TSから始まるヒロインアカデミア   作:破戒僧

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一挙2話投稿いたします。
この『最終話』と、次の『エピローグ』と、合わせてお楽しみください。

では、どうぞ。


最終話 私達のヒーロー・ヒロインアカデミア

 

「そんじゃお前ら、飲み物持ったな? ……よし、では高いところから失礼して……雄英高校ヒーロー科、1年A組B組、全員の『仮免試験』合格を祝して! 乾杯!」

 

『カンパーイ!!』

 

 もちろんソフトドリンクだけどもね。まあ、気分ってことで。

 

 

 

 今私が取った乾杯の音頭のとおり、私達は無事に、A組も、別会場で受けていたB組も、全員が『仮免』を取得することができた。今、全員の手元には、発行された名前・顔写真入りの許可証がある。

 

 これでめでたく、私達は『ヒーローの卵』から、『尻に殻のくっついたひよっこ』にランクアップすることができたわけだ。

 まだまだ未熟であることに変わりはないが、大きな前進であることもまた確かである。

 

 なので、あくまで反省会を兼ねるって名目でだけど……今日くらいは騒いでもいいだろうってことで、AB合同で祝勝会、ということになったわけだ。

 

 帰ったら急いで料理作らなきゃいけないかな、と思ってたんだけど、寮に帰ってみると、なぜか私達が帰ってくるよりも先に、ご馳走がどっさり届いていた。

 有名料亭の折詰、洋食のオードブル、JOJO苑の『お家で焼肉セット(超特上)』、同じく『お家でしゃぶしゃぶセット(超特上)』、『超神田寿司』の持ち帰り特上、その他色々、豪華なご馳走が。

 

 『仮免試験合格おめでとう』というメッセージと共に置いてあった。それらに驚いて確認してみると、送り主は連名になっていた。

 しかもそれが、オールマイト、ホークス、ベストジーニスト、ミルコ、サー・ナイトアイ、リューキュウ、ファットガム、ワイプシ、シルバーピクシー、パンドラズ・アクター……その他、あの『神野区』で一緒に戦ったヒーロー達からだった……あ、すっごい端っこにエンデヴァーの名前もあったわ。シャイか。

 

 思わぬサプライズに驚かされつつも、ありがたくいただくことに。大喜びでそれらの、B級グルメから高級お取り寄せまで色々揃ったご馳走を開けて作って、今に至る。

 

 とりあえず作ってる間の時間を利用して、個人的に付き合いがある範囲ってことで、ターニャに電話した。

 明らかに予約とかしてなきゃ用意できないものばっかりだったので、野暮な問いだとは思いつつ、『落ちてたらどうするつもりだったんだよ』って聞いたら、

 

『お前らなら全員落ちるってことはないだろう。9割か、少なくとも過半数は受かると思っていたし、大きなミスさえしなければ全員問題なく受かると思っていた。もし落ちた奴がいたら、『残念だった者は次回頑張れ!』的な激励のメッセージカードも同封するつもりだったよ』

 

 とのこと。さいですか。

 

 いやしかし、たまには食べるばっかりの立場でのんびりするのもいいもんだな。

 

 幸いにして、ご馳走は40人という人数でも、そして食べ盛りであることを考えてもなお食いきれないほどあるので、各々好きなように食べている。作り足しを心配する必要はなさそうだ。

 

 見回してみれば、皆、思い思いに楽しんでるようだ。

 

 あっちでは寿司を食べながら、上鳴や瀬呂、泡瀬や回原が、今日はここが大変だったとか、誰がどんな風に活躍したとか、振り返って面白おかしくはしゃいでいる。

 上鳴の鉄板の話題は、あっちこっち突撃していく爆豪についていくのが大変だった、っていうあたりのようだ。本人に聞かれるなよー、あっちで焼肉セットについてきた激辛肉味噌でご飯食べてるから大丈夫だと思うけど。

 

 同じようにはしゃいでるようだが、こっちは女子メンバーだな。芦戸や葉隠、取陰や角取が一緒になって……そしてこっちは、あっちこっちのグループに積極的に乱入していってる。『いぇーい、盛り上がってる?』みたいな。

 まとめ役、ないし抑え役として何気に奮闘してる拳藤がちょっと大変そうだ。

 

 ……あ、口田と障子と常闇と小大と柳が一緒になって食べてるとこに突撃してった。いやなんでよりにもよってそこの、基本無口なメンバーが揃ってるとこに……困ってるだろ、やめてやれよ。

 

