(死柄木のことは一旦忘れる! 後で連合メンバー共々全員捕まえてからでも……いやむしろその方がゆっくり話せるはずだ。今は……この場を切り抜け、この男を倒すことだけを考えろ!)
「おや……ひとまず、ではあるが、ようやく振り切ったかな?」
「ああ……色々しなければならんことはあるが、後回しだ! まずはお前を黙らせなければ、何も始まらんし……集中できてないと先生に怒られそうなんでな!」
「阿呆、手遅れだっつーの」
その瞬間、ギュン、と空を切る音と共に、シンプルなデザインのヒーロースーツに身を包んだ小柄な老人が飛来した。
「先生! ご無事で……バーの方の脳無達は?」
「エンデヴァーと他の連中が応戦中だ。一匹やべえのがいて、そいつへの対処で大分てこずってる」
「それは……いえ、彼を信じさせてもらいます。こちらも余裕があるとは言えない」
「ああ、だと思って……」
と、グラントリノが言い終わる前に……
――ズドォン!!
明後日の方向から猛烈な勢いで飛んできた『何か』が、その近くに着弾……いや、着地した。
濛々と立ち込める土煙。が、煩わしいとばかりにブォン、と振りぬかれた足がそれを吹き飛ばし……その中から出て来たのは、1人の女性ヒーロー。
「到・着! んで!? あれ蹴っ飛ばせばいいのか!?」
「蹴っ飛……え、何?」
「ミルコさん、急ぎ過ぎよ! 状況もわかってないのに……」
「ねえねえ、あっちの方に『敵』がいっぱいいるよ? 行かなくていいの? それともこっちからにした方がいいの?」
それに加えて、巨大なドラゴンが飛んできた……かと思うと、それはチャイナドレス姿の美女となって着地し、その背中に乗っていた、青色の髪の女の子も同じように地面に降り立った。
さらに、陸路で……と言えばいいのか、瓦礫の山を乗り越えて、2mを軽く超える巨体と、それにつき従うようにもう1人、戦場に飛び込んでくる。
「何やコレ、エラいことになっとるな……あのパイプ仮面がやったんか?」
「みたい、ですね……まるで災害現場だ」
グラントリノに続くような形で、次々とその場に降り立つヒーロー、あるいはその卵たち。
トップヒーローの一人に数えられるミルコにリューキュウ、対凶悪犯の分野では屈指の実力者であるファットガム、そしてインターン生として事務所に勤務している、雄英ヒーロー科3年、波動ねじれと天喰環。
そして……
「ミリオ……いや、ルミリオン、今回ばかりはジョークはなしだ。油断するな、一挙手一投足、全てに全力でかかれ」
「……わかりました、サー」
「……! ナイトアイ、君もか」
元・オールマイトの相棒……サー・ナイトアイに、インターン生のルミリオンこと透形ミリオ。
「先生、これは……?」
「後詰めってことで手配されてた連中だよ。移動時間の関係上、作戦開始時刻には間に合わない奴も含めて……何かあった場合のフォローってことで要請がかかってたんだと」
「脳無保管庫の制圧に失敗したり、逃げ出した『敵』が市街地で無差別に暴れ出した場合などの鎮圧要因として、ですがね。バーに突入するにせよ、周囲を包囲するにせよ、あまり大人数集まりすぎても動きづらいですし、戦闘の相性もありますから……別動隊という形を取っていました」
グラントリノに続く形で、ナイトアイが言う。
その目は、まさしく怨敵を睨むがごとき眼力で、AFOに向けられていて……しかし、少しして、遠く離れたところで見ている、死柄木たちの方に移る。
「……駆けつけておいてなんですが、オールマイト……奴の相手はお願いします。我々は……あそこにいる連中を、今度こそ確保しますので」
出動を要請された、ナイトアイ達、後詰め組の仕事は、AFOと戦うことではない。AFOが回収した『敵連合』のメンバーの捕獲である。
狙いがこちらに向いたことを悟った死柄木達は、身をこわばらせた。
「本当はもっと静かに、それこそ可能なら気づかれずにでもやる予定だったんですけど……すいませんねオールマイト、騒がしくして」
本当なら、背後からでも奇襲をかけて数人はまず確実に奪取する予定だったのだが、ミルコが跳んでいってしまったおかげで意味がなくなった。そのため、全員こうして普通に出て来た、という経緯があったりする。
もっとも……ミルコもミルコで、単に浅慮でそうしたわけではなかった。彼女も伊達にトップヒーローと呼ばれているわけではないのだ。
「無駄だリューキュウ、こいつもう私達が近づいてきた時点で気づいてたよ。オールマイトと戦いながらも注意がこっちに向いてた。奇襲なんか成功しねえ。なら真正面から行った方がいいだろ?」
