵に向かって激突、あるいは落下させ……その瞬間にサイズを元に戻すことで威力を倍増させる。

 さらにその直後に、庄田の『ツインインパクト』を発動させてダメ押しという、何気に凶悪なコンボ。上手く使えば、省エネながら一撃で土魔獣を破壊できていた。

 

 そしてそれらの面々に指示を出す、司令塔として活躍しているのも数名。

 飯田と拳藤の委員長2人に加え、いつも冷静沈着ポーカーフェイスでおなじみの梅雨ちゃんに、性格はアレだが策士としての能力は確かであり、彼自身も八百万と同等かそれ以上のオールラウンダーである物間なんかが該当する。

 

 ちなみに私は、支援型だ。腕っぷしはあるものの、私の『無限エネルギー』の本領は、エネルギーの蓄積と譲渡……すなわち『人間点滴』としての回復キャラである。『個性』を酷使して疲弊した面々に、片っ端からエネルギーを与えて回復させて、の繰り返しだった。

 

 そんな感じで、A組B組プラスアルファの戦いぶり、連携ぶりが……最初こそ拙かったものの、上手くかみ合うようになり、途中からは破竹の勢いで進んで行けた。次々襲ってくる土魔獣達にも足を止めず、むしろ瞬殺してコンビネーションの経験値にして。

 仲間と協力するってことの重要性、そしてそこで生み出される力の大きさって奴を実感するな。

 

 この分なら、3時間……は無理かもだけど、かなり速いペースで進める。2時台くらいには到着して休めるんじゃないかな……

 

 

 

 ……なんて思ったのは甘かった。

 

 

 

 途中から、出てくる敵が微妙に変わり始めたのだ。

 

 変化の内容は簡単……空から、飛んでやってくる敵が出始めた。

 

「おい、また来たぞ!」

 

「また、ええと……蝙蝠みたいなのと、コンドルみたいなの!」

 

 上空から飛来するそれらの敵は、地上にいる連中よりは小型で攻撃力も低いが、縦横無尽に飛び回って視界を遮ったり、土魔獣を援護するように動いたり、前衛をスルーして後方支援のメンバーを狙ってきたりするので、厄介極まりない。

 

 しかしそれ以前に、私や緑谷は、そいつらが『飛んでくる』という点自体に違和感を抱いていた。

 

 ピクシーボブの『土流』で作られた土魔獣は、何度も言うように土の塊である。それ自体を自在に動かすことはできれど……重量があるそれを、空を飛ばせたりすることはできないのだ。あくまで地に足をつけて戦わせなければならない。

 

 セメントス先生もそうだ。そもそもこの2人は共通して、触れている部分から地続き、ある程度の距離にある対象物質(コンクリと土)しか操れないからな。ピクシーボブの場合は、一度操ってしまえば、ある程度自由に行動させられるけど。

 

 同じ操作系能力でも、遠隔で、空中ででも操れる、ベストジーニストやラバーみたいなことは…………待てよ?

 

 ふと思いついて、飛んでくる魔獣の姿をよく観察する。

 ちょうどそこに蝙蝠っぽい方がいるが……気のせいかな? 翼部分に張ってる、いわゆる『翼膜』の部分が……土埃で汚れててわかりにくいけど、よく見ると……質感が、土じゃない何かに見えるんだが。

 

 おかしいと思って、ちょうど青山が『ネビルレーザー』で撃ち落としたそいつを、拳を叩き込んで粉砕、トドメをさし……土くれの中から、翼膜をつかんで引っ張り出す。

 

 ……やっぱり、間違いない。『ゴム』だ。

 つまり……

 

「栄陽院さん、コレ、まさか……」

 

 と、視界の端で見ていた緑谷も、同時に気づいたようだ。

 

「ああ……ラバーがいる」

 

 ピクシーボブだけじゃない。彼女が……『ラバーエンプレス』がここに来てる。ここに来て、『魔獣』を使っての私達の襲撃に加担してる。

 

 飛べないはずの土魔獣が空から現れ出したのは、彼女が手を貸してたからか! 体の一部をゴムにして、あるいは内部に組み込んで、空を飛ばしてたんだな……!

 

 すぐさま他のクラスメイトやB組メンバー、そして心操と青山にも、そのことを通達する。

 ここからは、飛行能力はもちろん……ラバーの『ゴム』を使った攻撃手段を用いてくるかもしれないからな……鞭とか、手足が伸びるとか……

 

 

 

 まあ、案の定使ってきたわけだが。

 いきなり手足が伸びてリーチが長い攻撃かましてきたり、打撃を浴びせたら体内に仕込まれていたゴムに威力を吸収されて半減してしまったり、厄介なことこの上なかった。今まで通用していたやり方が突如効かなくなるってのは、思いのほか混乱を誘う。

 

 それでも私達は、なんとかその変化にも適応して戦いを続けていた。

 

 相手が『ゴム』だとわかれば、また対処の使用もわかってくるし、違ってくる。

 

 この魔物たちをラバーが操ってるなら……操ってるのは魔物たちの体の『ゴム』の部分だ。しかしラバーは、ゴムが熱せられたりして変質してしまえば、それをもう使えなくなる。

 

 あるいは、ゴムは極度の低温で冷却すれば割れる。そういう性質上の弱点がある。

 

 それを利用して、轟の氷結や熱、爆豪の炎、あとは芦戸の酸なんかもそうだな。そういうので弱点をついて破壊していったりもした。

 

 

 

 だが……それをあざ笑うかのように、さらなる変化が襲う。

 

