TSから始まるヒロインアカデミア   作:破戒僧

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第123話 襲撃

 

 林間合宿も大詰めの6日目。

 

 基礎的な訓練で合格点をもらい、コスチュームを着用して本格的に『必殺技』を作る、あるいはすでに作ったそれに磨きをかける段階に入っている者も割と多くなってきていた。

 

 先生達の話だと、実質のところ、本腰入れて修行するのは今日までで、明日は総仕上げの模擬戦とか最終調整らしいし……ラストスパートってことで、『個性伸ばし』に『必殺技』に、全力で追い込みかけてる生徒が多い。

 

 その分エネルギーの消費も激しいので、私が作る『トワビタンE』もよく売れる売れる……ちょいちょいコレ作るのに時間取られたわ。修行中に。

 

 ……ちょっと不安なんだけど、皆、コレ飲んでハイペースで修行するのに慣れちゃって、雄英帰ってからも私、定期的にコレ作るのが仕事とかにならんよな……?

 地味に時間的にも体力的にもリソース食うんで、ちょっと……いや、時々ならいいけど、頻繁に要求されるのは勘弁してほしいというかね?

 

 というか、『トワビタンE』もそうだけど、この林間合宿の間……私結構、皆の世話してたよな……。

 『個性』の使い過ぎで体にダメージ入った連中を、体力的には『トワビタンE』で、ケガとか筋肉痛は『コンセントヒール』で治癒を促進させて。

 

 まあ、私自身の経験値にもきっちりなったから、文句はないけど……

 

 それに、そのおかげでぐんぐん成長していく皆を見てるのも……緑谷に限らず、そういう風に世話を焼くのは嫌いじゃないというか、見ていて楽しかったというか。

 このへんも、『アナライジュ』の、ないしは『幾瀬』の血なのかもしれないな。

 

 全力で頑張ってるのをきちんと傍で見ていたからこそ、こうして皆、1つも2つもレベルアップしている光景を見ると……うん、こっちまで達成感が出てくるな。

 

 例えば、ふくらはぎの器官を無事に強化し終えた飯田は、とんでもないスピードで動けるようになっていた。小回りが利くかと言われればまだ要調整だそうだが、その速さはちょっと目で追うのも難しいレベルだし、キック力も当然強化されている。

 超加速の持続時間も、10秒しか持たなかったのが、3分くらいにまで伸びたらしいし……お手本のような成功例だな。

 

 切島も、『安無嶺過武瑠(アンブレイカブル)』だかの持続時間や強度が伸びてたし、峰田や瀬呂も許容上限が伸び、今までよりも長く、ないし多く『個性』を使えるようになってた。

 

 取陰は体のパーツを50個もの数まで分裂させられるようになってたし、塩崎も『ツル』の量と展開速度、操作性が磨かれていた。

 

 その他にも、皆、それぞれこの合宿の中で大きく成長できている。

 無論、私や緑谷も含めてね。

 

 ……というか、恐らくだけど……この合宿の中で一番成長できたの、間違いなく緑谷だと思うんだよなあ……ちょっとコレやり過ぎじゃないのかってレベルまで強くなったし、出来ることも増えたし。

 強化する『個性』……恐らくは『ワン・フォー・オール』という名前なんであろうそれに加え、捕縛に移動に自在な『黒鞭』も安定して使えるようになり、さらに、私がやるみたいな『エネルギー操作』系の技能まで使えるようになった。

 特に、私がエネルギーを譲渡した際、その操作・制御能力が、もうなんか、自分の『個性』みたいに自在に行えているのは……ホントにその、成長しすぎじゃないかとちょっと思った。

 

 いや、悪いことじゃないのはわかるよ? むしろ喜ばしいことなんだろうと思うし……けど、あまりに急に、今までの緑谷から見て脈絡ない感じの成長だから……私や緑谷本人はもちろん、先生達も『なんじゃこりゃ』って目を丸くしてたなあ……

 全く違う系統の能力が発現してることからして、今までに前例のない成長の仕方してるから……今後の指導方針にも影響するだろうって、慎重に観察してるみたいだった。

 

 とはいえ、今のところは何かデメリット的なものは特に出てきてないので、純粋にできることが増えた、強くなった的な受け止められ方をしてるけどもね。

 

 ……しかし、この緑谷の成長……というか、最早これは進化、ないし変容といってもいいようなものに思えるけども……

 ……タイミング的に、私が緑谷のものになったあたりから急に進み出したような気がする……っていうのは自意識過剰だろうか?

