第153話 OFA・AFO・AFY
『神野区の悪夢』
『夏の夜の惨劇』
『8月○日同時多発テロ』
『崩壊の夜』
『リアルバルスの夜』
あの日起こった出来事は、こんな風な名前で各所で呼ばれるようになった。
一番ヤバいことがあったのが神野区だっただけに、一番よく通っている名前は、『神野区の悪夢』である。
何せ、大量の脳無を動員した『敵連合』と、トップヒーローのほとんどが動いた上になんやかんやで私達雄英生がまたしても巻き込まれた総力戦みたいなのが巻き起こり……そこで出た被害は、区1つが壊滅状態といっていいくらいになったわけだから。
ただその他にも、同じ日に病院襲撃事件が起こったり――まあ、こっちも私達が入院してた場所なわけだけども――それ以前に襲撃のあった拘置所の一件も、『敵連合』が絡んでたこともあって、短期間にあちこちでこれだけのヤバいことが集中して起こったわけだ。
そのせいもあって、色んな呼び名がついたってわけ。
……なお、最後の1つだけなんか明らかに感じ違うんだけども……聞いた話だと、あの日の夜、どっかの局で某天空の城のアニメ映画を放送していたらしい。マジかよ。
そして、さあクライマックスだって時になって臨時ニュースで神野区の映像が流れ、肝心の『その瞬間』は放送されないままに終わったとか何とか。ばるす。
つか、そんなことになってたのかよ……知らんかった。雄英の記者会見の特番見てた裏番組でそんなのが……いや、そういえば一回そんな話題になった気も……?
ともかく……まあ、もう終わったとはいえ、思い返すと、マジで大変な夜だった。
……もっとも、その事件の余波は……事件から数日が経った今も、この社会を引っ搔き回し続けてるんだけどな。未だに。
ちょっと振り返って、整理してみようか。
あの事件から数日が経ち、まあ何と言っても大きなニュースは、オールマイトのことだ。
あの後正式に発表されたんだが、オールマイトはかつてあの『敵』……『オール・フォー・ワン』という名前らしいそいつと一度交戦しており、その際に大きな傷を受けていた。
その傷は重い後遺症を残しており、本来はもう戦えるような状態じゃない中、無理を押して戦い続けていたらしい。あのやせ細った姿が、本当の姿なのだそうだ。
けどさすがに今回の戦いでもうガタが来たとかで……記者会見の場で詳細を説明の上、無期限の活動休止を発表した。
活動休止……とは表向きには言えど、事実上の引退と見られているけど。時間の問題だろうな、っていうのが、大方の予想である。
……っていうか、どおりで私、オールマイトのあの姿に見覚えあったわけだよ……1回会ってるじゃん、『ワーキングホリデー』の、クルーザーの事件の時に。緑谷の病室に来てたわ。
その時にもらった名刺……『八木俊典』ってアレ本名だったんだな。どおりでデヴィッド博士が『トシ』って呼んでるわけだわ。
オールマイトについては、まあ……他にもあるけど、ひとまずこのへんで。
次に、その時戦った『敵』達についてだが……『敵連合』については、主犯格である死柄木を含め、ほぼ全員が逃げおおせている。
まあ……黒霧とかいう『ワープ』系個性持ちの、反則級の移動手段があるからな。
ただ、そいつらと協力関係にあった大物首を複数確保している。
国際テロリストとして手配されているウォルフラムに、大物ブローカーのキュレーター、脱獄中だったオーバーホール……あと、病院を襲って来たナインと、その一味もだ。
ナインだけはそこまで広く知られてはいないらしいけど、結構な件数の犯罪に関わっているらしく、警察が余罪を洗っているらしい。
そいつらに加えて、大量の『脳無』と……なんといっても、『AFO』本人。
こいつらのうち、オーバーホールは特別拘置所へ逆戻り。同じ場所にキュレーターとウォルフラムも入れられた。
後者2人は、海外にも余罪がたんまりあるから、そのへんこれから調整していくことになりそうだとのこと。現在はそれに加え、2人と繋がっていた組織の摘発のため、各国の警察が大忙しとなっている。
