TSから始まるヒロインアカデミア   作:破戒僧

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第142話 最終決戦

 あ、ありのまま今起こったことを話……やめよう、アホなことやってる場合じゃない。

 わけのわからない事態なのはそうだけども、それ以前に今のコレはあれだ……即座に対応して、必要ならば『応戦』しないといけないパターンだ。そういう現場だ。

 

 だって、右を見ても脳無(いっぱい)、左を見ても脳無(いっぱい)、向こうの方に死柄木を始めとする『敵連合』のメンバー達や、ウォルフラムとキュレーター。

 横とか後ろにはミルコやリューキュウやナイトアイといったプロヒーロー達、しかもほとんどがトップヒーロー級の面子と来たもんだ。

 

 おまけに、ガチで戦闘モードのオールマイトもいて……その向こうに、やばい威圧感を放っている、正体不明の仮面の『敵』らしき奴がいるし……どう考えてもドンパチの現場だろコレ。しかも本来なら、一般人とかヒーローの卵が首突っ込んじゃいけないレベルのヤバい現場。

 

 というかここどこよ? 見渡す限り瓦礫の山なんだけど……さっきまで戦ってた『病院跡地』よりもっとボロボロ……っていうか、何もないんだけど。紛争地帯の最前線でももうちょっと色々残ってるだろってくらいにひどい有様なんだけど。マジで何、空襲でもあったのかここ?

 

 ヤバいってこと以外、何一つ状況がわからん……どうすりゃいいんだコレ?

 誰か、状況説明してくれ……

 

「緑谷少年!? それに、他の皆も……っていうか、相澤君達も!? 何でここに……コスチュームまで着て……」

 

「オールマイトこそ……僕らは病院で、『敵』の襲撃を受けた後に、黒霧のゲートで全員飛ばされてきて……というか、一体ここは……? ミルコやリューキュウ、サー・ナイトアイまでいるし……一体どういう状況ですか?」

 

「似た瓦礫の山……でも、病院じゃねえな、遠くに見える景色が違うし、ブロック塀もねえ」

 

「むしろこっちの方がより何もないくらいの空間になってやがるな。しかも、かなり広範囲が均一に……爆弾でも爆発したのか? この惨状は……」

 

「っていうかあっちにもこっちにも脳無だらけじゃねーかよ!? 何なんだよここマジで、地獄!? 夢なら覚めてくれ早く……」

 

「現実見ろ、上鳴。……あっちには『敵連合』の連中や、さっきまで病院にいた、テロリストの『敵』達もいる……おまけによくわかんねえ仮面の男……」

 

「それに、周囲にいるのはプロヒーローや……雄英ビッグ3の先輩方です。そんな面子が集まっているという時点で、ただ事ではないとわかりますわね……」

 

「まるで局地的な戦争ね……私達のいた病院へ襲撃があったのと同時に、何かが起こっていた、ということかしら?」

 

 突然のことに困惑しながらも、生徒達は獣医の状況を見て、懸命に事態を飲み込もうと推理していく。無論、私も含めて。

 

 そんな中で再度『オールマイト!』と問いかけられ、

 

「ええとだね、緑谷少年……ここは……」

 

 と、オールマイトが何か言いかけた時、パチパチパチ、と拍手の音が響いた。

 

 皆、困惑している中でいきなり聞こえてきたそれに、思わず、といった形で視線が集中する。

 私達生徒だけじゃなく、先生達や、オールマイトを含むプロヒーローの人達のも。……後者に関しては、がっつり警戒心を滲ませた上で。

 

「実に面白い」

 

 そんな視線が無数に突き刺さる中で、しかしそれを何でもないかのように、普通の声音でさらりと言う、仮面の男。ドクロを思わせ、何本もパイプがくっついている仮面のデザインは……どことなく、さっきぶっ倒した『敵』……ナインに似ているような気がした。

 

「一体なぜ、黒霧の『個性』が勝手に発動して、こんな事態を引き起こしたのかはわからないが……これはこれで楽しめる。君と関わると、刺激的な出来事が多くて退屈しないな、オールマイト」

 

「……貴様が意図して起こしたことではないということか、これは」

 

 そう、これまでにないくらいに緊張感を孕んだ声で言いながら、とっさに私達を後ろにかばうようにして立ち位置を直して言うオールマイト。

 

 いつも、目の前にいるだけでこの上ないくらいに安心できる、その大きな背中が……なぜだか今回ばかりは、切羽詰まっているような、余裕がないような感じに思えた。

 

