TSから始まるヒロインアカデミア   作:破戒僧

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第138話 狂気と執念の大怪獣

 それまで猛威を振るっていたナインが、突如として退場した。

 

 キュレーターの一撃で吹き飛ばされ、警戒し続けるも、それきり帰ってこず、音沙汰もない。

 一度、全く関係ないところに落雷が起こった――自然の落雷ではありえないので、恐らくナインの仕業だろう、とは誰もが思った――ものの、それ以外何も起こらない。

 

 ウォルフラムはドクターから、ナインの『個性』は強力な副作用があるタイプであり、あまり大規模に使用はできないと聞かされていた。どちらかと言えば、因子が適合して使えるようになった、AFOの『個性』、そしてそれによって奪った『個性』の方を注意すべきだと。

 

 だからこそ、枷などありはしないとばかりに『気象操作』を使っていたのに、むしろ驚かされたのだが、ひょっとしたら別に克服したわけではなく、時間制限が伸びただけだったのかもしれない、と、今のこの沈黙から思い直す。

 

 ならば当初の予定通り、戦えなくなったナインを回収するだけだと、キュレーターと共に追おうとするが、それをさせまいとキメラ、マミーが立ちはだかる。

 

 自分達のリーダーであるナインに何かあったのなら、助けなければならないと、2人が足止めに回ってスライスが様子を見に行こうとする。当然ながら、ウォルフラムとキュレーターは、それを蹴散らして目的を達成しようとする。

 

 もちろん、その際に周りにいるヒーローや、生徒達が巻き込まれようが、そんなことはお構いなしというつもりで。

 

 しかし……その時だった。

 

 

 

 ―――ドッゴォォオオォオン!!

 

 

 

「「「!?」」」

 

 突如、ナインが飛んでいった方向にあった瓦礫の山の一部がはじけ飛び、崩れ……るかと思いきや、なんとそのまま、起き上がるようにうごめきだした。

 いや……実際に起き上がったのだ。瓦礫で形作られた……人の形をした、何かが。

 

 誰もが『何だアレは?』と疑問を浮かべ、困惑する前で……その全容がようやく明らかになる。

 

「……常闇の……黒影?」

 

『ハァ!? 何言ッテンダヨ、俺ハココニイルゼ?』

 

「あ、ホントだ……でも似てない? くちばしあるし……」

 

「でも、腕四本あるね……アレ、何……」

 

 

 ―――オオオォォオォオオ!!!

 

 

 それは咆哮し……突如として、その4本あるうちの腕を、思い切り薙ぎ払うように動かした。

 

「なっ―――!?」

 

 幸いそれは、誰かに当たるような軌道ではなかったものの……地面の瓦礫を盛大に破砕し、まき散らすように飛ばしたため、それに巻き込まれそうになった生徒達が、すんでのところでそれを回避する。

 

 しかし、その位置の一番近くにいたスライスが、それを回避し損ねて……瓦礫の1つが頭に直撃し、吹き飛ばされてそのまま動かなくなった。

 

「なっ……スライス!?」

 

「コイツ一体……くそっ、マミー、スライスを回収しろ!」

 

 そう言ってキメラは、その間に囮、もしくは盾になるつもりなのか……瓦礫の怪物の前に立ちはだかるように動く。その瞬間、怪物の顔が……目らしきものは見当たらないが、キメラの方に向いたように見えた。

 

 マミーは、倒れたまま動かないスライスに駆け寄ろうとして……しかしその瞬間、ふいに近づいてくる気配を感じ、とっさにミイラ達を差し向け、自身も剣を構えて警戒する。

 

 しかしその瞬間、ちょうど自分とその『気配』の間に割り込んだミイラ達が……凄まじい衝撃波に吹き飛ばされて一掃された。

 

「なっ……!? これは、ナイ……」

 

「セントルイススマッシュ!」

 

「がはぁっ!?」

 

 そして、その向こうから急襲してきた、緑谷の蹴りの一撃が顎に直撃し……困惑のまま、キレイに意識を刈り取られた。ドサッ、とその場に力なく倒れ込む。

 