そしてAFOは、その危険度を鑑みて、特例中の特例として、裁判による刑の確定を待たずに、大監獄『タルタロス』送りになったらしい。恐らくこのまま、二度と生きて解放されることはないだろう……との見込みである。
……まあ、そのへんのことは本職の皆さんに任せよう。ヒーローの仕事は『敵』を倒すところまでだ。……私まだヒーローですらないけど。
そして今回の一件では、ヒーロー業界、ひいてはこの個性社会そのものに対しても、大きな打撃となった。
一夜にして壊滅し、多くの死傷者を出した神野区はもちろんのこと。
AFOとの戦いの跡地、『グラウンドゼロ』なんて呼ばれるようになったらしいし……その他にも、連中がアジトにしてたバーの周辺や、その『グラウンドゼロ』周辺では、連中がばら撒いた脳無による破壊その他の被害がかなり発生した。
その過程でさらに死傷者も出てる。鎮圧に動いたヒーローにも。
『敵連合』及びAFOとの決戦に赴いたヒーロー達にも同様だ。皆、大なり小なり傷を負った。現在は療養中で、一時的に活動休止も視野に入れている者も少なくない。
ただ、進退に関わるような傷や、活動休止が長期になるような傷の人がいなかったのは幸いだったが。
ジーニストとか、あのままだと明らかにやばかったかもしれないけど……あの時に治して、もとい『直して』おいてよかったよホント。
あの後AFO戦でまたケガしたっぽいけど、きちんとそれはすぐ治る程度の傷らしいし。
さらに、林間合宿で拉致されていた、ワイプシのラグドールも、無事に救出・保護された。
救出された当時、なぜか全裸だったらしいんだが……R18なことになってたわけではないのは一安心である。
……むしろあの連中のことなので、他の方面に『利用』される予定だったんじゃないかって心配だ。監禁されてた場所、脳無達が保管されてた格納庫だったらしいし……もしもうちょっと救出遅れてたら……怖っ、考えんとこ。
現在は療養のため、一時的に活動を休止しており、落ち着いたら復帰する予定だ……とのこと。
さて、社会情勢についてはこのへんで。
ここから先は、私や私の周辺における個人的な話……そして、オフレコの話になる。
まず、今話したばっかりのことに関わる話なんだけども。ラグドールについてだ。
彼女、実は……救出当初、『個性』を使えなくなるという謎の変調を訴えていた。
どうやら、AFOに『個性』を奪われてしまっていたらしい。強力だもんな……ラグドールの『サーチ』。私らの合宿でも大活躍だったし……お世話になった。
しかしそうなると、最早ヒーローとしての復帰は絶望的か、という感じになった。一度は。
ただし、現在その悲劇ムードはきちんと綺麗に霧散している。
近く、ラグドールの『サーチ』は、きちんと戻ってくる見込みだからだ。
というのも……あの戦いの時、最後の最後あたりで私、『完全燃焼(略)』でAFOに一発かましたわけなんだが……その時にどさくさに紛れて、何個か『個性』失敬してたんだよね、適当に。
少しでもこいつを弱体化させられれば、と思ってのことだったんだが……その中に、運よく『サーチ』があったのだ。つまり、『サーチ』は今、私が持ってる。
落ち着いたらというか、後できちんと日程決めて、返すことになってる。
ただし、すぐには無理だが。
世間が今、この話題で騒ぎまくってるところで、下手にすぐには動けないっていうのもあるし……他の理由もある。それはまあ、後で。
加えて、雄英のことについて。
合宿が中止になって以降(中止っつっても7日程中6日終わってたんだが)、自宅待機だった私のところに、プリントが先日届いた。
何か雄英、全寮制に移行するらしい。生徒達のより確実な安全確保と、近い距離での効率的な指導のために、その他色々な理由が並んでたけども……まあ、今回の件あってのことだろうな。
