TSから始まるヒロインアカデミア   作:破戒僧

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ご注意。
諸事情から、一話を分割しました。
なので、一挙2話更新となっております。この前の、第136話をまだご覧になっていない方は、そちらと合わせてお楽しみください。

あと、若干、いやかなり展開が強引というか、ぶっ飛んでる感じもしますので……気になった方いらっしゃいましたらすいません。
でも後悔はしていない(おいコラ)


第137話 真骨頂

「……力が、欲しいか?」

 

「…………何だこの状況」

 

 今私は、何かこう……よくわからない空間にいる。

 

 もうちょっと具体的に言うと……コレ確かアレだよな? 今まで何回か夢で見た……緑谷とか、よくわかんない人達が出てくる、謎な空間。

 風が吹いてるような、霧がかかってるような……そもそも空間とか景色そのものが安定してないような……だめだ結局上手く説明できない。

 

 そんな空間に、私は今……さっきまでの戦闘直後の、ボロボロの状態でたたずんでいた。

 

 腹と腕、足に穴が開き、コスチュームもボロボロで血だらけ。けど不思議と、痛みとかはない。

 それが、これが単なる夢とかそういうのだからなのか、はたまた私は今死にかけで、そういうのを知覚する段階も既に過ぎてしまったからなのかはわからんけど……まあいいか。

 

 それよりも気になるのは……今のその私を取り囲むように立っている、何人もの……1人を除いて、見覚えのない人達だ。

 

 除外したのは、母さんである。なぜか、『アナライジュ』の装束を纏ったヒーローモードの母さんが、私の隣に立っている。話しかけても微笑み返すばかりで、何も言ってはくれないが。

 

 そんな中、尼僧のような装束の女性が、私の目の前に進み出た。……えっと、誰だろこの人。

 

「困惑していることでしょうが、残念ながら説明している時間はなさそうですので、要点だけ簡潔に説明します……よく聞きなさい、わが末裔よ」

 

「あっはい」

 

 今のでちょっとだけ、この人がどんな人なのか分かった気がしたが(言ってることが本当なら、だが)、ひとまず言われた通りに説明に耳を傾けることにする。

 

「あなたは今、命を失う瀬戸際にいます。そして、あなたが主君と定めた、緑谷出久もまた……今はしのいでいますが、長くは続きません。このままでは遠からず、命を奪われることでしょう」

 

「っ……!」

 

 突きつけられた事実に……体は痛まないのに、心が痛む。

 

 この身を挺してかばった緑谷が、しかし……結局また危機に陥っているという。しかも今度は、私はそこにいられず……盾になることすらできない。

 こんな、どことも知れない空間で、歯噛みすることしかできない。

 

「『異能』に目覚めたあなたならば、本来なら、己の全てを力に変えて、窮地の主君に捧げ、それを脱する一助となることもできたでしょう……しかし今のあなたは、その『異能』すら失っている。体に残った僅かばかりの残滓によって、この夢を見ることができているにすぎません」

 

 それを聞いて、なんとなく……ここ最近見ていた、あの『夢』の意味が分かった気がした。

 

 あれは……私の体が、そして『個性』が、その全てを緑谷に合わせて作り替えて……最適化させていたという意味だったんだ。

 私を基準にではなく、緑谷を基準に。私よりも、緑谷に都合がよく、使いやすいように。

 

 そして、いざという時には……最適化された私の『全て』を、緑谷に捧げて……私自身が、彼の力の一部になってでも、彼を助けて、勝たせることができるように。

 それが、『オール・フォー・ユー』を持つ者の力であり、宿命であり……私自身の意思でもある。

 

 しかし聞く限り、今の私には……それすらできないという。媒介にすべき『個性』が、恐らくはあのナインとかいう『敵』に、奪われてしまっているから。

 

 なら、もうできることはないのか、と思ったが……そう聞くと、尼僧は首を横に振った。

 

「我らの『異能』は、そう簡単に奪って使えるようなものではありません。今は大人しくとも、あなたの手元になくとも……持ち主と、その主以外に尻尾を振るようなことはない。すぐにそれをあの男も思い知るでしょう。その時こそが、あなたの最後の反撃の機会です」

 

 ……何でかさっきからこの人、『個性』のことを『異能』って呼ぶけど……

 超常黎明期とかその周辺にはよく通った呼び方だったらしいな……ひょっとして、時代が違う?