「……だったらそう言ってくださいよ」
「言ってる暇があったら跳んでって蹴っ飛ばした方が速いだろ?」
「やっぱ滅茶苦茶……」
色々考えてるかと思いきややっぱりあんまり考えてないミルコと、ちょっと感心しつつも呆れるリューキュウ。
その会話を聞いて苦笑する、雄英ビッグ3。そしてただ1人表情を変えないナイトアイ。
だが、ほどなく全員、仕事に臨むプロヒーローの目になり、まだ少し離れた位置ではあるものの――もっとも、その気になればミルコやルミリオンであれば一瞬でゼロになる距離だが――『敵連合』のメンバーを見据えて、いつでも戦闘に入れる構えを取る。
「弔」
「わかってるよ。でも……できればもう少しほしいかな。我が儘だってのはわかってるが……」
「ふふふ……わがままな子だ。だが……いいだろう。どのみち、ヒーローの増援は予想の範疇ではある」
ぱちん、とAFOが指を鳴らすと、何もない虚空から、オールマイトとグラントリノ、それに連合のメンバー達にとっては見覚えのある、黒い液体があふれ出す。
そして、バシャバシャ、という水音と共に……何体、いや何十体もの脳無が姿を現した。
姿かたちが同じ、あるいは似ている者もいれば、全く異なる者もいる。また、色が白いものもいれば、黒いものもいる。そして……
「アハハハハ! 楽シソウナトコロダネー!」
「標的……確認。任務……ヒーローノ抹殺、了解」
「よろしく頼むよ。弔達が安全に観戦できるように、彼らの相手をしてあげてくれ」
「……っ……!? まだ、これほどの数を……! しかも……喋る脳無だと!?」
「こっちにも居やがったか……おい、全員注意しろ。あっちにも喋る奴が出たんだが……No.2の小僧が苦戦するレベルだった」
「エンデヴァーが、ですか……わかりました」
グラントリノの言葉に、さらにその場の緊張感が増す。
それに加えて、さらにグラントリノは悪態をつくように、
「つーか、どんだけ頑張ったんだお前……そもそも、保須市のあたりから思っちゃいたが、どれだけの生産設備を用意してんだ? 1体用意するのだって手間だろうに……大量生産用の工場でも作ってんのか?」
「惜しいね……何、ちょっとした裏技を使っていたんだよ」
ぱちん、とAFOがまた指を鳴らす。同時に、その背後に黒い水があふれる。
だが、予想通りそこから出て来たのは脳無だったが……今さっき呼び出された者達と比べて、明らかに違う所が1つ。
(デカい……!? こいつは、一体……!?)
異様な見た目の脳無だった。
体の色は、上位のそれであることを示す『黒』。その大きさは……10mほどにもなろうかという巨体である。
形がまた、異形と言う他ないそれだ。いくつもの太い触手が生えているが……タコやイソギンチャクなど、それらしい生き物に例えようとしても難しい。なにせ、手や足の延長というような感じで生えているのではなく、触手の集合体として巨体が形作られているような見た目なのだ。しかも、触手の太さも長さも一定ではなく、伸長・膨張と収縮を繰り返している。
まるで、どこぞの神話に出てくる、見ただけで発狂すると言われるは邪神のような容姿だ。
そんな体の頭頂部?から生えるようにして、あるいはそこにくっついているような形で……人の上半身だけの脳無が接合されている。しかし、ぐったりとうなだれたまま、その人型の部分は動く様子もない。
禍々しい、悍ましいという表現すら生ぬるいこの怪物は何なのか。オールマイトらヒーロー達はおろか、敵連合のメンバー達までもが驚愕している中、得意げにAFOは語る。
「こいつは脳無の中でも特殊なものでね……『
「女王、だと……!? まさか……」
「アリやハチと同じさ。一度に多数の脳無を生み出すための、元となる個体。そういう意味では、そこにいる、志村の友人が言っていた『工場』というのも、あながち間違いではないね」
「こいつが……脳無を生み出す母体だってことか? つまり、脳無ってのは改造人間じゃなく、そういう生き物だと……」
「少し違うね。君達の予想通り、脳無は僕の協力者が作ってくれる『改人』……うん、改造人間と言っていい。ただし、作るにしても、薬物投与や外科手術など、やることは多いし時間もかかる。下位脳無1体作るにもバカにできない手間がかかる。これがいい例だ」
そう言ってAFOは、出現させた脳無の1体を指さした。