 

 いやでも、何か最近……私の方も色々と変なことが起こってる気がするしなあ……

 

 『個性』の成長もそうだけど、ここ最近よく見るようになった、あの夢……今思うと、あの手の変な夢を見た後あたりのタイミングで、緑谷に何らかの異変が起こったり……しかも、その異変や成長ってののいくつかは、私の『個性』に関係してたり、よく似ていたりする気も……

 

 ……偶然……じゃない気がするんだよなあ。

 

 まあ、何にせよ……緑谷が強くなれてるっていう点を見れば、私としては喜ばしい。

 もしこれが、何らかの形で私が、あるいは私の『個性』が彼の役に立てているんだとすれば、猶更に。

 

 ともあれ、考えてもわからないことを考えすぎても仕方ない。

 今は『パワーアップできてよかったじゃん』くらいにとらえておいて……何か後から問題がでてきたら、その時に考えるとしよう。

 

 

 ☆☆☆

 

 

 さて、そんなこんなで無事に合宿6日目も、修行の時間が、そしてその後の食事やら何やらが終わり……お楽しみのレクリエーションの時間となった。

 

 合宿最後の夜となる今日、予定されているのは、花火。そしてキャンプファイアーである。

 うん。まさに夏のキャンプ的行事のラストを飾るにふさわしいイベントだ……と、個人的には思う。

 

 ただ、花火だけならともかく、キャンプファイヤーをするには、宿泊所の周辺は……うん、危険だ。緑が多すぎてというか、森の真ん中過ぎて。

 

 なので、少し遠くにある開けた空き地みたいな場所に行くことになった。

 

 遠くと行っても、せいぜい歩いて15分から30分くらいである。

 というか、生徒達の一部が訓練場として使っていた場所の1つなので、行ったことのある生徒も多い。轟とか爆豪とか、森林火災にならないようにそこで炎系の技の練習してたらしいし。

 

 ただ、その準備をするのは私達生徒である。レクリエーションは、いわゆる『飴と鞭』の飴の部分ではあるけども、そこまでは流石に先生達もしてくれないので。

 

 なので、キャンプファイアーに使う薪やら、あらかじめ用意はされていた花火やら、そういったものを手分けして運んでいくことになったわけだが……

 

「こういう時に小大の『個性』って助かるよなあ……ありがと、おかげで楽できるよ」

 

「ん」

 

 かなり重労働になると予想された、キャンプファイアー用の薪を運ぶ係。

 力自慢の私や砂藤、宍田や緑谷が当番としてあたっていたんだけども、B組の小大の『個性』……ものの大きさを自在に変えてしまう『サイズ』によって、見事に出番がなくなった。

 大きさに合わせて、重量も変化するので、薪全部小さくした後は、コンビニのビニール袋に入れてそのまま片手で持って運べる感じになったのだ。

 

 いやまあ、今言ったように、楽でいいんだけどね?

 

 念のためというか、キャパのことも考えて私らも同行してたんだけど……小大もこの合宿で『個性』の要領を大きく伸ばし、キャンプファイアーの薪くらいなら縮めて持ち運べるだけの力を手に入れている。1人で十分だったな。

 

「量があるから時間に余裕持って動いたけど……だいぶ早く着いちゃうね」

 

「まあ、遅れるよりはいいだろ。集合場所にいけばまだ他に仕事とか、手伝うこともあるだろうし」

 

「そうだな。消火用の水とか、色々現場の準備、先に行ってる連中がしてるはずだし……それこそ現場着いたら、今度こそ力仕事あるだろ」

 

「キャンプファイアーの組み木など、先に済ませてしまえれば後から楽でしょうな。どのみち、花火を持ってくる班が合流しなければ始まらぬゆえ、できることをやって待つとしましょうぞ」

 

 キャンプファイヤーの会場へは、それぞれの準備班が、担当するものを運んできて集合する手筈になっている。

 薪担当の私達以外にも、花火担当、その他雑貨担当といった感じで分けられているし、もの運び以外にも、会場設営その他を担当する班もいる。全員揃うにはもうちょっとかかるだろう。

 

「しかし、花火とか薪とか、色々使うものあるのはわかるけど……なんだってこんな風にあちこちにばらけさせて保管してんだろな。おかげで班分けして方々に散って、それぞれ運ぶの無駄に手間食う感じになってるけど」

 

「それは仕方ないんじゃないかな。ものによってはホラ、森の中とか山の中にまで運ぶの大変な物もあるだろうし、危ないからある程度開けた場所に保管しておきたいとかいうのもあるんだと思うよ。花火とかがまさにそうだけど、燃えるものを森の中に置いておくのは危ないでしょ?」

 

「薪などの大荷物になるものもそうですな。少量ならともかく、ある程度以上の量であれば、少なくとも軽トラか何かが行き来できる場所への運び込みに限られましょう。まあ、『個性』によってはそれも別でしょうが」

 

「ま、安全のためにそうしてるんなら、考えすぎてダメってことはねーだろうし、いいんじゃねえか? それこそ、森林火災みたいなことになったら洒落にならねえわけだし、引火して爆発するようなもんを……」

 

 と、砂藤が言いかけた……その時。

 

 

 ―――ドォォオオォオン!!