その説明と、今回の件のお詫びもあって、近々先生が家庭訪問に来る、と書いてあった。
で、今、来ている。
「それではイレイザーヘッド、オールマイトも、今後のカリキュラムの進行や、『全寮制』の開始による生徒達への指導をいかに効率的に行っていくかについて、こちらに案を4つほどまとめましたので、急で申し訳ありませんが読んでご意見を……」
「いや待ってくださいアナライジュ。何を当然のようにビジネス関係の、っていうか
今現在、ここは我が家の……というか、私が住んでるマンションの応接室だ。
実家というか、『栄陽院』の本邸は遠いし、あんまりあそこ行きたくないので。
「そう言われても……とりあえず今後も雄英にご厄介というか、お世話になることは確定していますし、だったら少しでも建設的に、それこそ私が絡ませていただく以上は、今以上に安全かつ効率的なカリキュラムを組むことに注力した方がいい、って昨日家族会議で決まりまして」
「あ、なんかもう結論でてらしたんですか」
「すんません、オールマイト先生、相澤先生。うちの両親、っていうかうち大体こんなんです」
「……お父様も、それでよろしいということでしょうか?」
と、相澤先生は……私を挟んで、母さんの反対側に座っている人に目を向けて言う。
そこに座っているのは、有名ブランドのビジネススーツに身を包んだ、実年齢よりも結構若い見た目の……人のよさそうな男性である。
栄陽院コーポレーションの代表取締役社長、栄陽院豊。それがこの人の名であり、立場だ。
そして当然、私の父……義父でもある。
より正確に言えば、成実義姉さん達の実父であり、私にとっては、母親の再婚相手。血縁はない。
「ええ、もちろんです。彼女もそう望んでいる……なら、親としてしてやれることはしてやりたいですし、彼女の夢の邪魔をするのも嫌ですから」
相澤先生としては……母さんの仕事モードに足突っ込んでる対応は、まあ、母さん個人が特殊なんだとしても……義父さんも、あっさりとこの学校の提案を認めたことが意外なようだ。
まあ、これだけ騒ぎが続いた上での、突然の『全寮制』だもんな……普通に考えれば、反発だってありそうなもんだろう。病院で尾白達が言ってたように、今回のことを、雄英の不祥事としてとらえている人や、不信感を持っている人は、少なからずいるわけだし。
ただ、うちの場合はそのへん、理解もあるし……ある意味特殊でもある。
「先生方から見れば、意外な反応に映るんでしょうね……私のこれは。親としてはもっと、子供を心配して、守れなかった学校に不信感を持つのではないかと」
「いえ、そのようなことは……」
「いいんですよ。まあ……うちは色々特殊なんです。ご存じのことかと思いますが……私と妻は、両方再婚同士で……しかも、私の実家が『
まあ、この辺の事情はもう、大分前に話したというか、振り返ったというか……連れ子の私が、『栄陽院』の本家でよく思われていないことも、義父さんはそれをきちんとできる範囲でカバーしてくれたり、一人暮らしの私を色々と助けてくれてることも。
加えて、どうしても父さんは現役の会社経営者って立ち位置にいるから、家族の時間もとれず……って感じになってるんだよな。私や母さんに限らず、成実義姉さん達とすらも。
今回は、上手いこと時間作ってこうして来てくれたわけだ。
まあ……普通の家庭なら、それはごく当たり前のことなんだろうとは思う。
自分の娘がこんな大変な事件に巻き込まれて、それでも『仕事がある』ってこない父親って……まあ、控えめに言ってアレだと思うしな、客観的に見たら。
……ひょっとしたら、こうして義父さんが『来てくれた』ことに対して『ありがたいな』とわざわざ思ってる私は……まだ、彼に対して他人意識みたいなものが残ってるのかもしれない。いや、残ってるんだろうな、やっぱ。結構、私も大きくなってからの、母さんの再婚だったし。
