TSから始まるヒロインアカデミア   作:破戒僧

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長くなったなあ……
今回、一部独自解釈とか色々あります。


第143話 スーパーヒーロー大戦

 

「死ねェ!!」

 

 そんな、A組一同にとっては聞きなれた罵声と共に、大威力の爆破が放たれ、前方の広範囲を瓦礫ごと吹き飛ばす。

 が、その中心に突如として立ち上がった、瓦礫と鉄屑の壁が、それを防いでその使い手を守る。

 

「おいおい、お前さんホントにヒーロー志望かよ?」

 

 かと思えば、その半分崩れた壁が形を変え、何本もの触手――ただし、金属製で超重量のため、色気は皆無。殺傷力だけだ――となって爆豪目掛けて襲い来る。

 

 今度はそこに氷の壁が割り込み、受け止める。

 しかし、質量と硬度の差ゆえか、ほとんど時間を稼ぐこともできずに砕かれ、貫かれてしまう。

 

 だがその時には既に、轟も爆豪も、壁の背後から退避していて無事だった。

 

「それとも、思うように戦えねえからイラついてんのかい?」

 

「いや、爆豪は大体いつもこんなんだな」

 

「そうかい。そりゃなんというか……死柄木の奴が目をかけて勧誘しようとしたのも頷けるな」

 

「寝言は……寝て死ね!」

 

 今度は、貫通力に優れた『徹甲弾』でウォルフラムを狙うが、即興で作る壁では防げないと見るや、ウォルフラムはコートを翻してそれを回避し、同時に手に持った金属を変形させて投げナイフのような形状にして投擲、爆豪と……反対側から迫ってきていた切島に同時に投げつける。

 

 爆豪は爆破による爆風でそれを回避し、切島は体を『硬化』させて強引に突破。そのまま拳を握りしめて突っ込んでいく。

 

「効かねえよ、そんなもん! 『烈怒頑……」

 

「そうかい、じゃあコレならどうだ」

 

 が、次の瞬間ウォルフラムが懐から取り出したのは、何やら機械仕掛けのギミックらしきものがついたナイフだった。

 

 自分の胸元に向かって突き出されるそれに、言いようのない嫌な予感を感じた切島は、とっさに技をキャンセルして、『硬化』しているにもかかわらず、全力で回避した。

 

 コスチュームの仕様上、むき出しの胸元をかすめるようにナイフが突き出され……

 

「熱っづ……がぁあ!?」

 

 かすめた瞬間に、刃の部分に火花が散り……放たれた電撃が、僅かにではあるが切島の体を走って怯ませる。

 

「クソ髪! 気張れ!」

 

 動きの鈍ったところにウォルフラムの追撃が、今度は首元を目掛けて迫るが……そこに、爆豪がまたしても大威力の爆破を放った。切島も巻き込んで。

 

 ウォルフラムは寸前で回避し……それを食らったのは切島のみ。しかし、直前の一声で、それだけで何をするつもりなのか察した切島は、全力で全身を『硬化』させ……衝撃はあったものの、爆破で傷を負うこともなく、その場を離脱することに成功していた。

 

「悪ィ、助かった爆豪! にしても……何だ今の……スタンガンか?」

 

「……『I・アイランド』のエキスポに同じのが展示されてた。物理攻撃が聞かない『敵』への対処用サポートアイテムの、ナイフ型スタンガン。日本じゃまだ発売されてねえ奴だ」

 

「裏稼業なんぞやってると、お前さんみたいに単に真っ正面からの戦闘じゃあ苦労するような奴が敵に回ることも多くてな、悪いが手馴れたもんさ。俺をこの平和ボケした国の、お行儀のいい『敵』なんぞと一緒にするなよ……小僧共」

 

 轟の考察を補足するように言うウォルフラムは、地面を蹴って走り出す――と見せかけて、踏みつけている部分の瓦礫の金属を操って、踏み出す以上の速度で、轟と切島に一気に迫る。

 

 咄嗟に轟が氷の壁で防御するが、ウォルフラムは金属の足場の一部分を横に伸ばして回り込むようにして回避、横合いから襲い掛かる。

 

 しかも、もともと伸びていた足場はそのまま伸ばしたため、一瞬横に気を取られた隙に、それが氷壁を突き破り……反射的に轟をかばった切島がそれをその身で受ける。

 ダメージは殺せたが勢いは殺せず、そのまま轟を巻き込んで突き飛ばされて地面に転がった。

 

 爆豪が助けに行こうとするが、轟が作った氷の残骸が邪魔なのに加え、ウォルフラムが操る金属塊が剣山のように飛び出してきて妨害する。

 

 その間にウォルフラムは、いつの間に取りだしたのか、空いていた方の手に手榴弾……それも、ピンが抜けたものを2つ持っていて、それを轟達目掛けて投げつけてくる。

 切島は『硬化』すればダメージはほとんどないだろうが、轟はそうはいかない。しかも、切島と密着している今の状態では、氷による防御も使えない。

 

「『個性』は大したもんだが……経験不足だな。場数も錬度もまだまだ足りてねえ」

 

 

「すまんな、あいにくとそいつはまだ……反抗期が終わっておらんのだ。教育不足は認めよう」

 

 