それを見て……オールマイトは気づく。その脳無に、見覚えがあることに。
「そいつは……まさか!」
「そう、USJで君と戦った脳無さ。もっとも、ほとんど一蹴されてしまったようだがね」
『個性』を用いない、素のパワーでオールマイト級(弱体化後)。加えて、『衝撃吸収』と『超再生』の個性を持っている……当時の死柄木曰く所の『特別製のサンドバッグ』。
膂力が『個性』によるものでないがゆえに、イレイザーヘッドはその力に対抗することができず、……一方的に打ちのめされてしまったほどの怪物だ。
改造手術を受けたがゆえだとはいえ、『個性』なしで生身の肉体にそれだけのパワーを持たせることがどれほど異常なことか。そして、その為にどれだけの技術と知識が要求され、どれだけの手間がかかるのだろうか。
この黒い脳無のスペックは極端な例としても、多かれ少なかれ、脳無はそういった一面を持つ。翼を持って飛翔することができたり、動物を思わせるしやかな肉体を持っていたり、様々な特徴、ないし武器がある。
となれば、脳無1体を作るのにどれだけの手間が要求されるか……漠然とでもわかるだろう。
手間もかかる。時間もかかる。普通に考えて、量産などできるはずもない。
その問題を解決するために生み出された、禁忌に輪をかけた禁忌の産物。それこそが、『
「こいつに素体となる死体を取り込ませるとね、体内で『熟成』してくれるんだ。母親が子宮で子を育むように、栄養を与え、体を作り替えて……産み落とす。長くても1ヶ月程で、強靭な肉体を持った脳無の素材が出来上がる。あとは少し調整して、形を整えてやるだけで、それこそプラモデル並の手軽さで脳無が作れてしまう。まあ性能は流石に、ドクター自らがワンオフで一から調整したものほどじゃないが、下級や中級程度なら、ほとんど手を加えずに作れてしまうんだよ」
「全自動の……死体改造装置、ということか……」
「そう取ってもらって構わない。ただ、その為にはこいつにきちんと栄養を補充してやる必要があるんだがね。だから普段コイツは、常に高カロリー輸液の点滴を数本つないで、栄養補給をし続けている。その栄養を使って、こいつは受胎している複数の脳無に栄養を与え、育み続ける」
余りにも冒涜的なその所業に、リューキュウやサンイーターは、えづきそうになってしまうのを必死でこらえていた。他の面々も、表情をゆがめ、不快感をあらわにしている。
人とはここまで悪辣な悍ましい所業に手を染められるものなのかと。どうしてそんな、死者を冒とくするような真似を嬉々として語れるのかと。
「もっとも、こいつが完成したのはごく最近のことなんだ。もともと、『母体』を用意して脳無を量産するアイデア自体はかなり前からあったんだが、その為には決定的な問題が1つあった。その『母体』自体が、脳無に供給する膨大なエネルギーをため込んで、与えることができなければいけない、という問題点がね。その『母体』も当然脳無なわけだが、いかんせん死体を元にしている以上、命を持つことが前提となっている生体機能……『生殖行動』というものが、脳無にはできないんだ」
脳無はいわば、かりそめの命を与えられた死体である。
命令を聞いて戦ったり、傷ついた体を再生することはできても……命あるものならば、皆等しく行うことができる、『子孫を作る』『命をはぐくむ』ということができない。
より正確に言うなら、『体内に子=別な生命体を格納し』『自分の体を通してその生命体に栄養を与え続け』『万全な状態になるまで育成する』ということができない。ドクターの技術をもってしても、死体である脳無にそのような機能を持たせることはできず、培養用の機材と外科手術を用いてワンオフで行うしかない作業部分だったのだ。
……その作業に、非常に適した『個性』が見つかるまでは。
「本当に幸運だったよ。たまたま持っていたんだ……与えられただけエネルギーを蓄え、ため込み……それを、必要に応じて分け与えることができる、という『個性』をね。自分で使うことができなかったから、長らく死蔵するばかりになっていたものなんだが」
「……っ!?」
「まさか……それは……」
その『個性』が何なのかに思い至ったオールマイトとナイトアイ、それにグラントリノの顔色が変わったのを見て、可笑しそうにAFOは笑い……その予想を、肯定した。
「君たちの思っている通りのそれだよ。彼女が持っているのと同じ『個性』さ」
(やはり……『無限エネルギー』……いや、『オール・フォー・ユー』か!)
