TSから始まるヒロインアカデミア   作:破戒僧

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第147話 VS 連合メンバー

 ―――バキィッ!!

 

 骨に硬いものが当たる鈍い、しかしどこか乾いた音が響き、小柄な少女……ビューティービスケットこと、ビスケット・クルーガーの小さな体が瓦礫の地面に転がる。

 

 振り抜いた巨大な磁石で彼女を殴り飛ばした男……マグネは、にんまりと笑顔を浮かべて、倒れたところから起き上がろうとする少女を見下ろしていた。

 

「ふふっ、すばしっこいのは噂通りね。武術の腕も一級品みたい。でも……やっぱりあなたの腕じゃ力不足みたいね。これなら虎ちゃんの方がよっぽど強かったかも」

 

 中身の性格と感性とは違い、むしろその見た目通りに接近戦に関して高い実力を備えているマグネ。林間合宿においては、その道のプロである虎を相手に、防戦一方にはなれど、危なげなくその『キャットコンバット』なる近接戦技能をさばき切っていたほどに、フィジカル、反応速度ともに一級品だった。

 

 接近戦において、増強系個性でもない限り……いや、たとえそうだとしても、本人の身体能力と言うのはどうしても重要なファクタである。

 それを鑑みれば、いかに技量が一流レベルであっても、目の前の華奢な少女の体躯から自分を脅かすものを感じられないのは、仕方のないことだった。

 

「別に私達、あなた達を皆殺しにしようと思ってここにいるわけじゃないの。個人的にはあなたみたいな人を傷つけるのは心が痛むし、そのまま寝てれば見逃してあげても……」

 

「ふふふ……もう勝った気になってるなんて……ちょっと気が早いんじゃない?」

 

 言葉を遮って……なぜか、心底おかしそうな声音でそんなことを言ってくるビスケ。

 

 それを聞いたマグネは、強がりか、と少し呆れた様子でため息をつくが……直後、まるで信じられないものを見たかのように、目をぱちくりとして白黒させる。

 実際に目の前で、信じられない光景が繰り広げられていた。

 

 起き上がりつつあるビスケの体が、膨れ上がっていく。

 

 強く握れば折れてしまいそうな細い腕は、丸太のような太さに、

 厚みも薄くはかなげな方は、鎧でも来ているかのように盛り上がり、厚くなり、

 ゴスロリドレスに包まれていた体は、内側からはちきれんばかりにパツパツになり、

 

 輪郭はおろか、身長や骨格すら変わり、冗談のような変貌が目の前で起こった。

 

 儚さすら覚える美少女にしか思えなかったビスケット・クルーガーは……鋼の筋肉に全身を覆われた、マグネや虎をはるかにしのぐ、筋骨隆々の巨体となり、そして……

 

「こうなる時は、1発殴らせてあげることにしているの。だってこうなると、大抵……」

 

 とっさにマグネは、本能的に危機を感じ……冷汗を流しながらも、手にしていた巨大磁石を眼前に構えて盾にし……

 

「大抵、一撃で終わっちゃって……ずるいからねェ!!!」

 

 

 ――ドッゴォオオォン!!

 

 

 その磁石を容易く粉砕し、ぶち抜いて叩き込まれた必殺の拳に、顔の形が変わるほどしたたかに殴りつけられ……インパクトの瞬間、既に意識を刈り取られていた。

 

 放物線を描いて吹き飛んだマグネは、磁石……だったものの残骸が派手に降り注ぐ中、どしゃ、と瓦礫の地面に墜落する。

 そのまま、ぴくりとも動くことはなかった。

 

 

 

「え、何アレ……え、何なんアレ?」

 

「あ、マグ姉さんやられちゃいました……ていうか、アレ誰ですか?」

 

「けろ……変身系の『個性』かしら?」

 

「……聞いたことある。『ビューティービスケット』は肉体活性系の個性持ちで、本気で戦う時はそれを使って極限まで肉体を強化して、すごい筋肉ムキムキのアマゾネスみたいな感じになるんだって……でも本人、その見た目好きじゃないからあんまり使いたがらないんだって。都市伝説かと思ってたんだけど……マジだったんだ」

