TSから始まるヒロインアカデミア   作:破戒僧

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第149話 名もなき英雄の拳

 

 交差する攻撃と攻撃。

 

 一見すれば、先程までの戦いの焼き直し、延長上のようなものになっているが、死柄木と緑谷の戦いは……徐々にその様相を変えたものになってきていた。

 

 自分を縛る鎖を引きちぎるかのように、まるで見た目も態度も、まるで肉食獣のように激しく、しかししなやかな動きで襲い掛かる死柄木。その手に触れたものは、生物、無生物、無機物、有機物を問わず崩壊し、塵となって風に散っていく。

 

 かと思えば、攻撃を受ける側に立ったとしても、その『崩壊』と、驚異的な反応が牙をむく。

 相手の攻撃に合わせてそれに手を触れ、攻撃が形になる前に『崩して』しまうことで無力化する。『攻撃は最大の防御』を体現するかのように、相手の繰り出す刃を破壊してしまう。

 

 たった1つの手札、その使い方で相手を翻弄し、何一つ形にさせずに、『関係ない、全部壊す』と言わんばかりに猛威を振るう。

 むしろ攻撃も防御も、考えて戦うことすら鬱陶しい、煩わしいと言わんばかりに、自分を縛る者、妨げるもの……分け隔てなく全てを塵にする。

 

 まるで、自由になっていくごとに強さを増していくかのようなその姿は、その心情通り、『全てを壊す者』そのものだった。

 

 そんな死柄木だからこそ……社会の評価や、自分を縛るルール……色々なしがらみを抱えつつも、精一杯その中で輝き続け、夢へ向かって歩み続ける緑谷の姿は……他の何よりも、自分と近いにも関わらず、絶対に理解できない……何よりも『壊したい』と思えるものだったのかもしれない。

 傷つき、体をひび割れさせながらも、一歩も退かずにあがき続ける1人の『ヒーローの卵』を塵にして、その向こうに見える、いびつな地平線を眺めたかったのかもしれない。

 

 そんな光景を求めて、死柄木が突き出した手は……空しく空を切り……

 

 ―――バキィッ!!

 

「がっ……!?」

 

 代わりに……その頬に、緑谷の拳が突き立てられた。

 

 殴り飛ばされつつも、空中で体勢を立て直して着地し、すぐさま緑谷に向き直った死柄木は……一目見てその姿に違和感を覚える。

 一瞬前の緑谷の姿と……今もそうであるはずの姿と、今見ている緑谷の姿が、あまりに違っていた。

 

(こいつ……傷は……ひび割れはどうした? なぜ……治ってる……!?)

 

 数分前のせめぎあいの中、自分の『崩壊』の手が掠ったことで、ひび割れる形で傷を負ったはずの緑谷。その顔と腕。

 腕はまともに振るえないくらいにはなっていたはずだし、顔は目が開けられないくらいの傷になっていたはずだ。

 

 それが、両方ない。

 血や土埃の汚れはあるが、傷がない。目はきちんと開いているし、そもそも今、思い切り振りぬいて自分を殴ったのは……ひび割れたはずの『右』だった。

 

 コスチュームの破損は、どうやらそのままのようだが。右腕のサポーターにもなっているグローブが破損し、肌が見えている。そしてその肌に、やはり傷はない。

 

(こいつの『個性』は増強系のはず……これじゃあまるで、再生系みたいな……)

 

 不思議に思う死柄木の目の前で、さらに不可思議な出来事が起こる。

 緑谷の左手が、右腕のコスチュームの破損した部分に添えられたかと思うと……次の瞬間、

 

 ―――バツン!

 

 そんな音と共に……コスチュームの破損が『修復』された。

 

 その光景に加えて、死柄木の耳に届いたその『音』は……強烈に聞き覚えのあるそれだった。

 数日前、その男を助け出した時に見た……目の前のこの男が持っているはずのない『個性』によってもたらされるもの、だったはずだ。

 

(間違いない、今のは『オーバーホール』の……何でこいつがそれを使える!? 報告にあったエネルギーの紐といい、さっきの再生といい……こいつの『個性』は一体何なんだ? いや、むしろ……こいつの『個性』に、こいつ自身に、何が起こってる……!?)

 

(……そんな風に、多分死柄木は考えて、戸惑ってるはず……。無理もないだろうな、目の前で、使えるはずのない力や、使い手が違うはずの力をポンポン使われて、しかもそれがどんどん『増えて』いく……僕自身戸惑ってるくらいだ。その原因、というか犯人を知らなければ、パニックになってたかもしれない……でも、今の僕のははっきりわかる。この力は……彼女のおかげだって)

 

 そして、緑谷は再び構えを取る。

 

 今の『修復』により、右腕だけでなく、それ以外の個所も……コスチュームの破損は全て修復されていた。万全の状態となって、緑谷は死柄木に向き直り……その目で、力強く死柄木を見据える。

 

(彼女の力は、僕の力……前に彼女自身が言ってくれていた通り、全てを僕に捧げてくれている……そして今きっと、彼女は僕のために動いてくれている! 体の中に感じる力が、どんどん大きくなって、しかもどんどん『増えて』いくのがわかる……! 少し怖い、けど……怖がる必要なんかないんだ! これは僕の力……彼女が捧げてくれている力……なら、使いこなしてみせる!)