 が、その瞬間……手榴弾が爆発するよりも早く、爆炎の奔流、とでも呼べそうなすさまじい炎が、針の孔を通るような正確なコントロールで吹き付け……爆発の際の爆風ごと手榴弾を消し飛ばした。

 

 その光景に驚く轟達。

 ウォルフラムも驚きはしたが、とっさに金属の壁を作ってその炎の来た方向から身を守り……

 

「赫灼熱拳……『ヘルスパイダー』!!」

 

 直後、炎が圧縮されたレーザーのようなそれが幾筋も襲い掛かり、その壁を紙同然に切り裂いた。しかも、それだけではとどまらず、背後にある瓦礫ごと消し炭にしていく。

 

「ちぃ……!」

 

 ウォルフラムは回避したものの、コートの端が焼き切られ、切断跡が嫌な臭いと共に黒焦げになっていた。

 耐熱性の繊維が全く意味をなしていないレベルの攻撃に、表に出さないまでも戦慄する。警戒心を一気に最大まで上げながら、ウォルフラムは今一度、その攻撃が飛んできた方向を見た。

 

 同時に轟達も見ていたそこに立っていたのは……陽炎が発生するのではないかというほどの熱を迸らせ、夜の闇を押しのける勢いの炎を放っている男。

 

「親父……!」

 

 右腕を前に突き出す形で仁王立ちしている、フレイムヒーロー・エンデヴァーの姿。

 

「これはこれは……No.2ヒーロー様のお出ましか。バーの方で『最上位(ハイエンド)』と遊んでると聞いてたが……」

 

「あれしきの敵で俺を止められると思うな。……と言いたいところだが、苦戦したのは認めよう。そうだな、俺一人ならば時間もかかったろうし、手傷も負ったかもしれん。運がよかった」

 

「ほぉ? その物言いだと……っ!?」

 

 間髪入れず、上空から何かが来るのを感じ取ってウォルフラムは飛びのいてそこを避ける。

 

 一瞬前までいたところに、鋭くとがった部分すらある超重量の瓦礫が叩きつけられ……同時に、暴風が吹き荒れて周囲を席巻した。とっさに作り上げた金属のバリケードが半分以上吹き飛ばされる勢いだ。

 そして、その残った半分弱も、着弾した暴風の弾丸によって吹き飛んだ。

 

 常人であれば立っているのはおろか、目を開けているのすら辛いかもしれない暴風の中、ウォルフラムは気配を感じた上空を見て……

 

「おいおい……流石に予想外だぞ。何でこんな所に、ドイツ軍のエースオブエースがいる……?」

 

「貴様が気にする必要はない、さっさとやられろ。それが嫌なら……死ね」

 

 旧式のライフル銃を構え、風を纏って空中に浮遊している……軍服姿の、金髪の幼女。

 戦場に似合わない愛らしい見た目ながら、放っている威圧感や、先の言葉に乗っていた殺意は、完全に本物というミスマッチな特徴を持つ、ドイツ軍所属のトップヒーロー・シルバーピクシーこと、ターニャだった。

 

 爆豪が口癖のごとく言う『死ね』と違い、本当に殺す気で放たれる言葉に加え……先の瓦礫の弾丸も、直撃すればウォルフラムを殺すだけの威力を持っていた。

 ためらいなくそれをやってのける彼女の襲来に……正面に立っているエンデヴァーの存在もあり、ウォルフラムは迷いなく、警戒レベルを最大まで上げた。

 

「『最上位』をこれだけ早く突破してここに来れたのはそういうわけか……これはちと、余裕がなくなってきたかもな」

 

「親父、あの子は……ヒーローなのか?」

 

「見た目で判断してはいけない者の筆頭例だがな。それよりも下がっていろ焦凍。爆豪達もだ……お前達ではアレの相手は、荷が重いどころではない」

 

「アァ!? ざけんじゃねえ、俺達はまだ……」

 

「彼我の力量差、戦力の適切な配分……状況を鑑みた適切な対応の選択もできんようでは早死にするぞ、小僧」

 

「んだとこのガキ! つかどう見てもテメェの方が年下だろうが! 誰が小僧だ!」

 

「待てって爆豪! エンデヴァーさん、見た目で判断するなって言ってただろ!? プロヒーローみたいだし、あれで多分俺達より年上かもしれ……」

 

「知るか! そーだろうと関係ねえ、俺に指図すん……」

 

 と、爆豪が言い終えるよりも前に、そのあたり一帯を、地震のような振動が襲い始める。

 

 はっとして見ると、ウォルフラムの周囲一帯の地面がうねるように動き……無数の金属塊が、極太の触手のようになって立ち上がっていた。その中心で、即興で作った足場に立ちながら、ウォルフラムはあたりを見下ろして獰猛に笑っている。

 その足元には、薬品か何かが入っていたと思しき、注射針付きのアンプルが落ちていた。

 

 それを見たエンデヴァーとシルバーピクシーは、何が起こったのか察して舌打ちする。

 

「……ちっ、『個性強化薬』か……厄介な」

 

「しかもあのアンプルのデザイン……欧米で出回っているタイプだな。アジア製の粗悪品とはわけが違う……強化幅も、持続時間もだ」

 