 

 

「「「…………っ!?」」」

 

 遠くからの、しかしはっきりと聞こえるほどの音量の……おそらくは、爆発音。

 耳にした私達は、思わずぎょっとして聞こえた方を振り向いた。

 

 するとその方角には……暗くなり始めている空の、夜の闇を押しのけそうな大きさの火柱が、そして黒煙が立ち上っていた。

 

「……え……? 何、アレ……」

 

「森林火災……いや、つか、爆発音したよな? まさか、花火に引火して、とか……?」

 

「いや、無理あるだろ。用意されてた花火なんて……いくら可燃物だっつっても、家庭用の奴だろ? いくら皆でやるから量が用意されてたって言っても……パーティー仕様の何百袋用意したらあんな、兵器じみた威力の爆発起こせるんだよ」

 

「じゃあ、アレ……何?」

 

「いや、それはそれでわから……」

 

 

『――皆!』

 

 

 と、その会話をさらに遮って、頭の中に声が響く。

 マンダレイの『テレパス』だ……『ワーキングホリデー』の時もこの合宿中も、何回も聞いて、最早馴れ親しんでると言っていいほどになじみのある感覚だ。

 

 けど、この……あきらかに切羽詰まってる感じの声音というか気配は……それこそ、『ワーキングホリデー』の時に聞いたくらいだな。

 そしてそれはすなわち、あの時と同じような、何かろくでもないことが起こっている、という意味で……

 

(ヴィラン)2名出現! 他にも複数いる可能性あり! 他の班や位置を見てるワイプシの他のメンバーと無線が通じない! 通信妨害の可能性大! 全員すぐに施設に戻って! 会敵しても決して交戦せず撤退を!』

 

「……おい、マジか」

 

「そんな……じゃあ、今の爆発は……!」

 

「何で、『敵』が……バレないんじゃなかったのかよ?」

 

「話は後です! 今は指示通り避難をせねば……急いで施設まで戻りましょうぞ!」

 

「ん……!」

 

 予想外にも程がある内容に困惑しつつも、私達は、『テレパス』で届いたマンダレイの指示通りに動く。すぐさま反転し、駆け足で施設に向かう。

 その途中、足を止めないままに考える。

 

 何だってここに……こんな場所に『敵』が現れたのか。

 

 街中で偶然『敵』の犯罪に出くわしたり、巻き込まれたりするのとはわけが違う。こんな山奥で偶然『敵』と遭遇するなんてことは、まずありえないと見ていいだろう。

 つまり、その『敵』とやらは……何らかの目的で、狙ってここに来たってことだ。

 

 その目的が何か……私ら雄英か、はたまたワイプシかはわからないけど……これまでに起こったことを思い返す限り、最悪の想像をするなら……

 

 ……と、そこまで考えた瞬間、先頭を走っていた緑谷がはっとしたような表情になり、急ブレーキをかけつつ振り向いた。

 

 それを見て私も、とっさに同じようにしてその視線の先を目で追い……次の瞬間、緑谷がそういう行動に出た理由を、一体何を察知したのかを知った。

 

 そして同時に、緑谷と私は飛び出して……

 

「『セントルイススマッシュ』!」

 

「400%! &……『エネルギーバインド』!」

 

 緑谷の飛び蹴りと、私の飛び膝蹴りが同時に放たれ……茂みから飛び出して、小大に襲い掛かろうとしていた『何か』に直撃。蹴り飛ばして地面に転がす。

 同時に発動した私の『エネルギーバインド』により、動きを大きく阻害されているそいつの全容が……もう薄暗い時間帯ではあるが、私達の目で見て知ることができた。

 

 そして、それにより……あまりありがたくない事実も、明らかになったのだが。

 

 そいつの姿を見た私達は、一様に息をのんでいた。

 なぜなら……それは、どう見ても……

 

「……脳……無……!?」

 

「……おい、こいつが出てくるってことは……襲ってきた『敵』って!」

 

 脳が露出した外見という点で共通している、異形の怪人……『脳無』。

 こいつを戦力として投入してくる組織は……たった1つだ。

 

(ヴィラン)……連合……!?」

 

 ……最悪だ。

 折角の合宿、最後の最後に……ケチがついた……いや、ケチどころじゃないな。

 

 何せ、相手が相手……どう考えても、ただ騒がしくするだけ、闇雲に暴れるだけで帰っちゃくれない組織だ……何のためにこんな山奥まで来たのかはわからないが……こりゃ、えらいことになる気がしてきた……!

 

 なるべくなら当たってほしくない、そんな懸念が頭をよぎった瞬間に……さっきの爆発音とはまた別な、いくつもの方向から……爆発音やら、破壊音やら、地響きやら……取り留めもない、しかし不吉な音ばかりがいくつも聞こえて来た。

 

 ホント……最悪だ……!

 

 

 

 

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