 

 緑谷の心の中、困惑と恐怖を乗り越え……それにより、極限まで思考が研ぎ澄まされていく。

 

 己の肉体と『個性』を最善の形で使うために、余計な考えが抜け落ち、余計な力がそぎ落とされ……荒々しく散っていた『フルカウル』の火花と、周囲を照らす『サイコフレーム』の光が、静謐な、澄んだ輝きに変わっていく。

 

 思考を放棄したわけではない。むしろ、極限まで集中して、なおかつそれがストレスになりえないほどの自然体を保っている。

 今、目の前にある戦いのため、なすべきことを成すために、全ての力を使う準備が……知識、経験、本能、直観、全てを総動員して戦う準備が整いつつあった。

 それこそ、今まで使ったことがないはずの力であろうと。膨大な経験と、研ぎ澄まされた感覚、そして、リアルタイムで彼女と繋がっている絆が、それを可能にしていた。

 

 今まさに彼は、限界を超え……『兆』から『極』に手を届かせんとしている。

 

 言葉にできない寒気を感じた死柄木が駆け出すと同時に、緑谷も地を蹴り……しかし、先程までとは比べ物にならない速さで死柄木に接敵する。

 

 驚きつつも突き出された手を、緑谷は空中で、ありえない軌道で飛んで回避した。

 しかも、先程見せた、技の反動による強引な軌道変更とは違う。まるで空を飛んだかのような、急激で、なめらかで、予備動作も何もない動きだった。

 

 それゆえに体勢を崩すこともなく、横合いからの蹴り……『セントルイススマッシュ』が死柄木の肩に突き刺さる。

 

 間一髪、逆方向に跳ぶことでその衝撃を逃がし、またその間に手を割り込ませて、『崩壊』によるカウンターを成功させた死柄木。蹴り飛ばされて地面に転がりながらも、攻撃した緑谷の足が、膝のあたりまでひび割れていくのを目にし……

 

 しかし、『バツン!』という音と共に、即座にそれが無に帰してしまう。

 血すら噴き出していた足は、コスチュームごと即座に修復され、1秒後には力強く地面を踏みしめて、再び自分の元へと跳んでくる。またしても、凄まじい速さで。

 

 今度は死柄木は回避を選択した。邪魔な瓦礫を『崩壊』させて道を作り、ぎりぎり緑谷とすれ違うようにして回避し……その瞬間、違和感に気付く。

 

(風……? 今、すれ違った瞬間、猛烈な風が……)

 

 まるで、緑谷に対してだけ、強烈に追い風が吹いているような感覚を覚えた。

 

 しかしその直後、何もない空中で緑谷は突如方向転換して蹴りを放とうとしてくる。

 

 それを受け止めようと死柄木は手を突き出すが、足の動きはフェイントだった。

 どう勢いをつけても無理だろうと思うような動きで緑谷は、またしても空中で移動してその場を退避し、代わりに腕からエネルギーの紐……『黒鞭』を伸ばして死柄木の手をからめとってくる。

 

 死柄木はそれが引っ張られるのを感じながらも、とっさに手でそれに触れる。

 

 実体がないエネルギーの塊であるにもかかわらず、煩わしくも死柄木を縛っていた『黒鞭』は、その力に負けて崩壊した。

 

 非実体のものですら崩壊させられるのか、と思ったのだろう。わずかに緑谷の顔に動揺が浮かび……しかしそれによって動きが止まることはない。着地し、再度死柄木目掛けて跳ぼうとして……しかし、突如横に飛びのいた。

 

 緑谷はもちろん、死柄木にとっても予想外なことに、1体の脳無が背後から緑谷に襲い掛かっていた。あっさりと回避されてしまったが、どうやらパワータイプらしいその脳無の一撃は、瓦礫の地面を砕き割る。

 

 しかもその横合いから、もう1匹、脳無が走ってくるのが見えた。

 どうやら、ヒーロー達の対応を生き残っていた脳無がまだいたようだ。

 

 どちらも体の色は白。中位のようだが、利用できるか、と一瞬考えた死柄木だったが、その望みは即座に絶たれることになる。

 

 緑谷は回避直後にその脳無の傍に戻ると、その頭にぽんと手を乗せ……勢いよく地面にたたきつけた。

 そして、次の瞬間……バチバチバチ!! と派手な音を立てて、その手から電撃が放たれて……盛大に脳無を感電させ、動きを止めたのである。

 