「よく知ってるじゃねえか……シカゴのブローカーから買い付けた上等な品だ。1本1万以上する一級品、俺の切り札だが……お前さん達になら惜しくない」

 

「……1万って、そこまででもなくね? 俺でも買えるぜ?」

 

「アメリカで買ったっつってただろうが、クソ髪。多分ドルだ」

 

「日本円で100万かそこらか……そりゃ確かに切り札だな」

 

 どんどん、振動が大きくなっていく。

 周囲の地面から、めくれ上がるように金属が湧き出していく。

 

「こっからは油断はなしだ……巻き込まれて知らねえうちに赤いシミになってても文句は言うなよ……その2人が相手じゃ、俺もさすがに全力でやらざるを得ないんでな!」

 

 まるで、鋼の巨人でも従えているかのような、凶悪極まりない質量攻撃が始まる。叩きつけられる金属の腕、あるいは触手は、1本1本、一撃一撃が家すら粉々にする威力。

 

 それを前に、逃げる暇すらなくなった爆豪達を含め……ここからが本番だと、そこにいる全員が思っていた。

 

 

 ☆☆☆

 

 

「オッッラァァアアァア!! 『俺拳』!」

 

「ぬぐっ……流石は雄英、金の卵というわけ……か!」

 

 そこから離れた場所では、刃物を相手に拳が金属音を打ち鳴らし、火花を散らす戦いを繰り広げていた。

 

 全身を金属化した鉄哲が、真正面からスピナーに殴りかかり、繰り出される刃物攻撃をものともせずに、両の拳で攻め続けている。

 

「効かねえっつんだよそんなモンはよォ! 相性最悪だぜ、俺とお前ってばよォ!」

 

「刃物の扱いもなってねえしなァ!」

 

「うぉ!?」

 

 そして、彼と連携して鎌切が踏み込み、『刃鋭』の個性で体から飛び出す何本もの刃を振りぬいて舞うように切りつける。

 相性の悪さに加えて、武器、リーチ、手数……その全てで上を行かれている現状に、スピナーは防戦一方になっていた。

 

 どうにか立ち回りを工夫して距離をとっても、その瞬間第三者が攻撃を仕掛けてくる。

 

 横合いから飛び込んできて、突き出された拳……それが、いきなり巨大化して襲ってくる。

 

「鉄哲! 鎌切! 立て直して! フォーメーション元に戻せ!」

 

「おう、すまねえな拳藤!」

 

「言われなくてもすぐにやってやるよォ! 切り刻んでやるぜこのトカゲ野郎ぉ!」

 

「貴様こそトカゲみたいな見た目だろう……がっ! くっ、3対1……流石に余裕がないな」

 

「ガチの喧嘩、それもてめえらから売ってきたんだ、泣き言言うんじゃねえぞトカゲ『敵』ンン!」

 

「……トカゲトカゲ言うのやめない? 取陰に悪い気がしてきた……いや、何となくだけど……っ、また来たか!」

 

 と、拳藤が何かに気づいて背後を振り返ると、周囲で暴れまわっている脳無のうちの何匹かが、こちらに狙いを定めて飛びかかってくる光景だった。

 

 それに同時に気づいた鉄哲が、スピナーの相手を鎌切に任せ、拳藤の援護のために飛び込んでいく。

 

 スピナーが3人を相手に戦い続けていられる理由の1つがコレだった。AFOが大量に呼び出した脳無がそこら中にいて、通りがかって攻撃を仕掛けてくるのだ。

 幸い、今まで白い個体……下級か中級までしか来ていないが。

 

 尾白や庄田など、他の生徒が相手をして着々と数を減らしてはいるが、さすがに元々の数が多い上に戦い方も多彩、タフネスもあるため簡単にはいかない。

 

「厄介だが関係ねえ、俺達は俺達にやれることをやる! あっちは……あっちで戦ってる奴らに任せてな!」

 

「ひゃひゃひゃひゃひゃ、そっちは任せたぜ2人共! 俺はこっちの奴を切り刻む! トカゲっぽいから切っても再生しそうだが、もしそうなっても何百回でも斬ってやるぜぇ!」

 

「コイツっ……本当にヒーロー志望か!?」

 

 

 ☆☆☆

 

 

 一方その頃、そのトゥワイスが戦っている場所ではというと、

 

「うわああぁぁあ! 何なんだよ今年の雄英はよぉぉお! なんでこんな、オイラ達ばっかりこんな目に遭うんだよォ~! もぉやだっつんだチクショー!!」

 

「はっはっは、ヒーローが何泣きわめいてんだよなっさけねえな! わかるぜその気持ち、今は思いっきり泣いていいんだぜ少年!」

 

「いやそれどっちだよ」

 

 瀬呂の放ったテープや、峰田の『もぎもぎ』をかわして、手首に仕込んでいるメジャーを鞭のように使って攻撃してくるトゥワイス。

 しかし、呆れたり泣きわめきながらも、2人も訓練を積んでいるヒーロー科生徒、単調な攻撃に当たってやられるほど弱くはない。

 

(こいつ……戦闘能力は高いタイプじゃないな。物間の奴が言ってたことからして、恐らくコイツが、敵を増やす『個性』を持ってるって奴だ。けど、それを使う気配がねえな……何でだ?)