 その横に着地した緑谷に、『衝撃波』でミイラを一掃した永久が追いつく形で合流した。

 

「あっ、と……思わず蹴っ飛ばしちゃったけど、こいつってさっきの奴の仲間だよね?」

 

「ああ。こっちの女も……あー、コレはあのバケモンの攻撃か、その余波食らった感じか」

 

「おーい、緑谷! 栄陽院! 速えって!」

 

 そしてそのさらに後ろから、瀬呂や峰田、砂藤や尾白、宍田や鎌切などといった面々が追いかけてくる。

 その場にいた他の生徒達が、急転を繰り返す状況について行けず、唖然としている中、いち早く思考を取り戻した飯田が、緑谷達のところに駆け寄って説明を要求した。

 

「緑谷君! 栄陽院君! 無事で何よりだ……しかし、いったいこれはどういう状況だ? あの……何と言ったものか、瓦礫の怪物は? 説明できるか?」

 

「ああ、うん、一応。アレは……」

 

 

 

 遡ること……数分前。

 

 

 

 緑谷と永久は、永久が新たに手にした……というか、奪い取った『分解と修復』の力で傷を治し、さらに緑谷はエネルギーを永久から補充することで回復した。

 その後、ナインとの戦いで倒れ、気絶している生徒達を手当した。

 

 幸い、そこまで重傷な者はおらず、応急手当とエネルギーの補充だけで十分に動けるようになった。いずれも、『分解と修復』を使うまでもない程度のものばかりだ。

 

 それを知って、永久はほっと息をついていた。

 彼らが無事だったから、というのもあるが……ここまでの『個性』を使った時の感覚で、あることに気づいていたからだ。

 

 現在、永久の個性『オール・フォー・ユー』は、ナインの個性と強制的に融合し変質し、その上で自分を『強奪させる』ことで永久の元に戻ってきた。そのため、永久は今、ナインの持っていた全ての個性を奪っており、使うことができる。

 

 さらにそれを利用して、先程オーバーホールからも『個性』を奪ったため、無力化と同時に、治癒系・修繕系個性としては最高峰であろうそれを手に入れた。それを使って、緑谷と自分の体を万全の状態にまで直した(誤字にあらず)。

 

 だがその過程で永久は、他者から奪った『個性』を使うのは、酷く難しく……使いこなそうとすると、出来なくはないが、その分『エネルギー』を消費してしまうようだと悟っていた。『個性』が強力であるほど、複雑であるほど、消費量が多くなる。

 

 まだまだ残量に余裕はあるとはいえ、無駄遣いは避けたいと思っていたのだ。

 一応、コスチュームが破損したりしていた者については、直しておいたが。

 

 ほどなくして全員が意識を取り戻し、さあ戻って皆に合流しよう……という段階にまでなったところで、予想外の事態が起きた。

 

 なんと、気絶していたナインが起き上がり、その『個性』を使って攻撃してきたのだ。

 

 咄嗟に反応した永久がバリアを張ったおかげで、放たれた『爪弾』が誰かに当たることはなかったが、『個性は奪ったはずなのになぜ?』という当然の疑問が、永久の脳裏によぎる。

 

 確認もかねて、永久も『爪弾』を使い、ナインを攻撃。

 

 ナインは今度は、バリアを使ってそれを防ぎ……しかし、続けざまに放たれた、永久の『衝撃波』を防ぎきれず、粉々に砕かれ……吹き飛ばされた。

 

 そこで、周囲の土煙が晴れたことで見えるようになったのだが、ナインの姿は、色は白く、やせた、死ぬ寸前の重病人のような姿になっていた。

 

 ナインは『個性』使用の反動で細胞が死滅するリスクがあった。

 そのカバーのため、『細胞活性』と『無限エネルギー』を使って、ウォルフラムとキュレーターと戦っていたわけだが、大きな誤算があった。

 