 ショックで動けなくなったらしい脳無を、はるか遠くまで蹴り飛ばし……その直後に到着して襲って来た、もう1体の脳無の攻撃を、腕1本で緑谷は受け止める。

 

 その脳無の体の大きさ、腕が振るわれた瞬間の猛烈な風切り音を鑑みれば、見掛け倒しであるはずがない、先程の脳無と同等かそれ以上であろう膂力による一撃。

 それを、ケガ一つなく受け止めた緑谷は……次の瞬間、裏拳を叩き込み……それと同時に、よく見ないとわからないが。追加で発した衝撃波で脳無を吹き飛ばした。

 

 狙ったのか偶然か、ちょうどその射線上にあった瓦礫の山に突っ込んで、そのまま崩れた瓦礫に埋もれる形になり……戻ってくる気配は、ない。

 

(どういうことだ、さっきから……もう、複合型とか、隠された力とか、そんなレベルじゃねえぞ……まるで、どんどん使える力が増えていってるような……! どんなからくりだ……?)

 

 死柄木がそれを理解できないのは当然であるし、なんなら緑谷自身、なんとなく察しているとはいえ、どういう仕組みで力を使えているのか、力が増えていっているのかを理解しているわけではない。

 暫定名『身勝手の極意』により、その身に備わった力を最高効率で使うことができているに過ぎない。その詳しい仕組みまではわかっておらず……しかしその代わりに、その主犯であろう、自分に全てを捧げている少女を、信頼していた。

 

 そして、その少女はと言えば……

 

 

 ☆☆☆

 

 

 叩き伏せて地面にめり込ませ、ぴくぴくと痙攣している、1体の脳無。

 その脳無の頭を手でわしづかみにしていた永久は……ゆっくりとその手を放し、脳無を放置してその場から走り去る。無論、もう脳無に動くだけの力がないことは確認した上でだ。

 

 力がないというか、今まさに永久が奪ったのだが。

 力も……『個性』も。

 

「これで6匹目……6個目の『個性』、よし、順調順調」

 

 彼女がやっていることは実に単純である。

 

 まず彼女は感覚的、ないし直感的に、自分と緑谷の間に『個性』によるつながりができていることを理解していた。

 

 それが、自分の中に隠れていた……個性因子という形で確認できずとも、確かにそこにあった、実の父親の『個性』……『同調(シンクロ)』によるものであるということも。

 緑谷が心の底から『欲した』ことにより、今しがた完全に覚醒した『オール・フォー・ユー』……そこからもたらされた気付き、確信……その1つだった。

 

 永久の父親そのものについては、今触れて説明するべきことではないがため、省くことになるが……その『個性』は、他人と感覚や感情をリンクさせる『同調』というものだった。

 自分が見ているものを他人にもそのまま見せたり、自分が感じた『感情』を相手に伝えたりすることもできた。その逆も然りだ。

 

 緑谷に発現した謎の能力『感情感知』は……実は、ワン・フォー・オール由来のものではなく、この『同調』の影響、その片鱗だった。

 幾度となく永久から『エネルギー』の譲渡を行う中で、彼女の中にあった力の因子の中で、最も相性がよく、最も緑谷が求めるそれに近い能力である『同調』が、彼に根付いてその力となり始めていたのだ。それこそ、もともと因子を遺伝的に保有していた、永久よりも早く。

 

 これにより緑谷は、他者の感情を感知することができるようになり……そして永久との間においては、クルーザーの時の最終局面でそうだったように、互いに互いの存在や感情を感知できるまでの力になっていた。

 

 そして、その『同調』の力が双方に極限まで高まった上で、『オール・フォー・ユー』の特異性である『変容』と合わさった結果として発現したのが……緑谷と永久の間での、『保有する『個性』の共有』という能力だった。

 

 読んで字のごとく、緑谷は永久の、永久は緑谷の持っている『個性』を使うことができる。

 

 ゆえに緑谷は、永久が持つ『オーバーホール』や『気象操作』を使うことができ、永久もまた今……緑谷の『黒鞭』を使って、離れたところにいる脳無をからめとり、引き寄せて叩き伏せる、ということを繰り返している。

 

(っ……扱いづらっ……緑谷、よくこんなの自在に使えてるな……最近じゃ、出し続けてられる時間もかなり伸びてきてるっぽいし……やっぱすごいわ。でもまあ、それなら私は私で……今、私にできる最善の手を尽くすだけだけどっ!)