 

 

 

(聞こえてるっちゅーの小娘ども……ていうか、今そんな噂になってんのね。まあ、都合いいけど)

 

 正確には、ビスケット・クルーガーのこの筋骨隆々の肉体と、偉丈夫のごとき彫りが深い顔は、『個性』で変身しているわけではない。むしろ、本来の彼女の姿がこの形であり……普段は『個性』の応用で体を極限まで筋肉を縮めることで、華奢な美少女になっているのである。

 

 理由は取陰が言ったそのまま。この姿が醜くて嫌いだから。

 

 なお、この真実を知っているのは、一部の親しい者のみ。永久やその母などくらいだ。

 

 

 ☆☆☆

 

 

(やばい、マグ姉がやられた……助けに行きたいが、こっちも余裕ねえし……)

 

 横目にその光景を見ていたMr.コンプレスだったが、彼を取り巻く状況も中々に切迫している。

 

 先程まで、物間の戦略によって遠距離で徐々に削られていた彼。そのままでもかなり苦戦と言っていい状況だったのだが……ここに来てさらに状況が悪化している。

 

「……一度だけ言う。そのまま投降しろ」

 

「そう言われてはいそうですかって頷くと思うかい、イレイザーヘッド」

 

「嫌なら別にいい。ただし……今の俺は機嫌が悪い。本物かどうかの確認もかねて、腕の1本や2本は覚悟しろ」

 

「……最近のヒーローの学校は生徒から教員まで物騒なこった」

 

 戦慄しながら後ずさるコンプレス。

 それを睨みながら、今度は相澤の隣に立つマイクが、物間に尋ねる。

 

「Hey、B組物間、あいつが『圧縮』の個性持ちで間違いねーんだよな?」

 

「……? はい、『個性』を使う所も見ましたので間違いないです。……それが何か?」

 

「……そうか、なら問題ない。それなら……白k……黒霧を回収して持ってるのもアイツってことで間違いないな」

 

 それを聞いてコンプレスは、『狙いは黒霧か』と解釈する。

 

 マイクの想像通り、コンプレスは今、黒霧(本体)と荼毘の2人を回収している。ゆえに自分が捕まるということは、連合メンバー一度に3人が確保されるに等しいと理解していた。

 

(どうにか離脱……いやしかし、さすがにプロ2人相手となると俺も……しかも何だか2人ともブチ切れてるような……? まあ、生徒をこんだけ騒動に巻き込まれりゃ無理もないかもだが……)

 

 何も事情を知らない彼が……かつての学友をもとに作られた……と予想される黒霧の回収に、イレイザーもマイクも、身を焼くほどの最大級の怒りを懸命に抑えていることなど、想像できるはずもなく、無理もないと言っていいが。

 

 

 

 ビスケによるマグネの撃破を皮切りに、現状は一気にヒーロー優勢に傾いていっていた。

 

 『最上位』脳無の撃破に成功した面々が手分けして、残りの厄介な脳無や連合メンバーへの対処に乗り出していた。相澤とマイクがこうしてコンプレスの目の前に現れたのはそのためだ。

 

 同じように、スピナーの元にはファットガムが現れ、トゥワイスのところにはサンイーターが、トガヒミコの元にはルミリオンが駆けつけた。

 

 ミルコを始めとした他のメンバーは、周囲の脳無への対処に動いている。

 

「ちくしょうがっ……」

 

 マイクの衝撃波を伴った大声で怯まされてからの、イレイザーヘッドの捕縛布により、あえなく捕縛されてしまうコンプレス。

 

 だが、万事休すと思われたその瞬間……捕まえた側であるはずの相澤が、ふと何かに気づいたように表情を変え……物間達をかばいながら、ばっとその場から飛びのいた。

 

 そして次の瞬間、相澤達が立っていたそこに、無数に枝分かれした金属の触手が突き刺さった。

 

「コレはッ……あーくそ、間に合わなかったかよ!? 誰だやりやがったの!?」

 

「ちっ……あと少しで物間に封印させられるところだったものを……!」

 