 

 戦いながらも、冷静にトゥワイスを観察する瀬呂。

 

 一方で、トゥワイスも支離滅裂な言動からはわかりづらいが、かなり焦っていて余裕がない。

 

(チックショーはこっちのセリフだっつーの! こいつら2人とも、雄英の中じゃそこまで強くなさそうだからいいけどよ……今もう『2人』増やしちまってる! 黒霧と、戦闘開始直後に増やしたコンプレス……どっちも今どこにいるのか分かんねえけど、どっちもまだ消えてないのはわかる……から、新しく誰かを出せない! あーもうちょっと考えて使やよかった!)

 

 トゥワイスの『個性』……『二倍』は、耐久力以外全く同じ状態で、あらゆるものを『増やす』ことができる。しかしその制約として、『1度に2つ以上増やせない』というものがある。

 

 ウォルフラム達が戦線離脱等の緊急避難のために連れて行った、黒霧。

 加えて、この闘いが始まった直後、倒れていた荼毘を回収するために増やしたコンプレス。

 

 これで2人。そして、トゥワイスは自分の意思で複製を解除することができない。増やしたものは、ある程度ダメージを与えない限り消えない。

 この性質は、彼のあるトラウマの元にもなっているが……今は置いておこう。

 

 この性質ゆえに、どちらかがダメージを負って消えない限り、これ以上『個性』を発動できないのだ。

 

 そのため、今はトゥワイスは、仕込み武器で戦うしかできない状態なのである。

 

(だが、見方によっちゃ好都合でもある……黒霧の本体が気絶しているなら、移動手段になるコピーの黒霧は逆にいてもらった方がいい。いざって時に逃げられる。……何せ黒霧は、測った直後しか『二倍』にできねえからな……なら、むしろいてもらった方がいい)

 

 彼の『二倍』のもう1つの制約は、イメージがはっきりできていないと複製できない、というものだ。

 

 身長、胸囲、腹囲、足のサイズなど、しっかり測ってしっかり見て、初めて二倍にできる。

 トガヒミコや荼毘、コンプレスなどについては、事前にその測定や観察を終わらせているため、その気になれば増やせる。コピーを作って戦わせることができる。

 

 ただし、これは『測定』と『イメージ』が両立しない場合には不可能となる。

 

 例えば、死穢八斉会が作っていた『個性破壊弾』だが……それの実物をトゥワイスが手にしたとして、じっくり見てしっかり大きさやら何やらを測ったとしても、『個性を破壊する弾丸』というイメージが定まらない以上、それの複製は不可能なのだ。

 

 同じ理由でコピーできないのが黒霧である。彼に関しても、トゥワイスは『測定』も『観察』も終わらせているが、黒霧はその体そのものが靄状であるという、異形型が多いこの個性社会の中でも際立って異質な見た目というか体構造を持っており、それが邪魔して『イメージ』の部分が上手く定まらないのだ。

 

 トゥワイスが今回『増やした』黒霧は、『測定』の直後、さらに『個性』を使ってワープする光景、その使い方やら何やらをよく見て、視覚から得たイメージが新しく鮮明なうちに急いで実行してようやく成功したものなのだ。しかも、それでも2度ほど失敗してしまっている。

 ゆえに、トゥワイスはいつでも黒霧を増やせるわけではない。例え、『二倍』のストックに空きがある状態であってもだ。

 

 それを踏まえれば、脱出経路である黒霧が今こうして、コピーの状態でも無事でいることは好都合ととれる。前向きに考えて、トゥワイスは改めて瀬呂と峰田に向き合った。

 

「そぉらどうしたヒーローの卵共! そんなんじゃ俺は倒せねえぜ、覚悟決めてかかって来いよ! あ、でも別に帰ってくれてもっていうか、今日のところはここまでにしてくれてもいいのよ?」

 

「うるせえぇえ! こうなりゃ自棄だチキショー! お前『敵連合』の中で一番弱そうだから他行くのやだしこのままやったらー!」

 

「なんてこと言いやがる、舐めてんじゃねえぞこのチビ! 大正解だ!」

 

「……コレ、ツッコまねえ方がいいのか? こいつの口調……」

 

 

 ☆☆☆

 

 

「ったく……やりづれえったらありゃしねえ……」

 

「それはありがとう、最高のほめ言葉だよ、三流芸人さん!」

 

 軽快なステップで飛び退って回避するコンプレス。

 

 それを追う物間は、右手から鱗の弾丸を放ってコンプレスをけん制しつつ……左手には、パチンコ玉のような大きさの球体をもっている。

 

 コンプレスにとっては、なじみ深い物体だ。何せ、自分が個性で作り出すものなのだから。

 

 ただし、それを作ったのはコンプレスではなく、『コピー』によって『圧縮』をかすめ取って再現した物間なのだが。

 そして中身は、先程トゥワイスが作り出した、コピーのコンプレスである。乱戦の中、一瞬の隙をついて個性をコピーすると同時に、『圧縮』して閉じ込めたのだ。

 

 それを見せつけるようにしつつ、ポケットにしまう物間。

 

「『個性』を『コピー』するとね……大まかにではあるけど、その使い方や条件、弱点がわかるんだ……コイツをこうして、倒さずに封じておけば、あの全身タイツはこれ以上敵を増やせない。増やせたとしてもその時は、あっちの『出入口』が消えたってことだ……それはそれで好都合」

 

「それで俺の『個性』をかすめ取ったわけか……手品の種を暴くとか、奇術師泣かせのつまらねえ客だぜ、おい。無粋ってもんだろ」

 

「知らないね、そんなのはバレるような安いトリックしか用意できない方が悪いのさ。それよりもほら……ボーッとしてると危ないよ?」

 

「……!? おわ!?」

 

 ―――ド ク ン !!