 

 無論、ただ単に闇雲に脳無を叩き伏せているわけではない。その先に目的あってのことだ。

 

 動けなくした脳無の頭を、またわしづかみにし……永久は、『オール・フォー・ワン』を……ナインから奪い取った、『個性』を奪う『個性』を発動する。

 

 脳無の中に格納されていた『個性』のうち、お目当ての『個性』が、自分の中に流れ込んできて、自分のものになる感覚を、永久は味わっていた。

 

 それが終わると、永久はまた脳無を開放し、走り去る。

 

「よし……『空気伝導』ゲット……これで、『超再生』『衝撃吸収』『エネルギードレイン』『残像』『受け流し』『高速反応』……合わせて7つ目か。いいのが集まってきてる……よし、続き!」

 

 永久はそのへんに山ほど転がっている『脳無』の中から、緑谷に相性がよさそうな、ナインから奪った能力の一つである『個性看破』の目によって、接近戦向けの『個性』を選んで、片っ端から奪って回っていた。そしてそれを、リアルタイムで緑谷と『同調』させて共有することで、どんどん緑谷の戦闘能力を強化していっているのである。

 さらに、無意識のうちにではあるが、緑谷により使いやすくなるよう『変容』させて調整して。

 

 1つ、また1つと、緑谷は使える『個性』が増えていっている。

 

 そんなことをすれば、常人であれば頭の処理が追い付かず、かえって混乱してしまうだろう。しかし、思考による負担を極限まで0に近づけて、体全体が考えて戦う『身勝手の極意』により、緑谷はその問題を解決していた。

 

 その結果が……今まさに死柄木が目にしている、緑谷の急変である。

 

 『気象変動』で起こした暴風を纏って加速し、空中を自在に飛び回る。攻撃にけん制に自在に使える電撃も、合わせて使いこなす。

 『衝撃波』によって、直接触れない位置から、広範囲に攻撃を届かせる。

 『超再生』により、下手な傷は即座に治癒してしまう。

 『オーバーホール』により、コスチュームの破損すら即座に修繕する。

 『衝撃吸収』により、かつてのUSJの脳無のように、打撃攻撃はその威力を吸収されてしまい、ほとんど意味をなさない。それを超えて通った衝撃や、蓄積している衝撃も、今度は『受け流し』によって大部分が無力化されてしまう。そしてわずかなダメージは、『超再生』が帳消しにする。

 

 今はまだ使えていないだけで、永久の持つ個性はまだ他にも……『バリア』や『サメラ』、『爪弾』などまだまだあるし、現在進行形で『個性』を奪って増やしている。際限なく強くなっていく。

 

 まさにチート、理不尽そのものと言えるほどの強さを、緑谷は手にしつつあった。

 

 勝てない。

 このままでは、負ける。

 

 死柄木の脳裏に、否応なしにそんな予感がよぎる。

 

 実際それは正しいのだろう。いかに『崩壊』が凶悪な『個性』でも、それを超える再生能力と、それを突破してくる攻撃力を相手が持っていれば……刃が自分に届きさえしてしまえば、負けるのは自分だ。それをリカバリーするだけの手札が、自分にはないのだから。

 

 否応なしに、焦りも生まれる。苛立ちも、怒りも。

 

 しかし、死柄木が一番今苛立っているのは……理不尽なパワーアップで覆されようとしているこの状況ではない。それに対して手も足も出せない、自分にでもない。

 

(何だよ、お前……何なんだよ、その目は!? 顔は!?)

 

 今もまた、自分を蹴り飛ばした緑谷が、その顔に浮かべている、表情。眼差し。

 

 極限まで戦闘に集中した状態でありながらも浮かんできてしまう……彼のいわば『本質』とでも呼ぶべきもの。

 

(何で、勝ってるお前が……そんなに苦しそうにしてる。何で俺に、そんな目を向ける!? そんな……可哀想なものを、見るような目を!!)

 

 

 ☆☆☆

 

 

 もしかしたら、自分もこうなっていたのかもしれない。

 形成が逆転する前と後を問わず、緑谷の心の中には、こんな思いが常にあった。

 

 『無個性』……この超人社会においての、マイノリティそのものだった過去。

 

 普通に生きるだけなら特に問題はない。もとより私的な『個性』の使用が半ば禁じられている世の中だ、使えなくても、日常生活で困ることはない。せいぜい、少し生活において便利なアドバンテージが――それすら『個性』によるだろうが――ないくらいだ。

 

 が、ヒーローになる、という夢を見るのにおいては致命的だったそれ。

 たったその一点だけで、将来が全て閉ざされたような気持ちだった。そんな気持ちのまま、それが明らかになってからの10年という期間を過ごしてきた。

 

 なんで『個性』がないだけでそうなるんだ、どうして自分の人生は、最初から、スタートラインにも立てないんだ……そんな風に考えたことは、ないとは言えない……どころではない。

 1回や2回ではない。数えるのも忘れたくらいに、幾度となく心の中に覚えた思いだ。

 

 本当なら、そのままゆっくりと腐っていく、あるいは、どこかできっぱりと諦めをつけて、『無個性』なりの人生を歩み始めることになるはずだったのかもしれない。

 

 幸運にも、オールマイトに出会い、見込まれて、『ワン・フォー・オール』を受け継ぐという将来を手に入れたがゆえに、自分はこうしてヒーローとしての人生を歩み出している。

 

 それどころか、学友に恵まれ、着々と力を磨き上げ、既にプロでも十分に通用するとまで言われるほどの力を手に入れている。学内でも一目置かれるまでになり、先輩や現役プロからの覚えもめでたく、さらには、自分を慕い、全てを捧げて尽くすとまで言ってくれる人もできた。

 

 そしてその人……永久の献身により、今自分は、さらなる上のステージへと駆け上っている。それこそ、どんなプロヒーローでも手にすることのできないような、超人社会にあってなお常識外と言うしかないような力すら手に入れて。

 

 しかし、それらがもしなかったら?