信頼はしてるし感謝もしてるけど、そこはやっぱ……どうしようもないラインがあるかも。
義父さんとしても、不器用なりに色々私のことを気にかけようとしてくれてるのはわかるけど、それが他人には伝わりにくかったり、実際ピントがずれてたり、家や会社その他の関係で、父親なら、家族なら当然すべきことができなかったりするからな……。
とはいえ、これはこれでというか、うちは上手く回ってるので……問題ないと思ってる。
基本的に私の意思を尊重してくれて、かつ放任主義なところもあるから……ちょっとほったらかしというか、適当な部分も目立つけど、きちんと私のことも考えて、大事にしてくれてるから。
実際今回、本家でも、日本中の注目が集まったこの一件や、そこに通ってる私のことは、『体育祭』の時以上に話題になったらしく……『仮にも『栄陽院』の家の末席を、こんなことがあった学校に通わせ続けるのはどうなんだ』って意見が一部で上がった時に、黙らせてくれたらしいし。
「今回のことに関して、思う所や、言いたいことがないわけじゃありません。それでも、永久からきちんと事前に話を聞いて、先生方が、永久や、生徒達のために全力で戦ってくれたことは……私も理解しています。だから……永久さえ望むのなら、私からは何も文句はありません。この子を……私達の娘を、よろしくお願いします」
「……こちらこそ、よろしくお願いします」
相澤先生も一緒に頭を相互に下げる形になって、無事に『家庭訪問』はまとまった。
うん。刺々しいことにならなくて、よかったよかった。
「……よし、それじゃああらためてイレイザー、今後のカリキュラムその他について……」
「いや、アナライジュ。ですからそれは流石に日を改めましょう。我々、この後まだ行くところありますし」
オチもついた。
ま、実際私の中に、雄英を離れるって選択肢はないに等しいからな。
昨日の時点で、緑谷(実家に帰省中)から『通い続けられることに決まった』っていう連絡は既に貰ってる。先に家庭訪問済んだそうなので。
だから、緑谷が……『ご主人様』が雄英に通い続ける以上は、私がそうしない選択肢はありえない。反対されようがそうするつもりだった。
……そうそう、その緑谷との今後の付き合いと……もう1つ。
私の『個性』、そして、緑谷の『個性』についても……オフレコの話があったんだよな。
話し合いがあったのは、実は、一昨日の夜である。
その時点で、実は既に話は済んでた。
もっとも、うちの両親も、相澤先生もいない……なんならその内容はおろか、話し合いがあったことさえ知らない、超オフレコの場で、だけど。
あんな事件があった後なので、原則私ら生徒達は自宅待機、外出は控えるように、ということになってたんだが……それを承知で呼び出しがかかった。
呼び出された場所で待っていたのは、緑谷と、オールマイト。そして、グラントリノと、校長。そして、サー・ナイトアイの5人。
秘匿性を確保できる+集まりやすい空間ってことで、集合場所になったのは、他ならぬ雄英高校。その応接室で、鍵をかけて……秘密の話し合いの場が設けられていた。
そこで私は、世間一般には公開されていない……どころか、ごく限られた人間しか知らない、超のつくトップシークレットについて、知らされることになった。
緑谷の『個性』―――『ワン・フォー・オール』について。
単なる『個性』ではなく、人から人へ『継承』されてきたというその特異性。
他ならぬ『オール・フォー・ワン』と、その弟……そして、私の祖先の『ストック』の力に端を発するという、知られざるそのルーツ。
かつてはオールマイトがこの『個性』の持ち主だった。そして、『継承者』である緑谷に譲渡して以降は、その『残り火』によって戦い続けて来たという事実。
その『残り火』も……あの日、AFOとの神野区での戦いで、もうほとんど残されていないレベルにまでなってしまった、という現実。