「僕としては君達の方が何かやったんじゃないかと一瞬思ったよ。記者会見をミスディレクションにした奇襲じみた摘発に加えて、今度は数の不利に対抗するために、学徒動員でも企てたのかとね……そうだったら面白かったんだが、反応を見る限り違うようだな」

 

「当たり前だ。彼らはまだ子ども……守るべき、未来あるヒーローの卵たちだ。貴様との戦いの場などに連れ出してくるなど、ありえるものか」

 

「そのありえないことが起きてしまった以上は、この状況を楽しもうじゃないか。と……自己紹介もなしにだらだらと話してしまったな、これは失礼だった」

 

 そう言うと、謎の男は、おほん、と咳払いを1つして、

 

「ようこそ、雄英高校の諸君。いかなる導きがあって君達がここに来たのかはわからないが、歓迎しよう。アポイントもなしでの訪問には驚いたが、気にすることはない。君達の人生の最後を彩るにふさわしい舞台になるよう、我ら一同全力を尽くさせてもらうよ。存分に楽しんでいってくれ」

 

 ……つまりコレ、『ここで君達を皆殺しにします』って宣言されてる……よな?

 しかも、全然冗談に聞こえん……どうしよう、予想通りかそれ以上にヤバいだろコレ。

 

 生徒達の中には、今の言葉の意味を理解して緊張感を増してる者や、まだよくわかっていない者が混在してる感じだが……その理解を待たずに、男はさらに言葉を紡ぐ。

 

 そんな中、何かに気づいたように、はっとした表情になる緑谷。

 

 そのまま、大分向こうの方に、他の『敵連合』のメンバー達と一緒になって立っている死柄木を見つけて、……どうやら、2人の目が合ったみたいだった。

 

「はー……お前、マジでどこにでも現れるよな。まさかこんなとこでまで会うとは思わなかったわ……こないだは因縁とか運命とか何となく言ってみたけど、マジでありそうに思えて来た」

 

「死柄木……! お前……まさか、あの男は……!?」

 

「よかったな、会えて。知りたがってたもんなお前……先生のこと」

 

「! その呼び方、やっぱり……!」

 

 死柄木の言葉に反応したのは、緑谷だけじゃなかった。

 『先生』というワードに、私もそうだが……轟や爆豪、それに八百万や拳藤なんかも、よく見ないとわからない程度だけど、ぴくっと反応してた。

 

 前々から、話にはなってたからな。『敵連合』には、現時点でボスと見られている死柄木以外に……黒幕、あるいはブレーンのような存在がいる可能性がある、って。

 そして今の会話……つまり、それが……

 

「申し遅れた。私は……そうだね、素直にこう名乗らせてもらおう……『オール・フォー・ワン』」

 

「……っ……!!」

 

「自分からこう名乗ったわけではないんだがね。皆、私をこう呼ぶ。よかったら覚えておいてくれ」

 

 ……偶然、か? 私の『個性』や、緑谷の『個性』に、名前が近いのは……

 いや、今それはいい。それよりも……

 

 同じように油断なく、その男を睨みつけていた相澤先生が、目線を外さずに問いかける。

 

「オールマイト、つまりこの男が……」

 

「そうだ……捜査会議で幾度となく、その存在の可能性について論じられていた男。『敵連合』の真のトップであり、死柄木にとってはブレーンとも呼べる存在。個人的な評価も合わせて述べさせてもらうなら……超人世界最強最悪の『敵』だ」

 

 オールマイトが、『平和の象徴』として知られるNo.1ヒーローがそう称したことに、聞いていたほぼ全員が表情をこわばらせる。

 

 雰囲気からして、大げさに言っているわけでもなさそうだ。

 加えて、周囲を取り囲むこの脳無の数……結構な割合で、黒い個体が混じってるし。保須市での経験上、黒い奴は白い奴よりヤバい。

 

 ……あと個人的に気になってるんだが……今、私達が立ってるこの場所について。

 

 私達がさっきまでいた、病院跡地と言う名の瓦礫の山と似た光景だけど……よく見ると、壊れ方なんかがあっちとは違うことがわかる。

 あっちは、敵連中の度重なる破壊や戦闘の余波で次々に壊れていった感じなのに対して……こっちは、ほとんどの部分がほぼ均等に吹き飛んで崩壊している。この壊れ方は……さっき轟もちらっと言ってたけど、一撃で壊れたような感じに近いと思われる。