 そもそも『無限エネルギー』は、事前に十分にエネルギーを補充しておくことが前提となる……いわゆる『溜め込む系』の能力である。

 そして、『個性強奪』で、ナインは確かに一時的に『無限エネルギー』を奪っていたが、永久がため込んでいたエネルギーまで奪えたわけではなかった。当然ながら、ナインは永久のように、事前に暴飲暴食してエネルギーをため込んでいたわけでもない。

 

 そんな状態で、加減すらわからないままに、全能感に酔って併用を続けてしまった結果……またたく間にエネルギーの枯渇と、『自食作用(オートファジー)』までも引き起こし、肉体的にも極限まで衰弱してしまっていたのだ。

 

 それでも、執念で永久達に攻撃を仕掛け……あえなく返り討ちになった。

 

 ここまでは、結果的にナインが自爆しただけと言っていいわけなので問題ないが……問題は、なぜナインが『個性』を使えたか。

 

 永久が『お前そんな技使えたっけ?』と、起き上がったクラスメイト達に問い詰められ、『いや何か色々あって使えるようになったっぽくてよくわかんないけど便利だから使ってる』と、説明にもなっていない説明をしている間、ふと緑谷は、1つの可能性に思い至っていた。

 

(ひょっとして……『残り火』みたいなもの……かな?)

 

 それは、『平和の象徴』の真実を知っている緑谷だからこそ思い至った可能性。

 

 今現在、自分に『ワン・フォー・オール』を譲渡したオールマイトは、その『残り火』だけで戦っている。

 それと同じことが、今、ナインに起こっていたのではないかという予想。

 

 『オール・フォー・ワン』によって『個性』を奪われた者は、その『個性』を使えなくなる。しかし、すぐに使えなくなるのか、少しの間『残り火』が灯るのか……それはわからない。

 

 さらに言えば、永久曰く、今彼女の中にある『個性強奪』の能力は、『オール・フォー・ユー』が融合して変容したものだ。オリジナルがどうであれ、そういう形に変わって、そうなっている可能性はある。

 加えて言えば、それは『ワン・フォー・オール』の元となった個性でもあるのだ。『ワン・フォー・オール』がそういう性質になっている以上、可能性はなくはない。

 

 もっとも、思考したところで結局答えは出ないので、まあいいか、と緑谷が思いかけたところで……全然よくないことに気づく。

 もう1人いたからだ。永久が、『個性』を奪った状態で……放置している『敵』が。

 

(まずい、ということは……オーバーホールも、まだ『個性』が……)

 

 ―――パリン。

 

 ―――バツン! バツン!

 

 そんな不吉な音が聞こえた直後……

 

「まだだ……まだ、終わっちゃ……いない……!」

 

 狂気の融合によって生まれた、瓦礫の巨獣が、立ち上がった。

 

 

 

 その瞬間を、一部始終を見ていたわけではない緑谷は、それを見ていた他の生徒達の証言をつなぎ合わせて……そして、何が起こったのかを悟った。

 

 気絶したと思われていたオーバーホールが息を吹き返し、死力を振り絞って……恐らくは残り火であろう『個性』を発動し、自身の体を修復した。

 

 そのあと、偶然『衝撃波』で自分のいる方に飛ばされてきていた、瀕死のナインを……あろうことか、『分解と修復』で、自分に合体させた。

 そうして、四本腕の異形の姿となったオーバーホールは、さらに懐から、注射器のようなもの……『個性強化薬(イディオ・トリガー)』を取り出して自身に注射し、個性因子を暴走に近い形で強化する。

 そして、周囲の瓦礫を取り込んで、瓦礫の巨獣となって……立ち上がった。

 

 身動きするだけで周囲に破壊を振りまくその巨獣から逃れるべく、緑谷達はその場から駆け出し……

 

 

 

 そして、現在に至る。

 

「つまり何? あのバケモンは、『オーバーホール』とかいうネームドヴィランが『個性』を暴走させて、しかも他の人間と物理的に合体して、さらに瓦礫とか取り込んで巨大化した姿ってこと?」

 

「付け加えて言うなら、まともな思考回路残ってっか結構微妙だな。それ以前までにかなりダメージ受けてたってのもあるけど、『イディオ・トリガー』使ったってのがヤバい。あれ、かなり精神的にも負担あって、思考能力弱る割に妙にハイになったりするらしいから」