 

 いや、そんなことはどうでもいい。

 重要なのは、今の私に何ができるか、何をすればいいのか……だ。

 

「……どうすれば?」

 

「それは……」

 

 

 ☆☆☆

 

 

 ナイン、ウォルフラム、キュレーター。

 

 3人のネームドヴィランによって繰り広げられる、周囲への余波・被害など知ったことかとばかりの戦いは……ヒーローも、雄英生も寄りつくことができない、恐ろしい規模の破壊を伴って続いていた。

 

 金属が巨大な槍のようになって殺到し、全てを貫き、薙ぎ払い、押しつぶす。

 

 巨大な鯨の異形が、時には衝撃波とすら呼べる超音波で、時にはその巨体から繰り出される圧倒的なパワーで全てを破壊する。

 

 大空を支配する『個性』が、竜巻を、雷を、さらには吹雪や霧を操って、全てをねじ伏せんと、大自然の猛威を振るう。

 

 巻き込まれるだけで死んでしまうであろうその戦いを……生徒達は、部下であるスライス達の攻撃をしのぎながら、見ていることしかできなかったが……異変は、その時起こった。

 

「……ぐっ……!?」

 

 突如、ナインが胸を押さえて苦しみだし……それに合わせて、あれほど荒れ狂っていた風も、何もかも、ふっと収まった。

 完全にではないが、ほとんど脅威にもならないレベルにまで。

 

(何、だ、これは……!? 『細胞障害』の反動がまだ……いや、違う……!)

 

「ナイン!?」

 

「まさか……まだ副作用の克服が十分では……!?」

 

 異変に気付いたスライス達が声を上げるが、当のナインは、その予想が『違う』と直感していた。

 

 今まで幾度も味わった、『気象操作』の個性の反動である、細胞が死んでいく感覚とは違う。

 今、自身を蝕んでいるのは……まるで、何かが自分の体の中で暴れているような、内側から食い荒らされているような……今まで味わったこともないような感覚だ。

 

 しかもそれにともなって、『個性』が上手く使えなくなっていく。風はどんどん収まっていき、爪弾や衝撃波を放とうとしても、バリアを張ろうとしても上手くいかない。

 

 不思議に思いながらも……およそけん制か様子見のつもりでキュレーターが放ったのであろう、超音波によって……なすすべなく、ナインは吹き飛ばされてしまった。

 

「くそっ、このような無様を……一体、何が……!? まさか、あの少女の『個性』に、未知の副作用か何かが……」

 

「その通りだよ、この強盗殺人犯」

 

「っ!?」

 

 その瞬間、背後から聞こえて来た声に……ナインは驚きながら、とっさに振り向き……

 

 がしっ、と、その頭を……わしづかみにされた。

 

 半死半生……いや、ほとんど『死』の状態に至っているであろう永久が、そこにいて……血の気の引いて真っ青な顔で、獰猛な笑みを浮かべていた。

 その手は、死にかけとは思えないほどの力で、ナインの頭をつかんで離さない。

 

「貴様、なぜその傷で……!?」

 

「うるさい……さっさと……返せ!」

 

 その瞬間、ありえないことが起こった。

 ナインが感じたのは……今まで何度もその身に覚えて来た感覚だった。他人の『個性』を奪い、我が物とする時の……他人の『個性』が、自分の中に入ってきて、馴染んでいく感覚。

 

 苦しい人体実験を耐え抜き、その末に得た……他者から奪う側に立っていることを体現するかのような力。この世界の頂点に立つことを許されたがごとき、恐るべき力。

 

 しかし、今感じているのは、それとは真逆だった。

 他人の力が、自分の中に入ってくるのではない。今、これは……自分の力が、他人に流れていく。

 

「バカ、な……!?」

 

 自分の『個性』が、他人に……目の前のこの少女に、奪われている。

 

「ありえ、ない……!? なぜ、こんな……お前も、同じ力を……」

 

「違うよ……コレは、私の力と……お前の力……! それが、合わさった結果だ……!」

 

 

 

 謎の空間で、尼僧は、永久に語った。

 

「そろそろ、あなたの『異能』が……今の時代は『個性』と呼ばれているものですが……あの男の体の中で暴れ始め……そして、報いを受けさせることでしょう。我々の力は、主のため以外で使われることを決して良しとしない。むしろ、奪われた状況すら利用して、主のために己を作り替える」

 

「……作り替える……それって……」

 

「『変容』……それこそが、あなたの『個性』の、もう1つの真骨頂。主のために、その身のあり方そのものを最善のそれに作り替える、全てを懸けた献身。あなたの意思がそこに沿ってある限り、たとえ離れたところにいようと、異能に染み着き、魂に刻み込まれた……我ら『奉生』が紡いできた意思がそれに応えます。望むのです、我の力となれと、そして、彼の力となれと。さすれば……」

 

 

 

「利子付けて、返してもらうぞ……私の、力を!」

 

 ナインの体の中で、永久の『個性』が変容していく。ナインの『個性』を、体の中から食い荒らし……取り込んでいく。

 かつて、初代『ワン・フォー・オール』継承者の体の中で起こったことが、繰り返される。

 

 2つの……いや、それ以上の『個性』が混ざり合う。原型をわずかにとどめたまま、全く別なものとなって……変わっていく。

 そしてそのまま……あるべき場所へ……永久の体の中へ、戻っていく。

 

 混ざり合い、ナインの制御を離れた『個性強奪』が……自分を強奪『させた』。

 

『オール・フォー・ユー』の、そして、永久の意思のままに……永久の力として。

 

「あり、え……ない……!」

 