 何が起こったか理解して歯噛みするマイクと相澤。助かったのはよかったものの、何が起こったのかわからず困惑するコンプレスと、突然自分の名前がなぜか出てきてやはり困惑している物間。

 

 そんな彼らの眼前に、ズシン、と音を立てて……それは舞い降りた。

 そして、無機質に見える目に、しかし明確にわかる怒気を滾らせて……

 

「貴様ラ……ヨクモコノ私ヲ虚仮ニシテクレタナァァアアァアッ!? 許サン、許サンゾォオ!!」

 

 全身金属質の軟体という特徴を持った、『最上位』の脳無が咆哮した。

 

 

 ☆☆☆

 

 

 時は少しさかのぼり……それが起こったのは、峰田達とトゥワイスが戦っていた場所でだった。

 

 瀬呂と峰田を相手に立ち回っていたトゥワイスだったが、そこにさらにサンイーター……天喰環が参戦してきたことで一気に追い詰められつつあった。

 

「ちっくしょう、3対1って卑怯じゃねえのか、それでいいのかよ未来のヒーロー様よぉ!? 戦いってのは非常なもの、手段なんか選んじゃいられねえんだよな!」

 

「うるさい黙れ……卑怯と言われようが後輩が見てようが緊張して胃が痛いのなんかに負けるな頑張れ俺……なんかすごい『助けに来たぜ』って感じで登場した、してしまっただけでもプレッシャーになってることなんか忘れろ、負けるな俺……こんな敵の言葉に耳を貸すな……!」

 

「はっはっはー、知らねえなこの全身タイツ野郎ォ! 勝てばよかろうなのだァ―――!!」

 

「峰田お前、援軍が来たら調子よすぎ……」

 

 雄英ビッグ3とまで言われる先輩であり、ファットガム事務所でのインターン生として現場で既に活躍している天喰の加勢により、一気に優勢となった現状に安心したがゆえの露骨な復調。

 そんな峰田に対して、気持ちは理解しつつも、瀬呂は呆れており……加勢しに来た当の本人である天喰がむしろ緊張している。

 

 そして当然ながら、一気に追い込まれたトゥワイスは、言葉の上では軽口を叩きつつも、どうにかしてこの場を打開しようと、パニック寸前の頭を必死に回していた。

 

 しかし、それも空しく、マグネが倒れ、トガヒミコとスピナーも、援軍として現れたルミリオンとファットガムに防戦一方。コンプレスの方には、プレゼント・マイクとイレイザーヘッドの2人が。

 

(ちくしょう、このままじゃ……皆捕まっちまう! 何か、何かないか……ッ!!)

 

 多勢に無勢。しかもその『多勢』の方が、非常に強力なヒーローとその候補生達。

 このままでは遠からず、『敵連合』は全滅する。そう危惧したトゥワイスだったが、その時、彼の『個性』を介してある情報が飛び込んできた。

 

 そのことに最初、一瞬、トゥワイスは絶望しかけたものの、即座に頭を切り替え……今頭でわかっている情報を整理し、ここからとれる最善の策を導き出し……実行した。

 

「調子に乗ってるなよヒーロー共……! こっちにだってなぁ……守りてえもんや、貫かなきゃならねえ意地ってもんがあるんだよ!!」

 

 言いながら、トゥワイスは『二倍』を発動する。

 

 どうやってかはわからないが、既に出したコピーの片割れである、黒霧が消滅させられたのを、トゥワイスは感じ取った。

 これで逃げる手段も失ってしまった形になるが、代わりに『二倍』の枠が1つ空いた。それを利用し、即座に作成したのは……荼毘のコピーである。

 

 連合の中でも危険な、戦闘能力が特に高い1人として聞いていた者の出現に、否応なしに緊張感を高めるが、

 

「荼毘ィ!! 行けェ!! 行ってくれ!!」

 

「増やして直後に人使いの荒い奴だな……しかも3人相手かよ」

 

「いや違う、こいつらの相手はしなくていい! お前は……」

 

 最後だけ小声で言われたその指示を受けて、荼毘は即座に動いた。

 トゥワイスの言葉通り、3人の相手をするのではなく、いなすような形でその場を離脱し……困惑する3人を放って、その場所目掛けて走る。

 