 

 咄嗟にその場から飛び退ったコンプレスは、間一髪で耳郎の音響攻撃をかわすが……それを追って柳が瓦礫を飛ばし、さらにその逃げ道を塞ぐ形で物間が鱗を放つ。

 

 ちっ、と舌打ちして、コンプレスは懐から取り出した玉を投げつけ……そこに『圧縮』されていた廃材を使って鱗を防ぎ、その下をくぐるように逃れる。

 

 そのまま、一番近くにいた耳郎に駆け寄ろうとするが、今度はそこに物間が作ったのであろう玉がこんこん、と転がってきたことで急停止し、警戒する。

 

 が、そんな彼をおちょくるように、玉から出て来たのは……小さな小石1個だけ。

 

 その間に、3人は距離を取ってフォーメーションを組みなおしてしまっていた。

 

(……っ……こいつ、俺の手を警戒して……徹底的に俺を遠距離で削る気だ……加えて、俺だからこそ警戒せざるを得ないような手や、それを逆手に取った手も……やりづらい……!)

 

(……毎度毎度アホなこと言って突っかかってくる変な奴、くらいにしか見れてなかったけど……やっぱ謀略やらせたらコイツ一級品だわ。今だけは頼もしい……)

 

「人を煽って手玉に取ることで、僕の上を行けると思うなよ、エセエンターテイナー……あんたとあの全身タイツは、単純な戦闘能力以上に、その『個性』や立ち回り方が、戦場を引っ搔き回しかねない厄介な存在だ。ここでもうしばらくつき合ってもらう」

 

 

 ☆☆☆

 

 

「やー、また!? 邪魔です、どいてください!」

 

「どいてって言われて素直にどいてやる奴はいないっちゅーの!」

 

 無数に分裂した取陰のパーツが飛び交う中で、その1つを斬りつけて攻撃するトガヒミコ。しかし、直前でそのパーツが自分からさらに2つに分かれて、刃が素通りする。

 

「むー……また! 切れない! 刺せない!」

 

「だろうね! だから私があんたの相手してんだよ……まあ私だけじゃないけどさ」

 

 その直後、背後から蛙吹の下が伸びてきてトガに襲い掛かる。

 それを察知したトガは、振り向きざまに斬りつけようとナイフを振りかぶるが、着地寸前に足元に割り込んできた取陰のパーツがバランスを崩させ、鞭のような舌が直撃する。

 

 体勢をさらに崩したところを目掛けて麗日が飛びかかるが、トガはわざと倒れて、転がってから起き上がって体勢を元に戻すと、一気に何本もナイフを投げて麗日をけん制。

 

「わあ、来てくれたんだお茶子ちゃん! やっぱり私達友達だね、大好き!」

 

「この状況でどないしたらそんなセリフ出てくるん!?」

 

 殺気丸出しで攻撃しながら言うセリフでは絶対にない、と麗日が思っている前で、トガは妨害に飛んでくる取陰のパーツを無視して突撃し、手に持ったナイフを麗日に突き立て……る直前、その切っ先に取陰のパーツが割り込んでかばった。

 

 しかも、ただのパーツではなく、腰の部分、ベルトのバックルがある個所でかばったため、きぃん、と甲高い音を立ててナイフの軌道がそれ、麗日を外れる。

 

 その一瞬の隙をついて、蛙吹が麗日を舌で回収した。

 

「っ、と……ごめん2人共、失敗してもた!」

 

「気にしないで。あの子、近接戦闘は相当レベル高いわ……油断せずに行きましょう」

 

「っ、う~! またですか! 邪魔しないでください! 血も見せてくれないのに!」

 

「何その文句……っていうか、友達の血なんて見たいもんじゃないし、そりゃ邪魔させてもらうに決まってるでしょーが」

 

「何でですか、血だらけでボロボロの方がかっこいいし可愛いのに!」

 

「もうこの時点でなんか価値観について共有するの無理な感じだわー……」

 

 うわー、とでも言いたげな三白眼になる取陰だが、そこにさらにトガが、心底不思議そうな顔で、

 

「何でですか? あなた達も緑谷出久君がよく血だらけでボロボロになってかっこいいから好きになったんじゃないんですか?」

 

「ちゃうわ!」

 

「動機のところはね」

 

 と、すかさずツッコミを入れる麗日と蛙吹。

 だがよく見るとわかるのだが、2人とも……さらに、その2人から少し離れたところで、分割した体を元に戻して時間制限をリセットしている取陰も、少しだけ顔が赤くなっている。

 

 このようなやり取り、ないし指摘がなされるのは今が初めてではない。

 

 どういう理屈、ないし思考によるものなのかはわからないが――あるいは単純な勘によるものなのかもしれない――トガヒミコは、この3人の思い人が緑谷であるということに気づいていた。