「もっとも、もう一度同じことをやろうとは思えないし、そもそもできないだろうけどね。かつて僕がこの『個性』を入手した時、その者にはまだ『主』がおらず、白紙といっていい状態だった。それでもなお、とても扱えなかった『個性』だったんだ。徹頭徹尾、使い手以外の意思を拒絶するじゃじゃ馬。今を生きる者達のそれは、あの頃のそれよりもはるかにタチが悪くなっているだろうし、『主』も定まっている。使えるとは思えないし……そもそも、奪った段階で何が起こるかわかったものじゃない。だからこれが、最初で最後の『
「異様なスピードとペースで『脳無』が増産されていた理由がようやくわかったぜ……そして今の話が本当なら、そいつを倒して、あるいは抑えちまえば、もう今までみてえなペースじゃ、脳無は作れないってこったな!」
「それには及ばないよ。もうこいつは要らないからね」
「何……?」
そう言った直後、AFOは何かの個性を発動し……呼び出したばかりの『女王』を……一瞬で炎上させ、燃やし尽くして灰にしてしまった。これんは流石に、グラントリノも絶句する。
「な……!?」
「もともと寿命だったんだ。ここ最近酷使しすぎたせいか、母体としての機能は落ちてきている上、『個性』の移植も、複製も上手くいかなかった。まるで、『個性』そのものがすり減ってしまったかのようにね。まあ、もともと自力で『変容』したり、よくわからない部分がある『個性』だから、無理もないとも言えるかな……ここに至るまで、数をこなしてドクターの研究の役に立ってくれたから、よしとすることにするよ。今までご苦労だったね、ゆっくり眠ってくれ……『女王』」
感情など籠っていないであろう、白々しいもの言い。
それを最早聞いてもいないであろう、『女王』脳無の残骸は、灰になって崩れ、風に吹かれて夜の空に消えていった。
さて、と、気を取り直すように言って、AFOはオールマイト達に向き直る。
「時間稼ぎにつき合ってくれてありがとう。おかげで……脳無達がきちんと目覚めるまでの時間を与えることができた」
格納庫から取り出したばかりの脳無達。
すぐに戦闘に放り込める状態ではあるとはいえ、いわばその直後の彼らは『寝起き』。脳が完全には覚醒していないため、本来のスペックを発揮できるようになるまでに時間がかかる。
特に、『
それに加えて……AFOの背後で黒霧のゲートが開き、中からウォルフラムとキュレーターが現れる。
「立て続けにすまないね。もうひと仕事頼むよ、2人共」
「……ま、いいけどよ。ナインとかいう奴を回収できなかった負い目もあるしな」
「アジトに戻って一息ついたと思ったら、また呼び出しだもんなぁ。黒霧にも面倒かけちまうし」
「いえいえ、仕事ですからね……それに、私はコピーですから、何も遠慮はいりませんよ」
そんなやり取りをしながら、危険度超級のネームドヴィラン2人が降り立った。
病院跡地から撤退した後、一度拠点に戻った2人だが、ドクターからAFOの現状と追加の要請を受けて、再び黒霧のゲートでここに来た、という形だった。
「これでこちらの準備は万全だ。待ってもらって悪かったね」
「……気にするな、構わんとも」
しかし、オールマイトから返ってきたのは……底冷えするような、低く、冷たい声。
「むしろ多少歯ごたえが出てきてくれている方が都合がいい……八つ当たりなんて、ヒーローらしくないことなのはわかるがね……ちょっとさすがの私も、今のこの怒りの矛先に、難儀しそうなところだったんだよ……! 暴れさせてくれるなら、むしろお言葉に甘えようじゃないか」
「そうか。例には及ばないよ……存分に、文字通りの死体蹴りを楽しんでくれ」
「貴様はッ…………ん……?」
「……うん?」
死者を、命を、尊厳を、徹底的に貶め、辱め、愚弄するAFOの所業の数々に、オールマイトの怒りが爆発しかけた刹那……その目が、あるものを捕らえた。
同時に、AFOもまた、何かに気づいて……正面に立っているオールマイトへの警戒は残したまま、振り返ってその方向を確認する。
そこには……エッジショットに気絶させられて倒れている、黒霧が転がっている。
特に何の変哲もない――靄状の姿かたちが既に異形ではあるのだが――様子で、ただ気絶しているだけに見えるが……オールマイトとオール・フォー・ワンは、両者ともに、その黒霧に何かを感じ取っていた。
そして次の瞬間、その予感が正しかったことが証明される。
黒霧の頭部と両腕……靄になって『ワープゲート』になる部分が膨れ上がっていく。
「何ッ!?」
「……おや……?」
「黒霧!? 先生、これは……!?」
近くに立っていた死柄木は、何が起こったのか……あるいは、AFOが何かしたのか、問いかけるように視線を向けるが、それを受けたAFOもまた、態度にはほとんど出ないが、困惑している。
何もしていないし、命じてもいないのに、そもそも意識がない黒霧の『個性』がなぜ今、発動しようとしているのか、と。
しかも……
(これほど大規模にゲートを……一体何が起きている?)