 ほら、あっちで騒いでる切島とか鉄哲とか鎌切とかがいるとこ行けって。あの連中ならお前らにも負けないテンションで応対してくれっから。テンションしかないけど多分。

 

 つか、A組の3人はわかるけど、小大と柳は何で……いつの間に仲良くなったのそこ? 知らんかった。……何、ちょうどそこに美味しそうな料理があっただけ。あ、そう、偶然か。

 

 はしゃいでる連中がいる一方で、真面目に今日の反省点を洗ったり、これからのことを考えて色々と意見をぶつからせてる面々もいる。

 飯田に八百万、骨抜に塩崎あたりがそうだな……あ、宍田と尾白も加わった。真面目と言うか、向上心ゆたかというか。

 

 もっとも、きちんとご馳走も楽しんでるみたいだし、本人達がそれでいいなら別にいいか。

 

 

 

 途中からは、合格の話を聞きつけた通形先輩達『ビッグ3』や、普通科の2人……心操と青山も来たので、半ば強引に『入れ入れ!食ってけ!いっぱいあるから遠慮すんな!』って巻き込んで。

 

 さらには『あんまりバカ騒ぎしすぎるなよ、明日から新学期だぞ』って一応一言言いに来た相澤先生やブラドキング先生、そして何となく様子を見に来たマイク先生とミッドナイト先生も巻き込んで――テンションに任せて結構すげーことしたな、今思うと――夜は更けていった。

 

 アルコールこそ入らないが、まー皆騒ぐ騒ぐ。

 

 途中からカラオケ大会まで始まって、マイク先生が衝撃波が出ない程度に熱唱しつつMCもこなしてたり、ミッドナイト先生のJ-POPや小森のアイドルソング(ダンス付きでノリノリ)、吹出のアニソン、麗日と蛙吹のデュエット、青山の洋楽、ブラドキング先生の演歌(!?)が響き渡り、

 採点機能使って遊んだら耳郎がなんと100点出して大盛り上がり、対抗意識燃やした爆豪が熱唱するも96点MAXで無念の敗退(十分すげーと思う)。

 

 余興ってことで『ロシアンルーレットタコ焼き』が開催され、今回の試験で2次の点数が70点未満だった面々が参加ってことで(どうしてもいやな場合はやんなくていい。強制はよくない。パーティは楽しく)、

 5つの激辛タコ焼きを誰が食べるか注目の中……当たってしまった円場が転げまわり、黒色がキャラが崩壊する勢いで噴き出してせき込み、鱗が水をがぶ飲みしてどうにか堪え、あんまり表情に出ない轟が何も言わずに崩れ落ちそうになっていた。

 

 残る1つは爆豪だったんだが……もともと辛いもの好きなためリアクションがなく、『なーんだ』『つまんねーの』と落胆の声を浴びてキレそうになっていた。

 いや、結局その後の物間の『あはははは、点数でも合格ギリギリでこういう場でも見せ場ないなんてつくづく(以下だいぶ省略)』という煽りで結局キレてた。ぶっ飛ばされた物間は、凡戸と庄田が回収していってくれた。ご苦労様。

 

 流れに乗っかって爆笑ギャグ(自称)を繰り出そうとして、通形先輩が大事故を起こしたり、

 合宿で私と砂藤がスイーツやら何やらを作った話を聞いた波動先輩が『ねえねえ私も食べたい!』っていいだして結局作ることになったり(サッと作れたから手間でも何でもなかった)、

 周りのテンションについて行けずに気分が悪くなり、『帰りたい…』と隅っこで体育座りを始めてしまった天喰先輩を相澤先生が連れて帰ったり(自分も上手いこと離脱したな)、

 

 再三の注意にも関わらず、偶然を装って女性陣にボディタッチしようとしたり、執拗に王様ゲームや野球拳の開催を推してきたり、精神的に未成熟(?)なのを利用して波動先輩にいらんことを囁く峰田を、心操が『洗脳』して『パーティ終わるまで大人しく座ってろ』って言って止めてたり、

 それによって一躍英雄扱いされた心操が、一時的に女子に囲まれて対応に困ってたり、

 

 あと、かかったことがある尾白や緑谷によると、心操の『洗脳』って、個人差あるけど、ぼんやり意識が残ってる(けど体は言うことを聞かない)場合があるらしい。体育祭で緑谷は『このままだとステージの外に出ちゃう、でも体が言うことを聞かない!』って感じだったんだって。

 ……だから心操が女子に囲まれてる間、置物みたいに部屋の隅でじっとしてた峰田は、『洗脳』の影響で無表情なまま、目から血涙を流してたのか。位置関係上、それが見える位置だったからな。