 そしてその上で、自分も彼が好きだということを告白し……そこから特に話題をつなげることもなく、こちらを普通に殺しに来ている。

 

 脈絡が全く見えないとか、好きになった理由が物騒すぎるとか、そもそもその価値観は何なんだとか、色々とツッコミどころ満載ではあるのだが、ひとまず麗日たちは、自分達の目の前にいるのは『敵連合』のメンバーであるという点のみを考えるようにして動いていた。

 これがもう少し話が通じるような相手であれば、もう少し色気、ないし彩のある展開に……言ってみれば、『あの人は渡さない!』的なそれになっていたかもしれないが、いかんせんそこにいるまでに話が続かないので、突発的にこういうセリフが出て話題になる時以外は、まともな戦闘である。

 

 そんなわけで、この手の会話の先に実のある結論の類が待っていないことは承知している取陰が、気を取り直して再び体を分割させ、麗日と蛙吹の援護のために散開させ始めたところで……予想外の横槍が入ってきた。

 

「んもぉ、コイバナなんかしちゃって、青春してるわねえあなた達……でも、油断大敵よ?」

 

「っ? なっ、コレ……わぁぁああ!?」

 

「っ!? 取陰さん!?」

 

 ばらけさせたパーツが、本体ごとまとめて引っ張られていく。

 その先にいるのは、巨大な磁石のような武器を構え大柄な男……マグネだ。

 

「こっちにいらっしゃい? 私とも女子トークしましょうよ」

 

「っ……そうか、マンダレイの話にあった……」

 

 マグネの『個性』は、周囲半径4.5m以内の任意の人間に『磁力』を発生させることができるというもの。男ならS極、女ならN極となる。

 

 マグネ自身には磁力は付与できないが、彼(彼女?)の武器である巨大磁石に向かって引き寄せるという形で、相手に付与した磁力を利用できる。

 それを利用して、取陰にN極の磁力を付与し、自身の持つ巨大磁石のS極に引き付けていた。

 

「いやあんた男じゃん! 何が女子トークだよ!」

 

「んまっ、なんて差別的な発言なのかしら! やーねイマドキの娘って、心は乙女なんだってことがわからないのかしら?」

 

 

「別にそれは結構ですけどね……だからってこの子たちに手ぇ上げるのは違うんじゃないの~?」

 

 

 そんな、会話に割り込んできた声と共に、何かが猛スピードでマグネに向けて突っ込んでいく。

 それに反応し、とっさに磁石を盾にしたマグネは、突っ込んできた何かを防御するが……その拍子に『個性』が途切れ、取陰は引力から解放された。

 

 弾かれたようにその場から飛び退り、その小さな影は取陰とマグネの間にすたっと降り立つ。

 

 その姿を見て、ある者は困惑し、またある者は驚愕した。

 

「お、女の……子?」

 

「? 誰ですかぁ? 迷子?」

 

「……けろ? どこかで見たような……」

 

「あら、あらあらあら……すごい人が来たわねえ」

 

「えっ、うそ……び、ビューティービスケット!? 本物!?」

 

「うーん、認知度40%! あたしもまだまだだわね」

 

 戦場、と読んで差し支えないその場に似合わないゴスロリ調の服に身を包んだ、見た目はかわいらしい少女にしか見えない、しかし中身は歴戦のプロヒーローであるその者の名を、マグネと取陰の2人だけが知っていた。それを聞いて少しして、蛙吹も思い出す。

 

「え、取陰さん知っとんの?」

 

「むしろ麗日知らないの!? 美容関係のビッグネームだよ、戦闘も超強いとは聞いてたけど……」

 

「けろ、そう言えば思い出したわ。あんまりメディア露出自体はないけど、化粧品とかいろんなものの開発現場で活躍してるって、時々ニュースで見るわね」

 

「そうなんですかあ……すごい人なんですね」

 

「ええ、多くの女の子の憧れよ。……でも、ここでこうして遭ったってことは……残念だけど敵みたいね」

 

「そゆこと。慕ってくれてるのは嬉しいし、あなたみたいなのに理解がないわけでもないけど……自分の欲望のために他人様に迷惑をかけて白々しくも笑ってるようなのは、男だろうが女だろうが論外ってもんよ。一応聞くけど、自首するつもりはあるかしら?」

 

「あったらこんなことしてないわよ……ふふっ、貴方にお相手してもらえるなんて光栄ね。一生の思い出になりそうだわ」

 

 相変わらずの軽口で言いつつも、磁石を手にして油断なく構えるまマグネ。

 その様子を見て、ある程度予想はできていたのか、特にビスケは何も言わず……ため息を一つだけつくと、自分も拳を握って構える。

 

「お嬢ちゃん達、一応自力で戦えてたみたいだし……そっちは何とかなさいな。こっちの漢女(おとめ)は私が相手しておくからね。その後で合流してあげる」

 

「何か語感に違和感が……」

 

 やや気になる部分がありつつも、介入して来ようとしたマグネに対しては、参戦してきたビスケが相対することとなり……麗日、蛙吹、取陰の3人は、再びトガヒミコとの戦いに戻るのだった。

 

 

 ☆☆☆

 

 

 ――ドッゴォォオオォオン!!