今後、オールマイトは恐らく、戦い続けることはもう難しい。ゆえに、次代の継承者である緑谷の育成に注力していくことになり……ひいては、私にも協力してほしい、ということだった。
まず大前提として、この『ワン・フォー・オール』の秘密は、誰にも知られてはいけない。
理由は色々ある。『譲渡』できる、それもこれだけ強力な『個性』の存在が明らかになれば……絶対によからぬことを考える奴はいる。脅して奪い取ろう、とか。
加えて、この『個性』は……もう引退が半ば決まったようなものだとはいえ、オールマイト……『平和の象徴』が、ナチュラルボーンヒーローであることに直結するものでもある。
依然としてその名前の持つ意味は、力は大きい。ゆえに、こんな力が存在していたという事実自体、これからも伏せていかなければならない。
ゆえに、私にもこの『個性』については、絶対に誰にも話さないでほしい、とのこと。
もちろん、そんなつもりは欠片もないが……そうまで厳重に情報管理しなければならないことを、なぜ私にも聞かせたのだろうか。当然疑問に思った。
この話を聞いて、今まで緑谷が随所で見せていた、『隠し事』の内容……恐らくはオールマイトと関わりがあるのであろうそれについて、ようやく納得がいった。
それに、話してくれたのは純粋に嬉しかった。信頼してくれたみたいに思えて。
しかし、ダメならダメで構わなかった。どれだけ怪しくても、気になっても、何も聞くなと言われれば、そうするつもりだったし……この話ってそういうレベルの話だろうし。
聞けば、やはりきちんと、信頼以外にも理由はあった。
さっきちらっと話になったと思うが、『ワン・フォー・オール』の誕生には、私のご先祖様が……正確には、その『個性』が絡んでいる。生み出される際の、材料の1つになっている。
ゆえに、私の個性『オール・フォー・ユー』とは兄弟みたいな関係にある『個性』であり……それに加えて、私が緑谷を『ご主人様』と定めて、色々と関わりを持ったのもあって、たびたび私と緑谷の夢やら何やらがリンクし、相互に色々なものが見えたり、聞こえたり、影響を及ぼし合っていた。それを、オールマイト達は、緑谷に聞いて知っていた。
実際今、緑谷と私の『繋がり』は、気のせいなんかじゃ絶対ないレベルになってるもんな。
互いの『個性』や『技』を共有して使えたり――ただし、その特殊性ゆえか、私は『ワン・フォー・オール』を使うことはできないみたいだ――共通の夢を見たり。
恐らくこの繋がりは、今後さらに強まることはあっても、消えることはない。ならば、それを通して色々なことを今後、私が知ってしまう可能性は極めて高く……その時になって困惑させるよりも、今から味方に引き入れた方がいい、と判断したそうだ。
幸いにして、私は緑谷の言うことに基本、逆らうことはない。絶対と言っていいくらいに忠誠を捧げているという立場にあるから。求められれば何だってするし、何だって差し出すほどに。
加えて、私を事情を知った上での協力者に引き込めれば、この上なく色々と都合がいい、って面もあるらしいし……今となっては、私自身、『個性』的な意味で無視できない存在になっている。
場合によっては、警察や、ヒーロー公安委員会から危険視されるのではないかってレベルで。
私は、あの病院での戦いの中で、一度ナインに『オール・フォー・ユー』を奪われた。
あのナインって『敵』は、調べによれば、どうやら、自分から望んでAFOの下で人体実験を受け……AFOの『個性因子』を定着させたことによって、『個性』の複製による自己の強化に成功した、という内情を持っていたらしい。
裏社会の技術みたいだが、『個性』の複製って……そんなもんまであるのか。
ゆえにナインは、自分の元々の『個性』である『天候操作』に加えて、『オール・フォー・ワン』その他いくつもの『個性』を、他人から奪って持っていた。
そして、『個性』を使うほどに細胞が死滅していくという反動を克服するために、『細胞活性』を狙っていた。それが、真幌ちゃん達のお父さんと、活真君が狙われた理由だった。