 

 ……おい、ひょっとして、この破壊痕……

 

「相澤君、生徒達をどうにか逃がしてくれ。これからここは……戦場、と呼ぶのも生ぬるいレベルの死地になる。プロヒーローとて生き残れるかわからない地獄だ、彼らには……」

 

「お言葉ですがオールマイト……ここを脱出しようとする方が危険です。この脳無の数じゃ、背を向けて逃げようとした瞬間にどれかしらのターゲットになるし、守ろうにも手が足りなすぎる」

 

「賢い判断だ。それにオールマイト……図らずも折角用意された場だ。つまらないことをしなくとも……素直に、生徒達にいつもの自分の仕事を見てもらえばいいだろう? ……気恥ずかしいなら安心しろ、君と僕の仲だ……少しばかり、手伝おうじゃないか」

 

 そう言うと同時に、AFOの左腕が、ぶくっと風船みたいに膨れ上がって……しかし不思議と、どこかマッシブで力強い感じも残ったまま。

 そして見た目から感じられる以上に……ヤバい予感がビンビンしている。

 

 そうなった左手が私達の方に向けられると同時に、オールマイトが飛び出して拳を振りかぶっていた。

 

「『空気を押し出す』+『筋骨発条化』+『瞬発力』×4+『膂力増強』×3+『乱気流』+『気体圧縮』……」

 

「っ……『デトロイトスマッシュ』!!」

 

 そしてその直後、AFOが左手から空気の弾丸?を打ち出すのと同時に、オールマイトも必殺の拳を突き出して……

 

 

 

 ―――ドッゴォォオオォオン!!

 

 

 

 その2つがぶつかった瞬間、とんでもない衝撃波があたりにまき散らされた。特大の爆弾でも目の前で爆発したようなそれは、鼓膜を破らんばかりに響いて……体の軽い生徒を吹き飛ばすほどの威力だった。

 

 というか実際に吹っ飛んでいる。峰田とか、小森とか……細身、あるいは小柄なあたりが、何人も。

 

 しかも、炸裂した空気は、ただ広がるだけじゃなく渦を巻いたり、撹拌されたりで滅茶苦茶な気流になっていて……あっちこっちでデタラメな動きで飛ばされていく。まるで台風だ。

 

「何だよ今のぉぉお!?」

 

「オールマイトの拳と、威力が互角……!? おい、あの『敵』……マジでやべえぞ! 下手したら、あのUSJん時の脳無と同じ……いや明らかにアレ以上だろ! どう考えても俺達がいていい空間じゃねえって!」

 

「泣き言言うな、来ちまったもんは仕方ねえだろ! それより覚悟決めろ! 始まるぞ!」

 

「始まるって何が……」

 

 言いかけて止めたのが誰だったのかはわからないが……もうその辺はどうでもいい。

 それよりも、その前に言われていたように……明らかに今のコレは、私らは私らで、泣き言言わずに覚悟を決めなきゃいけない場面だ。

 

 さっきまで、沈黙と共にたたずんでいた、周囲を取り囲むように配置されている無数の『脳無』達。奴らが……何が合図だったのかはわからないが、動き出した。

 ぎょろり、とその目で周囲を見回し……私ら生徒や、ヒーロー達を見つけて止まる。

 

 そして、臨戦態勢に入り……まあ、この後の描写や予想なんて要らないだろう。

 

 加えて、脳無以外の連中にも火がつき始めてるし……そうなればこっちとて、ぼーっとしているわけにはいかない。

 

 要するにあれだ……戦わなければ生き残れない!

 

『まだよく状況を飲み込めていない生徒がいるようだね。なら、ごくわかりやすく説明しよう』

 

 と、今度はAFOの声が直接頭の中に……さっきから何となく思ってたんだが、こいつもナインと同じように、いくつも『個性』使ってないか?