 

 爆弾でも爆発したかのような衝撃。地面ごとはじけ飛ぶ無数の瓦礫。

 それに巻き込まれまいと必死に回避、あるいは迎撃する、プロヒーローと雄英生徒達。

 

「だーもう! ここだけ怪獣映画だよ! 割り込める気しない!」

 

「泣き言を言っていても変わりません、栄陽院さん! 私達は私達にできることをしましょう!」

 

「同感ですわ! と行っても、現状それが中々ないのが辛いのですけど……」

 

 永久、塩崎、八百万の視線の先では……今まさに永久が言った通り、『怪獣映画』をほうふつとさせる光景が広がっていた。

 

『砕ケ散レェェエエェエ!!』

 

『ヴォアアァァアアァ!!』

 

 ぶつかり合う、2つの巨体。

 

 片方は、夜の闇によって力を増した、常闇の『黒影(ダークシャドウ)』。

 

 そしてもう片方は……個性『鯨』によって、人と鯨の中間のような姿……しかも、『黒影』が小さく見えるほどの大きさになった、キュレーターである。

 

 フルパワーの『黒影』と真正面から殴り合い、その上押し返すほどのパワーとタフネスで、先程から何度も押し返している。

 

 その戦いで、『黒影』を支援するために、永久が、ナインから奪った『青いドラゴン』―――正式名称『空遊咬鮫獣・サメラ』や、塩崎が大量の茨を使って立ち向かうも、どちらも容易く蹴散らされ、やはり押し返されてしまう。

 

 単純な力と力のぶつかり合い……だからこそ、『地力』で負けてしまうほどの相手になると、単純であるがゆえに逆転が難しい。

 夜の『黒影』は、この面子の中では最大火力である。それすら通じない相手となってしまうと、塩崎の物量も永久の馬力も、八百万の武器もろくに効果がない。

 

 塩崎に至っては、今が『夜』であるという点が致命的だった。彼女の『ツル』は、光と水が十分にあればいくらでも髪……ツルを生やせるものの、この時間帯、月と星、それに街灯のわずかな光では限界がある。

 ある程度今戦えているのは、八百万が作ったライトと、永久が渡した『エネルギー』によるものであった。

 

 今が昼であれば、永久の『気象操作』で天候を変えるのも手だが、さすがに時間帯までは変えられないし、仮にそれはできたとしても、今度は『黒影』が光でパワーダウンしてしまう。

 

(常闇と塩崎って、互いの弱点を補い合ってはいるけど……共闘するとなると相性悪いな! いや、仮に塩崎が万全の状態で参戦できたとしても、あのパワーを相手に戦うのはそれでもしんどいか……)

 

 永久達の見ている前で、強烈な尻尾の一撃で『黒影』がなぎ倒され、それを追撃しようとするキュレーターに、永久が『サメラ』で迎撃し、立て直す時間を稼ごうとするが……その直前、空から何か巨大な影が舞い降りて……いや、飛び込んできた。

 

 それも、2つ。

 

「キャニオンカノン!!」

 

「ドラグーンパニッシュ!!」

 

 倒れた黒影を飛び越える形で、巨大化したMt.レディと、『ドラゴン』の個性を開放したリューキュウが突撃し、その威力でキュレーターにたたらを踏ませた。

 

 距離が開いたところで、リューキュウはドラゴンの姿のまま着地する。

 Mt.レディも同じようにするが……既に浅くない傷を負っているらしい様子の彼女は、着地と同時にふらついて片膝をついた。

 

「無理するのはよしなさい、Mt.レディ。AFOとかいう奴にやられた傷、結構きついんでしょ?」

 

「後輩達が頑張ってるのに寝てたりなんかできませんて。ここでやらなきゃ女がすたる!」

 

「……君の出身校は雄英ではなかったと思うが」

 

「プロヒーローとその卵なんだから十分先輩後輩です! 異論は認めない! ……っていうかそんなこと言ったら、ギャングオルカさんも結構フラフラでしょう?」

 

 さらにそこに、同じく傷を負っている様子のギャングオルカも追いついて言った。

 3人並んで、常闇と『黒影』を含む生徒達をかばうように立つ。

 

「鬱陶しいのがワラワラと……人の仕事を増やすんじゃねえよ。カス共が……!」

 

 その光景を見て、苛立ったらしいキュレーターが、超音波を放って全体を一度に攻撃してくる。

 人間の形態で放つよりも俄然強力なそれは、最早特大の衝撃波と言っていいもので、とっさに同じ超音波で迎撃したギャングオルカのそれを容易く打ち消し、永久達をかばって盾になったリューキュウとMt.レディの全身に打ち付け、それも乗り越えてまで届く。

 

「「キャアアアアアア!?」」

 

「んなろっ……コレ、下手したら全力のマイク先生以上……っ!? Mt.レディ、大丈夫ですか!」

 

 どうにか耐えていた永久の眼前で、やはり傷が深刻だったのか、立ち膝でもいられなくなったのか、ふらりと倒れ込むMt.レディ。同時に『個性』も解除されてしまい、普通の成人女性サイズとなった彼女を、頭を打つ直前で、駆け寄った永久が受け止めた。

 

「っ、ぐ……あ、ありがと……でも、あんた達、早く逃げなさい……戦ってたなら、わかると思うけど……ガチでヤバいから……」

 

「そうしたいのはやまやまですけどね……背を向けて逃げるのも危ないでしょ、アレ。それに危険度からして、プロヒーロー数人がかりで止めるような奴なのに……」

 

「自分達だけ逃げるのは嫌? あー、わかるわかる、私もよくあるもんそういうこと……でもね、だからこそその気持ちを……」

 

「とりあえず傷治すんでちょっと歯食いしばってもらっていいですかMt.レディ?」

 

「あの、ちょっと今私割といいこと言うとこだったんだけど……って、え? 治せるの? っていうか、歯食いしばるって何……」

 

 ―――バツン!