 

「……そういや、ファットガム事務所に『ワーキングホリデー』行った時に戦った犯罪者がそんな感じだっけな……ってことは、アレ無差別に暴れる可能性があるってことかよ!?」

 

「マジかよォ、何だよそれ、もう勘弁しろよ、お腹いっぱいだよネームドヴィランは……」

 

 記憶を掘り起こしながら呟く切島と、そろそろ泣きが入ってきた峰田。

 

 視界の先にいるオーバーホール……の、なれの果ては、先程からさらに異形と化している。

 

(……ってか、ちょっと見ない間にまたバケモン度増しとる!?)

 

 その姿は、鳥と狼が合わさったような頭部に、牛のような蛇行した角が生え、蛇のような長い尾を振り回し、地を踏みしめる足は、猛禽のような鋭い爪に、ネコ科の肉食獣のようなしなやかさ、強靭さを併せ持っていた。

 

 さらに、4本だった腕は6本に増え、内2本は、背中から生えた鳥の翼と一体化しており……いわゆる『翼腕』とでも言えそうな形になっていた。

 残り4本のうちの2本は、人間のそれのような形状。残る2本は、5本指の猛禽のようなそれになっており、地面につくほど長い。実際に地面につけたら、4足歩行の獣、あるいはケンタウロスのような動きすらできそうである。

 

 どうやら、足止めのつもりで立ち向かったキメラを瞬殺した上で、そのまま、ナインと同様に取り込んでしまったらしい。血だらけのコートの切れ端だけが、地面に落ちている。

 複合型の異形型であるキメラを取り込んだ成果、外殻であろう瓦礫の巨体がそのまま、異形の姿となり、最早原型などわからない大怪獣と化していた。

 

「……あれを相手にするには、こっちも巨大合体ロボが要ると思う。もしくは光の国出身の銀色の宇宙人とか」

 

「いつもながら言ってること分かんないよ栄陽院。でも確かにアレ大きさが違い過ぎでしょ……ロボは無理でも、Mt.レディとか来てほしい」

 

「ま、まままま、ままま……」

 

「やべえ、また峰田が壊れた」

 

「ホント職場体験で何見たんだアイツ……」

 

「ヤオモモー、マジ○ガーZ作ってー」

 

「無茶を言わないでくださいまし……栄陽院さんの助力があっても多分無理ですわ。というか、あの怪物……何をしているのでしょう? こちらに攻撃してくる様子はありませんわね?」

 

 オーバーホールは、キメラを取り込んだ後……きょろきょろと周囲を見回すような動作をしている。必然、生徒達やヒーロー達の姿も見えているはずだが、襲い掛かってくる様子はない。

 

 何をしているのだろう? 危険がないのなら放っておいても大丈夫か? いやあの図体だ、動くだけで破壊を振りまくのなら十分危険だ。そんな会話が交わされ、この後どうするか生徒達が考えている中……ふいに、オーバーホールが動いた。

 

 ―――ズガアアァァアァアアン!!

 

「「「……っ!?」」」

 

 振り下ろされた腕。そこを中心に、蜘蛛の巣状にひびが……どころではない。地面が砕け、めくれあがらんばかりの破壊が巻き起こった。

 

 次いで、他の場所にも同じように巨腕を振り下ろす。また、クレーターができる。

 先程までの沈黙が嘘のように、咆哮し、オーバーホールは破壊を振りまき始めた。

 

 が、その中で……咆哮以外のものを聞いていた者がいた。

 今は大人しいとしても、何かあってはいけないと、『複製腕』で目と耳を増設して様子をうかがっていた障子が。

 

「……エリ、だと?」

 

「!? 障子君、今なんて……」

 

「あの怪物……の、頭のあたりからだと思うが……暴れ出す直前にそう聞こえた。確か、この病院に入院している少女の名だな? 緑谷と栄陽院が面会に行っていると聞いた……」

 

 それを聞いて、緑谷は直感した。

 