 

 しかもコレ、明らかにこっちの方がナインより危険だろ、色々と……

 

 まあそれは今は置いといて……恐らくは、マンダレイの『テレパス』みたいな個性を持っているんだろう。瓦礫が崩れたり地面が割れたり、悲鳴があちこちで上がったり……そんなえらい状況なのに、AFOの声はやたらはっきり聞こえる。何かしらの『個性』なのは間違いないだろう。

 

『簡単なことだ、君達がいつもやっていることをやればいい……『敵』と戦い、倒せ。それができなければ……自分が死ぬだけだ』

 

「……随分と親切、ないし紳士的な『敵』だな。わざわざ教えてくれるとは」

 

「いやいや、ねえだろそりゃ常闇。こんな場所でいきなり合戦おっぱじめることを強要してくるくらいだし、明らかにこっちが何人か死んで、それに対するリアクションとか込みで楽しもうとしてる感じだったぞ。仮にそうじゃなくても……」

 

「これだけの数の脳無……どの道、放っておくわけにはいきません。数でヒーローや皆さんを圧殺しようとするか、あるいは制御を外れて市街地に散っていけば……」

 

「保須市の悲劇再び、ってとこか……そりゃ確かにほっとけないな。もっとも……」

 

「もっとも?」

 

「それ以外にもヤバいって言うか、野放しにしとけねえ奴とか多そうだし……むしろそいつらの方が、私らを放っといてくれなさそうだ、と思ってな……こんな風に」

 

 

 

「さて、と。さっさと仕事に移らせてもらうか……時間も遅いし、いい加減に時間外勤務も切り上げたいしな」

 

 潜水用マスクをかぶって、白いコートに身を包んだ男が、私らの目の前に立ちはだかるように姿を見せる。

 その目は、どこか気だるげなものを感じつつも……はっきりとこちらに対して殺意を滲ませる、底冷えのするような冷たいそれだった。

 

 ネームドヴィラン『キュレーター』……ヤクザの一件の時から何かと縁がある男。

 こいつとの因縁も、できればもう今回限りにしときたいところだが……まあ、あっちはあっちで、物理的にというか、皆殺し的な意味でそういうの断ちにくるだろうからな……

 

「何人か拾って『商品』にしようかと思ってたが、やめだ。雄英に、特に今年の1年に関わるとろくなことがねえ」

 

 そりゃそうなるようなことばっかしてっからだろうが……しっかし、よりによってこいつが相手か……。

 

 近くにいるのは、常闇、八百万、塩崎……そして私。

 相性、いいとは言えないんだよなあ……この面子で、こいつが相手だと……

 

よそに助けを頼もうにも、よそはよそで……

 

 

 

「まだ学生でコレとは、末恐ろしいこった……だがまあ、将来の厄介者を事前に摘んでおける機会だと思えば……それも悪くはないか」

 

「ぶっ殺す……おい、クソ髪、半分野郎、手伝え」

 

「……まあ、やることは変わらねえか」

 

「こいつら2人共……っ! いや、いい! ここまで来たら俺も最後までつき合うぜ!」

 

 爆豪、轟、切島がウォルフラムと対峙し、

 

 

 

「わあい、また会えたね、梅雨ちゃんにお茶子ちゃん! しかも他のお友達もいる!」

 

「けろ……私達は会いたくなかったけどね」

 

「うん……流石にもう、意味わからへんもん。怖いし」

 

「合宿でこんなのに絡まれたのか……災難だったね、麗日も蛙吹も」

 

 麗日、梅雨ちゃん、取陰がトガヒミコに絡まれ、

 

 

 

「俺の相手がこいつか……気でもきかせてくれたつもりか?」

 

「そんな奴がいるとしたらよっぽどのバカだな。今回は俺もいる上に……ちょっと諸事情でブチ切れ中だってのに」

 

「………………」

 

 相澤とマイクが、USJを襲撃してきた黒い脳無(他、脳無数体)の前に立ちふさがり、

 

 

 

 ……そして、

 

「ちょいちょい会う機会、見る機会はあった……けど、こうして最初から真正面から向かい合うのは、何気に初めてかもしれねえな。USJは、そんな雰囲気じゃなかったし」

 

「死柄木……!」

 

 緑谷と、死柄木。

 何だろう……まるで宿命の敵同士みたいに、真剣な顔で向かい合っている。

 

 

 

「君の生徒達と、僕の生徒やその部下たち……一体どんな戦いになるのか……楽しみじゃないか。言うまでもないかもしれないが……君も負けてはいられないぞ、オールマイト」

 

「心配するな……貴様をさっさと倒して、私も彼らにお節介を焼かせてもらって、全部! さっさと! 終わらせるだけだ!」

 

 それら全てを束ねる、まさしく『頂上決戦』に挑まんとする構成。

 オールマイトと、オール・フォー・ワン。

 

 まさしくこれらは……この闘いは……『最終決戦』って奴だろう。

 長かった夜を締めくくる、しかしそれまでで一番ヤバい戦いが……いよいよ始まろうとしていた。

 

 

 

 

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