 その狙いに少しして気付けたのは……戦っていた当事者だった、天喰だけだった。

 

「……まさか! まずい! 君達、ここを一旦任せる!」

 

「え、ちょ、ちょっと先輩!?」

 

 ケンタウロスのような姿に一瞬で変身し、荼毘を追う。その姿を、信じていた者に裏切られたような絶望の表情で呼び止める峰田と、一体何が起こったのかと困惑する瀬呂。

 

 それをさらに背後から見るトゥワイスは、隙を見せている彼らを追撃するでもなく、

 

「……見えてたんだよ……何でか知らないけど、さっきから味方のはずの脳無が脳無を攻撃して捕まえてるのが……それってつまり、そういうことだよなあ……!? 体育祭見てたぜ? 確か、簡単に解除されちまうんだよなあ!」

 

 ここを突破してそこに行くために、最も攻撃力と射程距離のある荼毘を選んだ。

 

 加えて、トゥワイス自身は狙ったわけではなかったが、荼毘の青い炎を操るという個性は、物理攻撃を無効化してしまうというその体質に対しても相性が良かった。

 

 ただの衝撃……殴った程度では、相澤達が予想していた通り、その防御力ゆえに無効化されてしまう可能性もあったからだ。

 

 間に合え、と天喰が必死で走るも、開いてしまった距離を縮めるには至らず、焦る天喰をあざ笑うように、荼毘は前方に見えたそれに目掛けて、青い炎を放つ。

 

 そして……

 

「……オノレ……」

 

 炎を吹き付けられた熱とダメージによって、傷を負いつつも……即座に『超再生』でそれを回復させ……同時に、地の底から響くような声を、それは、絞り出す。

 

「オノレェェエエェエ!!」

 

 心操の『洗脳』から解放されてしまった『最上位』脳無は、こうして意識を取り戻した。

 

 

 

 相澤は最初、コンプレスを確保後、物間に『圧縮』をコピーさせ、それによって『最上位』を封印し、確実に回収するつもりだった。

 

 しかし、あと一歩でというところで、最悪の脅威が解放されてしまったことに、さすがに焦りを隠せない。

 反射的に物間達生徒を背にかばいながら、『最上位』の殺気のこもった視線を受け止める。

 

 個人差はあるが、心操の『洗脳』は、かかっている間もうっすらと意識がある。

 それゆえに、はっきりと意識していたままでではないが、いいように使われていたという屈辱を身に受けていた『最上位』は、怒りのままに吼える。

 

「許サン、許サンゾイレイザーヘッド! プレゼント・マイク! 楽ニ死ネルト思ウナヨ!!」

 

「改造人間にしちゃ随分高性能なこった……そんな風に感情まであんのかい? それとも……もとになった人間の影響か?」

 

「ターミネーター感もだいぶなくなっちまったな。結構人間味あるじゃねーか、HAHAHA」

 

「黙レ! 貴様ラハココデ……イヤ貴様ハ後ダ! マズハ、貴様ラガ大事ソウに庇ッテイル、ソノ生徒達カラ……」

 

 しかし、その『最上位』や相澤、トゥワイスらも予想もしないところから……さらにそこに介入する者が現れた。

 

「無粋なことを考えるものではありませんよ。すでにその命を燃やし尽くした者なれば……今の世を生きる者達にちょっかいを出すのもよろしくない。分をわきまえてはいかがです?」

 

「「「!?」」」

 

 上空から聞こえた声。

 

 それに、相澤達がはっとして上を向くと同時に……『最上位』を除く全員が、突如、その場から大きく飛ばされた。しかし決して乱暴に、ダメージを与えるような形でではなく、あくまでそっとどかすように。

 

 幾人かは、自分の体の一部に、一枚のしなやかな翼が引っかかっていることに気づけただろう。

 

 同時に、追撃しようとする『最上位』の触手を、上空から降り注ぐ何本もの光の矢が貫き、弾き、妨害する。

 