 あるいは、全く別な何か『力』や『きっかけ』を経てしまっていたら?

 

 暗く淀んだ心、閉ざされた未来、希望の持てない人生……そこにもし、何もかも全て壊すような……社会も、法律も、ヒーローすらも……何もかもが妨げでしかないような力が手にあったら?

 あるいは、手を差し伸べてくれたのが、眩いばかりの光の元に生きるヒーローではなく、闇の世界にその名を響かせる絶対者であったなら。

 

 自分は……自分も……全てを憎み、全てを壊す者になっていたのかもしれない。

 

 オールマイトに見込まれた自分と、オール・フォー・ワンに見込まれた死柄木、

 力を持たなかった自分と、望まぬ力を持ってしまった死柄木、

 

 両者を分けた壁は、実はそれほど分厚いものではないんじゃないか。そんな風に、緑谷は思った。

 

 そして、それを理解した上で……緑谷は、拳を握っていた。

 

 例え自分達が似ていても、だからといって、それで自分が死柄木の思いを理解できたわけではないし、理解できたとしても何かが変わる、変えられるわけでもない。

 死柄木はもう、言葉では止まらない。家族にすら拒絶され、傷つけられ、その果てに全てを失い、自分で壊しすらした死柄木に……今更もう言葉は届かない。

 

 それでもなお、彼を止めようと思ったなら……道を分かった自分の思いを伝えようとするなら……もう、正面からぶつかるしかない。

 

 無論、殴って言うことを聞かせる……というわけではない。それでは何も変わらない。

 ぶつかる、受け止める、ここが重要なのだ、と緑谷は心のどこかで理解していた。

 

(鍵は……死柄木の記憶の中で触れた、あの感情……いくつも『似ている』所のあった中で、唯一『同じ』だと思えたあの部分!)

 

 

 

『違うんだよ、お母さん……』

『俺が……お父さん達に……』

 

『そうじゃないんだ……あの時、僕が……』

『そうじゃない……あの時、俺が……』

 

 

『『本当に、言ってほしかったのは……!』』

 

 

 ☆☆☆

 

 

(生まれる前に突き放された。生まれてからずっと押し込められてきた。禁じられ、責められ……皆、父をかばって、自分には『泣くな』というばかり。誰も俺を、見ているようで見ようとせず、波風立つのを嫌って、我慢しろと言い、何もしてくれなかった!)

 

(俺の中で、あれは……家族を失ったあれは、悲劇なんかじゃない……今、こうしてここに立っている俺は、不幸なんかじゃない! 『不運』も『間違い』も、全部的外れだ! 血筋も、思いも、何もかも関係ない……俺は……死柄木弔は、生まれるべくして生まれ、来るべくしてここに来た!)

 

 

『恐れるな』

『何をしてもいい。手の中にあるもの……握って潰すも、転がして遊ぶも、全部君が決めていい』

『憎悪と愉悦を重ねられたなら、君は自由だ』

 

(遮るもの、縛るもの……全部思いっきり壊すと愉しい……スカッとする……!)

 

(俺は自由だ。何をしてもいい、そんな気分になれる。今までも、これからも……そのためだけに、俺は壊し、滅ぼし、笑う……それを望んで、ここにいる……だから……!)

 

 

「そんな、憐れむような目で……俺を見るな! 緑谷出久!!」

 

 

 ここにきてさらに、死柄木の『崩壊』は強力になっていく。

 

 掠っただけでひび割れが全てを砕く。しかしその瞬間に緑谷はそれを『修復』する。

 恐れも何も抱くことなく……いや、違う。抱いて、それも飲み込んで、歯を食いしばって……自分に向かってくる。

 

「人の気持ちも知らないで、わかったような気になって、いかにもな正論を口先で嘯く……!」

 

 何度崩しても、何度壊しても、止まらない。

 

「お前が……お前らが、嫌いだ!」

 

「あっそう! で!?