しかし、それよりも使い勝手のいいであろう――表面だけを見れば、だが――私の『オール・フォー・ユー』を見つけて、標的を移し替え……奪ったわけだ。
ところが、『個性』そのものに拒絶され、さらには逆に『個性』を根こそぎ『変容』の性質によって取り込まれて奪われるという事態になった。その結果、私は『オール・フォー・ユー』の奪還と同時に、『オール・フォー・ワン』を含むいくつもの『個性』を手に入れた。
さらにその後の戦いでは、これ幸いと脳無やAFO、オーバーホールなどから多数の『個性』を奪いまくり、一部は自分に使いやすく『変容』させすらした。
結果的にそれはそのまま、緑谷のパワーアップにも繋がったし、各所で『敵』に痛打を与え、ヒーローを救う要因にもなったものの……私が絶対に放っておけない存在になったことに変わりはない。
ゆえに、今回の『ワン・フォー・オール』との関連の件と合わせて、私を完全に自分達の側に取り込むということになったわけだ。
さて、色々ややこしい事情、隠されていた事実があったために、説明が長くなったものの……私の答えは1つ。至極単純である。
緑谷のためになるならば、彼がそう望むならば、否はない。
私の全ては彼のものだ。彼のためになるなら全力でこの力を使うし、彼のためにならないからやってはいけないことがあるならば、死んでもやらない。
当然、今回の求めにも全面的に協力させてもらうこととした。秘密は決して洩らさないし、私の力が必要なことがあれば、何だって協力する。それがもちろん、個性としての『オール・フォー・ワン』を使ったあれやこれや、実験なんかであっても。
説明の長さに対して非常に単純かつ簡潔ではあるけど、その私の返答を持って、その話は終わった。
これからくれぐれもよろしく、ってことになって。
こうして私は、公私ともに……に加え、裏表を問わず、緑谷を陰から支える立場になったわけだ。
これから始まるであろう、『全寮制』を始めとした、新しいスタイルでの学生生活の場で……彼の隣に立ち、私自身のスキルや知識はもちろん、『オール・フォー・ユー』と『オール・フォー・ワン』、そしてその他の数多の『個性』を使って。
あ、ちなみに、緑谷を支えるっていう、願ったりかなったりな仕事の他に、あまりにも強力で、しかし味方にいれば心強いことこの上ない『オール・フォー・ワン』を使う形で、色々な仕事を任されることもあるかもしれない、とのことだ。
その1つが、さっきも言ったラグドールへの『サーチ』の返却である。今私が持ってるから、直接会えさえすれば、さっと返せるので。
ただ、ラグドールの療養がきちんとすんで、心身がばっちり健康に戻ってからになるけど。
オールマイトやグラントリノ曰く、『オール・フォー・ワン』による個性のつけ外しは、個人差はあるが、どちらも対象にはかなりの負担になるらしい。
救出された直後、ラグドールの意識がもうろうとして受け答えができない状態だったのも、恐らくその影響だろうとのことだった。
最悪の場合……精神が崩壊して廃人に、ないし……物言わぬ人形のようになることすらある……否、実際にあったんだとか。その負荷に耐えきれずに。
もっともそれは、既に『個性』を持っている者に、新たに別な『個性』をつけた場合とかだそうだけど。
だから念のため、ラグドールに『サーチ』を返す際も、彼女の心身の状態が最善のものになるのを待って行うことになったわけだ。
まあ、そう時間はかからないとは思うけどね。
ひとまず今は……新生活の準備を進めよう。
引っ越しまで、意外と時間なさそうだったしな。
ラグドールの『サーチ』については、コミックス最新刊でなんか別な扱い方をされてますが……このSSではまだAFOが持ってたってことで納得してください。
それ知らないうちにプロット作ってたというか……SSなので……