 

「言って痛っだああぁぁああっ!? ちょっ、何したの今!? なんかめっちゃ痛っ……体バラバラになったかと思っ……あれ? 痛くない? てか……治ってる?」

 

 と、『オーバーホール』によって即座に治した……というか『直した』ことで、コスチュームごと無傷の状態に戻ったMt.レディが、きょとんとして自分の体を眺めたり、不思議そうに手を握ったり開いたりしていた。

 

 その様子を見て、異形型ゆえ表情からはわかりにくいが、驚いているギャングオルカ。

 

「それは……傷を、治した? 君の『個性』は増強型のはずでは……一体……」

 

「あー、色々ありましてこんなこともできるようになってます。いや、私自身よくわかってないんですけど……あ、ギャングオルカさんも直します?」

 

「……色々と気になるが、今はそんな場合ではないか。すまん、頼もう」

 

「わかりました。ただちょっと、いやかなり、いやだいぶ……いやすごく痛いですよ?」

 

「構わん、やれ」

 

 ―――バツン!

 

 マフィアか何かを思わせる白いスーツごと、今度はギャングオルカを『直す』永久。

 

 ギャングオルカは、激痛が走ったはずにも関わらず、うめき声、身じろぎ一つせずにそれを耐えると、短く一言『感謝する』と言って……キュレーターと戦っているリューキュウに合流すべく駆け出していった。

 

 それを見て、はっとしたように立ち上がるMt.レディ。

 

「いっけない、ボーッとしてる場合じゃなかった。よし、治療ありがとね後輩達! でもここが危険なのは依然変わらないから……なるべく早く隙間見つけて逃げなさい? あんた達は確かに優秀で強いけど、まだ私達大人に守らr……」

 

「Mt.レディさん! 栄陽院さん! 少しよろしいでしょうか!?」

 

「れる立場でってよろしくないわよ!? 何なのさっきから人がいいこと言おうとするたびに!」

 

 と、途中で割り込んできた八百万のセリフに、またしても言いたいことを邪魔されたMt.レディが、さっきより幾分元気になったツッコミを返すが、それすら気にせず八百万は、

 

「申し訳ございません。その……若輩の身で恐縮ですが、1つ提案……というか作戦がございます。上手くいけば、あの巨大な『敵』……キュレーターを倒す力になるかもしれません」

 

「! それマジ、八百万?」

 

「はい、ただ……」

 

 そこまで行って、八百万はちらりとMt.レディの方を見る。

 やや機嫌悪そうな表情でふくれていた彼女だが、向けられる八百万の視線が真剣なものであることに気づき、たたずまいを直して聞く姿勢を取る。

 

「この作戦は……恐らく、Mt.レディさんを含めた、ここにいる全員が協力して初めて達成できるものです。生意気なことを言うようですが、もし叶うならば……お力添えをいただけないでしょうか?」

 

「……言ってみなさい、一応聞いてみたげる」

 

「! ありがとうございます! では……皆さん、こちらへ! 簡単にですが説明します!」

 

 と、どうやら八百万が立てた作戦を説明するために、後ろに控えていた面々にも、振り返って声をかけて……そこで永久は、さっきまでよりも生徒の数が増えていることに気づいた。どうやら、このわずかな間にここに合流してきていたらしい。

 

 とすれば八百万の作戦とやらは、おそらくその、新たに合流してきた生徒達の『個性』も含めてのものなのだろう。そう、永久はあたりをつけた。

 

 塩崎、常闇、それに……小大、泡瀬、黒色、そして青山。

 そこに八百万自身と、永久、そしてMt.レディが加わり……9人で円になったところで、八百万は自らの立てた作戦を説明し始めた。

 

 それを聞いて、永久は……

 

 

(やべえ、何それ!? 不謹慎は承知で……めっちゃ面白そう! 燃える!)

 

 

 

 




トゥワイスの『個性』について。

彼の『個性』は、計測してイメージさえしっかりできてれば、その場ででなくても増やせるようでした。トガちゃんみたいに、成長しちゃうと狂ってくるのかもですが。
なら、戦闘能力で優れる荼毘や死柄木以上に便利な黒霧を、逃亡生活中とかになぜ複製しなかったんだろう、と思いました。あれだけ便利な『個性』ですから、事前に採寸しといてもおかしくないでしょうし。
原作で『個性を消す針』を『イメージできないから増やせない』という場面があったんで、そこから解釈してこのように書きました。

もし何か自分が見落としてる部分とか設定があったら、後からしれッと直したりするかもしれないです。その時はすいません。
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