 

「……は!?」

 

 帰ってきた予想外の、あんまりと言えばあんまりな言葉に、一瞬呆気にとられる死柄木。

 それに構わず、緑谷は全力のまま、腹から声を出す。

 

「それで!?」

 

「それで、って……お前、何を……!?」

 

「それで何だ!? 嫌いだからなんだ!? 言いたいことがあるなら全部言え!!」

 

 次々と緑谷の口から出てくる言葉。

 その1つ1つは、さして難しくもないもので……まるで、思いついたことを片っ端から言っているかのよう。

 

 しかしだからこそ、1つ残らず、死柄木の耳に、頭に突き刺さる。

 

「っ……言ってどうなる……!? もしかして、お前が助けてくれんのかよ!?」

 

「何だよ、お前助けてほしいの!?」

 

「バカか! もう誰もそんなこと思っちゃいない……何を言っても誰も何も変わらないし、何もしてくれない! そんなことはもうわかってる! だから決めたんだよ、全部ぶっ壊すって! もう誰が……誰が助けなんか欲しがるか! わかった気になってるんじゃねえよ! お前が俺の……」

 

「わかってもらった気になるんじゃない! お前の気持ちなんか誰が知るか!」

 

「はぁああ!? 何……っだよさっきからお前!? わかったとかわかってないとか……」

 

「わかるわけないだろ!? 僕はお前じゃない! それ以前に、お前が何も言わない、わかってもらおうとしないんだから、そんなんで自分のことをわかってもらえるはずないだろ! 僕はただ……お前が、まだ何も、言うべきことを言ってないってのが、その結果こうなったのがわかるだけだ!」

 

 気がつけば2人、喉が張り裂けるのではないかと思うほどの音量と必死さで言い合っていた。

 一瞬のタイミングのずれで命が落ちるであろう、極限の殺し合いの中で。

 

 それでも……一言一言を、真剣に。

 

「本当に欲しいものがあるなら……目指したいものが、向き合いたいものがあるなら! 全部投げ捨てたり、全部壊すより先に、やらなきゃいけないことがあるんだよ! それに気づかずに、もうダメだって決めつけて、何も言わずにふさぎ込んで、全部抱え込んで、勝手に結論出すから腐るんだ! お前のことは知らなくても、僕はそれを……一番よく知ってる!」

 

「……っ……!」

 

「僕はお前のイエスマンじゃない、全部を肯定したりはできない! 否定もするし殴りもする! 取ってつけたような正論だってぶつけるし、全てに応えることなんてできるわけがない! けど、お前が助けを求めるなら、そうでなくても何かを伝えたいのなら……たとえそれがどんな悲鳴でも! 話も聞かずに突き放したりはしない! だから全部……ぶつけてこい、死柄木弔!」

 

 この男は……自分と、向き合おうとしている。

 言葉で飾らず、誤魔化さず……逃げも隠れもせず、正面から向かって来ている。

 

 やっていることが戦闘でも、言葉ではなく拳が飛んでくるとしても、

 

(壊……せない……!)

 

 全部知った上で、敵と味方だと、理解し合えないと理解した上で、それでもなお、

 

 この少年は、自分に向き合おうとしているのだ。

 

(こいつを……壊せる気が、しない……! 何でだ、何で……!)

 

 すぐに治るからではない。例え全てを塵にしたところで……こいつを壊せたとは思えない、そんな気がする。

 血も肉も骨も、布も金属も、何もかも全て崩してしまったとしても、目の前からこいつはいなくならないんじゃあないか。意味の分からないそんな思いが、自分の頭にこびりつく。

 

 そんなことがあるはずもないのに。なのになぜ、消えてくれない。

 

 父も、母も、祖母も祖父も、姉も、飼い犬も、家も、敵も、味方も、何もかも壊してきたこの力が……時に疎ましくすら思った力が、なぜこの男には、こんなにも頼りない!?

 

「俺を、憐れむな……そんな目で見るな!」

 

 こんなにも苛立つ。

 

「俺の前に立つな! 俺の視界を遮るな!」

 

 こんなにも苦しい。

 

 なのに、

 

「何なんだよ、お前はァ!?」

 

 なぜ……どこか、温かい?

 

 縁もゆかりもない他人が、それどころか現在進行形で殺し合っている相手が、そのまなざしが……どうして、ほんのひと欠片……忘れかけていた、ずっと欲しかった安らぎを、心にもたらす?

 

 この目の前の男は、一体俺に何をもたらそうとしている!?

 

 わからない、理解できない、怖い。

 今までこんな奴、見たことがない。

 

 どうしてこんな気持ちになる?