 上空にいたのは、2人。

 大きく翼を広げて飛翔し、その翼……『剛翼』を飛ばして『範囲内』にいる者を避難させる、No.3ヒーロー・ホークス。

 そしてその横にいる、黄金の鎧と背中に翼を持つ、弓を構えた鳥人。しかしその姿はすぐに崩れ……軍服姿の異形、パンドラズ・アクターとなった。

 

「遅くなってすいませんね、イレイザー、マイク。もう少し前についてたんですが……ちょっくら外側で一仕事してきたもんで」

 

「外側?」

 

「ええ、崩壊した市街地部分に取り残されてた要救助者の救助と、そっちにまではみ出して暴れてた『脳無』です。どっちもかなりの数だったんで、苦労しました」

 

「最低限我々がやるべきことは済ませましたので、後はウワバミ氏ら、感知系の『個性』を持つヒーローや、警察や救助隊に任せています。遅くなったお詫びと言ってはなんですが……その者は、私が処理いたしましょう」

 

 そう言って、浮遊状態を解除して、周囲に誰もいなくなった状態で、たた一体そこに残る『最上位』の前に、パンドラズ・アクターは降り立った。

 

「処理スルダト? 貴様1人デ、コノ私ヲカ? 戯言ヲ……」

 

「戯言かどうかは実際に体験してみて判断すればよろしい。横から出てきて手柄を奪うようで、少々気は引けますが……まあ、相性を考えれば、こうするのが最善」

 

「モウイイ……ソンナニ死ニタイノナラ……今スグ死ネ!!」

 

 そう言って触手を殺到させる『最上位』だが、それよりも早くパンドラズ・アクターは変身を終えていた。

 

 白磁のごとき骨の面に、豪奢な装飾のついたローブを身にまとい、眼窩の奥に赤く光る目。

 その姿は、表現するならば……『死』そのもの、『死の支配者』といった風貌だった。

 

 同時に、地面から無数の白骨のようなものが現れ、『最上位』の全身を貫き、絡めとるような形でその場に縫い留める。

 

「コンナモノデ……」

 

「この姿、この力は……できればあまり使いたくないのですがね。強力過ぎて、味方を巻き込む……いやそれ以前に、ヒーローとしての戦いに、あまりに向いていない」

 

 特に『最上位』の反応を気にした風ではなく、パンドラは続ける。

 その背後に突如として、機械仕掛けの時計版のようなものが現れ……カチコチと時を刻んでいく。12時の位置にあった針が、文字通り時計回りに進んでいく。

 

 その光景に、改造人間であるはずの脳無が、言いようのない怖気を覚える中、

 

「何より、この方との思い出は私にとって大切なものだから……。私の『個性』は、あまり強い力を使いすぎると、その変身した相手との思い出が少しずつ消えていく……できることなら、風化させないままにしておきたい。しかし……そうも言っていられません。ここで自分のことを優先して場を見逃してしまえば、それこそ申し訳が立ちませんから。……『困っている人がいたら、助けるのは当たり前』……そうですよね、父上」

 

 その馬力で持って骨の拘束を砕き、白骨の魔王めがけて突進する『最上位』。

 

 しかし、その瞬間……針が12時に戻り、そして……終焉が訪れた。

 

「『The goal of all life is Death(あらゆる生ある者の目指すところは死である)』。見るがいい、命無きものにすら死を与える力を……」

 

「死ネェェエエェエ!!」

 

 

 

嘆きの妖精の絶叫(クライオブザバンシー)

 

 

 

 その瞬間、絹を裂くような女性の悲鳴のような音が響き渡り……範囲内にあった全てが、まるで死柄木の個性を使われたかのように、砂になって崩れ去った。

 瓦礫も、鉄屑も、大地も、水も……そして当然、『最上位』の脳無も。

 

 触手の1本、肉片の一欠片も残さず……自分の死すら悟ることなく、跡形なく……この世から姿を消した。

 

「既に役目を終えた命。せめて、安らかに」

 

 その姿を元に戻したパンドラズ・アクターは、軍帽の位置を確認して直しながら、風に吹かれて散っていく砂の行方を……どこからどこまでが何だったのかすらわからなくなったそれを、見送った。

 

 

 

 




Q.父う……アインズ様出る?

A.出ません。ネタだけです。
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