両腕と頭部の靄が膨れ上がっていき……まるで、漆黒の入道雲のように、上空数mまで立ち上って、見上げるまでになった。一体何が起こるのか、誰にも予想がつかない。
その場にいる、脳無以外の全員が呆気にとられる中…………それは、起きた。
霧のゲートの向こうから……彼らは、やってきた。
「「「うっわぁああぁああぁあ!!?」」」
☆☆☆
時は少しさかのぼり……病院跡地にて、A組の面々が『何で相澤先生(と、マイク先生)こんな怒ってんの?』という疑問を抱いていた時のこと。
イレイザーヘッドとプレゼント・マイク、この2名は、緑谷のサイコフレームの光によって、先程までその場にいた黒霧の分身と共鳴し、それによって、黒霧の正体が、学友・白雲朧……の、遺体を改造して作られた存在だと知った。
しかし、この時……彼らも、さすがに予想していなかった。
その黒霧の分身を通して……気絶している、本体の黒霧にもまた……『共鳴』が起こっていたなどと。
『黒霧』の意識の奥底に眠っていた、わずかに残っていた『白雲朧』の意識が……ほんのわずか、友の声に反応して……そして、奇跡を起こそうとしていた。
―――俺は……
「「……ッ!?」」
その声なき声を……2人だけが聞いた。
何かに過敏に反応し、バッと明後日の方向を振り向いた、相澤とマイク。その様子に、横にいたミッドナイトが『えっ、何!?』と驚いているが……2人共、虚空を睨むまま、何も答えない。
(今のは……!?)
(気のせいか? 声が……白雲の……!?)
そして次の瞬間、
目の前の空間に……猛烈な勢いで、黒霧の『ワープゲート』が出現して広がり、またたく間にその一帯を包みこみ……教師も、生徒も、皆、飲み込んでいく。
「は? ……は!? ちょっ、これって……」
「おい何だよいきなりこれ!? コレあれじゃねーか、USJの時の……」
「『敵連合』のワープ『敵』の……! ちょっと、このままじゃ……」
「皆! 逃げるんだ、この霧の外に出……」
「ダメだ、間に合わな……」
生徒達が、特に、この黒い霧に強烈に見覚えのあるA組の生徒達が、怯えすら表情に含ませてパニックになりかける中、
相澤とマイクだけは……今度こそ、その声を聴いていた。
霧の向こうから聞こえてくる……助けを求める、友の声を。
「白雲ォ!?」
「どこだァア!?」
―――俺は……
―――俺は……!
―――ここにいる!!
……その次の瞬間、悲鳴も怒号も消え……静かになる。
霧が晴れ、そこには誰も残っておらず……病院跡地には、静寂だけが残った。
…………そして、
「「「うっわぁああぁああぁあ!!?」」」
「「…………は?」」
漆黒の入道雲のごとく立ち上った、黒霧のゲート。
その向こうから飛び出してきた、というよりも、吐き出されたのは……雄英高校1年ヒーロー科(予定含む)、総勢42名。プラス、教員4名。
普通科の2名を除き、全員がコスチューム着用で完全武装。
ついでに言えば、教員約2名の士気が、登場時既に限界突破状態。
奇跡が『引き起こしてしまった』、誰一人予想できなかった展開に……オールマイトも、AFOも、その場にいた全員が、40人を超える人間が空から降ってくる光景を、呆気に取られて見ているしかなかった。
オバホもナインも倒して、生徒達のターンは終わったと思った?
残念……むしろここからが本番だ。
と、いうわけで、決戦場へ移動。
A組B組+編入予定組、まさかの『神野区』に参戦です。
なんかもう色々強引な展開かもですが……プロットの段階からあっためてた、書くのを楽しみにしてた展開なんで、もう開き直って突っ走ろうかと。
今後ともよろしくです。
Q.ちなみに、新しく出て来た『最上位(ハイエンド)』2体、原作にもいる奴?
A.いえ、ちょうどいいのがいなかったんで適当に作ったオリジナルです。