 知りたい。でも知りたくない。知るのが怖い。

 

 知ってしまったら、後戻りできなくなりそうで。

 何かが壊れてしまいそうで。

 

 壊れるなら構わない? もとより全て壊すつもりだ。

 いや違う。何かが違う。『壊れる』の種類が違う。

 

 まるで、そう……今まで見えていなかったもの、忘れていたものに気づいてしまいそうで。

 そして、それに気づいたが最後……自分が自分でなくなりそうで。

 

 今まで生きて来た『死柄木弔』が崩れ去ってしまいそうで。心の奥底に忘れ去り、捨てたはずの『志村転弧』が目を覚ましそうで。

 

 俺が壊せない、壊せなかったものに……俺が、壊されてしまいそうで……

 

「……バカバカしい……!」

 

 そこまで考えて……死柄木は、ふっと体から力を抜いた。

 まるで、限界にきてブレーカーが落ちたように脱力し、膝をつくようにしゃがみ込む。

 

「何を、迷ってる……俺が俺を縛ってどうする……」

 

 しかし、倒れ込んだわけではない。

 その両手は……ばしん、と、叩きつけるように地面に押し付けられていた。

 

「俺はただ、壊すだけだ……」

 

 その光景と……静かな声音の奥にある感情に、緑谷はこれから何が起こるかを察した。

 

「止められるもんなら止めてみろ……緑谷出久!」

 

 察してなお、退くことはなく。

 その身にまとう『サイコフレーム』の、『心の光』を全開にして……地を蹴った。

 

「目障りなもの……鬱陶しいもの……邪魔なもの……。俺が見たい景色に、必要ないもの……! 全部……全部……! 全、部ッ…………!」

 

 崩壊が、広がっていく。

 死柄木の手から、その周囲へ……あまりの威力に、反動ゆえか、死柄木自身の手や腕、肌にひび割れを起こすまでになり、

 

 それでも止まらぬ崩壊は……目に移る全てに伝播していく。地続きになっている全てが巻き込まれ、崩れていく。

 

 

 

「ぶ っ っ 壊 れ ろ!!」

 

 

 

 全てが塵になっていく。

 崩れ重なった瓦礫も、飛び出した鉄骨も、倒れている脳無も、その下の地面すらも。

 連なる全てが『崩壊』し、風に吹かれて消えゆく中で、

 

 舞い上がる塵の嵐の中を切り裂いて、一条の緑色の流星が飛ぶ。

 

 『崩壊』にかすりでもしたのだろうか、その身を覆う『心の光』が、徐々に削げ落ち、剥ぎ取られるように虚空に消えていく。ともすれば、空気すら伝って『崩壊』が広がっているのかもしれない。

 非実体すら破壊するまでに至った死柄木の『崩壊』は、何一つ例外なく、全てを壊す。

 

 そんな中で、しかし、最後に残った欠片のような光を、緑谷はその右手に握る。

 

 体中に激痛が走る。ひび割れて、崩れ始めているのがわかる。目が見えなくなる、耳が聞こえなくなる。再生が追いつかない。

 それでも止まらない。逃げない。諦めない。

 

 腕を引き絞る動作を利用して、右腕をかばうようにし……吹き付ける『崩壊』のエネルギーから少しでも生きながらえさせるように。その手に握った、最後の心の光と共に。

 

 そして、崩壊の中心で、絶望に吼える死柄木の元にたどり着き、

 

 

 ――ゴッ!

 

 

 突き出した右手は、凄まじい光景の中で放たれた最後の一撃としては不釣り合いなほど、軽くて浅い音しか出さなかった。

 

 『ワン・フォー・オール』も『オール・フォー・ワン』も関係ない。『死柄木弔』も『志村転弧』も、『志村菜奈』も関係ない。

 緑谷出久が、ただ彼と向き合うためだけに放ったその拳は、確かに死柄木に届いた。

 

 そして、握った拳が頬に叩き込まれたその一瞬、

 

 

 

『お父さんはね、転弧が嫌いなわけじゃないの。ただ、知ってるの。ヒーローが大変だってこと』

 

『私、転弧のこと、応援してるから。2人で、姉弟ヒーローになっちゃおう!』

 

『今ならどんな困難にも、立ち向かえる気がするよ』

 

 

 

 あの家で、ほんの少しだけ幸せだった頃のことが……ほんの一瞬、甦った。

 

 

 ☆☆☆

 

 

「……だから何だってんだ」

 

 目を覚ました死柄木が、仰向けに倒れて寝転んだ状態で、夜空をその目に映して言った。

 

 すぐ横に、緑谷出久が倒れているのが見えた。

 猟奇的に見えるほど、血だらけで傷だらけの姿。手足は崩れ、なくなる寸前だ。骨が見えている個所すらあり……他の場所に比べて、胸から上と、死柄木を殴った右腕は、少し無事に残っているように見えた。

 

 それも、すぐに『超再生』と『オーバーホール』で修復されていく。10秒と経たない間に、傷一つない状態の姿を取り戻し、緑谷は2本の足で立ち上がった。

 血の汚れだけはそのままだが、それを乱暴に拭って、死柄木に向き直る。

 

「……こんなもん見せてどうしようってんだ。俺は別に、何も考えを改めたりとかしてねえぞ」

 

「……いや、こんなもんとか言われても……別に僕、お前に何を見せた覚えとか、そんなつもりで殴ったわけじゃないんだけど……」

 

「じゃお前コレ、つまりアレ……勢いとか、行き当たりばったりだったのかよ……バカだろ。何でお前、そんなんで死にそうになってんだよ」

 