 今までなぜ、オーバーホールは大人しくしていたのか――近づいてきたキメラへの迎撃や、もとから近くにいた自分達への攻撃を除けば、だが――そして、どうしてあのように、無差別に暴れ出したのか。

 

 単にオーバーホールの思考力が、『イディオ・トリガー』で低下しているだけではない。あれは……

 

「まずい、アイツを止めなきゃ!」

 

「と、止めるったって緑谷!? あんなデカブツをどうやって……俺の電撃も、下手したら爆豪の爆破や轟の氷でも止まらねえぞ!? 取り込まれる前のあの獣ヤローにだってろくに効かなかったし」

 

「あぁ!? なめてんじゃねーぞあんなもん余裕で――」

 

「はいはい爆豪君ええからちょっと黙っとこ? な?」

 

「けろ。上鳴ちゃんも不用意に爆豪ちゃん巻き込まないでちょうだい。毎度のことながら脱線するわ」

 

「わ、悪ぃ……でも実際緑谷、あんなん止めようがねえぞ? その、さ……『イディオ・トリガー』って時間制限あるんだろ? それまで待てば、反動でアイツ勝手に自滅するんじゃ……」

 

「でも、それ待ってて大丈夫かな? もしあれが、制限時間になる前に、病院の敷地の外に出ちゃったら……被害が……」

 

「それじゃダメなんだよ、上鳴君、芦戸さん! アイツの狙いは壊理ちゃんだ! あいつ、壊理ちゃんを探してるんだ!」

 

 緑谷の言葉を聞いて、彼女を知っている面々ははっとする。特に、彼女を救出する作戦に直接参加した、永久、切島、八百万といった者達が。

 

「そりゃそうか……アレの元がオーバーホールなら……いや、多分あいつそもそも、壊理ちゃんを取り戻すためというか、攫うためにここに来たんだろうな」

 

「思考回路が鈍っている今、元々持っていた目的に執着して……いえ、待ってください……まさか! そういうことですか緑谷さん!?」

 

 と、八百万が何かに気づいて青ざめる。

 加えて、横で会話を聞いていた者達のうち、聡い何名か……轟や爆豪、拳藤や取陰、骨抜や青山といった面々もはっとする。そして、同じように……冷汗を浮かべて青ざめた。

 

「……おいデク、そのガキ今、どこにいる? お前とデカ女が避難させたんだろ?」

 

「緊急避難用の……地下シェルターの中」

 

「そうか……恐らくあの野郎、緑谷と栄陽院がそこに避難させたことに気づいてやがるな。そして、それを探そうとして、あんなふうに殴りまくってるわけだ」

 

「ちょっと待て……だとしたらアイツ、ああやってるのは……地下シェルターぶっ壊してその壊理って子を掘り出すために、あんなふうにバカスカ地面殴ってるのか!?」

 

「や、やばいってそんな……シェルターの中には、一般人の患者さんや病院スタッフが何百人って避難してるのに、そんなことになったら……」

 

「崩落で死者が大勢……というか、その壊理ちゃんだって死にかねないな」

 

「そこまでは頭、回ってないんだろうね……薬の副作用で☆」

 

 オーバーホールは、地面を……正確には、地面の中に設置されているシェルターを攻撃して、破壊しようとしている。しかし、その位置までほ知らないがために、ああして手当たり次第に壊しているのだ。

 

 今はまだ見当はずれな場所を攻撃しているが、いずれは本当にシェルターが埋設されている場所にまで行ってしまうかもしれない。そうなれば、死傷者は100や200ではきかないだろう。

 

 だが、助けてくれるヒーローはいない。外部から応援に駆けつけてくれたヒーロー達は、皆、戦いの中で倒れてしまった。死者こそ出ていないが、復帰はできないだろう。

 

 ここで動けるのは……アレを止められるのは……自分達しか、いない。

 

『やるしか、ない』

 

 ある者は闘志を漲らせ、またある者は冷静に判断した結果として、またある者は弱い心を必死に鼓舞して、

 ヒーローの卵たちは、罪のない人々の命を守るために、戦う決意をした。

 

 

 

 

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