 自らの体の中に、最早『個性』が残っていない、空虚な感触と共に……ナインは、そのあまりの精神への負荷の大きさゆえに……意識を手放した。

 9つ持っていた『個性』を一度に抜き取られ……意識を保っていられなかった。

 

 動かなくなったナインとは対照的に、永久は、ボロボロの体に緑色の光を灯して……ゆっくりと立ち上がる。

 

「『爪ビーム』……『衝撃波』……『バリア』……『個性見破り』……『青ドラゴン』……『気象操作』……『個性強奪』……『細胞活性』……そして、『オール・フォー・ユー』……! こんなに持ってやがったのか、こいつ……! 名前適当だけど……。まあいい、とりあえず……」

 

 不思議なもので、奪った『個性』の使い方は、何となくわかった。あるいはそれも、『個性強奪』の持つ力なのかもしれない。

 エネルギーと『細胞活性』の合わせ技で、ひとまず応急処置的に傷を癒しながら……永久は立ち上がり、体が動くことを確かめる。

 

「おかえり、『オール・フォー・ユー』……じゃ、行こうか、私達の……ご主人様のところに!」

 

 

 ☆☆☆

 

 

 力強い緑色の光にたたらを踏んだオーバーホールだったが……驚きはしたものの、焦っても困ってもいなかった。

 

 よくわからないことが起こってはいるが、今、緑谷出久は……目の前の少年は、半死半生であることに変わりはない。武器だった腕や足も失い、最早戦える状態ではない。

 

 この光も、警戒こそしたものの、特にこちらに害になるような気配もなく――なぜか、やや嫌な気分になる気がしなくもないが――ただまぶしく、なぜか近づけないだけ。それも、先程から徐々に収まりつつある。

 なら、それを待って尋問を再開すればいい……そう、思っていた。

 

 そして実際に、急激に弱まっていった光が、せいぜい緑谷の周囲を照らす程度になったところで、オーバーホールは再び歩み寄ろうとして……

 

 

「人のご主人様に、何してんだこのクチバシ野郎」

 

 

 ―――ゴロゴロゴロゴロ……ピシャァッ!!

 

 

「っ、が……!?」

 

 突如起こった落雷に、体を撃ち抜かれ……何が起こったのかも分からないまま、どう、と倒れ伏すこととなった。

 

 わけもわからず、体は動かなくなり……がつん、と頭から地面に落下する形で倒れる。気絶する寸前で、どうにか繋ぎ止められていた意識が……その拍子に、あっけなく沈んだ。

 

 が、その更に次の瞬間、強風が巻き起こってその体を浮かせた。

 

 浮かせたまま、連れ去っていき……その、飛んでいった先で、待ち受けていた永久が……アイアンクローの要領で、オーバーホールの顔をわしづかみにする。つい今しがた、ナインにしたように。

 

 そして……今しがた、手に入れたばかりの『個性』を、容赦なく奮った。

 

「もらうぞ……その、『個性』」

 

 

 

 数秒後、気絶したオーバーホールをその場に投げ捨てた永久は……あまりに突然のことに、呆気に取られている緑谷に、すたすたと近づいていく。

 

 しかし、その緑谷の表情は……目の前に立っているのが誰なのかをきちんと認識するのに伴って、安堵と歓喜が湧き出してきて……ぽろぽろと涙までこぼれ始める。

 

 それと永久は、みっともないとは微塵も思わなかった。

 なんなら、自分とてそうしたい気分だったが……その前にやることがある。

 

 永久は、離れたところに置かれたままになっている、緑谷の右腕と左足を、風を起こして手元に持ってくると……その手を、緑谷とそれらに触れさせて、

 

「ちょっと痛いよ、我慢して」

 

「えっ……?」

 

 ―――バツン! バツン!

 

「っ……!」

 

 一瞬、鋭い痛みに歯を食いしばる緑谷。

 

「も1つおまけに……と」

 

 ―――バツン!

 

 三たび響く、その特徴的な音。こんどは、痛みはない。

 

 すぐに痛みも引いたので、見て見ると……緑谷の腕と足は、元通りになっていた。

 感触もある、動かすこともできる。それどころか……ボロボロに破損していたはずのコスチュームすら、修復されて元通りになっていた。

 

 さらに2度、『バツン!』という音が聞こえて……視線を上げると、永久もまた、体の負傷も、コスチュームの破損も修復された姿になっていた。

 

 ことが急に動きすぎて、正直なところ、緑谷の頭はあまりついていけている状況になかったが……それでも、この目の前の光景が、今はただ嬉しく思えていた。

 だから……ほとんど勝手に、口が動いていた。2人共。

 

「……おかえり……永久……!」

 

「ああ。ただいま……ご主人様」

 

 

 

 




瀕死、あるいは死亡そのものからの復活&超パワーアップはヒーローの伝統。

というわけで、永久、超パワーアップして復活と相成りました。祝え!(錯乱)

【永久の現在の『個性』】
・オール・フォー・ユー
・オール・フォー・ワン(疑似)
・オーバーホール
・気象操作 その他

……書いといてなんだけどえらいことになったな……
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