「……返す言葉もない」

 

「そこは何か用意しとけよ」

 

 先程まで、割り込む隙間もないほどの殺し合いを演じていたとは思えないほどに、力の抜けたやり取り。

 

 ゆっくりと体を起こせば、死柄木の全身はあちこちがずきずきと痛む。手も足も、腹も胸も肩も、内側も外側も。

 緑谷との戦いで攻撃を受けたがゆえのそれもあれば、最後の全力で放った『崩壊』の反動と思しきそれもある。

 

 恐らくはその中で一番大したことがないのが……最後に顔面に食らった一撃だった。

 少し脳が揺れたかもしれない感触はあるが、それだけだ。『崩壊』が全身に伝播してろくに力が入っていなかったであろう拳。いかに『フルカウル』で基礎となる身体能力を増していたとしても、たかが知れている威力だった。

 

 ただ、その一撃が……死柄木にとって、何か、妙な『新鮮さ』を持っていたのもまた、事実だった。

 対して痛くもなっていない頬に触れる。熱を持っている気もしたが、そんなものは多かれ少なかれ全身に出ている症状だ。

 

 それまで散々食らっていた拳や蹴りよりもよほど軽かった、しかしなぜか響いた拳。

 

 かつて父親に振るわれた平手や、自分のことを化け物を見るかのような目で見ながら叩きつけられた、枝切りバサミでの殴打とはまるで違う……自分への嫌悪や恐怖、身勝手な独善だけで振るわれるのとは違うものだった。

 

 ふと思った。なぜ自分はここで、父親の顔を思い出したのかと。

 

 ……本当なら、さっき緑谷が自分にたたきつけた拳は……本来なら、父が子に向けるべきものではなかったのだろうか。

 道をそれてしまった子を咎め、しかるばかりでなく正すための……

 

 ただ何も言わず、伝えず、禁じるばかりだった父が、ついぞ自分にはもたらしてくれなかったもの。であるならば、この不思議な『新鮮さ』も理解できると……

 

(……だから、何でこんなこと考えてんだっての……)

 

 何も悪いことはしていないのに、理由も言わず抑圧するばかりだった男。最早敬愛や親愛の1つも沸いて出てこない、血のつながっているだけの他人に、思う所などない。今なお、殺意を持ってあの男の顔面をボロボロに崩してやった時の記憶は、思いだせば胸がすくようだ。

 あの男だけではない。それまで、優しく自分を否定し、緩やかに自分を追い詰めてきた、あの家の全てが……崩れ去った瞬間、気分が軽くなった。

 

 今も変わらない。あの時のことは、自分に取って悲劇なんかじゃない。

 

 ……ただ、

 

 ほんの少しだけ、顧みる思い出が増えたのも……確かだった。

 棄てたと思っていた、忘れ去っていた記憶が。

 

 ふと、死柄木と緑谷の目が合った。

 今の死柄木には、もう力は残っていない。緑谷と違って――正確には、緑谷と『同調』でリンクしている永久の仕業なのだが――再生系の能力も何も持っていない死柄木には、ここまで傷つき、疲弊した状態で、戦い続けることも、逃げおおせることもできるとは思えなかった。

 

 ともすれば、獄中で反省でもさせるがために、狙ってこれを引き起こしたのか、とも死柄木は思ったが……

 

「……ないな」

 

「え、何?」

 

「……別に。ヒーローってのは、ホント……バカばっかりだと思っただけだ。どいつも、こいつも……」

 

 きょとんとした様子の、緊張感のない緑谷の顔を見て、ため息をつくしかなかった。

 

 こんな奴に負けたのかと、何だか微妙な思いに死柄木が襲われた……その時。

 

 

 

 ―――ドッッ!

 

 

 

「がっ!?」

 

「!」

 

 死柄木の目の前で、緑谷の体が……何かに勢いよく突き飛ばされたように、ブレて横に飛び……そこに残っていた、瓦礫と塵の混ざった山に突っ込んだ。

 

 塵を派手に巻き上げ、それが収まった時……そこには、胸に大穴を開けられた状態で倒れ込む緑谷の姿があった。

 

 その穴自体はすぐに『超再生』で塞がっていくが……その痛々しい状態で、どうにか体を動かし、顔を上げた緑谷。

 その視線の先、だいぶ遠い位置に……それをやった下手人が、空中にたたずんでいた。

 

「志村といい、オールマイトといい……」

 

 何かの『個性』を使った直後だろうか。左手をこちらに向けた状態で、宙に浮いている……巨悪・オール・フォー・ワンが。

 

「君の言う通りだ、弔。本当に、ヒーローというのは……どいつもこいつも、どうしてこう……僕を苛立たせるのが上手いんだろうね」

 

 落ち着いた口調ながら、ほんの少しの苛立ちを、声ににじませているような気配と共に。

 

 

 

 

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