 いや、変化っていうか……そもそもジャンルの違う敵が出て来たっていうか……

 

「魔獣、ってかアンデッド出て来た―――!?」

 

「おい、マジで今度は何なんだよアレ!? スケルトンって奴か!?」

 

「いや、『しりょうのきし』とかその辺かもしれ……ってんなことはどうでもいいんだよ! 向かってくる以上は相手するしかないんだから……ってかアレも土くれか? それともゴムか?」

 

「いや、壊してみた感触からして……本物の骨っぽいぞ」

 

「嘘、怖っ、何それ!? え、どういうこと!?」

 

 

 

「今度は何だよ!? ロボット!?」

 

「いや、違うだろコレ……土でもゴムでも骨でもない……石か!? あっちのは……鉄の塊!?」

 

「何だよコレ……スケルトンの次はゴーレムか!?」

 

 

 

「キャアアアアアア!!」

 

「うわっ、びっくりした……え、今の口田か?」

 

「あー、虫苦手だもんね口田……そりゃ、こんなでかい虫が出てきたら悲鳴も上がるか……つか、こいつら何なわけ!? さっきから統一性がない上に厄介な化け物ばっかり出てきて……」

 

「土とゴムの魔獣以外は、倒すとドロドロに溶けていなくなる……同じ人の『個性』か? だが、この一貫性のなさは……」

 

 そう、耳郎が言ったように、統一性がないこと。そして、飯田が言ったように、倒した後のリアクションが似ていること。この2つの特徴は矛盾しているようで、戦っている者にも考えている者にも混乱を誘っているが……私達は、この特徴に見合う力を持った存在を知っている。

 

 アンデッド、ゴーレム、巨大昆虫……その全てを召喚して従えることができる……言ってみれば、『一貫性がないことこそ特徴』とでも言うべき『個性』を持っている、千変万化の顔無しを。

 

(間違いない……ラバーに続いて、『パンドラズ・アクター』もここに来てる……! 雄英が独自に声をかけたのか、それとも母さんが何か手を回したのかは知らないけど……こりゃ残り3分の1くらいの道のり、相当きつくなるな……)

 

 

 

 ……結局、

 

「やーっと来たにゃん」

 

 私達が宿泊施設にたどり着いたのは……もう日も暮れるくらいって感じの時刻。すっかり夕日で空が赤くなってからだった。

 

 全員ここまでくるのに、およそ8時間……そのほとんどを戦い続けて……全員もれなくヘトヘトのボロボロだ。もーろくに『個性』使う力も残っちゃいない……

 

 超疲れた……つかあの妨害の苛烈さ、絶対私らのこと昼までに施設に着かせる気なかったろ。

 

「何が3時間すか……今夕方なんすけど……」

 

「ざっと8時間……昼飯抜きで、ぶっ続けで戦い続けて……ローテ組んでとはいえ……」

 

「腹減った……死ぬ……」

 

 上鳴、瀬呂、切島の恨みがましい声に、ピクシーボブとマンダレイは意地の悪そうな笑みを浮かべ、

 

「悪いね、アレ、私達ならって意味」

 

「それも、極力戦闘は避けて、全力で逃げに徹しながらなのだけどね」

 

「何にせよ、実力差自慢のためか……やらしい……」

 

「けど、ホントはもっとかかると思ってたよ? 私の『土魔獣』や……他にもこっちで用意した、昆虫やゴーレム、アンデッドやゴム魔獣もさっくり攻略されちゃったし……聞いてはいたけど、今年はホントに優秀な子が揃ってるんだね」

 

「うんうん。バス降りたところからずっと見てたけど、『個性』そのものも成長させて、上手く使いこなしてる子も多かったし。今年は粒ぞろいだねー!」

 

「何人かいた、特に動きが優秀な子は……経験値ゆえかしらね? 私達も一応当事者だったけど、今年度は『ワーキングホリデー』で現場の空気を知ってる子が多いみたいだし」

 

「うんうん、3年後が楽しみー! より取り見取りじゃん、いーねーいーねー!」

 

 ……なんか例によってピクシーボブの言動と仕草に邪な意思を感じるのですが。

 ツバでもつけとくかのごとく、舌なめずりしながら、今回活躍していた数名の男子を……狙うような目つきで見て……うん、まあ、その……ホント必死だなこの人。学生に手出そうとするなや。

 

 そんな、適齢期に追われて焦る気持ちが若干顔を出しているピクシーボブには目もくれず、その後ろから、相澤先生とブラドキング先生がでてきた。

 『お疲れさん』とごく簡単なねぎらいの言葉の後、淡々と連絡事項を告げる。

 

「バスに乗せてた荷物は玄関ロビーにまとめて置いてある。自分のを探して取って、部屋に運び込め。A組とB組、そして男女でそれぞれ別々になってるから、図面見て場所確認しとけよ」

 

「その後は、食堂で夕食。そして入浴して本日の日程は終了だ! 本格的な訓練は明日からとなる。各自、しっかり寝て疲れを取っておけ! 以上! さあ動け!」

 

 うわーい、疲れていようが関係ない、きびきび動けとばかりのお言葉……でも食事は嬉しい。正直、空腹でもう限界だったから……エネルギーもほとんど底をついたし。

 お言葉に甘えて早速取り掛かろう……食べ放題かな? 食べ放題だといいな。

 

 しかし、出迎えメンバーの中に、ラバーとパンドラはいなかったな……隠れてるのか? それとも……何か別の仕事に出も出てるのかね?

 

 まあいいや……とりあえず今は飯だ飯! あるだけ食って補給させてもらわないとなぁ!

 

 

 

 

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