 気づいた時はめっちゃびっくりしたぞ……軽くホラーだった。

 

 

 

 そんなこんなで夜は更けていき、

 生徒達のテンションもピークを過ぎた頃、

 

「よっす、緑谷」

 

「あ、栄陽院さん……お疲れ様」

 

 風に当たろうと思って庭に出た……けど切島たちが騒いでたので、Uターンしてきた屋上で、どうやら同じことを考えたらしい緑谷とばったりあった。

 

 『お疲れ』って軽い感じで声をかけて、隣に座る。

 それで思わず、緑谷は赤く……は、ならない。このくらいはもう平気か。

 

「どうだ、思う存分食べて騒げたか?」

 

「あははは……うん、すっごく楽しめたよ。なんかもう、皆すごく元気でテンション高くて、ついてくだけでも大変だったかもだけど……途中からは僕も乗っかって楽しめたし。高級グルメも一生分食べたんじゃないかってくらいに……」

 

「あっはっは、そりゃよかった。まあでも、高級料理なんて、緑谷がこれからトップヒーローになっていけば、いくらだって食べる機会あるだろうよ」

 

「ははは、そっか、そうだね……トップヒーロー、か……」

 

 不意にそこで会話が途切れ……緑谷は、ポケットに手を突っ込んだ。

 定期入れを取り出し、そこに入っている……今日、手に入れたばかりの、1枚のカードを……仮免の許可証を取り出して、見ている。

 

 しみじみと、色んな感情が込められた目で、眺める。

 その中でも、特に強く表れていたのは……やる気だったように見えた。

 

「たぶん、ちょっと前までの僕だったら、『なれるかな』とか言ってたんだろうね」

 

「そうかもな。今はもう?」

 

「言わないよ。……なるつもりだから、絶対に」

 

 緑谷は、カードに印刷されている緑谷の写真を見ながら、はっきりと、そう言った。

 

 自分に言い聞かせるように聞こえなかったわけでもない。しかし、だとしても……もう、緑谷の目に、迷いや弱気さみたいなものは、ない。

 

 いや、違うな。そういうのがないわけじゃない……そういうのを忘れず心に持ち続けているっていうのも、むしろ緑谷の長所の1つだ。

 

 持っていて、持ち続けていて……その上で、全部背負って飲み込んで、歩き続ける……そんな決意が、彼の心の中では定まってるんだ。

 

「体育祭の時に、轟君に似たようなことを言ったんだけどさ」

 

「? うん?」

 

「僕は……いろんな人に助けられてここにいる。知識も、チャンスも、環境も……それこそ、『個性』すらも。……なんだかんだ言って、やっぱりそういうの、負い目に感じないわけじゃないんだ。僕だけの力ではここまでこれなかった、助けられて、助けられ続けて、今の僕がいるんだって」

 

 でも、と続ける。

 

「それでいいんだと思う。いや、開き直るわけじゃなくて……むしろ、ヒーローってもともと、そういうものだと思うから」

 

「……そうだな……今日の『仮免試験』然り、『神野区』然り……よく知ってるもんな、私ら」

 

「うん。1人1人じゃ大したことはできない、みんなで力を合わせるから、大きなこともできる」

 

「中には、1人で何でもできちまうようなのもいるけどな。オールマイトとか……それに、爆豪とかもそうだろ。人には頼らねえ! みたいにもう、年がら年中」

 

「ははは、そうだね。でもそれなら、そんなすごい人が他の人と協力したら、もっとすごいことができるようになるでしょ?」

 

 まるで、子供の理屈。

 現実はそんな単純なものじゃないってことくらい、大人なら、ましてヒーローなら、誰でも知ってるだろう。1+1が2にならないケースは、何も増えるばかりじゃなく、ゼロやマイナスになる場合もある。相性やかみ合わせ次第で、それは起こってしまう。

 

 それでも、緑谷は何のためらいもなく、そう言ってのけた。

 

「僕はいつか、トップヒーローに……いや、No.1ヒーローになる。なってみせる。でも……その時に僕がなってるヒーローは、きっと、オールマイトとは違う形なんだろうな、って思う」

 

「ほぉ、そのこころは?」

 

「オールマイトは確かにすごくて、僕の憧れで……何だって一人でやれて、絶対に助ける、最高のヒーローだ。僕もそんな風になりたいって、ずっと思ってた。いや、今も思ってる。けど……僕は、オールマイトそのものになりたいわけじゃないし、なれるとも思ってない。オールマイトだって、そんなこと望んでないと思う。……僕は、僕が最高だと思う在り方で、No.1になる」

 

「…………」

 

「正直、勢いで言ってる部分もある。けど、本気でそう思う。全部1人でなんてできないだろうし、色んな人と協力して、色んな人に助けてもらって……それでも、胸を張って、そんな繋がりや、協力して勝ち取ったんだ、っていう結果すら誇って、皆で一緒になって笑えるような……そんな『平和の象徴』になりたいんだ。まだうまく言えないし、すごく大変な道のりだと思う。何年、いや、何十年かかるかだってわからない。けど……」

 

「……つき合うさ、緑谷。どこまでも」

 

 話の途中から……ちょっと不安そうな、けど決意自体は固そうな目でこっち見てくるんだもんな。

 可愛い、けどカッコいい奴め。

 

 憧れてる人とは違って、困難な道のりであることがわかり切っていて。まして、1人ではたどり着けないかもしれないって思えてすらいて。

 それでも迷わず、その道を歩いていくと言えるまでに、こいつはなった。

 

 そんな緑谷が、一緒に歩んでほしいって言ってくれる。私のことを、求めてくれる。

 

 あー……なんだかなあ、ホントになぁ。

 

 私は、なんて素敵なご主人様に巡り合ったんだろうなぁ。

 

 好き合ってる男女なら、ここでぎゅっと抱き合ったり、『そっと影が1つに重なった』的なアレになったりするんだろう。青春ドラマとか、いかにもそんなのありそう。

 

 けど私達の場合は、

 

 

 ―――ゴツン!

 

 

 拳と拳で。

 告白の時に引き続き、色気ないなあ……でも、こんな感じでいいんだと思う。

 

 目指す先、見るものが見るものだし……そこに行くまでの私らの関係は、何も男と女だけじゃないだろうしな。学友だったり、修行仲間だったり、ヒーローとサイドキックだったり、ビジネスパートナー的なのも……うん、纏まらん。

 いいか、その辺は今は考えなくても。

 

 何を考えたところで、これからさんざん苦労して歩んでいくのは決定してんだから。

 その先に、絶対になってやるぞ、ってとこまで含めてさ。

 

 だから今は、これでいい。

 

「これからもよろしく、永久」

 

「ああ。よろしく、ご主人様」

 

 

 

 夏休み最終日、時刻はまもなく午後10時。

 寮の消灯時間も近づく中、そろそろお開きにしようってことになり、

 シメの挨拶を請け負った飯田が、私達がちょうど今日『仮免』という新たなスタートラインに立ったことや、明日から二学期だってこともあってか……『俺達の戦いはこれからだ!』という往年の名台詞を素で口にして、その場が爆笑に包まれた。

 

 しかしまさにその通りで……私達の戦いは、まだまだこれから続いていく。

 

 戦いに限らず、勉強も、修行も、恋愛も……その他色々。

 まだまだこれからも続いていく。なんなら、これから始まることすらあるだろう。

 

 楽なことばかりなわけがない、困難なことも山ほどあるはずだ。

 そしてそれは時に、1人では乗り越えられないものでもあるのかもしれない。最後まで止まらず走り続けることなんて、できないのかもしれない。

 

 けど、それを悲観することはない。

 疲れたら休めばいい、迷ったら止まればいい、1人でできないのなら、皆で立ち向かえばいい。

 寄り道したり、遠回りしたり、時にはさぼったりしてもいいだろう。その全部が、きっと糧になる。

 

 きっと、そうやってがむしゃらにあがき続けて、やっと手に入れた未来でこそ……私達は、自信をもって名乗れる『ヒーロー』としての自分を手に入れているんだと思う。

 

 何せ今はまだ、1年の夏休み終わったところだ。まだまだこれから、ずっと続くんだ。

 私達が、立派なヒーローになるための時間は。

 

 私の、あるいは僕の……ヒーローアカデミアも、ヒロインアカデミアも。

 

 1歩1歩、歩いて行こう。積み重ねていこう。

 ずっと、これからも。みんなで。

 

 

 

 




というわけで、最終話でした!
まあ、このあとまだエピローグ載っけますけど。

このSS、このクラスでは、不合格は0名ということで。爆豪もギリギリですが受かってます。組織行動のおかげですかね。

なお、この後緑谷と喧嘩……は、しません。
攫われてないので、オールマイトに対する負い目もないです。つか、全員同じような状況だったし、めっちゃ大変なバトルしまくりの夜だったから、そんなこと考える暇もなかったでしょう。
けどかっちゃんのことだから……鋭いし、いつかはOFAに気付くのでしょうね。

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